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脈流(RW1)  作者: 智路
第2部 幼鳳のさえずり
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第2-17話 セイトとチロの覚悟

第2-17話 セイトとチロの覚悟

 物質界に属する肉体を持つ人間には見えなかったが、地球のチロにもその閃光は見えた。

「何かしら、あの大きな閃光は?まさかセイトが?」

 チロは心配ではあったが、セイトとの約束でアンドロメダに行くわけにはいかなかった。チロが行くときは、セイトから合図があり最後の手段を決行するときだけであった。それまでは、チロの存在はムレンとマズラに知られてはならなかったのである。

 そのころアンドロメダでは、

「マズラ……。おのれカレンめ。いやゴクウ、お前もグルだったのか?」

「ご、誤解です。わたしは何も知りません」

「では、カレンのありがとうという言葉はなんなのだ?」

「それはセイトさん、いやセイトに向けられたものでは?カレンは何かを勘違いしていたのです。

裏切り者はセイトです」

「いや、信用ならん。ゴクウを檻にぶち込め」

 このとき、セイメイがムレンになにやらひそひそと何かを告げた。

「檻にぶち込むといっても マズラ様がおりませんから、われわれにはゴクウが見えません。せいぜいこの部屋を檻で塞ぐくらいのものです。そうすると、セイトを捕らえるのがやっかいになります。そこで……」

 セイメイの声はより一層低くなった。

「ゴクウ、こうしようではないか」

「はい。どのように」

「セイトを檻に入れてここに連れて来い。お前ならセイトも油断しているはずだ」

「は、仰せの通りに。しかしセイトが今何処にいるのか定かではありませんから少々時間がかかるかもしれません」

「それでもよい。わしはあの部屋に篭っているから連れてきたら声をかけろ」

 ムレンはそう言って、マズラとカレンが出てきた部屋に入った。その部屋はアンドロメダで最強の防御施設であった。

(拙い、アンドロメダに精神体はわし一人になってしまった。わしの手足となって動くものがいない。いっそ、精神分割して第4世代となるか。いや、それも拙い。第3世代のセイトがいる限り、第4世代では対抗できない。いずれにしろセイトを処分してから考えよう。ゴクウがどこまで信用できるかまだあやしいし、とにかく全てはカレンのせいだ)

 ゴクウは真っ直ぐにセイトのもとへと飛び、カレンの行動と言葉を伝えた。

「そういうことだったのか。できれは、深く相談して欲しかったが、それは無理だったのだろうな。ほとんど見ず知らずのわたしたちを少しは信用してくれたのだから、それに応えなければ……わたしはチロと相談してくるから少し待ってくれ」

…………

 チロに状況を説明したセイトは、

「わたしとゴクウが失敗したときは後を頼む」

と、言い残してアンドロメダに戻った。

…………

「ゴクウ、わたしを精神の檻に入れてムレンのところに連れて行ってくれ。それにカレンの精神鞭はお前が持て」

「しかし、わたしでいいのですか?上手く使えるかわかりませんが……」

「試してみろ」

「如意。伸びろ」

 精神鞭はゴクウが望むところまで伸びていった。如意という掛け声もただ自分の好きな言葉が口をついただけで特別な意味はなかった。ただ、精神状態を自由のままに、思いのままにと願って如意と発しただけであった。

「使えそうです」

「その精神鞭は、ムレンを捕らえられるはずだ。だめなときは、わたしの入っている檻をそれで壊せ。わたしがムレンを道連れにする」


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