第1-9話 2次元波の合成
第1-9話 2次元波の合成
筆者から自分自身の精神を見てみると、精神の全体はわからないということがわかる。精神の病となってからは尚更で、精神の安定状態とは如何なるものかと10年近く考えてきた。それでも、精神の全体が見えるはずもないのだが、何かをせずにはいられなかった。今現在の精神状態は、非常に悪い。年に2、3回襲ってくる不安定状態(自分で勝手に診断しているのだが)にある。しかし、以前からは比較にならないほど精神状態は落ち着いていると思っている。えたいのしれない恐怖が襲ってくることもなくなり、夜中の2時か3時に聞こえてくるサイレンの幻聴も消えていった。
精神の不安定さを言葉で表現することは難しいが、あえていうなら『精神(心)にかけられた枷を外そうとして、いらだっている状態』というところであろうか。その枷は見えない。つまり、わけもわからず、いらだっているのである。理由や原因がわかれば、そこを攻めればなんとかなるものだが、正体のわからないものには抵抗することができない。
さて、筆者は第1部のリライトを1回行ったが、それは、上述の内容のように物語の流れを阻害する文章を削除したり、物語の中の不整合を調整したりするものであった。おそらく、次のリライトのとき、上述の数行は消えてなくなるものと思われる。
波は虚数を含んだ式で表記することができる。これは波が虚数空間の産物であることを意味しているのでなく、単なる数式のトリックによるものである。数学の特典は、このように定義が揃っていれば、実世界に存在しないものを扱えることである。即ち、数学は思考のために便利な道具なのである。そして、虚数は2元数である。
波を2次元と考えると、波の平面化が想定できる。そして、紋章の波は、線分に向かって進んでいると考えている。では、紋章の各辺のa1,a2,b1,b2,c1,c2の6頂点でぶつかる2つの波はどのような振る舞いを見せるのであろうか?答えを2つ想定できる。1つは双方の波に位相を与え、角度をずらすことである(角度がずれると数学的には虚数成分にも影響を与える)。1つは、通常の合成波ではなく、角度(正三角形であるから必ず60度となる)を持った合成波となる。つまり、虚数表記の波は3次元波となるが、物質世界でのみかけは2次元波である。ぶつかった波は、対象の波のパラメータの全てを角度によって変化させる。対象の波はぶつかった波によって波形が偏曲するから、波の速度(v)は必ず遅くなる。周期(T)も遅くなり、vT=波長(λ)から、波長も短くなる。しかし、これらは互いの波の位相を考慮しないときである。
実験しなければわからないことが2つ存在した。1つは振幅の合成値であり、1つは互いの波が角度πの位相を持つときの振る舞いである。この実験により振幅は、変化しないことがわかった。問題は角度πの位相のとき起こった。
測定装置から波が消えるのである。測定装置の故障かとも思われたが、桃九はアークの集合体と結びつけて考えていた。波形が切り取られて、別な場所に遷移する可能性を考えていたのである。多くの装置が設置され切り取られた波の出現を捉えることができたため、桃九の仮説を裏付けることになった。ぶつかった波は、特定の位相のとき不連続波となるのであった。
次に行ったのは遷移速度の測定であったが、遷移速度の速さから測定は失敗に終わった。これは、脈流通信機Ⅱ型の持つ性能である0.8μ秒/9万光年を超える速度が出ていることを意味していた。