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脈流(RW1)  作者: 智路
第2部 幼鳳のさえずり
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第1-17話 アバの指示

第1-17話 アバの指示

 セガルの洞の全てから濁流が空海の開けた穴に向かって流れ込んでいた。空海は、部屋にいくつかある通路を1つだけ残して全て崩落させた。この崩落によってセガルの者たちが、開けた穴に飲み込まれることはないであろう。空海は部屋から出ると、最後の通路を崩落させた。そして、空海は最期に崩落させた岩塊に崩れるように倒れ込んだ。

 受感部の分枝を持たない空海と勝智朗が会話をするためには、精神同士を近接させる必要がある。誤って精神が接触すると互いにどのような影響を受けるのかわかっていない。勝智朗は何度かこのような経験があったため、(精神の)疲労は半減しているが、空海にとっては初めてのことだったので疲労は極限に達していたようである。それでも、空海は自分の務めを果たし、アバを待つだけとなっている。

 超人類を含めて人類の中でアバを超える判断力を持つ者はいない。しかし、アバは普通の人間であり、超人類のような高速の移動手段を持っていなかった。それは利助も同じで、二人は超人類に担がれて移動しているのであった。本来なら分枝を持つ利助が勝智朗と超人類との通訳を務めなければならなかったのだが、その猶予は与えられていなかった。

 やがて、アバを含めた後続隊が到着した。

「小角、最澄、マルコポーロお前たちは水漏れの箇所の確認だ。大国主は怪我人の手当てを」

 水漏れの場所に向かった小角らは、

「これは、酷い。見る間に水道の破裂部分が広がっているではないか。これは重力を止めない限り修復はできないぞ」

 重力を止めることなど現在の技術では不可能である。つまり修復できないと言っているのである。この報告を聞いたアバは、

「セガルの洞の人たちに選択の余地はないな。無理にでも地上に連れて行かねばならない。説明と説得は孔明に任せる」

 怪我人の様子はというと、重度の怪我を負っているものは3人であった。

「命を落とした者はおらぬか?」

「はい。幸いにも」

「では、その3人が最優先だな」

 ところが、二人は左腕を失っており、一人は右足を失っているのだが、出血はなかったのである。

「誰が、止血の手当てをしたのだ」

「いつもこうなのです。怪我をしても出血しないのです」

「お前らは、血が流れておらぬのか」

「そうではなくて、紋章を扱った者が怪我をするとこうなるのです」

「この怪我は水漏れや濁流のせいではないのか?」

「はい」

「その重傷者はわしでは、どうにもならん。他に怪我人はおらぬか」

「ここに」という声が何箇所かから聞こえた。

 大国主がその者の傍に行ってみると、

「これは、脳震盪だな。濁流に流されて岩塊にぶつかったのだろう」

「これは、二人が激しくぶつかったのだな」

「これは、何かにぶつかって足の骨を折っている」

 と、てきぱきと診断を降し、直ぐに治療の術を施すのであった。

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