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ラミアの森  作者: 林育造
第3章
33/44

化学的解説と本作設定について

毎度のうざい説明です

読み飛ばし推奨です

濃塩酸

 濃塩酸は塩化水素の水溶液で、溶解度の関係から37%程度が濃塩酸である。塩化水素は塩素と水素を反応させることで得られるが、この反応は非常に起こりやすく、適比の混合気体は光を当てただけで反応する。

食塩水を電気分解すると、+極側に塩素が、-極側にナトリウムができるが、金属ナトリウムは水と反応して速やかに水酸化ナトリウムとなり、水素が発生するため、-極側ではいきなり水素が発生しているように見える。

この水素と塩素を化合させ、水に溶かすことで塩酸が得られる。

 塩酸は実験でもよく使われるが、そもそも胃袋の中のpHを小さくするために胃の内部で分泌されており、体内にも存在する。ごく薄くしたものの味をみると酸味が感じられるものの、希釈が不十分だと酸味どころか痛みすら感じるらしい。一応希塩酸に分類される液体を舐めた者によれば、『舌を殴られたような味』だそうである。


濃硝酸

 二酸化窒素を水に溶かして作られるが、ルッツは硝酸塩に濃硫酸を加えて作成している。学校レベルではタンパク質と反応してキサントプロテイン反応により黄色くなる程度しか出てこないが、工業的にはニトロ化に欠かせない物質である。ただ、単に硝酸と混ぜるだけではニトロ化が進行しないので、濃硫酸と混ぜることで脱水を同時に行い、ニトロ化を進行させる。濃硝酸と濃硫酸との混合物は混酸と呼ばれ、ニトログリセリンの作製には欠かせない。

 また、濃硝酸と濃塩酸を1:3の割合で混合した溶液は王水と呼ばれ、金を溶かして塩化金酸を作ることができる。色はオレンジを帯びた黄色であり、色の似た身近な別の液体を王水と呼ぶことがあるので混同してはならない。


濃硫酸

 硫酸は三酸化硫黄を水に溶かすとできるが、三酸化硫黄は黄鉄鉱などを加熱すると発生する二酸化硫黄を、酸素の存在下で加熱すると得られる。硫酸そのものはほとんど蒸発しないため、希硫酸でも水分を蒸発させることによって濃硫酸にできる。概ね90%以上の濃硫酸では酸化力以外に脱水力が強く、砂糖にぶっかければ分子的に水を奪って炭化し、発煙しながら真っ黒になるし、生物が濃硫酸を浴びればタンパク質が炭化すると共に反応熱によって火傷することになる。もし、濃塩酸と濃硫酸、濃硝酸のどれかをどうしてもかぶったり飲んだりしなければならないとしたら、迷わず濃塩酸を選ぶことをお勧めする。

 したがってマッドサイエンティストが本当に相手を痛めつけたいのであれば濃硫酸を選ぶべきであるが、ドラマなどでは見栄えが悪いのか脅迫に使われることが少なく、コンクリートに垂らせば派手に反応して気泡(二酸化炭素)と煙(反応熱による)を生じる塩酸が使われることが多いようである。だいたい濃塩酸が手に入る立場ならはるかに危ない物質はいくらでもあるので、脅迫のために塩酸を選んでいる時点でそんな奴はマッドでもなんでもないと言えよう。


ニトロセルロース

 セルロースは植物細胞を始めとする細胞壁の主成分なので、パルプ(上質なティッシュ)や脱脂綿を上記の混酸に入れ、撹拌すると得られる。しっとりとした綿と言う感じの物質で、小さな火花や加熱によって爆発的に燃焼し、あとにはほとんど何も残らない。手品などでいきなり炎を出現させるのによく使われているので、手品グッズを扱う店には置いてある。ただし、火薬扱いなので購入には手続きが必要だったと思う。

 反応が爆発的で一瞬で燃えるので、少量であれば手の上で燃やしてもほとんど熱さを感じない。一方、爆発的に燃焼するので、ギュウギュウ詰にして爆弾にもなるので、安直な制作は危険である。


ニトログリセリン

 グリセリンを混酸に入れて撹拌すると得られるが、こちらはさらに危険な物質であり、低温下で反応させないと激しく反応、爆発する。

ファンタジーの世界で銃や魔法を使う作品が多いので、何とかダイナマイトを使わせることはできないかと思ったのだが、こちらの世界でダイナマイトを持っている一般人がいるはずもなく、転生した先で作らせようにもネックは低温であった。その爆発力は凄まじく、ピペットで1滴いれた試験管を加熱すると爆発して粉々になった。実験室では大量に作ると危ないので、ごく少量作成して毛細管に入れ、炎に入れて反応を見るのだが湿っているかどうかわからない程度の量でも教室中に大音響が響く。

 あまりに不安定な液体なので、下手な容器に入れて運搬すると爆発し、輸送手段が無かったのだが、ノーベル賞で有名なノーベルは珪藻土(細かいガラスが堆積したような軽い岩石)に沁みこませることで輸送可能な状態にした。その後、珪藻土以外におがくずなどに沁みこませる方法が開発され、作中では前記のニトロセルロースと混ぜてゲル化することで爆発力と安定性を持たせている。

 作中では控えめに表現しているが、リレーのバトン程度の大きさのダイナマイトを通常の人間が投擲できるような範囲で爆発させると、ほぼ確実に投擲者は爆発に巻き込まれるであろう。そんなものが爆発力を失わないまま不発状態で放置されていれば、絶対に近づくべきではない。そんな距離で爆発してしりもちをついたりびっくりするだけで済んでいるのだから、ルッツ君もママサの兵も正しくファンタジー界の住人である。


クロロアセトフェノン

 ベンゼン環+アセチル+塩素原子の形を持つ物質で、ベンゼンと無水酢酸を反応させ、さらに氷酢酸と反応させることで作られる。これにさらされるとクシャミが止まらなくなるとともに、目やのどに激しい痛みが生じ、眼を開けても見えなくなることもあるらしい。ただ、後遺症が残らないので人道的に暴徒の制圧ができるとされ、現在の催涙ガスの主流となっている。もちろん結構揮発するので、比較的簡単に作成できて後遺症が残らないとはいえ、ドラフト(排気装置)もない密室で作成しようとしたルッツ君は馬鹿である。


オクタデセン酸 コプリン

 酒に含まれるアルコールはエタノールだが、エタノールは体内でアセトアルデヒドを経て二酸化炭素と水に分解される。この反応の途中物質であるアセトアルデヒドは毒性があるとともに脳に作用し、頭痛を起こすので大量に酒を飲むと分解が追い付かず、二日酔いを起こさせる。オクタデセン酸はホテイシメジというキノコに含まれる物質であり、作中で述べたようにアセトアルデヒドの分解を阻害する。そのため、酒と一緒に摂取すると本来どんどん分解しはじめるはずの飲み始めの時からアセトアルデヒドが急速に溜まり始め、最初から二日酔い状態となる。なろうは未成年の読者も多いと思われるので、二日酔いになったことのない人のために説明しておくと、大声はもちろん、自分の足音や歩いた時の振動、果ては自分の拍動でも頭に響き頭痛の素になり、ぐったりと転がっているだけの状態になる。コプリンも似たような物質であるらしく、これらのキノコは酒と同時はもちろん、キノコを食べてから1週間は酒を飲まない方が良いほど影響が残ると言われている。


マナドの対応について

 設定では、人口密度が低い世界なので、都市や街の間隔も広い。従って、他の都市の情報は局在し、情報強者と情報弱者の差が激しいわけである。そのため、マナド市民は情報を持っているかのように振る舞われると、それが正しいように感じてしまった。だが実は中身は……というわけで、ダッケン、マスバンの2悪人に振り回され、結果的に60名もの犠牲者を出すこととなった。

だが、さすがに起こる筈のない敗戦が続くと、その原因を不運と情報の誤りどちらに求めるかはその時に蓄積された情報量で決まる。今回、悪人どもの敗因は、連携が採れておらず2人の言っていることが食い違ったことである。こうなってしまうと、少なくともどちらかは間違っているわけで、その部分の追及が→ダッケン、根拠を示せ→マスバン、どうなっているんだ、とつながった。

 今回、ラミア族の餌&戦闘で犠牲になったマナド軍団は、3組に分かれた時以外はどのように犠牲になったのかマナドでは明らかになっていない。それも、マナドが積極的にはラミア族に手を出さなかった理由である。結果的には森が焼失し、ラミア族に分散を促す結果になったのだが。

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