第2-11話 桃九の潜在能力
第2-11話 桃九の潜在能力
セイトはこの話を実験責任者から聞いた。
「なるほど、消すのではなく、目立たなくするのか。そうすると、どうにかして大マゼランに何艦か送り込みたいな。今更ながらだが、チロが桃九くんに期待を寄せるわけがわかるような気がするよ」
「しかし、時間はあるのですか?われわれでは、対応できないと思います」
「わたしとゴクウで3艦送り込もう。一人が艦にのって、一人はそのまま移動する。すると一人が外から錠を開けることができる。これを3回行うのだ」
こうして救出作戦の準備が整いつつあった。可能性の分散によりルガを浚った犯人を特定することは難しくなるはずである。問題は犯人がトランティスであると特定されたときだけとなった。軍事力だけを見るとアンドロメダはトランティスの20倍強を誇っている。
セイトはチロと作戦の仕上げのために会合を持った。
「われらが犯人だとばれたときだが……」
「わかっているわよ」
「だな。セイタンのときもチロはそうしようと思っていただろ」
「知ってた?」
「大体はね。そうでなければ、地球の恒星の太陽にわたしたちを連れていくわけがない。もしものとき、地球が壊滅的な影響を受ける」
「わたしとセイトがあの兄弟と刺し違えた後は桃九VSセイメイになるわね」
「そうなれば、われらの勝ちだと思うよ。ムレンとマズラがいなくなれば、セイメイの求心力はないに等しいから必ず内部崩壊を起こす」
「そうね。でも、できるなら刺し違えたくはないわね」
「ところで、桃九くんには何処まで期待を寄せているのかな?」
「わたしたちを神の世界に戻すまでよ」
「可能性は高いのかな?いや、あるのかな?」
「高いか低いかはわからないけど、可能性はあると思っているわ」
「なるほど、潜在能力に期待しているのだな」
「そうよ。この世界のことは全部知っていたつもりだったけど、あのアークを見て少し落ち込んだわ。でも、同時に希望も広がったのよ。全部知っていたら新しいものは何も生み出せないわ。知らないものを知ることで新しいものが生まれてくると思うの」
「そうか。だから桃九くんにあんなに厳しくしているのか。まぁ、優しくもあるけど」
「そうよ。桃九には、全部自分で考えなさいと言っているわ。桃九がわたしと同じ知識を持ってもわたしたちは神の世界には戻れないわ」
「桃九くんはどんな潜在能力を持っているのかな?」
「1つは創発的発想ね。部分となる情報を集めて、部分だけからは想像できないような結論を導き出すわ。1つは飛躍的発想ね。全体に含まれないと思われる部分を全体に繋げる能力よ。だから、この世界の全てを知るときが来れば、何かを生み出すわ。」
「今回の作戦もその能力の一部なのかな?」




