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ラミアの森  作者: 林育造
最終章
43/44

物理学的解説と本作設定について

いつもの解説ですが、今回は特にファンタジー視点に喧嘩売ってます

読み飛ばしていただいても、何の問題もありません

○MKS単位系とcgs単位系

 1m(メートル)というのは、18世紀の終わりごろフランスが決定した単位である。イギリスとは仲が悪かった当時、大英帝国領で、すなわち世界的に使われていたヤードという単位を使いたくなかったと見えて、他国が納得できるように地球の子午線の長さを測り、それを元に決定したのが1m、その百分の一が1cmである。当然、『中世ヨーロッパ』には存在しない。

 最初はメートル原器と言う金属棒に刻まれた刻み目の間隔で、その後原子的に発生する光の波長で、現在では光の速度によって定義されているが、要するに地球の大きさで決まった長さなのだ。

 1g(グラム)は、温度3.98℃の水でできた一辺1cmの立方体の質量である。1kgは、もちろんその1000倍だ。

 重さは質量と重力加速度で決まるので、これも地球ならではの値になる。

 「s」というのは時間の単位、秒である。これは地球の自転をもとに決まってくるのは皆様ご存じの通りであるが、太陽の位置をもとに1日と言う周期が決まっている以上、自転速度の他に公転速度もかかわってくるのである。

 だから、地球が丸いことを知ったうえで、その大きさを知らないと1mは定義できず、1gも計れないことになる。

こういった国際単位系の登場以前は、主に人間の体の大きさや身近な物の大きさをもとにした、地方毎の単位であった。フィートとか、単位名にもそれが表れている。

 ファンタジー世界ではどうか。「××」などという単位が出てきたかと思うと、(「1××」=約1m)と書いてあることがある。その1××と言う単位、どうやって決めたというのだろうか。その世界で、惑星(かどうか不明だが)の大きさが地球と同じで、丸いことが知られていれば構わないのだが……。

今作の設定では、安直に単位名が出ないように注意し、長さの単位は"里"を用いた。転生自覚後もなるべく単位については触れていない。ルッツ君は工事を始めとして建物の設計や電柱設計までやらかしており、そういった作業には単位を統一した物差し的なものが必須のはずである。青山さん、混乱しなかっただろうか。


○電池

 電池は、2つの端子があってその間に電位差が存在し、導体(電気を通すもの)で端子間をつなぐと電流が流れるものである。構造としては異なる導体を離して設置し、その間を電解液もしくは電解液を染み込ませた絶縁体で埋めたものとなっており、電極として銅と亜鉛の組み合わせが使われることが多かった。

 また、電解液は硫酸やその塩の水溶液などが用いられるが、効率は非常に悪いものの食塩水とキッチンペーパー、備長炭とアルミフォイルでも作れないことはない。

 本作では、ルッツが導電実験や電磁石作成、着磁実験で電池を使っている。使用できる電解液が硫酸あたりだったことから、銅と亜鉛(これは真鍮ができるくだりで登場)を使ってある程度の電圧を発生させることが可能である。なお、電磁石を作ろうとコイル化したときの火傷は、絶縁できていなかったことから銅線の導線がそれ自体抵抗として発熱したものである。同じ回路内では発熱量は抵抗に比例するので、しっかりした回路では抵抗が大きな部分が発熱するが、全体の抵抗が小さいと流れる電流が大きくなり、結果的に全体が発熱してしまう。


○交流と直流

 上記のような化学電池で発生する電流は+-が決まっており、電流の向きが一定である。これに対してモーターを回転させて発電する発電機はコイルに流れる誘導電流を取り出すもので、周囲の磁石に対して位置が変化することで電流の大きさや向きが変化してしまう。向きが変化するとは+-も変化するわけであり、直流しか使用できない、したくない場合には整流と言う操作が必要で、それを行う装置がコンバータ、逆に直流を交流に変えるのがインバータである。


○モーターと発電機

 ルッツ君の考え通り、モーターを作って外力により回転させれば発電機として作動し、交流が発生する。交流には向きと大きさの変化がどのような状態かを表す”位相”と言うものがあり、これが1つだけのものを単相交流、互いに同じスパンずれた3つの位相を組み合わせたものを三相交流と呼ぶ。送電に使われるているものは三相交流だが、この位相をそろえないと発電・送電に大きな負荷がかかる。ルッツ君はそこまでは知らない上、作っているモーターが二相型なので送電に不安がある。まだまだ先は長いなぁ。


○浮力・揚力

 筏が水に浮くのは、木材の密度が水より小さいため、木材の体積よりも木材と同じ重さの水の体積の方が小さいからである。その水の重さの分、木材に対して浮力がかかる。それでも、氷や木材では水の上には1割くらいしか出ていないし、乗せられる量はその分の重さまでである。

 しかし、船の場合には浮力が働くのは水面より下の、板でできた部分と船倉の空気の体積分であるため、大きな浮力が得られる。だから板の部分が金属でできていても、船倉の空気を多くすれば浮いて当然である。荷物を船倉に入れるのなら良いが、荷物を甲板など水面より上に多く積むと、船が軽いときなど浮力のかかる中心より重心が上になってしまい、船の姿勢が不安定になることがある。良く奴隷を船倉に閉じ込めておくのを非人道的な扱いの一つとして記述してあるのを見るが、下手に甲板で自由にさせるとマストによじ登って重心を高くしてしまい、バランスを崩して転覆しかねない。そう考えると必ずしも非人道的扱いとは思わないが、見方を変えれば奴隷を荷物扱いしているだけともいう。

 これに対し、鳥やグライダー、飛行機が飛ぶ時に浮かしている力は、ごくわずかの空気の浮力と、翼の形によって生じる揚力である。

 空気による浮力は、体重60kgの人に対して約75g(単位の違いに注意)であるから、同じ体積のまま体重を70gに減らすことができればそのまま上昇して行ける程度である。揚力は翼の面に当たる気流によって生じるので、一定の向きと速さで運動するか、それに相当する風速の風を受けていなければ生じない。体長と体重の比率が小さく、空気の粘性が効いてくる程度に小さいタンポポの種やある種の昆虫ならともかく、ある程度の体重があれば飛ばすために大きな翼か軽い体重、もしくはその両方が要求される。ファンタジーでは魔力を纏って浮いている登場人物などがいるが、彼らは本人が魔力や魔素に比べて軽くスカスカであるか(本人の魔力量が多いなんてもっての外)、余程の速さで魔力や魔素がぶち当たっているのだろう。

umesansansan様のご指摘を受け、単位系の記述を一部変更しました

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