第56話 知恵理失踪事件
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それはそうとタイトルが変わったことは気にしないでください。
あと今回の後書きには前々から出てきたユニオンナンバーズについてちょっと触れたいと思います。
詳しいことはこの章の最後に本編で証したいと思うので今は大まかなことだけを証します。
それでは本編( ^-^)_旦〜
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日向side(20分前)
「ん?なんだあれ?」
衝撃的出会いが訪れた学校が終わり俺達は久し振りに桜時市の繁華街"街"に来ていた。
だが着いて早々真備が駅前の広場にて人だかりができている場所を発見し指を指す。
そんな真備の指先に誘われるように瞳を上げていくとそこには確かに人だかりができていた――2カ所も。
ただの人だかりならさして珍しくない。俺達もどうせ喧嘩だろうと無視するのだが今回は違った。人だかりができている場所が2カ所あるのもそうだが今回はその人のその量が半端ないのだ。そんな尋常ならぬ騒ぎにはさすがの俺達も黙ってはいられない。
――いや。性格には俺とチエではなくバカとロリの双子陰陽師の方だが……な。
新しいものやら珍しいものに目がない単純な思考の真備と気になることはとことん調べたがる知識欲のの塊な凪のコンビ。
さらに付け加えると2人は一切認めてないが双子ならではの思考の類似が2人にはある。それ故に――
「よし真備!!あんたは右の人だかりを見てきなさい!!あたしは左に行くから!!」
「へ!!合点承知の助だぜ!!」
2人は時々いきぴったりになったりするときがあるのだ。傍迷惑なことにも。
俺はそんな2人の奇想天外な行動に思わず溜め息をついてしまうのだった。
「…たくあの2人は。いつにも増して元気だな」
「あははは〜まぁそれがマキ君とナギちゃんの好いとこだからね〜」
呆れ顔で苦笑いを浮かべたチエを横目に見つつ俺はもう一度溜め息を吐き出し真備と凪の動向を見守る。2人ともどこか危なっかしい所があるからな。
最早気分はやんちゃな子供を持った親の気分だ。
俺はもう一度チラリとチエを覗き見る。表情こそはさっきとまったく変わってないがその顔にはどこか穏やかさが見える。
それこそ親やお母さんと言ったそんな感じの顔に。もしかしたら親を知らない俺の思い違いかもしれない。でも俺にはそう思えたのだ。
「ヒナ君どうかしたの?」
俺の視線に気付いたのかチエが俺に視線を向け小首を傾げる。
俺のツボにドストライクなその仕草。
俺は可愛らしいその仕草を見て照れ隠しに頬を指でポリポリ掻きながら視線を別方向に反らしてしながら応えるのだった。
「問題nothingだよチエ。俺は一切気にしないから」
「ヒナ君が気にしなくても私が気になるよ〜??」
そう言いながら頬をぷぅーと膨らませたチエに俺は吹き出してしまう。小首を傾げるのと同等の破壊力を持つその可愛らしい攻撃に俺は我慢しきれなかったのだ。
「はは…子供みたいだな」
「むぅ…」
「くくっ…」と意地の悪い顔をして俺はチエの頬を人差し指でつつき空気を抜いていく。
そのときのチエの真っ白い頬はまさしくやみつきになりそうなくらいに心地よい柔らかさであった。
「…ねぇヒナ君。もう空気全部抜けちゃったよ?」
「ん?そうだな…」
チエのご忠告を軽く受け流し俺は気にすることなく頬をつつき続ける。
するとチエも諦めたのかさっきの俺より深い溜め息を吐き出すとそれからは俺の指のなすがままになった。
『『……………』』
フニフニと楽しげに頬を緩ませながらチエの頬をつつく俺。会話がなくなったせいかさっきよりも辺りの声が大きく聞こえるような気がする。
愉快な笑い声。悲哀な泣き声。ダルそうな唸り声に静かな叫び声。そして――
「はぁ!?ふっざけんじゃないわよ〜!!!???」
――修羅場な怒鳴り声。ていうかなぜかお怒りモードなロリっ子の声。
俺とチエはその明らかなる凪の怒鳴り声に思わず頭を抱えてしまう。心の中で思っていることはまったく同じであった。
――はぁー…今度は一体何があったんだ??
それは最早諦めが入った心情。そしてあの2人に――いや。あの2人にチエと輝喜を加えた4人と付き合ってきた俺にとってみればもう慣れてしまったこと。
その2つの言葉に尽きる事態なのである。まぁたぶん他の奴らから言わせるとそこに俺の名前も入ると思うけれども――
何はともあれ俺とチエは凪の怒鳴り声が聞こえてきたであろう右の人だかりに向けて脚を進めていく。
せめて喧嘩沙汰になっていなければいいのだが。そうなったら“相手側”のほうが危ない。
なぜなら凪の芸術的な関節技が的確に。しかも確実に相手の意識を刈り取ってしまうかもしれないからだ。俺はそのときの映像を考えるだけで背筋に嫌な汗が流れてしまう。
だってあれに耐えられるのはそれなりに耐性ができた人だけなのだから←経験者は語る(俺+真備+輝喜)。
「…大変なことになる前にさっさとあいつを止めないとな」
俺は祈るような心境でそう呟き歩みを進めていく。あいつを止めることは容易いことではないだろう。だがこっちには秘密兵器がある。
それは輝喜を含めた俺達4人が絶対に傷つけたくない人物。そしてそれ故に俺達が絶対に逆らえない人物でもある。その名は――
「チエ。後頼んだ…ぞ…」
そこまで言って俺は言葉を失ってしまう。
なぜならチエに凪のことを頼もうとした矢先。チエの姿がそこにはなかったからだ。
学校終わりの夕方。人混みが多い時間帯の繁華街のしかも中央通り。もしかしたらはぐれてしまうのは必然だったかもしれない。
でも俺はそれでも慌ててしまう。だってあいつは1人でいたらナンパの絶好のカモだからだ。
「…!?…チエ!!!!」
俺は急いで辺りを見渡す。だけど俺の周りには誰もいなかった。
そこからはもう必死だった。俺はただ街へと脚を進めていく。チエを探し出すために――
知恵理side
――それはまったくの偶然でした。
私は荒れに荒れる人混みの中ただ必死にそれを掻き分け追いすがって行きます。
波のように流れる人…人…人…。それはあたかも私の行動を拒むようにも感じました。
「はぁ…はぁ…はぁ…!!」
だけど私は息を荒くしながらもその試練を乗り越えていく。
だって私が偶然見つけたそれは夜のように真っ暗な闇のような存在。
でも私自身がずっとずっと追い求めてきた漆黒がそこにあったのでした。
――パシッ!!!!
だけども世の中そううまくいかないものでした。
なぜならひたすら闇を追い求めていた私は不意に強く手首を掴まれます。でもそれはヒナ君みないな優しい手でもお兄ちゃんみたいな温かい手でもない。ただ冷たい氷のような手――
「よぉ姉ちゃん。これから俺達面白いところに行くんだけどよかったら一緒に行かないか?」
ただ私のことをそういった目でしか見れない怖い冷たさのある手でした――
「…え〜と〜ごめんなさい。私急いでるんでちょっと一緒には――」
「そう言うなよ姉ちゃん」
私の遠まわしの拒絶の言葉にも男の人はニコニコと笑顔で対応してきます。
どうやらこの人。かなり手慣れているようです。ですが私もいつもいつもヒナ君達に守られているだけではいけない。
そういう決心とあの影を絶対捕まえる。そういう決意でここまで来ました。
だから私は負けない。あの日のようにヒナ君達に守られるだけじゃいけないんだと。その言葉の元私は動いていました。
「やめてください!!私はこれから行かなきゃ行けないところがあるんです!!だからあなたと一緒にはいけません!!!!」
大丈夫。私ならやれる。
いつもはヒナ君達に向ける柔らかい眼差しにしか使わない瞳を私は力一杯使って男の人を睨みつけます。
だけど男の人は顔を赤らめてゆがんだ顔を広げるばかり。
もしかしたらこの人はナンパ目的ではなくて風邪を引いて今にも倒れそうな所を通りかかった私に助けを求めただけかもしれない。
その考えが頭に過ぎりもしそうだったらと今度は睨みつけた目を困惑したようにオロオロとさせさせます。
するとやっぱり男の人は顔を赤らめて歪みを広げていくばかり。私はもう我慢できませんでした。
「あ…あの。体調が悪いなら救急車呼びましょうか?それか別の人を…キャ!!」
――ここで私は大きな過ちを犯してしまっていました。
そう言ったときにはすでに手遅れ。私は掴まれた手首を強く握られいきなり引っ張られたせいで思わず悲鳴をあげてしまいました。
「はぁ…はぁ…そんな上目遣いで俺を誘ってんのか?それともオロオロしたところといいやっぱり素人か?…まぁどっちでもいいか。なんせこれから――」
「……っ!?」
私自身。こうなることは覚悟の上で自分からヒナ君のもとを離れたがら助けの見込みもありません。
でも私だってヒナ君がいなくても1人でできる!!絶対できる!!そう考えていました。
でも現実はそう甘くない。その考えが浅はかでした。
やっぱり私は1人では何もできない…何もやれない…私は弱いんだ。
そんな感情が頭の中でぐるぐると暗雲のように渦巻いていきます。だって私は何の力もないから――
悔しさのあまり涙がポタポタと瞳から溢れ出てきます。どうしても止められません。
私はもう自分の力だけじゃどうしようもないことを悟りました。
私がこんなにも弱いなんて――私はただただ涙を流すしかありませんでした――
「やれやれ。不知火達は何をしている??チーちゃん1人をこの街で歩かせるなんて…」
「知恵理様を傷つける者は何人たりと許さん!!!!」
――ボコッ!!バコッ!!
そしていつでも私は誰かに助けられている。ヒナ君しかり。マキ君しかり。ナギちゃんしかり。それにコウ君にも――
私にはそれがいつもうれしくてうれしくてたまらなかった。
こんな弱い私でも好きだと言ってくれる人がいてくれることが私にはこれ以上にないほど幸せだったのです。
あの日までは――
「ユリちゃん…イズ君…」
「チーちゃん。大丈夫だったかい??」
「知恵理様!!お怪我はありませんか!?」
私を助けてくれた2人。それはカメラを首から下げた大和撫子な少女に全身ピアスだらけの少年。"須藤百合"と"幹出雲"の2人でした――
???side
「…良いぐらいの騒ぎになってますね。ギリギリで」
人集りができてしまっている広場。それを真上から覗ける広場前のビルの二階にある喫茶店。
その窓近くの席にてジュースを飲みつつ外の騒ぎを眺める1人の少年がいた。
藍色の髪に店内にいるにも関わらず皮手袋で手首から先を完全に隠してしまっている少年。
そう。ユニオンナンバーズと呼ばれる組織の1人である"瑠奈"である。
そんな瑠奈のくすみのない瞳が見つめるのは多くの人集りの中でさらに小さく映る小柄な少女。
「…羽前凪」
なぜか人集りの中心にて和服を着た金髪の女性(?)と一悶着起こしてしまったらしい彼女だけを見つめていた。
それは無意識の行為。だけれども普通なら思春期真っ盛りな少年にとってみればそれは当然の行為と言えよう。
でもそんな無意識のもと動かされ彼女を追いかける彼の心に正直な瞳とは裏腹に彼自身内心では別のことを考える。
少女――羽前凪を陥れるという自分の心とは真逆のことを――
それがユニオンナンバーズ。自分の私情には絶対に捕らわれないプロの中のプロ。ユニオンナンバーズの仕事である。
――pipipipipipi♪
「…………あ。南雲さんですか?あと少しでターゲットの羽前凪がそっちに向かいますので用意しておいてください……ギリギリで」
喫茶店という人が多い場所故に友達と談笑していると思わせるため携帯越しに笑顔でそう言う瑠奈。
だが実際には無感情で淡々と告げられているその言葉に喫茶店にいる客はもちろん。電話越しの南雲ですら気付いていない。
彼らユニオンナンバーズも人間。電話越しで南雲に淡々と告げている中で彼の瞳に変化があったことに――
彼自身ですら驚愕しているその新たに芽生えた感情による自分の知らぬ心の苦しみを。
――……pi♪
「……この息苦しさは一体何なんでしょうか。僕は一体……どうしてしまったのでしょうか」
携帯を切りまるで他人事のようにそういう瑠奈。だけどそれでもそう呟く彼の瞳が凪から離れることはなかった――
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日「なぁなぁそういえば前から気になってたんだけど"ユニオンナンバーズ"ってなんだ??」
知「ん〜そういえば一章から時々出てきてたよね?何の意味があるのかな??」
作「今の所はこの意味については言及できません。でも敢えて言うならメンバーは10人とだけ言っておきましょう」
日「10人…ちなみにこれはどこから来てるんだ??」
作「元は"Blackcat"のクロノナンバーズ。体の一部にローマ数字があるところが共通点かな。ちなみに10人のうちの5人はチルドレン計画の被験者でもあります」
知「ふ〜んそういえば悶君と瑠奈君も確かにそんなこと言ってたね」
日「確か悶が【Ⅳ<4>】で瑠奈が【Ⅴ<5>】だったよな?強さとか関係あんの?」
作「いいえ強さは10人とも一緒くらいです。ちなみに2人が現在出ているユニオンナンバーズですが2人ともチルドレンと呼ばれるユニオンナンバーズです。さらに言うとチルドレンのナンバーズを――
"チルドナンバーズ"
その他のユニオンナンバーズが――
"ユニオンジャック"
と呼ばれています」
日「ふーんいろいろ考えてあるんだなー」
作「はい。ということで次回予告いきたいと思います。
少年は1人の少女と出会う。だが少女はただの少女ではない。少女は――魔法少女だった。
謎の言葉使いと少女の言動に少年はたじろぐ。
次回【不思議な魔女】」
日「問題nothingだぜ!!」
知「そういえば今回も新キャラが出てきたよね?」
日「……あぁ。そういえば出てきたな……ゴミが」
出「それって俺のこと!?」
日&真&凪&輝『『黙れゴミくず!!空気が腐る!!』』
出「ちょっと待て!!不知火はともかく凪様達はどこから出てきた!?」
日&真&凪&輝『『ウザイ…黙って消えろクズ』』
出「…コンチクショー!!」
知「あははは…」
作「再び俺空気!?」
次回に続く!!