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脈流(RW1)  作者: 智路
第2部 幼鳳のさえずり
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第1-14話 伝承文書

第1-14話 伝承文書

 戻った勝智朗は、チロに報告をしていた。アバには桃九から待機命令が降っているはずである。

「伝承文書ねぇ。そのセガルの一族のルーツはどこにあるのかしら?いつからその空洞で暮らしているのかしら?」

「その情報は得られませんでした」

「3先祖神の一人の名前はルガというのよね。20~5万年前のムーの言語で”ル”は否定を意味するわ。ガは”gxxx”じゃないかしら。だとすると、23番目のアミノ酸の効能を試しているときの人類を”失敗コードxxx”で呼んでいたからそれかもしれないわ。23番目のアミノ酸の効能がさっぱり見えないから、通常の人類と同じように大陸に渡したのよ。それがルーツかもしれないわ」

「確認する方法はあるのですか?」

「伝承文書があるじゃない。伝承文書がムーの古代言語で書かれていれば、その推測はまず間違いないわ。でも、そうすると、あの子たちが2元数の紋章を作ったことになるわね。23番目のアミノ酸の効能は頭脳に現れていたのかもしれないわね。だったら、わたしの不覚だわ。わたしは、そのときに23番目のアミノ酸を改良してしまったのよ。そして、超人類が生まれたということよ」

 チロも勝智朗も映像記憶能力を持っている。しかも、その映像を動画として記憶できた。しかし、他者には動画の断片を静止画像としてしか伝えることはできなかった。

「伝承文書を記憶してきます」

 そう言った勝智朗はセガルに向かった。リータは相変わらず独楽のように働いていたが、勝智朗がのると、

「あ、3先祖神様のお使いの方だわ。聞いてください。さっきから2cmも水かさが増えたんですよ。その勢いは急激に増していて、1週間後には水没すると予測されました。早く、3先祖神様の助力をお願いします」

「うむ。だが、3先祖神様は今忙しく、もう少し待ってくれと仰っていた。その前に伝承文書を見たいと仰せである。そうすれば、3先祖神様がここにきたとき、すぐに手が打てる」

「わかりました」

 娘は文箱の傍にある伝承文書を持ってきた。それは紙に近い素材に文書が書かれていたため、厚さはそれほどでもなく、ページ数も100ページに満たないものと思われた。

「これは、写しにございます。原本は封印の洞の壁面に書かれているため今は見ることができません」

 勝智朗は(封印の洞とは何のだ?)と思ったが、今は急を要するために写しだけを記憶し、チロの元に戻った。

「うわー。読み辛いわねぇ。これ写しだって?隠し文字が見えなかったのね」

 今度も、勝智朗は(隠し文字とは何のだ?)と思った。

「でも、はっきりしたわ。この文書は、ムーの古代言語で書かれているからセガルの一族のルーツはムーにあるわ。そして、それは7万年以上前のはずよ」

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