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脈流(RW1)  作者: 智路
第2部 幼鳳のさえずり
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第2-12話 ルガ救出作戦の始まり

第2-12話 ルガ救出作戦の始まり

 ルガ救出作戦が始まった。先行するのはゴクウで、ムレンに「転送機を作成してみたのですが、評価をお願いできませんか?」と願い出ることが役目であった。

「ムレン様、転送機を作成したのですが、ちょっと見て評価してくださいませんか?」

「転送機とな?それはどんなもので、どのくらいの性能を持っておる?」

「空間の距離に関係なく、一瞬で物体を転送することがきます」

「ほぉ、われらも持っていない技術だな。持ってきてみろ」

 アーべ共和国の長距離移動宇宙航法の基本はリレー式で、空間を遷移して一瞬で移動することはできなかった。アンドロメダ銀河内部には各地にリレー拠点が設置されており、外宇宙では位相と群速度の組み合わせによる航法が標準となっている。これは当初、セイトが天の川銀河とアンドロメダ銀河を短時間で移動するために考案した方法と原理は同じである。

「それでは、5機ほど送ってみますので、空き地を5㎞四方ほど用意してもらえませんか?」

 こうして、転送機はアーべ共和国に5機送られることになった。

「ほう、2重構造になっているのだな?」

「外側が転送機で内側が転送物質になります。天の川には、この外側に3重目の転送機が残されています」

「これの製造方法は秘密なのか?それとも教えてくれるのか?」

「お気に召すようなら、ムレン様のためですから、もちろんお教えします」

「ふむ。では、1機転送してみよう」

 転送先は、リレー拠点のあるアンドロメダ銀河の外縁部となった。リレー式と競争させようというのである。結果、転送機の方が僅かに速かったが格別というほどではなかった。

しかし、

「リレー拠点が必要ないところがよい。で、戻ってくるときはどうするのだ?」

「残念ながら転送するだけです。もし、戻ることを考えるのならわれらのように転送機を2重、3重にする必要があります」

「早速だが、作り方を教えてくれ」

「こういう方法はどうでしょうか?われらの技術陣がこの空き地に3重の転送機を1機作ります。ここの技術陣の方々は、それを見ながら聞きながら別の転送機をいくつか作るというのは……」

「なるほど。で1機を作るためにどのくらいの期間が必要になる?」

「3週間ほどあれば……」

「よし、早速天の川の技術陣を連れて来い」

 1機作るために1週間あれば十分だったが、ルガ救出作戦のために時間を稼ぐつもりで、3週間と言ったのである。天の川から送り込まれた技術陣は、100人あまりで、その中には数人のトランティス人以外の者が混じり込んでいた。当初の計画では、桃九、アバ、ナカマが地球から参加する予定だったが、これに利助と孔明が加わっている。トランティス人も地球人も遠目では違いがわからないため、100人の中に5人くらい地球人が紛れ込んでいても問題ないだろうということになったのである。利助が加わることにより、桃九から感介者としての負担が減ることになり、何かとやりやすかろうとういう配慮が働いたのであった。孔明は、条件が揃えば重要な役目を果たすことになる。揃わなければ、何の役にも立たないであろう。

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