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時の秒針  作者: †HYUGA†
第一章;時の番人編
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第8話 桜散り心乱れ



レリエルside




「ウ…ウソ…ですよね…」




俺はたった今目の前で起こったことが信じられませんでした。


想定外だったのです。まさかあそこで知恵理が日向を庇うなんて…。俺は一番やりたくないことをやってしまいました。




――ガタガタガタ…




ガタガタと震える手。止めようと努力してもまったく止まりません。むしろ震えはどんどん酷くなっていきます。




「うあぁあああああああああああああああああああああああああああ!!!!」




血を流す知恵理の肩を抱きながらこれ以上にないくらいに叫ぶ日向。



――だめです。俺にはその光景を直視できませんでした。



たとえ日向の腕を狙った矢でも。たとえ日向を殺すつもりがなくても…。



――俺が知恵理を殺してしまったことには変わりにはありませんから…。



でも、今の日向は俺の言葉には聞く耳をもたないでしょう。それほどまでに今の日向は見てられない状態でした。




「う…う…くっ…!!」


「……」




俺はただ黙って事の成り行きを見るしかありませんでした。だけどただ1つ分かること。


それは俺もとてつもなく悲しいということでした。






日向side



俺は――なんで泣いてるんだ?



俺は――なんで悲しいんだ?



俺は――なんでこんなに憎しみを持ってるんだ?



俺は――いったい誰を抱きしめてるんだ?



俺は――なんでこんなに手を黒くしてるんだ?



俺は――なんでこの子を見て悲しんでるんだ?






あいつは誰なんだ?


あいつはこの子を殺したやつだ。名前は…なんだっけ?


――そんなことはどうでもいい。そんなことよりも…俺はあいつが憎い!!



憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い










           `










憎いならどうすればいいんだ?



そうか――あいつを殺せばいいんだ。



でもどうやって殺す?



あいつは強い。



でもなぜ強い?



なぜこの子を殺せた?



なぜ俺を傷つけられた?



――そうかあれか。あの武器…魂狩(ソウルテイカー)




あれさえあれば…。あれさえあれば…あいつを殺せる。あれさえあれば…あいつに復讐できる。


あれさえ…あれさえ…あれさえあれば!!!!!!






レリエルside



こちらを睨みつける日向。その目にはさっきまでの恐怖の色は一切ありませんでした。ましてや昼間に不良達を打ちのめす前に知恵理に見せた優しい色なんて微塵もありません。


あれは…復讐を望む者の目。




「…日向」


「……」




日向は俺の声に反応しません。ただただ俺のことをひたすら睨みつけるのみ。そんな復讐しか考えられない機械のようになってしまいました。


そして、日向がゆっくりと知恵理を体から下ろして立ち上がる。その瞳はずっと真っ直ぐ俺を見たまま。


だがその刹那――!!




――ダンッ!!!!!




「なっ…速いっ!!」




俺が気がついたときには日向は俺のすぐ目の前。俺から見えたのはいつのまにか俺に向かって尋常ならざる攻撃を放ってきた日向の拳だけでした。


さっきまでのスピードとはケタ違い。俺はそのスピードに瞳を見開きました。




「ぐっ…!!!!」




とっさに顔の前で腕をクロスさせ、ガードの体制を取り俺は後ろ跳びで日向の攻撃をかわす。


しかし日向はひるみませんでした。すぐに間合いを詰めて右蹴りを繰り出す。




――ガッ!!!!




その蹴りを右手で受け止め、さらに臨戦態勢を作るためになるべく間合いを取ろうと俺は後ろにフードが取れないように気をつけながら日向から距離をとった。




「…日向」




フードを被っていたのが救いか…。どうやら日向には俺の表情は読み取れていないようだ。いや、どのみち今の日向には俺の表情を気にかける余裕なんてありませんか…。


まさかフードの下でこんなに悲しみに暮れているなんてきっと予想もしてないでしょうね…。




「……せ」


「え?」




そのとき不意に日向が何かを呟きます。唐突に反応したその声に俺は少し驚きまじりの声を出してしまいました。


相変わらず分かりやすく殺気を俺に向ける日向。その日向の地鳴りのような声に恐怖してしまったのです。




「日向。今いったい何を言ったんですか…?」


「…こせ」




俺の問いを無視するかのようにもう一度日向は何か呟きます。だけどまた俺には聞き取れませんでした。




「…日向。あなたはさっきからいったい何を――」


「…こせ」




だめです。やはり日向は俺の話に耳を貸したりはしないみたいですね。本当に日向は何を言ってるんでしょうか…?


だけど俺の疑問はすぐに解けるのでした。




「それを…よこせ!!」




今までの声より一層と激しく大きな叫び声。その叫び声に俺は日向が何を言って、そして何を求めているのかを知りました。


そうですか。日向の目的は恍閃弓ですか…。でも、それは――




「日向!!落ち着いて!!俺の話を聞いてください!!」


「よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!よこせ!!」




――だめですね。どうやらまったく聞く気はないようです。



ひたすら俺の左手に持つ恍閃弓を見ながら「よこせ!!」と、取り付かれたように叫ぶ日向を見た思わず歯ぎしりをしてしまいました。


そして俺は叫びます。思いを込めて今の俺にできる最大の音量で――




「ヒナタあぁあああ!!!!」


「うあぁあああああ!!!!」




――ドグシッ!!




ですが俺の思いは届くことはありませんでした。日向の拳が俺の顔面を叩きつけます。その力に俺は1メートルは飛ばされました。




「ぐっ…!!」




――カランカラン…




そしてその拍子に俺は恍閃弓を日向の足元近くへと放り投げてしまいました。あまりに唐突、あまりに好都合に訪れた機会。日向からしてしまえばこれはチャンスだったでしょう。


ですが俺は慌てることはありません。俺は飛ばされた場所からゆっくりと立ち上がり「ポフポフ」と服についた土汚れを叩きました。


その間も恍閃弓へと腕を伸ばしていく日向。汚れを払い終わった俺はその様子を傍観してました。なぜなら――




「魂狩…」




日向が恍閃弓を拾おうとする。だけど――




――バチッ!!




「…っ!!??」




日向が恍閃弓に触れた瞬間。まるで静電気のような音と共に恍閃弓を落としてしまいました。


俺はそれをみて思います。やはりそうなりますか…と。




「日向。聞いてください」




地面に膝と手をついて涙をポロポロと流す日向に近づき俺は日向のすぐ目の前の恍閃弓を拾う。そして告げます。ことの真相を。




「日向。魂狩はその持ちである主人にしか使えないんです。つまり、恍閃弓は俺にしか使えない。そういうことになります…」




そう日向に俺は告げる。日向は一瞬目を見開くがすぐに絶望的な目をしてその場に腰を落としました。


そしてさっきよりさらに多くの水滴が彼の瞳から流れ始めた。




「…なんでだよ」



拳を地面に打ち付け始める日向。「ガン!!ガン!!」と聞いてるだけで拳が痛そうな音が俺の耳に入ってきます。


いつの間にか日向の右手にはさっき俺の矢で傷つけた血とはまた違う血が流れ始めていました。




「なんで…なんで…」




完全に心が折れてしまった日向。俺は日向のそんな姿を見たくありませんでした。




「なんで…なんでだよ…なんで…こんなことになっちまったんだよ…」


「日向…」




俺にはもう攻撃する気はありませんでした。いえ、攻撃出来なかったのです。


こんな状態の日向に矢を放つ気には…。こんな状態の日向に俺は弦を引けませんでした…。






日向side



「なんで…なんで…」




なんで――俺は魂狩を使えないんだ。



なんで――俺はあいつを殺せないんだ。



なんで…なんで…?




「知恵理を殺したやつが憎いか?不知火日向…」




――は?なんだ…?




「もう一度だけ問う。お前は知恵理を殺したやつが憎いか?不知火日向」




――な…なんだ?口が勝手に…勝手に動く…。




「どうなんだ?」




――な、何なんだよ。そもそも俺が力を望んだからってどうなるんだよ?




「簡単な話だ。お前が望むなら…俺はお前に協力するぜ。なんて俺は――お前なんだから…」




――…それはいったいどういう意味なんだよ?お前は俺って…。




「それは今のお前にはどうでもいいことだろ?そんなことより今のお前にはもっと大事な事があるはずだ」




――…俺のやるべきこと?あいつにこの子の…この子の仇を討つことか?




「…まぁ、そうだな。だけど最初に言っておくが今のお前は間違っている。もし知恵理の復讐を望むなら…後で絶対お前自身が後悔することになる。それでも…望むか?」




――…そんなの決まってんだろ。【望む】方に。




「…そうか。それがお前の望みなんだな?だったら俺からはもう何も言えない…な」


「…日向?さっきからいったいどうしてしまったんですか?」


「だったら力を与えてやるよ日向。そして精一杯後悔しろ日向。だけど願わくば…お前が正気に戻ることを祈ってる…」




その瞬間。俺の意識は光から遠ざかっていった。






レリエルside



あれから何かに取り付かれたかのように口を開いていた日向はそう言うと目をつむりました。


そして唱えたのです。驚きの言葉を――





「来い!!俺の大空を駆ける紅き翼【紅翼(こうよく)】!!」




           `



作「第8話。ついに日向の魂狩が登場しました」


日「まだまだ俺の武器の形状、能力、その他もろもろ何にも分かってないけどな?」


知「そうだね〜日向君の武器早く見てみたいな〜。あ!!それと私いつの間にか死んじゃいましたね!!」


日「いや、そんな大喜びな顔で言うセリフじゃないだろ?…でも確かにな…」


知「…どうしたのヒナ君?」


日「あぁ。なぁ作者?今回のタイトルなんで桜なんだ?散ったのは桜じゃなくて知恵理だろ?」


作「はい。実は今回のタイトルは知恵理の名前の由来である桜を使ってみたんですよ〜」


日&知『『名前の由来?』』


作「でもその前に次回予告行きます。時の秒針、次回は――


その者。赤き刃を携えて戦場を駆け抜ける姿、天使のごとく。


4年の時を超えて、再び天使が天駆ける翼を広げる。


次回【紅き翼の発動】」


日「問題nothingだぜ!!」


知「ねーねー作者さん!!私の名前の由来ってなんなの?」


作「はい。じゃあ知恵理って10回言ってみましょう!!さんはい!!」


日&知『『知恵理。知恵理。知恵理。ちえり。ちえり。ちえり。チエリ。チエリ。チェリー?』』


作「まぁそういうことですね。知恵理の名前の由来は【チェリー(桜)】ということです」


日&知『『ダジャレかよ(ですか)!?』』



次回に続く!!

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