第1-19話 大事なものには鍵をかけろ
第1-19話 大事なものには鍵をかけろ
ムー5から医師団が、セガル人の身体の精査に向かったころ、アトランから客が来ていた。セイトが間もなく治癒するだろうというチロの報を受けて、サンガとゴクウがやってきたのである。
「精神の占有率が5分と5分になったから、後は時間の問題ね。転がるように直っていくわ。予測では1ヵ月後というところかしら。そうすると、セイタンは存在しなくなるわ」
「それで、セイトさんとセイタンが暴れたと聞いてきたのですが……」
「暴れたのはセイタンね。自分が消えることを薄々感じているのじゃないかしら」
「セイトさんが、完全復活してトランティスに戻ってくれば、これほど心強いことはないのですが……」
「そうね。ところで、トランティスでは何か困った事件とか起きていない?」
「事件ですか?さぁ、これといったものは……」
「こっちではセイタンが暴れたことで、ちょっとした事件が起きたわ」
「どんな事件ですか?」
「忘れられた一族が見つかったというか、わたしの失敗が見つかったというか……」
「忘れられた一族ですか?」
「そうなの。わたしがアミノ酸の試作で失敗したと思った人たちが子孫を残していたのよ」
「その人たちはどうしたのですか」
「ここに連れてきたいのだけど、10万年近くも地底で暮らしていたものだから、身体の退化が見られるようなの。だから今身体の精査中よ」
「地底ですか?どうして地底などに?」
「その一族の始祖が、何か騒ぎでも起こせばわたしに捕まるとでも思ったのかもしれないわ」
「失敗の人だったから?」
「そうね。そうそう、ルガという名前に覚えはないかしら。もしかしたら、トランティスに立ち寄っているかもしれないわ」
「その人は誰ですか?」
「その一族の始祖の一人よ」
「さぁ、覚えがないですねぇ。ゴクウはどうだい?」
「ち、ちょっと待って。その名前に記憶があるのだけど、どこでだったか思い出せないよ」
「え?思い出して……」
…………
「もしかして、その人は肉体を持たない精神体じゃないですか?」
「そうよ。思い出した?」
「はい。アンドロメダで檻に繋がれています」
「どうして繋がれているの?」
「貴重な頭脳だからです」
「だったら、尚更どうして繋がれているの?」
「アンドロメダのアーべ共和国のトップのセイメイはとても猜疑心が強くて、人を疑ってばかりいます。わたしのように取り柄がないと自由ですが、ルガさんは数学の分野でトップクラスですからね」
「だからと言って檻に繋ぐなんておかしいわ」
「アンドロメダでは日常茶飯事ですよ。大事なものに鍵をかけておくのと同じ感覚です」




