第65話 離れ離れの運命
今回は短めで<(_ _)>
それでは65話
( ^-^)_旦〜
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日向side
「…問題nothing。分かった輝喜。これからは…もう、俺達は赤の他人だ」
響く声。この空間にではなく、俺の頭の中にその声は…響きわたる。
この言葉が俺の本心ではないことは分かっている。そして、輝喜の言葉があいつ自身の本心じゃないことも…分かっていた。
全部。全部。この空間にあるのは全部、辛く悲しい嘘だけだった。
「…ぐすっ…ひっく」
街中から外れたこの裏路地。まるで、この空間だけが賑やかな繁華街から切り離されたかのように静かに思えた。
聞こえるのはお互いの呼吸と、吹き抜ける風の音と――啜り泣くようなチエの泣き声だけ。
謂わば、この空間そのものが悲しみの権化のようになっていたのだ。
――シュルリッ…!!
そして、いつまでも続きそうなこの空間に終わりを告げるかのように、新たな風が舞い込む。
俺と輝喜の間に立ちふさがるかのように現れたその風は、瞬く間に俺へと薄い刃(羽衣)を突きつける。
「…そこまでだ。2人とも」
…懐かしい。たった2日、しかも一緒に過ごした時間はその中でもごく僅かだというのに――
2週間ぶりに聞いたその鈴の音のような声はえらく懐かしく感じた。
「っ…!!【刹那】!?」
「せっ…ちゃん…?」
突然の訪問者に、俺とチエは同時に驚きの声をあげる。どうやって探したとか、いつの間に近付いていたとか、そんなのはどうでもいい。
だが、彼女の雰囲気には再会を祝えるような空気はない。今の、今の彼女にあるのは――
「…輝喜。これはいったいどういうことだ?」
今の彼女にあるのは――明確なる怒りだけだった。
「…別に。俺は関係などありません。俺から接触したわけでもありませんし、ましてや俺から【不知火】に仕掛けたわけでもありません。全て偶然ですよ」
輝喜が俺のことを名字で呼ぶ。それは、俺の赤の他人という言葉を受け入れという意思表示のようなものだろう。
物腰低めの輝喜の言葉。だが、それに納得するような彼女ではなかった。
「ガリッ…!!輝喜。オレはそんなこと聞いてんじゃねーよ!!俺が言いたいのはなんでお前と日向が闘ってるのか!!その理由をオレは聞いてんだ!!!!」
おそらく、飴でも舐めていたのだろう。それを噛み砕いた音を口切りに、刹那の口から烈火のごとく言葉が吐き出される。
彼女の口から飛び散った赤い飴の破片。女の子にしては些か羞恥心がないように思うが――
今の彼女はそんなことすら気になどしてはいなかった。
「…汚いですよ刹那。食べ物を口に含めたまま喋らないでください」
「話を逸らすな!!」
刹那的に出される大声。そして、刹那は輝喜を睨みつける。
輝喜にとっても、これは予想外だったのか、少し面を食らったような顔を彼女へと向けた。
「…珍しい。あなたが、そんな風に怒鳴るところなんて、始めて見ました」
「知るかよそんなこと、お前が知らなかっただけだろ?オレだって怒鳴るときには怒鳴るっての」
そう言う刹那の目は未だに厳しい眼だった。輝喜は、そんな瞳をする刹那を見据え、無言で見つめる。
その表情から、輝喜の心情を読み取ることはできない。でも、その表情をを俺は見たことがあるような気がした。
まるで、この世界に対して達観したようなその表情。そう…あれはまさしく。
【時雨水城】が見せたあの無表情だった。
「輝喜。まだ、お前の答えをオレは聞いてない。お前はなんで日向と闘ってんだよ?なんでなんだよ?」
「……」
一変。刹那の表情に悲しみが差した。睨む瞳に潤いが満ちる。悲しみに満ちた瞳となったのだ。だけど、そんな刹那を輝喜は――
「…【栄光】は終わりました。俺もあなたも、変わらなければいけません」
「っ…!?輝喜…さん…」
「変わるのです。たった半月で変わった俺のように、あなたも…変わらなければ…いけません」
刹那の涙ながらの訴えを、輝喜は…無視した。それに驚き、思わず刹那はさん付けで輝喜を呼んだ。
無視したうえで、眼差しを俺へと向ける。今の言葉はどうやら俺に対する言葉らしい。
この段階で、俺は確信する。あいつは…あいつはもう、俺達へと繋がる繋がりという繋がりをすべて断とうとしているのだと…確信した。
そう。すべてはあいつの【栄光】のため。崩れ去った栄光のために――
「…問題nothing。輝喜、俺は1つ勘違いをしていたよ。お前は筋金入りの――最低な男だ」
「…知ってますよ」
俺の言葉に、輝喜はニコリと微笑み言葉を返す。その微笑みの意味は…俺には分からなかった。
2週間前と、まったく同じ笑みを見せる輝喜の笑顔の意味を――俺には知るすべはなかった。
「…それではごきげんよう。日向、知恵理。真備と凪にも伝えておいてください」
「…なにをだ?」
地面に落ちた眼帯を拾い上げ、つけなおしながらそう唱える輝喜に俺は思わず聞き返した。
だが、輝喜はそんな俺に、そんなことも分からないのですか?といった視線を向け、そして告げる。
笑顔のままで。
「【さようなら】…と」
…その表情に俺は息をのんだ。笑顔のまま、輝喜はそう告げる。
それは輝喜がもう、俺達とは別の世界の人間のように感じたからだ。
すぐそこにいるのに、すごく遠くにいるような…そんな気がしたのだ。
「待って!!コウ君!!」
…チエ。ごめんな。もう…俺にはどうしようもできない。
こいつは、こいつがこんなに頑固で分からず屋なんだとは思ってもいなかった。だから、今はもう――
「っ!?ヒナ君…!?」
だから、今はもう――あいつのことは諦めようと思う。俺は、立ち去る輝喜へと駆け寄ろうとするチエを無言で制止する。
それでも諦めずもがくチエを…俺はグイッと抱きしめて取り押さえた。チエが輝喜を呼ぶ声が耳に響く。
でも、今の輝喜に俺達の言葉が届くとは思えない。
だって、あいつにはもう光が見えないんだ。さっきまではあいつの背中にも少しだけは【栄光】の光があった。
だから、俺はもしかしたらあいつを取り戻せるかもしれないなんて思っていた。
でも現実は違う。俺はあいつを取り戻すどころかあいつの光をすべて消してしまった。あいつの栄光を…全部無くしてしまった。
…今の、立ち去るあいつの背中には光なんてない。あるのはまるで光のない【夜】のようなあいつの背中だけ。
月明かりすらない真っ暗な背中が、そこにはあった。そう…その姿はまさしく夜の天使――
「…ごめんな、チエ」
【レリエル】だった。
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日「え〜…では!!改めて御唱和ください。みなさん新年明けましておめでとうございま〜す!!」
知&真&凪&輝『『おめでとうございま〜す!!』』
真「いや〜年明けちまったなぁ〜。なんか、結局去年はあまり話進まなかったし」
凪「まぁそこは仕方ないんじゃないの?去年は一章の書き換えとかやってたわけだし?」
輝「ある意味大変な年でしたもんね〜」
真「だな」
日「今年はいい年になるように祈ろう。いろいろあったけど、俺達ここにいるんだから」
真「そうだ…な。そうだな。んじゃ!!今年も1年頑張るとしましょうか!!」
日「問題nothing。今年も頑張るぞ〜!!」
知&真&凪&輝『『おぉ〜!!』』
知「と、いうわけで!!ヒナ君♪はいお年玉だよ♪無駄遣いしゃだめだからね!!」
日「いぃいいやあぁああっほおぉおおいいい!!!!!!ありがとチエ!!マジ感謝!!今年も1年よろしく!!」
知「うん♪よろしくね♪」
真「…なぁ、同級生からお年玉貰うのって…ありなのか?」
凪「…この場合、日向の子供っぽい性格につっこむべきか、それともあまりにも母親らしい知恵理の性格につっこむべきか」
輝「難しい問題だねぇ」
作「というわけで次回予告。次回の時の秒針は――
いなくなった輝喜。悲しみにくれる日向と知恵理。
そんなとき、日向はある決意をする。その意味とは…?
次回【寝る勇気】」
日「問題nothingだぜ!!」
日「るんるんる〜ん!!お年玉〜!!お年玉〜って!?しまったあぁああああ!!!!」
凪「なにっ!?どうしたのよ日向!?去年みたいに輝喜がぶっ壊れたの!?」
輝「…いや、俺正常ですからね」
真「で?どうしたんだ?日向?」
日「…おせちに、おせちに栗きんとん入れるようにチエに頼むの忘れた」
凪「そんなのどうでもいいわあぁあああああ!!!!!!」
真&輝『『激しく同意』』
次回に続く!!