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脈流(RW1)  作者: 智路
第2部 幼鳳のさえずり
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第2-1話 セイトの完全復活

第2-1話 セイトの完全復活

 チロが予測した1ヵ月後より1週間早く完全復活したセイトであった。

「チロのおかげでセイタンはいなくなったよ」

「よかったわ」

 精神体同士の会話は、精神体を近接させて行う。多くの場合精神体は、その加減を知っているため疲労を伴うことは少ないが、精神体同士が接触あるいは衝突すると、何が起こるのか予測しかできていない。その予測とは、精神体が崩壊、分裂するというものである。分裂した精神の末路のことは誰も知らない。精神体と生命体が会話するとき、最も安全な方法は、生命体が持つ受感部の分枝を利用することである。通常の生命体は受感部を1つだけ持っていて、そこに精神が1つ宿ることになるが、稀に受感部の分枝を持つ生命体が存在し、1つの肉体に己と分枝の数だけ精神を宿すことができる。分枝に宿った精神の出入りは自由で、生命体が迷惑でなければ入れ代り立ち代り別な精神が宿ることもできる。現在、この分枝を持つものには桃九、利助、リータだけが知られている。桃九の分枝の数は複数であることは確かだが、数えたものはいない。利助とリータは1個ずつ持っている。この分枝を持つ者を感介者と呼んでいる。

 感介者を利用しないで精神体と生命体が会話をするとき、精神体が生命体の精神に近接して行う。精神体は生命体の精神に接触しない限り、その経験値によって疲労を抑えることができるが、生命体の精神力の弱い者や受感部の未熟なものにこれをすると、生命体の精神に重大な影響を与える。精神力が強く、受感部の発達した者でも極度の疲労を伴い、生命体は経験値でこれを抑えることはできない。

「セイトに相談があるのだけど……」

と、ことのあらましを説明した。

「少々やっかいだな……。トランティスに1週間くらい行って、皆を安心させたいから、その間にいいアイディアを用意してみるよ」

 やがて、地球にやってきたセイトは、

「トランティスは概ね平和だね。大きな問題は起こっていない。ところで、アンドロメダのことだが、あそこの首魁はムレンと言う。わたしとチロのルートとは違う桃の精をルートに持っている。ムレンの弟のマズラと一緒になってアンドロメダを治めているということだね。一番の問題は彼らもわたしと同じように大質量ブラックホールにおかされている可能性が高いことだ。他にもクリアしなければならない問題が多く存在する。例えば、アンドロメダ銀河を取り巻く伴銀河が多く、ここの監視網が凄い。おそらく、チロでも網にひっかかるだろう。そこで、わたしが行って様子を見てこようと思っている。アンドロメダとトランティスは国交があるからね」

「よろしくというところだわ。でも、トランティスが移転したことを知っていたら何か言われないかしら?」

「ムレンはトランティスのことなど歯牙にもかけていないから移転は知らないと思うが、大マゼランにいるケシラがムレンに取り込まれているという情報が以前からある。ケシラが騒ぐと少しやっかいになるかな?しかし、たかが移転だ」

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