第2-8話 解放
第2-8話 解放
「問題が2つあることがわかった。いや、3つだな」
「何と何でしょうか?」
「1つは転送機から脱出できることだ。1つは三角錐を3重にすることだ。往きに3重目を使い、帰りに2重目を使う。この3重化ができるかが問題だ」
「残りの1つは何ですか?」
「2重目の転送機がアンドロメダに残ることだ。われわれの目的は密かにルガさんを救出することだから、証拠を残して帰ってくるわけにはいかない」
「なるほど。難問ですね」
「1つ目の問題だが、何かいいアイディアはあるか?」
「アイディアではありませんが、トライアンドエラーの実験では犠牲者が百人いても足りないということはわかります」
「当たり前だ」
これをゴクウが聞いていた。
「精神体でも抜け出せないのかな?」
「さぁ、試したことがないので」
「わたしが試そうというのじゃないよ。仮に精神体でも抜け出せないとしたら精神の檻と同じ機構かと思ってさ……。ちょっとセイトさんに精神の檻の機構を聞いてくるね」
…………
「精神の檻は重力の節点を複雑に絡み合わせた迷路だよ。檻の中では重力の圧迫が精神体にかかってくるのだ。だから、圧迫の少ない方へ移動したくなる。しかし、これが最初の罠だ。どんどん迷路に嵌っていってしまうのだ。それに気付いて今度は圧迫の強い方に移動すると圧迫で身動きできなくなる。それから脱出するのは一苦労だ。と、大概はここで諦める」
「諦めない精神体はどうするの?」
「同じことを繰り返すのさ。わたしが、天の川バルジでこの迷路に嵌ったときも諦めなかった。何回目かの挑戦で入り口を見つけたから脱出できた」
「出口があるの?」
「外側から出口を塞がなければあるはずだ」
「ねぇ、あの三角錐を見てくれない?もしかすると同じ機構かもしれないんだ」
…………
「あぁ、これは迷路じゃない。単純な重力の檻だよ。ほら、ここを外せばいい」
「あれ、外に出れたのかな?」
3人の搭乗員は不思議な思いで、誰にともなく尋ねた。
「セイトさん、わたしにも方法を教えてくれない?」
ゴクウはそうせがんだ。
「いいよ」




