第2-13話 ケシラへの罠
第2-13話 ケシラへの罠
転送機の製作の進捗が半ばころにさしかかったとき、ケシラが大マゼランからムレンに報告のためやってきた。ケシラは、天の川銀河の辺境から中央部に向かってリレー拠点を設置している。ケシラはなんとかして、トランティスを自分のものにしたいと思っていたのである。大マゼランでも文明を発生させたが、その程度は地球でいえば紀元前4千年くらいのものであった。そこで、自分で文明を発展させるより成熟した文明であるトランティスを手に入れたいと思っていたのである。ムレンの思惑は、天の川銀河を完全に自分の版図に組み入れることで、トップはセイトより自分のいいなりになるケシラが望ましいと思っていたため、両者の利害関係は一致していたのである。天の川銀河を武力で制圧することは容易かったが、問題も持っていた。それは天の川銀河の中にリレー拠点を持っていないため、中央部への侵攻に時間がかかりすぎることであった。これは、天の川銀河の完全なマップを持っていないことも意味し、残党が各地に散らばる可能性を持っていたのである。そこで、ケシラにリレー航法を授け、中央部付近まで拠点ができたときに侵攻しようという腹積もりであった。もし、リレー拠点の設置をセイトに気付かれ非難されても「それはケシラが勝手にやっていることだ」といい逃れることができる。
「ケシラ、久しぶりだな」ゴクウがそう話しけると、
「おう、ゴクウか、久しぶりだな。ところでこれは何なのだ?」
「転送機さ、空間の距離を無視して移動できる代物だ」
「なに。これをどうするのだ?」
「ムレン様に献上すると共に、制作方法も伝えていくつもりだ」
(そんなことをされたら、わたしの今まで苦労はどうなるのだ。リレー航法はもう古いから作業を中止していいぞとムレン様ならいいかねない。そのときのわたしの立場はどうなるのだ)
「ケシラ、少し様子を見ていくか?」
「おう」
(ともかく情報収集が必要だ)
このとき、移動の途中で話し声が聞こえてきた。
「やってられねぇな。トランティスのやつらは俺たちのことを虫けらだと思ってやがる」
「あぁ、とにかくあのゴクウとかいうのがいけねぇらしい」
「見たことはないが、随分酷いやつらしいぜ」
「この転送機をかっぱらって何処に逃げようぜ」
「ばれるって」
「ばれやしないさ。この世の中にこれより速いものなど存在しねぇって話だぜ」
「だが、ばれたときはどうする?お前は感介者だから死罪はないだろうけど、おれは間違いなく打ち首だぜ」
本来ならこのひそひそ話がケシラとゴクウに聞こえるはずはないのだが、聞こえるようにわざと細工がしてあった。ケシラも通常の状態なら不思議に思うだろうが、今は転送機のことで気が動転していた。
「誰か、ゴクウの悪口を言ってるぞ」
「どうせ、地球人だろ。いつものことさ」
そう言って、ゴクウは転送機もとへと急いだ。ケシラは、
「何基あるのだ?」
「地球から5基持ってきて1基テストしたから4基残ってて、後りは製作中だ」
「なるほど。いい献上品だ」
と言って何処かに去っていった。
突然、利助にケシラがのってきた。
「どなた様で?」
「お前たちの味方だ」




