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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

こゝろにもない事

作者: 夜胤紅

ドグラ・マグラを読んで影響を受けちゃっただけです。

 口から、言葉を吐くのは嘘になる。


 私は人と喋る事が、昔から得意とは云えないのでした。こゝろにもない事を自然と口走って仕舞うようで、如何云う事かその真意を伝え切れずに居たのでした。口から零れる虚しさは全て嘘にして仕舞いたい程で、そう思う度に言葉の隅々からは、其れを滲ませた哀しみが見え隠れするように成って仕舞ったのです。

 其の事に気付いた頃から、幾許かの時が過ぎました。相変わらず、私は人と目を合わせられない儘です。今日も何時もの様に、先生のタイの辺りを見ながら話を聞いて居ます。友の首筋を見ながら笑って見せます。何時しか、目を伏せた儘へらへらとお道化て居るのが、常となって居ました。

 其れなのに、偽りの感情を忌み嫌い嘘を吐く事を嫌う自分は、今思えば矛盾した存在だったことでしょう。否、矛盾とは云い切れないのです。私は、自分のこゝろには嘘を近付けさせませんでした。只、言葉を嘘で塗り固めたのです。

 私は、余り他人に好意を伝える事はしません。言葉には言霊が宿るとされています。好意と云う物は曖昧で真意が計り知れないので、容易に言霊を宿らせる事が如何しても出来ないのです。だから、何時かは誰も私の側に居ないように成って仕舞うのだろうと、そう思って居ました。

 其れでも、私の周りから人が居なく成る事は在りませんでした。友が云うには、誰に対しても親切だから、と。其れは、誰に対しても人当たりが良い、と同意語であり、畢竟、他人に対して関心が無いということなのです。

 嗚呼、何て詰まらない人間なのでしょう。個性と呼べる代物などは無く、ヒトの模倣ばかりを続けて嫌な子供を増長させていくだけなのです。よく大学生ぐらいの方々が、本当の自分を探しに旅に出られたり慈善活動に勤しまれたりするのを私は何度も聞いた事があるのですが、其の所謂「本来の自分」という者は私の中には居ないような気がしてならないのです。沢山の仮面が一面に、落ちた牡丹の如く広がっている其の上に、只の身の器の体が放り出されて、体は虚を見つめている。其れが私だとごく最近気付いて仕舞ったのです。嫌だ、嫌だ、死んで仕舞いたいと幾ら嘆いても許されません。殺せ、殺せ、と駄々をこねても駄目です。私は一体基地外なのでしょうか。キチガイなのでしょうか。基地外地獄祭文なのでしょうか。心が壊れた精神患者は地獄の風貌赤煉瓦内に、そうで無ければ野山に里に。装飾立派な大学に。生徒教授に弄りまわされ、廻し廻され回覧板。内臓想像脳味噌グルグル、大腸小腸ソーセージ、毒やどけろやとドグラ・マグラ。基地外って一体何でしょう。どうしてこんなお名前かしら。基地のお外に居るからかしら、それとも基本のお地外かしら。そうでなければ基の地の外ね。カタカナであればキのチのガイね。真っ赤、真っ赤、嗚呼真っ赤。嗚呼夕焼けが来てしまったわ。今日はやけに早いのね。一面真っ赤でとても綺麗よ。綺麗よ洗濯したみたい。首のシワを落としたみたいね。若しくはお腹の余分なお肉を、ちょっと落としてすっきりよ。此の辺りの四角とか、特筆すべきよ勿論くすみも。


 其れが赤煉瓦なんて、私は信じないことにしています。







 …………チャカポコ、チャカポコ、チャカポコ、チャカポコ………………。


 …………嗚呼胎児よ。私の手を握る胎児よ。私の髪を掴む胎児よ。笑ってちょうだい、笑ってちょうだい、そして静かに夢を見て……。

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