第2-14話 脱出不可能
第2-14話 脱出不可能
「どこのぉ味方様で?」
「大マゼランにおるゴクウの敵のケシラというものだ」
「あぁ、お噂では……」
「ところで、お前たちはあの転送機を操縦できるのか?」
「もちろんですとも、あっしらは操縦士ですぜ」
「お前たちの仲間で、転送機を製造できる技術を持った者はおるか?」
「何人かいますぜ……」
「皆で大マゼランに行かないか?厚遇するぞ」
「ほうとうですかい」
(ここの精神の檻にとらわれているものも連れて行くとするか。どうせ、転送機の行方を誰も突き止められないのだから。うまくすれば、これで1大勢力とはいかなくとも、ムレンの元で厚遇されることになる)
ケシラは、転送機を量産するつもりであった。しかし、そのための情報は完全に不足しており、作戦もずさんである。
「明日の夜に出発するぞ」
この話は、セイトとゴクウに伝わった。
「面白いくらいに話が進んでますね」
「うむ。ケシラがのってこなければ、一方的に大マゼランに転送してやるつもりだったが、これでケシラがムレンに捕まったときのやりようが楽になる」
「しかし、何故今夜ではなく、明日の夜なのでしょうか?」
「さて、何か考えがあるのかもしれないな。わたしは、明日の夜に備えて研究所の精神の檻を確認してくる」
……
「わかったかもしれないぞ。ケシラも精神の檻を破るつもりだ。転送機の中身だけ持っていっても、技術者がいなければ修理も生産もできないからな。でも、拙いな。ルガの争奪戦になったら大騒ぎになる」
「わたしが、10分くらいケシラを引き止めておきます」
「わかった。作戦は変更になるが錠を開けて、ルガを救出させる。ついでに他の人たちの錠も開けよう」
次の日の夜、ゴクウが偶然を装ってケシラを引き止めていたころ、セイトは研究所の監視網を掻い潜ってルガの傍にいた。ルガには地球にとんで欲しかったが、まだ完全にチロを信用することができないという。そのため、明日、トランティスに出立予定の転送機の中に隠れることにした。セイトがいくつかの檻の錠を開けているころ、ケシラがやってきた。
「ゴクウのせいで余計な時間を喰ってしまった。さて、錠を開けるとするか」
セイトは(これ以上錠を開けると不自然に思われる)と考えたため身を潜めていた。ところが、ケシラがいくつかの錠を開け、次に取り掛かろうとしたとき、
(駄目だ。それはトラップだ)
ー侵入者あり。非常警戒体制発令ー
繰り返し発せられる警報と共に、研究所の中は精神の檻の数十倍の強度と思われる檻に遮蔽された。セイトはその遮蔽された檻に近づいて言った。
「無理だ。脱出できない」




