第2-9話 残るもの
第2-9話 残るもの
桃九に実験ではという条件つきであるが、あの大正三角形の中に閉じ込められた人を解放できたという報が届いた。桃九はアンドロメダに旅立つためにいくつもの部署に申し送りをしていて多忙だったが、この報を確かめることを最優先とした。
「地球のトップの方をお呼びたてして申し訳ありません」
「いえいえ、わたしが我儘でやってきただけです」
「少々お待ちいただけますか。セイトがお話したいことがあるそうです」
…………
「やぁ、桃九くん、地球ではお世話になったね」
「いえ、皆チロさんがやったことです。わたしは太陽の中心までいけませんから……」
「ははは、ところで、少しでも希望を持ってやってきたのなら、残念だけどと言うしかないよ」
「紋章のことですか?」
「そう。あの紋章は歳月がたち過ぎている。歳月は物質に予測できない変化を与える。ここまで言ったら君ならわかるよね」
「結論としてあの封印を解くことはできないということですね。だからチロさんはルガさんを必要としているのか」
「うん、どういうことだい」
「ルガさんにあの紋章の完全体を作ってもらって、あの紋章との差異を修復していこうとしているのです」
「なるほど、それがベストだね」
「ところで、アンドロメダ行きの目処はどうですか?」
「行って戻ってくることはできるはずだ。しかし、1つの残骸をアンドロメダに残してくることになる。そうすると、ルガを浚ったのはわたしたちですよと言ってることと同じになる。アンドロメダの火力を総動員されると天の川銀河そのものが滅茶苦茶になる。おそらく、われらを探すということはしないだろう。絨毯爆撃で天の川銀河を破壊すると思われる。だから、絶対にわれらがルガを浚ったという証拠を残してはならないのだ」
桃九は、実験場を訪れた。
「随分大きな三角錐の宇宙艦ですね」
「はい。3重目は1辺が8kmあります。2重目は1kmです。最期の帰還艦は100mぐらいしかありません。このぐらいの比にしないと相互作用の影響が大き過ぎて調整ができないのです」
「残してくるのは1kmの2重目ですね」
「はい」
「どうしても目立ちますね」
「はい」
「もし、なくなったとしても目立ちますね」
「え?」




