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時の秒針  作者: †HYUGA†
第二章;異端者編
67/76

第61話 その声、誰の声?



こんにちは(^-^)/~~


お久しぶりです。これまで更新を中断していたことを深くお詫び申し上げます。


そしてもう1つ。今回の作品はかなり中途半端なことになっておりますので、そこのお詫びを申し上げます。


大事なことなのでもう一度言います。今回の作品はかなり中途半端なことになっております。よって過度な期待はしないでください。後悔するだけです。


それでも進みたいという方のみこの先へはおすすみ願います。それでは中途半端な本編へ( ^-^)_旦〜




`







彼は“孤独”だった。









世界を恨み、憎しみを人にぶつけても、決して潤すことができない“孤独”という喉の渇きを生まれたときから、彼は宿命づけられていた。


数年前。“あの世界戦争”ですべてを失った少年は真っ暗で雨が降りそうな空を見上げ、涙を流す。だが、そんな彼を気にかけるものは誰もいなかった…。生まれたときから“孤独”誰1人として彼に優しくするものはいなかった。


それから彼は何でもやってきた。ただひたすらに金持ちから金を盗み、容姿を活かしてバカな男を騙し、憂さ晴らしに弱い女に暴力を振るう。そんな毎日を淡々と過ごしてきた。


そんな生活の中、彼はこう思うようになる。自分は人からの“愛”に絶望したのだと――







???side



「…ちょっとあんた。いつまであたしについてくるつもり??」




桜時市の繁華街"街"。その路地裏にて俺は早足で歩きながら横のガキにそう問いかけられる。


チッ…メンドクセー黙っときゃいいものを…。俺がどこ行こうがテメーの知ったこっちゃねーだろ。


俺は内心で滅茶苦茶悪態をつきながら横のガキを睨みつけた。




「あ゛ぁ?んなこと知るかよ。俺様の行く先にてめーが居るだけだろ??」


「はぁ…あんたもしつこいわね?なんでそこまであたしにこだわるわけ??」




はん!!別にテメーなんかこだわっちゃいねーよ!!自画自賛なんて痛いやつだ。…まぁ目的はあるけどな。




「…ガキ。てめー、俺がてめーみたいな三下の小学生なんかに発情するとでも思ってんのか??あ゛ぁ??」


「うっさいわね。あんたこそ男のくせしてそんな格好してんじゃないわよ。変態」


「あ゛ぁ?俺のこの格好にケチつけんねかガキ??…上等じゃねーか。ぶっ殺すぞ??」


「ふん!!そんな女物の着物なんかを着たあんたにそんなこと言われても痛くもかゆくもないわ!!変態」


「…ガキ。俺達はもう我慢できねー。てめーの着てるそのオーダーメイドの制服ひんむいて路上に突き出すぞ?」


「あ〜らご生憎様。あたしのこれは列記とした学校の売店に販売されていたSSサイズの制服よ??オーダーメイドじゃないわ!!」


「ちっせー事に変わりはねーじゃねーか??あ゛ぁ??」


「さっきからあ゛ぁあ゛ぁとうっさいわね!!あんたこそ日本名物の【よいではないか?よいではないか?あーれー】されたくなきゃさっさとあたしの前から消えなさい!!目障りだわ!!」


「上等じゃねーか!!面に出ろやー!!!!」




思わず叫んだ俺に文句を言わうなよ?いい加減、この(あま)がうざすぎたんだ。これだから女は嫌いなんだよ…。


俺はもう一度舌打ちをしてこいつを睨み続けた。




「はぁ…何であたし、こんなやつにつき合ってんだろ…」




おい。テメー聞こえてないとでも思ってんのか?犯すぞクソヤロー…!!


俺だって“言われなきゃ”テメーみたいなガキに付き合わねーっての!!だから黙れ!!消えろ!!俺の前に姿を見せるな!!




「テメーみたいなガキに付き合わねーっての!!だから黙れ!!消えろ!!俺の前に姿を見せるな!!犯すぞクソヤロー!!!!????」


「はいはい。本音が口にでてるわよ。そんなことより、いい加減どっか行きなさいよ??凪払うわよ??」


「あ゛ぁ?死ぬのか?死にたいのか?それとも犯されたいのか?あ゛ぁ?」




――PiriPiri♪PiriPiri♪PiriPiri♪PiriPiri♪




睨み合い。額がくっ付くかというくらいまで顔を近づけてる。だがそのとき、俺様たちは実に耳障りなその音に動きを止めた。


ウゼー…マジでウゼー。何でこんなの持たなきゃいけねーんだよ。はぁ…。


…でも。まぁいい。このガキから解放されるならこれくらい我慢してやろーじゃねーかよ。




――PiriPiri♪…Pi♪




「…何。誰だか知らないけど今取り込んでんのよ。死にたいの?凪払われたい?寧ろ凪払うわよ??」


「あ゛ぁ?おっせーんだよテメー!!俺がどれだけ待ったと思ってやがんだ??ぶち殺すぞ!?」




お互いに睨み合いを止め、顔を離す俺様たちはそれぞれ舌打ちをしながらケータイを取り出す。


だが、ムシャクシャしていた俺様たちがケータイに出て初めて口にしたのはそんな八つ当たりの言葉だった。




『… I 。時間通りに…電話…した。だから… I は…悪くない…もん』






真備side(少し前)



「…ふぅ。上手かった…。正宗!!ごっつぉさん!!」


「ありがとう… You 」




町の騒ぎもだいぶ収まりつつあるころ。俺とイヴと呼ばれた魔女っ娘はそれぞれ空になったいちご牛乳のパックを潰しながらそう礼を言った。




「ふむ。いやはや貴様ら2人ともよい飲みっぷりであったぞ。我も見ていて気持ちがよかった」


「大げさだの正宗…。酒を飲み交わしたわけじゃないんだからもうちょい別の言葉があんだろ?」


「…そうだな。では述べておこう。どういたしましてだ」


「おう!!サンキューな!!」




俺たちの言葉にも堅物らしく表情を揺るがせない正宗。俺はそんなこいつと笑みを浮かべあうのだった。




「…」




そんな俺達の様子を影からこっそりと、静かに見つめる彼女。イヴ。


その視線に気がついた俺は、彼女のその視線にニコリとほほえみ返し、俺より10㎝ばかり低い彼女な頭をポンポンと撫でるのだった。




「…ん。You…くすぐったい…よ…」


「んぁ。あ、あぁ…すまねーな。なんかお前を見てるとなんでか知らねーけど…姉貴を思い出しちまってな…つい」


「…セクハラ…だよ?」




無表情で、そう告げるイヴ。俺は、彼女のその言葉に苦笑いしながら手を離すのだった。あぁ…本当になんでだろーな…。なぜだか、知らないけど俺は彼女のことを姉貴と被らせてしまう。


性格はまったくと言っていいほど違う。容姿も姉貴のロリ体型(あれ?なんか寒気が…)とは正反対のグラマーな体型。だけど…それでも…。




「ふむ。羽前。どうしてこの物静かな不思議娘が貴様の姉であるあの羽前凪に似ているというのだ?容姿はともかくとしても、性格は月とすっぽんではないか?」


「…正宗。事実だとしてもそれを口にするのは、相当の覚悟がいることだぞ。下手をすれば…今すぐにでも姉貴から電話が――」




――PiriPiri♪PiriPiri♪PiriPiri♪PiriPiri♪




あ〜ぁ…言ってるそばから、ほら。来たぞ。(ある意味)死の着信あり、が…。


突如として鳴りだした携帯電話の音。残念ながら、機械音痴らしい俺は持たせてもらえないが、姉貴や日向や知恵理。それに輝喜は持っていたはずだ。


ちなみに、輝喜の携帯は今は通じない。日向たちの話じゃ、機種変更はされていないが、着信拒否とか何とかというやつをされているらしく、通じないらしい。


まぁ、今はどうでもいい話だけどな…。




「おい。噂をすればナントやらというやつだぜ?政宗。さっさと出ろよ」


「ふ…ふん。これがまだ貴様の姉からとは限らない。ほら見ろ。番号は知らない番号からだ。きっとたちの悪いイタズラか何かだろう…」




そう言うと、政宗は携帯の数字の1の上にあるボタンを押し、耳に当てる。どうやら、着信ボタンを押したのだろう。


そう思った俺は、イヴと共に口を閉ざし静かに政宗の電話口の声に聞き耳を立てるのであった。




「…あぁ。確かにそれは俺様だ。貴様、何故俺様の名前を知っている?新手のストーカーか何かか!?」




…どうやら、電話の相手は姉貴じゃなかったらしい。正直、関係ないけどかなりドキドキしていた。


政宗と謎の人物との電話口の会話は続く。




「…なに?去年のクラスメートだと?そんなこととうに知っておるわ。俺様はなぜ貴様が俺様の携帯の番号を知っているのかと聞いておるのだ」




元クラスメート。と、いうことはうちの学園の生徒ということか…。


でも、うちの学園の生徒で政宗に直接電話するなんて…いったいどんな強者なん――




「ふぅ…さて。どういうことか説明してもらおうか…【須藤百合】」




そのとき、突然出てきた名前は、えらく聞き覚えがある名前だった。


あぁ、お前だったのか…。そりゃあ…政宗に突撃電話するやつなんてお前ぐらいだろうからな…。まぁとりあえず政宗。




「…ドンマイ」


「…百合。今、羽前真備が貴様と電話する俺様を哀れんだ目できておるが…どうする?」


『問題ない。吊しておく』


「って!!おい!!」




いつの間にかスピーカーにしたのか、ニヤリと顔をゆがませた政宗と携帯から聞こえてくる百合の声に俺は戦慄する。別に百合自身が怖い訳じゃない。


確かに百合も桜時学園喧嘩の強いやつランキングの末端とはいえ、名前を連ねるだけの強者であることは間違いない。


だけど、それでは上位を連ねる俺達には何の驚異にもならなかった。まぁ…俺も日向も輝喜も、女に手を出すほど落ちぶれちゃいないけどな…。それでも、百合ぐらいからは簡単に逃げ切ることができる。


…じゃあ、いったい何が恐ろしいかって?ふ。お前ら何もわかっちゃいねーな?百合はな…百合はな…百合は…【姉貴】と仲がいいだよ!!こんちくしょー!!




――PiriPiri♪PiriPiri♪PiriPiri♪PiriPiri♪




…おい。なんで今日は何度も縦続きに電話がかかってくるんだよ。俺がでることはないけどな!!


自分が機械音痴なことを沸々と思い知らされる。なんで…なんで…俺には携帯を買ってくれないんだよ。親父とお袋は…。コツコツ貯めた金で買おうとしたときも、日向や輝喜に止められたし…。はぁ…。


機械音痴。直したいなぁ…。切実にそんなことを願う俺。そのとき、ケータイの持ち主が電話に出る。と、言っても政宗が既に電話に出てるから、それに該当する人物はただ1人。




――…Pi♪




「…もしもし。… I だよ?」




俺の隣で大人しく二本目のいちご牛乳を飲んでいた魔女っ娘。イヴだけである。


はい。じゃあここからは俺、空気なんで政宗とイヴの電話の会話をダイジェストにご覧ください。はい。じゃあスタート!!




「…ところで、忘れるところだったが、なぜ貴様は俺に電話をかけてきた?まさか、嫌がらせだとかは言うまい?」


「…ん。… You 酷い。… I そんな悪いこと…しないもん」


「ふ。そうか。そうだな貴様がそんなことするわけがないな。すまない。だが、もし嫌がらせだった場合は貴様には退学という処分がまっていたがな」


「…分かった。… You の…言うこと正しい。… I 反省…する。…もう…知らない人には…ついて…行かない」


「うむ。よろしい。では、本題に入ろう」


「…分かった。… I は…何すれば…いいの?…“ルーン”に…電話…しろ?」


「…なに?羽前凪に電話をかけろだと?うつけものが、なにうえ俺達があのようなじゃじゃ馬娘に電話などせねばならぬ。ほかを当たれ」


「…そんなこと…言っちゃ…や。…でも、任務の…ためだから… I …ルーン…探…す…」


「ま…待て。落ち着け…!!冷静になれ…!!落ち着くんだ百合…。平和的解決はいつの時代も必要だ…!!」


「…??…じゃ、どうする…の?… I ルーンの…ことほっとく?…それとも… You が…なんとか…する?」


「…くっ!!分かった。俺様がなんとかしよう。地獄に堕ちろ。須藤百合!!」


「…うん。…そういえば… I 忘れてた。ごめんなさい…。じゃあ――」


「これから電話するからさっさと番号を教えろ!!…あぁ…あぁ!!ちゃんとメモした!!それと最後に1つ!!一生俺に電話するな!!」


「…うん。…わかった。…これから。…ルーンに…電話するね?…サヨナラ」




――…Pi♪




「あ〜あ゛!!イライラする!!あの女狐!!次会ったら出雲もろともぶっ殺す!!」


「…ルーン。…死ね」




…とりあえず、いろいろ突っ込みたい状況ではあったが、両者ともそうとうご立腹なため、小心者の俺には話しかける勇気など沸かなかった。




「…羽前真備」


「… You 」




まぁ…一言だけ言えるとしたら…。これから俺は目の前の2人の憂さ晴らしにでも使われると思う。



――あぁ…こりゃ死んだな…。



脚をあげ、サバットの構えをとる政宗と、なぜか頭にかぶったトンガリ帽子からスタンガンを取り出したイヴを見て、俺は本能的にそう思った。


うぅ…とりあえず――




「俺様のサンドバックとなれ!!羽前マキビいぃいいいいいいいいいいいい!!!!」


「… You … I の中の熱い…もののために…死んで!!」


「不幸だあぁああああああああああああああああああああああああああっ!!!!」




頼む姉貴!!性格が月とスッポンなんて言って悪かった!!!!だから…だから…助けてくれえぇええええええええええええええええええええええええ!!!!










その後。彼は2人に捕まり、放送を禁止せざるをいけないような姿にされるまでボコボコにされるのだった…。


恨むぞ…あね…き…。




―――――――――


――――――


―――





「ぐえぇ……お…お前…ら…少しは…手加減…ぐら…い…しろ…よ…」




そう言って地面に横たわる俺は満身創痍。全身が蹴りに蹴られて痛い挙げ句、電気がでる携帯兵器のおかげで俺の体力はゼロ間近な状態だった。


それもこれも、俺の目の前にて、何食わぬ顔で佇んでいるこいつらのせい…。


傷だらけとはいえ、立ち上がることは可能な体を必死に起動させ、俺は目の前の2人を睨みつけるのだった。




「ふむ。羽前真備。いや、ぼろ雑巾。いい加減に被害者面はやめろ。貴様が被害者なはずがないだろ?」


「いや!!俺、明らかに被害者だからな!?ちなみにおまえらが加害者な!?しかもさらっとお前、今、俺のことぼろ雑巾扱いしなかったか!?」


「そんな昔のことなどとうに忘れたわ!!」


「3秒前のことだよ!?」




だが、いつの間にか再びいちご牛乳を取り出し、悪びれた様子なくそう言い切るこの男。政宗は、俺の睨みを軽く無視する。そして――




「…??… You 不思議なこと…言う。… I は加害者…じゃない…よ?」




――バチッ!!バチバチッ!!




「よしイヴ。それはその手に持ったスタンガンを置いてから言おうか。それのせいで俺のHPは限りなくゼロにされたからな?」


「…これ。…スタンガン…じゃない…もん。…これ…ホット…ドック?」


「なぜに疑問系!?それより、そんな機械じみたホットドックがあったらぜひ拝んでみたいわ!!コンチクショー!!!!」


「…これの…ことだよ?」




――バチバチバチッ!!!!




「だから!!それはスタンガンだあぁああああああああああああああああ!!!!」




そして――スタンガン片手に表情を変えることなく、そう言い切る魔女っ娘少女イヴはというと、俺の言葉を最早受け流してしまっていた。


そのアウェイ感に、俺は心のそこから叫ぶ。全身全霊。心の深いところから絞り出した叫びだった…。


だが、イヴは俺の予想を遥かに上回る存在であった…。いや、この場合。俺の予想通りだと言うべきなのだろうな…。




「…クフフフ…クフフフ…クフフフ…ねぇ。… You 。 I と一緒に…逝こ?…痛く…しないから…ね?ねぇ? You …クフフ…クフフフフフフ♪」


「…なぁ、政宗。俺、ようやく気付いたわ。なんでイヴが姉貴に似てるなんて言ったのか」


「…奇遇だな羽前真備。実は俺様も気がついた。こいつと貴様の姉との共通点をな」




不気味に笑みを浮かべるイヴ。その姿は本物の魔女だと偽っても問題ないくらいだった…。


そんなイヴの姿を見て、俺と政宗は顔を合わせる。そして、ついに結論へと達した。こいつは…こいつらは――




「こいつら――」


『『2人ともバイオレンスでドSなんだ…』』




バチバチッとスタンガンを放電をさせながら俺へと近付いてくるイヴ。このとき俺は、真剣と書いてマジで命の危機を本能的に感じ取っていた。



――あぁ。こりゃ…終わったな…。



そう悲観的な心情を心に思いながら、イヴから視線を逸らし、空を仰ぎ見たときには、時すでに遅しであった。


所謂“現実逃避”。だが、俺へと迫り来る恐怖を俺は拭い去ることなどできはしなかった…。


霞む視界の先。俺が覚えていたのはそこまでであった…。




――バチバチッ!!バチバチッ!!バチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチッ!!!!




「うぎゃあぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!」




…最後に一言。これだけは言っておく…。女ってやつは…怖いぜ(物理的に)?




――バタン…




「…おやすみ。…真備。… You の未来に…絶望が…あらんことを…」






???side



「…ん。…重い」


「お…おい。何もわざわざ貴様が抱えなくともよいだろう。俺様が不知火あたりでも呼ぶから、そのままにしといて――」


「―― You …うるさい」


「っ!?す、すまない…」




街の真ん中。スタンガンにて気絶した――気絶させられた、真備を細身の体。たった1つで抱えるイヴ。


その姿に近くにいた政宗はたまらずそう声をかける。だがしかし、イヴから返ってきた返答は、政宗が予想だにもしていなかったその一言。


さっき出会ったばかりとまったく同じ音質。高さのイヴの声。だが、政宗はその声に感じたことのない恐怖の感情が沸いてきていた。


まるで、目の前にいるイヴが今までとはまったく別の人になったような…。そんな感じが――




「…ん。…じゃ、You …いちご牛乳…ありがと」




最後にイヴはそう言って、自分より明らかに体格がデカい真備を軽々と抱え上げ、去っていった。


魔女っ娘の服装を靡かせ、悩ましげで華奢な体を震わせるその姿を見つつ、政宗は解放されたように深いため息を吐き出しすでに中身が無くなったいちご牛乳のパックを一気に握りつぶすのだった…。




「…そういえば、羽前凪に電話しなければいけないんだったな…たく、あいつらは俺様を誰だと思ってやがるのだか」




―――――――――


――――――


―――





「ふ〜ん。それであたしに電話してきたわけね…ホントつくづくついてないわねあんた…」


『ほっとけ。元はといえば貴様のせいなのだから、今の俺様は貴様を足蹴にしたくてたまらんのだよ』




時は戻って、ここは街の裏路地。薄暗いそこにて1人の少女が呆れた表情で電話に出ていた。凪である。


そしてもちろん電話の相手は桜時学園の生徒会長であり、さきほどまで真備とイヴと一緒にいちご牛乳を飲んでいた周防政宗その人であった。




「はいはい。分かった分かった。そんなことより結局なんの用なのよ?まさか何の用もなしに電話してきたわけじゃないんでしょ?」

『羽前凪。貴様、少しは俺様の話を……いや、やはりいい。貴様らはそういうやつらであったな…』


「あら。お誉めいただき光栄だわ。生徒会長様」


『はぁ…美濃輝喜がいなくなって少しは大人しくなると思ったのだがな…まぁよい。それより用件であったな。俺様直々に動くのだ。ありがたく思え』


「はいはい」




尊大な態度。上から目線。自分を一番だと考える自意識過剰。それが、この男。周防政宗なのである。


凪自身も去年のクラスメートであった政宗のことを分かっていた。だからこそ、彼の語りは受け流すのが一番なのだと知っていたのである。




「…え?百合からの伝言って…いったいどうしたっていうのよ?」


『分からん。正直、俺にもよく意味は分からんから何とも言えんのだ。だが、貴様には分かるらしいのだが…。それと、もう1つ。この伝言の大元は須藤百合ではないのだ』


「…は??…百合からじゃないって…じゃあ誰からよ?」


『…貴様をよく知っている奴からだそうだ』


「だそうだって…あんたは知らないの?そいつのこと?」


『…あぁ。よくは知らない名前だった。だが、これも貴様に伝えれば分かるそうだ』


「あたしなら…?」




その言葉に凪は懐疑そうに眉をひそめる。――あたしのよく知ってる奴…いったい、誰?――だがしかし、その応えはすぐに知ることとなった…。




「…もったいぶらないでさっさと言いなさい。あたしだって今イライラしてるんだから――」


『…その者はこう名乗ったそうだ…“セツ”と』


「――いい加減にしなさい…って“セツ”?」




その瞬間。凪の頭の中で何かが駆け抜ける。“セツ”その名前はこの二週間。忘れるはずもない名前であった…。




「…っ!?政宗!!あんた!!百合からそいつの特徴とか聴いてないの!?」


『…??あ、あぁ。聞いている。確か、このことを俺様に伝えてきた須藤百合が言うには――鈴のような綺麗な女声なのに男言葉だったそうだ』




その言葉に、凪は確信を得た。“セツ”雪という意味を持つ言葉。そして彼女の名前の頭文字…。


そう、彼らが話す“セツ”とはきっと――




「…“セツ”…“刹那”」




ポニーテールにした水色の髪に、まるで空のようなブルーアイ。そしてちょっぴり虫が苦手な彼女のことだと…。




『…??なんだ。やはり貴様の知り合いであったのか?本当に貴様らの知り合いには変わったやつらばかりが集まるものだ…』


「…それはあんたも含まれるってことに気付きなさいよ政宗?でもそうね…。いろいろあったんだけど、その子はあたしの知り合いよ。妹みたいなものかしら?…でもそっか、あの子。今、この町にいるんだ」


『1人で勝手に完結するでない。1人で。まったく…』




電話の向こうから聞こえてくる明らかに不機嫌な政宗の声。だが、今の凪はその声を気にすることはなかった…。いや、むしろ気にすることはできなかった…。


なぜなら…このとき、凪の心の中で、また別の可能性が浮かんだからだ。




「…まさかね。まさか」




もしかしたら…もしかしたら…といった希望が溢れ出てくる。だけど、それと同時に、それはあり得ない幻想なんだ。という言葉も出てくる。


その内容は…言わずもがなだろう。彼女がこの街にいるのなら…もしかしたら――そして、その幻想はすぐに現実となる。


新たに発せられた政宗の言葉。その言葉に…今にも泣き出しそうな表情だった凪は――




『…で。その人物からの伝言なのだが――』




瞳にためた滴を抑えることができなくなるのだった…。




【美濃輝喜は帰ってきた。ただし、本当のレリエルとなって――】




―――――――――


――――――


―――





「…ふむ。あぁ…あぁ…すまない正宗。ふむ、それではな」




――Pi♪




「ふぅ…やれやれ、なぜ私がこんなことをしなくてはならないのか…電話した相手を間違えたな…」


「あっひゃっひゃっひゃっ!!自分で電話しといてそりゃないっしょ!!須藤部長!!あっひゃっひゃっひゃっ!!」




凪がその言葉に涙を流してから数分。場所は変わってここは街の一角にある喫茶店。


そこには、桜時学園の制服を着たポニーテールの美少女と全身にピアスをつけた少年がその店内にある机の1つに腰掛けている。


お馴染み、桜時学園の新聞部の部長【須藤百合】と部員の【幹出雲】であった。




「あ゛ぁ〜もう!!うるさい!!ゴミ虫!!踏みつぶされたくなければ、その心の底から不愉快にさせる笑いを止めろ。ついでに死ね」


「相変わらず俺ってひどい扱いだな!?」


「人類の常識だ」


「もはや生態系規模!?」


「ついでにその辺に転がってる石ころと同じくらいの存在だ」「いきなり超がつくほど規模が小さくなった!?」



「何を言う。石ころ1つ1つにもちゃんとした物語があるのだぞ?例えばその石ころは隕石かもしれないし、その石ころは賢者の石かもしれぬぞ?それと同等に扱われるのだから、寧ろありがたく思わんかバカ者」


「う…それを言われるとあるあ――ねぇよ!!危ねぇ危うくだまされるとこだった…」


「…ちっ」


「舌打ちしやがった!?」


「あぁ〜あ。後少しで石ころ程度の存在が本当に石ころと同等になるはずだったのに…」


「しかも本音がだだ漏れ!?」


「なんで断るかな――せっかく石ころと同格になるチャンスだったのに」


「しかも石ころの方が格上なのかよ!?」


『おい!!いい加減にしろよお前ら!!!!こっちとら緊急事態で、ぜんぜん問題nothingな状況じゃねーんだよ!!!!少しは人の話を聞けや!!!!」




そのとき、唐突に2人の声とは別の声が彼女たちの耳に届く。


これには、2人の会話のあまりのうるささに白い目を向けていた喫茶店の客全員がピクリと肩を震わした。


スピーカーモードにしていないにも関わらず、店内に響きわたった明らかに2人のものと違うその声。その主はもちろん。幹出雲が持っている携帯電話の向こうからの声であった。




「…あぁ。そういえばお前とも通話中だった。いや〜すっかり忘れてた」


「あ〜そうだった!!そうだった!!そういや電話してたんだったな!!俺っちたち!!きゃはははは!!」


『お前ら1回死ね!!氏ねじゃなくてマジ死ね!!くそ…なんでこんな奴らに頼まなきゃいけなかったんだよ…はぁ』




電話の向こうから漏れる溜め息。その溜め息に哀愁が漂っているのはおそらく気のせいではないだろう。


このとき、彼らと同じ店内にいた他の人たちは彼らの電話の相手に対して、一重に同じことを思っていた。



――ご愁傷様…と。




「…まぁ、冗談はここまでにしてだ」


『…なぁ?こんな言葉を知ってるか?イジメる方は冗談でも、イジメられる方はいつでも本気って言葉』


「知らん。それに言っただろう。冗談はここまでだと」


『…そうだったな』




喫茶店の客はこのとき、心底驚いていた。彼女の――百合の出す雰囲気がさっきまでのそれと、まったく別物だということに。


それは、電話の向こうの声の主も同じであった。そんな彼女の変わりように――電話の相手である彼は…。




『…ありがとうな、百合。経緯はどうあれ助かった。礼を言う』


「ふ。お前らしくもない。私に礼など不要だ。知恵理を見捨てたのも私であるからな…」


『…それでも、ありがとう。百合』


「…何。私は学園の情報屋の仕事をしたまでだ。それに、これはサービスだよ。知恵理が1つ大人になった記念のプレゼントだと思っておいてくれ」


『…ん?ちょっと待て。知恵理が1つ大人になったって?』


「おっと。私としたことが口が滑らしてしまった。では、もう切る。じゃあな――【不知火日向】」


『あっ!!ちょっと待て――』




――Pi♪




電話が切れる音が、再び喫茶店の店内にこだまする。そして、電源まで切った携帯電話を机の端におくと百合はすでに冷え切ったコーヒーに口を付けた。


クールで知的臭が漂うその情景。それを出雲はニヤニヤと嫌らしげな笑みを浮かべながら同じく自分のぶんのコーヒーに口を付けるのだった。




「ははは。やだなぁ須藤部長。あんな言い方…まったく、人が悪い」


「ふ。貴様にそう言われる日が来るとは思ってもいなかったよ幹。それに私の言っていることは間違ってはいなかったであろう?」


「…そうでした。間違いありません」




そう言って、彼らはコーヒーをすべて飲み干す。そのとき、2人の表情には笑みが見えていた…。






日向side



「…ったく、百合のやつ。切りやがった」




――ガチャンッ!!!!




桜時市の繁華街である街。人がにぎやかに流れる歩道にポツンとあるその公衆電話にて、俺はいらだち気味に受話器を戻す。


はぁ…携帯さえ。携帯電話さえ壊れてなければ…俺は直接、凪に電話できたのに。なんであんな面倒なことになったんだか…。


そう思った俺は、1人大きなため息をつくのであった…。




「ヒナ君。【傷】大丈夫?痛くない?」




そんな俺を心配そうに見つめる2つの瞳。それは、この数十分の間、ひたすら探し続けた瞳であった。




「ん?あぁ。問題nothing。平気だよ…【知恵理】」


「本当に?本当に…大丈夫?ヒナ君。ゴメンね。私のせいであんなことになっちゃって…」


「…問題nothing。気にすんなって知恵理。それに…あれは――」




だけど――まさか…まさかあんなことになるなんて…俺はあのとき想像もしていなかった…。


俺はあのとき、運命の残酷さというものを再び思い知らされることとなった。貫かれた傷が痛い。血も…流れている。


でも俺は、そんなことより胸が痛かった。物理的にではなく。心理的な意味で…。




「あれは――あの分からず屋のせいだから」




これより遡ること十数分前。日向は予想だにしなかった再会をしていた。


その内容こそ、百合、政宗を通して凪に伝えられた内容である。その内容に…日向は喜び。日向は…悲しんでいた…。


ゆるりと過ぎゆく時間。その時間の流れは、堕ちた彼の心を取り戻すことは…できなかったのである…。




「…じゃあ、そろそろ説明して貰おうか。【美濃輝喜は帰ってきた。ただし、本当のレリエルとなって…】この言葉の意味を…なぁ――」




そして、日向の瞳は銀色の彼女のそのまた後ろへと向けられる。そこにいたのはもちろん――




「――【刹那】?」




彼らの止まっていた2週間の時間が今――動き出した。






           `


日「こんにちは!!主人公の不知火日向だ!!今回は久しぶりの本編復帰ということで、いつもより“短い”あとがきにしていくぜ!!」


真「ちょちょちょ!!ちょっと待てえぇええええええええええええ!!!!普通!!そこは長めのあとがきとかにしないか!?おかしいだろ!?明らかにおかしいだろ!?」


日「仕方ねーじゃん。はっきり言えばネタ切れという事態におちいってるんだから」


真「おい!?今、さらっと本音が漏れてたぞ!?つかマジで洒落にならねーからそれ!?」


作「というわけで〜次回予告いきま〜す」


真「え゛?マジで今回の後書きここまでなの!?尺とか問題にならないのかよ!?」


日&作『『問題nothingだぜ!!』』


真「更新再開初の問題nothingをこんなとこで使うなあぁああああああああああああああああっ!!!!」


作「はい。じゃあ、じゃんじゃか進めていきたいと思います。次回の時の秒針は――


孤独。絶望。悲劇。故に彼は愛を失った…。


次回【愛なき少年】」


日「問題nothingだぜ!!」


真「…本編も中途半端。あとがきも中途半端。最早、この小説終わったんじゃないか?」


日&作『『オワタO(><;)(;><)O オワタO(><;)(;><)O』』


真「お前らはもうちょっと危機感をしっかり持てえぇええええええええええええええええええええ!!!!」



次回に続く!!

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