第1-20話 セガル人の能力
第1-20話 セガル人の能力
「ルガさんを救出すれば嘘が半分になりますね」
と桃九が言った。
「そうね。嘘はなるべく少ない方がいいわ」
「わたしから言わせると、嘘は人為的な誤差ですからね。嘘が増えると物事が煩雑になります」
「そうね。でも、今は桃九の講義を聞いている時間はないわ」
「すいません」
「囚われている場所は、まず間違いなく中央研究所の中です。でも、そこまで行くのは困難だと思います。アーべ共和国は精神の檻だけでなく精神縄も持っています。チロさんでも中央研究所に辿りつくのは難しいと思います」
アンドロメダのことはゴクウが詳しい。
「近いうちにルガ救出作戦の会議を開きましょう。そうねぇ、セイトが完全復活してからというのはどうかしら」
こうして、日時は近いうちとしてルガ救出作戦の会議が開かれることになった。
一方、セガルの人々は、医師団によってセガル人と呼ばれることになった。精査をすると、視力はほとんどないに等しく、あっても色盲ないし色弱であった。そればかりでなく、強い光に抵抗を覚え怯える者も少なくなかった。自然光も強い光と感じるようで住環境には、このことが絶対的に考慮されるべきであると報告書には記載してあった。聴力は地上の人類の百万倍くらい発達していて、さらには、微弱な超音波を発しているようであった。彼らはこの聴力と超音波で視力の弱さを補っているようなのである。従って、住環境には、外部音の遮蔽率の高い防音設備が必要であった。彼らの主食はキノコだったようで、そのキノコは地上には存在しない栄養価の高いものであった。これも移植して彼らの主食を確保する必要があった。皮膚も自然光にさらされると発癌の可能性が高く、明かりの調整は視力と合わせて最優先事項となった。
最期に行われたのは、知能検査であった。自動翻訳機は体系だった言語であれば、全てを翻訳してくれるから言語能力が劣ることは日常生活に必須ではなかったので後回しとされた。いくつかの技術関連の知能検査が行われた。自然科学の知識は皆無に近く、検査すらできないほどであった。しかし、全てのセガル人の数学の潜在能力や既知能力は高かった。その能力からすれば、ムー5の教育課程を全ての人が1年以内に習得できると予測された。地底の生活では、娯楽の種類が限られており、幼いときから数学が遊びとなっていたようである。
このことを知った桃九は、半ば強引にセガル人を自分の直轄とした。依って。住環境は桃九の住まいに跨り建設されることになった。セガル人のために地下通路も用意され、桃九の住居にも薄暗い大会議室が増設された。




