第1-15話 不完全な紋章
第1-15話 不完全な紋章
「わたしが3先祖神の一人に成りすまして、セガルの一族の人たちを騙すという手もあるけど、桃九はどう思う」
「既に騙していますからね。立派な詐欺罪が成立しますよ。ともかく、何が大事かまとめてみませんか?」
「そうね。1つはセガルの一族の人たちを助けてあげたいわ」
「そうですね。それが1番ですし、そうしないと何も始まりませんしね」
「そうそう。原本も見てみたいし……」
「それと、3先祖神の一人のルガさんは何処に行ったのでしょうか?伝承を信じるとルガさんはわれらと時間を共有する精神体になったと思うのです」
「そうね。他の二人はわからないけど、ルガはその可能性があるわね。そうだ、ルガに会ったときのために名前を考えておこうかしら。名前が”失敗コードxxx”じゃあ、可哀相でしょ」
このとき勝智朗が口を挟んだ。
「わからないことが、2つあるんですが……」
「なあに?」
「1つは、封印の洞ですが、これはセガルの一族に聞かなきゃわかりませんね。もう1つは、隠し文字です」
「あぁ、ムーの時代には暗号が必要じゃなかったから、重要な文書に用いた数学の記号のようなものよ。その記号1つでいろんなことを表現できるし、小さな記号よ。それを文字と文字の間に不自然じゃないように挟むのよ。記号の意味を知っていれば、誰でも読めるわ」
「あぁ、なるほど。で、チロさんは知っているのですか?」
「わたしが作ったものだから当然よ」
「チロさん、対処はどうしましょうか?わたしは、騙しついでにアバたちをセガルの一族の救出に向かわせたらいいかと思っているのですが……」
「それも1つの手ね。でもセガルの一族の人たちが、救出を望んでいるのか?水漏れを修復して洞窟で暮らすことを望んでいるのかわからないわ。それに、彼らが紋章を使って、どんな修復作業をしているのかも気になるわ。検出された脈流は相当なものよ」
そう言ってチロは伝承文書を詳しく読み始めたのであった。
「な、なにこれ?まるで不完全な代物だわ」
「何が不完全なのですか?」
「紋章よ。隠し文字を見なければはっきりとは言えないけど、文脈からいえばまるで論理性がないわ。確かにところどころに脈流を導き出す方法が書かれているけど、これじゃ誰かが命を落とすか怪我をするわ」
「どうしますか?」
「勝智朗さんは戻って作業を止めさせて頂戴。桃九はアバたちに突入の命令を出して。勝智朗さんは作業を止めさせたら、塞がれた通路を辿ってアバたちに入り口を教えて頂戴。塞いでいる岩塊は空海に壊させればいいわ。急いでね」




