第2-16話 巨大な閃光
第2-16話 巨大な閃光
一方、精神の獄である研究所からは、精神の檻の中で精神縄に繋がれたケシラが、マズラによってムレンのもとへと連行させれいった。このときのケシラは茫然自失としていて何が起こっているのか理解していないだろうと思われる。
ケシラが自分の状況を理解したのは、ムレンの罵声を聞いたときだった。
「飼い犬に手を噛まれるとはこのことだ。何をたくらんでいたのだ。朝までそのままで、せいぜいいいわけでも考えていろ」
(どうしてこんなことになったんだ。わたしはわたしの自由が少しだけ欲しかっただけだったのに。確かにゴクウへの嫉妬はあった。トランティスでは重要な立場にいて、ムレンには可愛がられ、わたしはゴクウの持っているものを欲しかったのだ。ただそれだけのことだったのに)
朝になり、ゴクウがムレンのもとへとやってきた。
「ムレン様。2基の転送機の中が空っぽです。誰かが何処かに転送したものと思われます」
「なに。まさかそれもケシラの仕業か……。マズラ、大マゼランに行って確かめて来い」
…………
「兄者、確かに大マゼランに転送されています」
「ケシラを引っ張って来い」
…………
「ケシラ、貴様は檻破りの他にも、転送機を盗んだそうだな?」
「いえ、それは地球人が……」
「地球人がどうしたというのだ」
「わたしは。地球人に唆されて転送先に大マゼランの位置を教えただけです」
「セイメイを呼んで来い」
…………
「セイメイ、最近追尾線が不自然に切れたことはあるか?」
「いえ、追尾線が切れたのは今朝トランティスに向かった定期補給転送のときだけです」
「昨日切れた追尾線はないのだな」
「はい」
「ケシラ、このごに及んで未だ嘘を重ねるか」
「し、しかし……」
「分割処分とする」
「や、止めてくれ」
ケシラは、秘密の部屋へと連れて行かれ精神縄を縛りなおされた。すると、見る間に ケシラは精神分割を加速させていった。
「これね?姉さんを強制的に分割させたのは?」
この部屋には、マズラだけがいた。
「お。お前はカレン」
「わたしと一緒にきてもらうわ」
そう言ったカレンは、小振りの精神縄で自分とマズラを繋いだ。
「な、なんだこれは?どうしようというのだ?」
カレンは、ムレンのいる部屋へと向かった。
「ムレン、マズラはわたしが連れて行くわ。ゴクウさん、セイトさんにありがとうと伝えて。それと後はお願いしますと」
そして、遠く離れた虚空で巨大な閃光が走った。




