第63話 天使VS堕天使
またしても長い間ご無沙汰してしまいました!!
まだまだ修正を続けているので更新亀状態です(泣)
ですが、これからも頑張って更新していきたいと思います(^o^)
それと、有耶無耶になって忘れているかもしれませんが【キャラクターの人気投票】継続中なのでよろしくお願いしますm(_ _)m
それでは63話( ^-^)_旦〜
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日向side
「誰って…俺だよ」
賑やかな街中とは裏腹に、静かなこの裏路地では俺の声はハッキリと響き渡る。そう…あいつの耳にもハッキリと。
「…お久しぶりです日向。お元気そうで何よりですよ」
「あぁ。久しぶり輝喜。それともレリエルと呼んだ方がいいか?まぁ…俺は個人的に輝喜と呼ばせてもらうけどな…」
「ふ。どうぞご勝手に」
俺と輝喜の間に流れるピリピリとしたムード。それは半月前の俺達にはあり得ない空気だった。
無言で弓を構える輝喜。その姿は、さっきまでの発狂した状態とは違い、冷静そのもの。ましてやこの間までの輝喜とは比べものにならないほど落ち着きをはらっていた。
「…ふぅ、で?日向。どうしてこの場所が分かったのですか?少なくともあなたに見られたヘマはしなかったのですが?」
「問題nothing。そうだな、俺もまさかチエがお前を追いかけていったなんて思いもよらなかったよ…」
「では…ではなぜ、あなたは俺とチエを追いかけてこれたのですか?なぜあなたは…この場に、来れたのですか?」
「………」
正直、話したくはなかった。だけど、あいつには知る権利がある。だから俺は、輝喜から目をそらすことなく、警戒を解かずに近くのそれを手に取り、輝喜にも見えるように前に出した。
俺がなぜ2人を探しだすことができたのかを。
「…全部。こいつに聴いたんだよ。お前のことも、チエの行方も、そして…チエの誓いのこともな」
「…電話番号だけでは分からないのですけどね。まぁ、大体の予想はつきます。これほど素早く情報を抑えられる人物。俺やあなたの知り合いには1人しかいませんからね――」
笑みへと変わる輝喜の表情。それは、半月ぶりに見た笑みだった。
「【須藤百合】…ですか」
「あぁ、その通り。まったく…電話番号も教えてないのにいきなり電話がかかってきたときには驚いたぜ。最初は間違い電話だと思っちまったしな」
「ははは。実にあなたらしい…ホント、知恵理のことになると周りが見えなくなるのは変わりませんね」
「半月で変わるかよ…。変わる方がおかしいよ」
「…えぇ。まったくです。ホント、変わってますよね…たった半月で心が変わるなんて…ね」
「……」
その言葉が、誰のことを指しているのなんて、考えずとも分かった。あれは――あの言葉は輝喜自身のことを指しているのだと。
この2週間で何があったのかは分からない。だけど、あいつは変わってしまっていた。
チエに矢を向けるほどに。
「…そういえば日向。その携帯電話。壊れてませんか?さっきからその画面のままで止まったままですけど?」
「…は?」
唐突に変わった輝喜の話に俺は呆気にとられ、そんな間抜けな声を出してしまった。
…そういや、この路地裏へと入るとき、ちょうど発狂した輝喜が矢を放った場面だったから思わず投げ捨てちまったけど――っ!?
「あは…あははは。ウソ…だろ」
手にとったそれを見た瞬間。俺は、俺自身の不運を恨まずにはいられなかった。なぜなら――
「くっ…!!俺の5万円が…5万円が、まさかこんな形で失われることになろうとは…!?輝喜…恐ろしい子!?」
「…そりゃ、いくらなんでも壊れるでしょう。携帯電話を思い切り地面に投げつけたりしたら」
輝喜の言うその正論に、俺に為すすべはなかった。
「…ヒナ君。先5ヶ月お小遣いなし」
「ご堪忍をおぉおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!」
今まで黙って俺の袖を可愛らしく掴んでいたチエが、俺に死刑宣告を下す。
ちくしょー!!ちくしょー!!ちくしょー!!なんで…なんでこんなことになっちまってんだよ!?くそったれが…高い代償払わせやがって…。
しかも、よりによって何で百合の電話番号が出た状態で画面がフリーズしてんだよ。くそ!!最悪だぜ。はぁ…
「…だけど――」
だけど――そう言う俺の目線の先には彼女の姿。きっとこのとき、俺の表情は優しいものとなっていたはずだ。彼女を――守れたから。
「ヒナ君…?ねぇヒナ君どうしたの??そんなに見つめられると恥ずかしいよぉ…」
「……」
――ガバッ!!!!
ホント、こいつを守れたのなら比べものにならないほど安い対価だったよ。
よかった…守れて。癪だけど、あいつ――時雨水城の言葉を守れて、本当に…よかった。
抱きしめた温かく柔らかい感触から伝わってくる温もり。それは彼女が生きているという何よりの証拠だった。彼女を…守りきったという…何よりの証拠だった。
「んぅ…苦しいよ…ヒナ君」
「うっせー。勝手に俺の傍からいなくなりやがって…これは罰だチエ。もう…勝手にいなくなったりするんじゃねーよ」
思わず、抱きしめる手に力が入ってしまう。知らない人に――いや、知ってる奴…輝喜だからこそ、今回はついて行ってほしくなかった。
2週間前までの俺達の関係とはもう違う。俺だってあいつのことを信じてないわけじゃない。
むしろ、今だって親友だと思ってる。だけど、もうあの頃には戻れない。
戻れないのだから――
「…うん。ごめんね…ヒナ君」
「…問題nothing。無事だったんだからそれでいいさ」
背中に回されたチエのか細い腕。俺を抱きしめる力はいつもより弱々しく感じた。きっと――怖かったのだろう…。
いくら友達でも、矢を向けられたりなんかしたら怖いに決まってる。信じてる奴でも、殺意を向けられたりなんかしたら怖いに決まってる。
だからこそ、俺はチエを抱きしめる。彼女のことが大切だから。
「…輝喜。お前がどんな決意をしてこうなったのかは知らない。はっきり言って…俺は悲しい。だけど、俺はそれを止めるきはない」
「っ!?ヒナ君!?」
俺の胸に顔を埋めたままだったチエが驚きの顔で俺を見上げる。その瞳には雫が溜まっていた。
チエを抱きしめる腕にさらに力が入る。彼女を抱きしめてなければ…今の俺は潰されそうだった。
「…お前の決めたことだ。きっと、いろんな葛藤をして苦しい気持ちを必死に抑え込んで決めたんだろう?だったら…俺達に止める権利なんてない。俺とチエはすぐここを立ち去るよ」
「…でしたら、とっとと行ってください。あなた達には…関係のないことですから」
――ギリッ…!!
突き放すような言葉を、突き放す言葉で返される。その言葉に、俺は歯を食いしばった。
そうか。やっぱり、お前はそういうつもりなんだな輝喜。でも…そう言うわけにはいかないんだよ。俺には、俺にはもうお前を無視することなんてできない。
「…そうだな輝喜。俺もぜひともそうさせて貰いたいよ。…だがな、もう遅いんだよ」
「…え?」
目の前のチエの瞳の中がうるっと揺れる。でも、それは輝喜が原因ではない。俺自身が原因だった。なぜなら――
「輝喜。お前が…お前がチエに矢を向けさえしなければ…俺はきっとお前のことを放っておいたと思う。でも、矢を向けたってことは――」
――シャキンッ!!!!
「矢を向けたと言うことは…俺と真備と凪!!チエの…時の守護者を敵に回す。そういうことでいいんだな!!輝喜!!!!」
「っ!?」
なぜなら――チエを…俺の大事なものを傷つけようとした輝喜を睨む目があまりに怖かったからだ。自分でも気づかないうちに、俺の目は鷹の目のごとくやつを貫く。
完全なる敵対心を持った目となっていた。
「…やる気、なんですね…日向。俺と闘う…気なんですね」
「問題nothing。そういうつもりだ、輝喜。俺は…俺が、お前の目を覚まさせてやるよ。覚まさせて、チエの前に土下座させてやる!!」
「…ははは、まさかいつも寝てばかりいたあなたからそう言われる機会が来るなんて想像もしてませんでしたよ。ですが、そっちがその気ならば――」
――ギリギリッ…!!!!
「――俺も全力であなたのお相手いたします!!俺の誓いに――サジタリウスの矢にかけて!!」
一触即発。日本刀――紅翼を構える俺に、輝喜も光の矢を携えた弓――恍閃弓の弦を引く。
桜時市の繁華街【街】。その大通りから道一本外れて裏道に入ったそこにあったのは――間違いなく戦場だった。
「…チエ、離れてろ。刀が――桜が届かない範囲まで」
「ヒナ君…うん、分かった。必ず…必ず帰ってきてね…コウ君と一緒に」
「…あぁ。問題nothing」
そして、チエは俺の腕の中からスルリと抜け出す。だが、決してチエはいなくなったりはしない。俺には共に闘ってくれるもう1人のチエ。紅翼(桜)がいる。
だから、お前の願い。確かに受け取った。絶対にお前のもとへ帰る。だから輝喜。俺はお前を――
「【粛正】する!!!!」
地面に振り下ろされた俺の親指を輝喜はただただ呆然と眺めていた。
こうして、天使(俺)と堕天使(輝喜)の闘いは幕を開けるのだった…。
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日「あ〜ぁ。携帯電話…壊しちまった…。その所為でお小遣い5ヶ月なしだ…」
知「仕方ないでしょヒナ君。新しい携帯電話を買うためのお金が必要なんだから♪めっ!!だよ♪」
日「はぁ…問題nothing。分かりました…」
知「よろしい♪でも、ヒナ君また私のこと助けてくれたから次は新しい機種買っていいからね♪」
日「へ?マジで?」
知「うん♪」
日「いぃいいよっしゃあぁあああああああああああああああああああっ!!!!」
凪「…もう、なんだかんだ言って日向には甘いんだから知恵理は」
輝「それがチエリンの好いところだよ♪」
凪「…どうでもいいけど、あんた、よくこの場に顔出せるわよね?肝が座ってんだか、ただ脳天気なだけなんだか」
輝「あははは♪ナギリンたら手厳しい〜♪でも、気にしない気にしない♪」
凪「…聞くまでもなかったわ。はぁ…ま、それはいいとして実は2人に質問が来てるのよ」
日「??それって俺達にか?」
知「わぉ!!すっご〜い!!」
凪「…んじゃ、とりあえず読むわね。ペンネームは特にないけど、敢えて言うなら羅生門さんからのお便り…まぁ、ぶっちゃけ作者の友達からね」
輝「作者さんって〜友達いたんだ〜。俺はてっきりヒッキーかと思ってたよ〜」
凪「…大丈夫。ヒッキーではないわ。ついこの間も期末試験の結果が悪くて落ち込んでたから。とにかく…質問の話。要約するとこういうことよ
日向と知恵理ってどうやって生活してるんですか??だってさ」
知「ふぇ?どうやってって…ヒナ君を起こして、朝ご飯を一緒に食べて、毎朝手を繋いで全力疾走で登校して、それから――」
凪「ストーーーーップ!!!!誰があんたらの惚気話を教えろって言ったのよ!?あたしが言いたいのは!?あんたらはどうやってお金稼いでるかって話よ!?」
日&知『『国からの補助金』』
輝「うわ。いきなり話が国家レベルまで跳ね上がりましたよ…俺も思わず素に戻っちゃいました…」
凪「そう簡単に答えられても困るんだけどね」
作「というわけで次回予告。次回の時の秒針は――
飛び交う光と炎。日向と輝喜の魂がぶつかる。
次回【崩れ堕ちる栄光】」
日「問題nothingだぜ!!」
凪「…ねぇ言い方は悪いけど親がいない子供って中学卒業まで施設に入るものじゃないの?」
日「…まぁ、普通はそうだな。だけど俺達は――あれ?そういや何で俺達普通に生活してるんだ?」
知「はぇ??」
次回に続く!!