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ラミアの森  作者: 林育造
第2章
22/44

地球科学的解説と本作設定について

本作の設定についての解説です

相変わらず大変ややこしく、文章もくどいです

読み飛ばしていただいても、何の問題もありません

地球科学的解説と設定


○流砂

 定義上の流砂は、水を含んだ砂が振動などで動く現象であり、乾燥した砂で起こる現象ではない。しかし作中では、風によって砂漠から移動した砂がドリーネ底に空いた穴から、砂時計の砂のように落ちるイメージにした。勿論そんな現象は簡単に起こるものではないが、砂丘そのものは風によって簡単に移動するので、ドリーネやウバーレにたまった砂に乗ってしまうと、巻き込まれるだろう。ただ、ドリーネやウバーレは石灰岩(炭酸カルシウム)地形、砂漠の砂は風化しなかった残りなのでほとんどが石英(二酸化ケイ素)だから、共存している地形はファンタジー世界ならでは。


○鍾乳洞

 石灰岩の主成分は炭酸カルシウムで、石灰岩の地層でできた台地などでは、二酸化炭素が溶けて酸性になった雨水や流水によって炭酸水素カルシウムになって溶かされ、割れ目(クラック)が拡大していく。地下ではそれが再び二酸化炭素を放出し、炭酸カルシウムに戻ることで石の柱として垂れ下がり、鍾乳石を形成する。そのようにしてできた、鍾乳石が見られる洞窟状になったものが鍾乳洞である。

 したがって、多くの鍾乳洞ではクラックを広げることになった水の流れがあり、その水が流れ出す出口がある。この出口がそのまま川に続いていると川の側から入っていける山口県の秋芳洞のようになり、崖から滝のように流れ落ちると岡山県新見市の井倉鍾乳洞のようになる。本作の出口は井倉鍾乳洞のイメージである。

 鍾乳洞内は光が射さないので植物が生育せず、通常の生態系は成立しない。しかし水があるため、有機物さえあれば細菌類(モネラ)菌類(くさびら)が生育し、それを餌とする生物を中心に生態系が形成される。このときの有機物を運ぶのが、洞窟の内外を移動できるコウモリである。洞窟内では有機物を含むコウモリの糞は貴重な栄養源で、含まれる未消化の昆虫片を主な栄養として洞窟性のゴミムシ、多足類などが生息、さらにそれを餌とする洞窟性の魚も存在する。洞窟外へ出るコウモリ以外の動物は光を感知する必要がないため、形成に多くのエネルギーを必要とする”眼”を失ったものも多い。これらの動物は情報の感知を光に依存せず、コウモリは超音波(空気の振動)、魚や節足動物は水や地面の振動を敏感に察知することができる。

 ただし、餌が不足しがちであるため餌の反応には貪欲で、作中では餌の味がする布を引っ張るのに熱中するあまり、ルッツによって簡単に捕まえられてしまった。


○生きている化石

 生きている化石とは、進化学的に古い時代に出現し、ほとんど形態を変化させないまま現生種が存在しているものを言う。裸子植物であるイチョウはそこら中にあるので珍しい気がしないが、中国の一部地域に生き残っていたものを人為的に広めたものである。同様にメタセコイアも中国で見つかった、古い形質を残した生きた化石である。

 メタセコイアが発見されたのは1945年で、苗や種子を譲り受けた後は日本全国の学校などに植えられた。そのためほとんどの学校(特に高校)で見ることができるが、成長が速く、したがって材質が弱く、利用できないままやたらと高い木になって切られてしまうことも多い。

 オオサンショウウオ Andrias japonicus (Temminck, 1836) は、国の特別天然記念物に指定されている日本最大の両生類で、近縁のチュウゴクオオサンショウウオが世界最大の両生類である。日本産は天然記念物だが、天然記念物指定前の北大路魯山人の書物に料理方法が載っていたし、天然記念物指定後も一時期中国産が食用に輸入され、ハンザキとして築地などで実際に生きたまま販売されていた(現在はワシントン条約に引っかかるので販売不可)。それが逃げ出して問題になっているが、青山さんの知り合いは食用に売られていたとき買ってきて飼育・累代飼育しており、そのため青山さんも間近でオオサンショウウオを見たことがある。

 チュウゴクオオサンショウウオは天然記念物のオオサンショウウオと雑種を形成するので、種の保存の観点からは特定外来生物として指定すべきだが、そうなると生きたままの移動ができなくなる(=見つけたら抹殺する必要がある)ことになる。しかし、雑種ができるほど近縁(まぁ、人間とエルフよりは近縁のはず)なので、一般人に区別できるとは思えず、間違って日本産を殺してもそれはそれで問題であり、現在まで指定されずある意味野放しである。ということは、見分ける自信のある人が国内でチュウゴクオオサンショウウオを自分で捕まえ、そのまま料理して食ってしまっても違法ではないことになる。

なんでも、体表面の粘液が乾燥すると山椒の様な臭いがするらしい。


○エリオプス

 しかし、いくらオオサンショウウオでも中国産の未公認記録で1.8mと言われており、3mにはなりそうもない。しかも、陸上に上がることは極めてまれで、作中、雨の降らない洞窟で陸地にいたのは不自然である。作中の生き物は、二畳紀すなわち3億年近く前にいたとされる化石種の両生類、イクチオステガやエリオプスをイメージしている。陸に上がって3mという体長はエリオプスのものだが、エリオプスは魚食っぽい歯ではないので、そこにイクチオステガのイメージを加えた。

 従来、化石の復元は骨格に肉付けをして全体像を推定する方法が採られていたが、最近はコンピュータを使用して関節の動きを3D化し、全体の動きさえ復元できるようになってきた。それによると、イクチオステガは陸上では前脚がうまく機能せず、まともに歩けなかったのではないかとされている。


○グアノ

 爬虫類・鳥類・哺乳類の単孔類カモノハシ・ハリモグラは、お尻に穴が一つしかなく、その穴から卵も、尿も、糞も排出する。従って鳥の糞には燐酸分と窒素分がともに含まれており、良い肥料になりうる。魚がたくさんいるような海域の近くに島があると、その島には立ち寄った鳥の糞が堆積し続け、化石化した分厚い鳥の糞の層を形成する。洞窟ではコウモリの糞が洞窟性の小動物によって徹底的に利用され、最終的に同様にグアノを形成する。糞尿を使った堆肥を利用した内政チート物語が散見されるが、近くにグアノが存在するのならこちらを利用した方が臭いもなく、手間もかからず、はるかに効率的である。

 でね、ハルピュイアの体が鳥類と同様だとすると、穴が1つなんですよ。


○ヘビを入れた酒の造り方

 作中、メグさんが酒樽に入りたいという描写があるが、実際マムシ酒やハブ酒と言ったものがある。あれを作るには、まずマムシやハブを生きたまま(←これ重要)捕まえ、一升瓶など中が見えてヘビが出にくい容器にこれまた生きたまま入れる。

 次に、ヘビが溺れない程度の水を入れ、放置。水が濁ったら、新しく水を取り換える。

 これを、2、3日水が濁らなくなるまで繰り返す。

 水を捨て、焼酎などをヘビが沈む量入れて、エキスが出るまで置く。

 ルッツ君が見たイメージはこの状態であろう。

 捕まえたてのヘビは消化管に食ったものが詰まっているので、それが出る前に酒に漬けてしまうと、糞が酒の中に出てしまう。ただでさえクセがある酒になるのに、糞の風味までついてしまったらおいしくない。

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