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時の秒針  作者: †HYUGA†
第二章;異端者編
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第2章 “ 異端者編 ” プロローグ【月の道標】



第2章【異端者編】いよいよスタート!!!!



問題nothingだぜ!!!!



           `


???side


月明かりが神秘的に輝きを放ち闇夜を明るく照らす今宵の桜時市。


辺りを見渡せばビルに囲まれた普段は人々で賑やかなここ“街”にすら人の姿は見当たらない……。




ヒュォ―――ンッ!!!!!




だが次の瞬間。街全てを包み込むような突風がビルの間を駆け抜けていく。


葉桜となった妖美な桜を揺らし。夜空を舞う可憐な鳥をさらなる高みへと誘っていったその風は月に届くほどの天へと舞い上がっていった。




【花鳥風月】




天地自然の美しい景色を表す言葉にこのような言葉がある。


葉桜となりつつある桜の花びらをざわつかせる“風”と美しい鳥の翼を可憐に映し出す闇夜の希望“月”……今この瞬間月下のこの街は今まで類をみないほどの美しさを見せていた。




「へ〜ここが桜時市か〜」




――そして風が止む。その透き通る美しい声と共に。



女性とも男性とも呼べないようなその高くもなく低くもない声。


そんな声がまるで風に運ばれてきたかのように鳴り響くのだった。




「なかなかいい街じゃないですか……ギリギリで」




藍色の髪を靡かせるその声の主である少年はそう言いながらこちらを振り返りあたしに向かってニッコリと微笑んでくる。


月をバックにしたその姿はまるで“月そのもの”のように奇怪で怪しく――美しかった……。




「……ねぇ。あなたもそう思いませんか【凪】?」




――そんな彼を……あたしは【夢】に見たのだった。








           `







―第二章“プロローグ”―


―――【月の道標】―――









           `



凪side



「……また…見ちゃった」




まだ真っ暗な夜中。あたしはそうポツリと呟いて目蓋を開くと重たい体に鞭をうってゆっくりと上半身だけを起こしあげる。


寝間着にしている白い浴衣は雨にうたれたかのようにびっしょりと汗で濡れていて気持ちが悪い。

伝統ある和室の畳に敷かれた布団もまた然りでその役目をまったく成し遂げていなかった。




――半月ともなるとさすがに慣れるわね……。




だけどあたしはそんな状況にまったく動じることなく心の中でそう思うと立ち上がりゆっくりと汗で濡れた浴衣に手をかけた。




――シュルリ……




布が擦れる音がする。それと同時にあたしの白い肌が露わになり瞬く間にあたしは全身何も身にまとわない姿となった。


汗で全身濡れた体は4月のこの季節。部屋の中とはいえ肌寒い。


自分で言うのもなんだけど華奢で細いあたしの体にはかなり堪えるものがあった。



――だけどそれは当たり前のことである。


もともと大きく伝統的なこの畳だけの部屋は所謂平安時代の"寝殿造り"という造りになっている。


寝ることだけを重視して防寒対策などが一切行われていないこの部屋――。


でもあたしがこの部屋を寝床にしているのにはある理由がある。


それはいい感じに古い畳を摺り足で歩きながら布団から遠ざかり(すだれ)をくぐり抜け襖を開け放った先にある夜が怖いあたしの希望の光――。




「……いい【月】ね」




4月の寒々とした綺麗な夜空を明るく照らし出している――【月】。


今宵は見れば見るほどあたしの病んだ心を落ち着かせてくれる【満月】だった。




あたしがこの部屋を寝床にしている理由。


それは夜に恐怖するあたしを慰めてくれるこの【月】に早く逢えるからである。




――――――――


―――――


―――





あたしはここ最近ずっと同じような夢を毎夜のように見続けていた。


あたしの親友“美濃輝喜”が消えたこの半月ずっと――見続ける夢が。




「……【予知夢】よね……あの夢は……」




内容は簡単。簡単すぎて最早一言一句間違うことなくセリフも言えるし藍色の髪の彼の顔の特徴は全て覚え尽くしていた。


そして何回も――何回も――同じシーンを流し続けるあたしの夢にはある共通点。つまり全てが同じ結末を迎える。




――現実に起こるという結末を……迎えるのだ。




「……【瑠奈】か」




夜風が何も身にまとわないあたしの体を優しく包み込みあたしは夢に出てきた少年の名前を呼んでみる。


あのあたしを救い出してくれる希望の【月】と同じ名前を持つ彼の名前を……。






あたしを未来に導いてくれる【月の道標】を……。





???side



「……この街に戻ってくるのも久しぶりっすね」




凪が眠れずに夜空の満月を見上げているのと同時刻。


この桜時市全体を見渡せる半月前まで洋館があったこの丘でも1人の少女が凪と同じように【満月】を見上げていた。



透き通るような雪のような白い肌。ルビーのような赤い瞳はは燃えるような炎のようではなく、まるで【血】のように綺麗な真紅の色で染まりあがり――その瞳と同じような色をした紅の髪の毛をツインテールにした誰もが認める美少女――。




「まさかウチがこの街に戻ってこれるなんて……」




【天野うずめ(あまの−)】という名前の美しい少女であった。




「ラッキーっす♪」




少女――天野うずめは少しほんわかとした喋り方をしながら楽しそうにそう笑うとスキップしそうな勢いで小高い丘の上をうれしそうに駆け回る。


初めて外に出た子犬のような彼女の行動に俺はクスリと微笑してしまった。




「まったく……うずめ。そんなに慌てて走ると転んでしまいますよ?」


「何言ってるっすか!!こんな日に走らなくていつ走るっすか!!隊長!!」


「……やれやれですね」




俺はまるでどこぞやのお姫様みたいな姿をした彼女のそんな姿に呆れて溜め息をもらします。


ですがそんな底抜けに明るいところが彼女の良いところなんだと改めて実感した瞬間でもありました。




「うずめ。いい加減あなたは分かってください」


「みぎゃっ!?」




ドテ――――ンッ!!!!




――自分が【ドジっ子】だと言うことに……。



そう俺が続けようとしたときにはすでに手遅れでした。


なぜなら走り回っていたうずめは自分が着ている水色のワンピースに脚をとられてしまい……。




「うぅー……転んじゃったっすよ……」




13歳の少女とは思えないような顔面スライディングをしたからでした。




「だから言ったじゃないですか。人の話は最後まで聞いてください」


「そんなこと言われても遅いっすよ〜」




涙を紅蓮の双瞳から流すうずめ。そんな姿すら様になっています。


これだから美少女は得なんですよ……。




「はいはい。わかりました。わかりましたからそんなに泣かないでください」


「うぅ……分かったっす」




未だにボロボロと涙を流してているうずめに俺は手をさしのべながらそう言いました。


まるで小さな子供を見ているようですね……。


うずめの方も実はこの属性を抱えているからかこういうのには慣れっこなので素直に俺の手を握り返します。


そんな素直なうずめに俺は再びクスリと微笑してしまいました。




「……ありがとうっす」


「いえいえ。問題no…どういたしまして」




俺は【彼】の口癖を口走りかけてしまいましたがギリギリのところで踏みとどまりました。


俺にはこの口癖を使う権利なんてないのに……。頭の中ではそう理解しきれているのに俺はこの言葉を心から離れさせることができませんでした……。




「……いけませんね」


「どうかしたっすか?」


「いえ。ただ【月の光】が綺麗だと思っただけですよ。ぜんぜん――」




無意識のうちに漏らした言葉の後始末。それを打ち消すための言葉も俺には決まっていました。


記憶を失った俺が持つ楽しかった第2の過去を消し去る言葉として……。決別の印として……。




「【問題ありません】」


「……そうっすか」




今宵の月は【満月】そんな月の放つ綺麗な光に照らし出された桜時市を俺は見つめました。


【月の光】はあんなにも綺麗で美しく雅びなのになぜ俺の体に宿った光は――。




――こんなにも黒く悪しく汚ないのでしょうね……。




俺は見渡す街に住む親友“だった”4人にそう問いかけました。だけど誰も応えてはくれません。


ですが俺はこの街に帰ってきました……。







「【輝喜】さん。そろそろ行きましょうっす」


「……そうですね」




大事な大事な親友“だった”あなた方をこれから襲い来る敵から護るために。




たとえこの身を犠牲にしても……。






日向side




 月見れば千々に

    物こそ悲しけれ

 我が身ひとつの

    秋にはあらぬど




ここ数日。寝ることが生きがいの俺が眠れない日々が続いていた。


理由は分かっている。




俺達の【親友】眼帯をつけた少年"美濃輝喜"だ。




あいつが俺達の前からいなくなって今日でぴったし半月がたつ。だが俺達は依然としてあいつのことで立ち直れていなかった。


凪は授業中にボーっとしているのをよく見かけるし真備は突然壁などに拳を打ちつけるのをよく見かける。


かくうえ俺自身も今こうして深夜にベランダで夜空の【月】を見るという普通ならありえない状況を作り出しているのだが……。


唯一チエだけはいつもと変わらないような笑顔をしている――だけどそれも昼間だけの話だ。


こんな寝静まった夜に耳を澄ませば隣の家からチエのすすり泣く声が聞こえてきたりする。俺が眠れない原因の1つでもあった。




「…月見れば千々に

    物こそ悲しけれ  我が身ひとつの

    秋にはあらねど」




ふと【月】を見上げていたそのとき頭の中に小等部のころ習った百人一首の一文が思い浮かんできた。


あの頃は何でこんなのを覚えさせられるのか分からなかったが……。


この歌は今の俺の状況を見事に現してくれていると思った。



――月を見ると心がさまざまに乱れて物悲しいことだ。自分一人だけに訪れてきた秋ではないけれども。



今の季節は秋じゃなく春だがそんなことは関係ない。俺は自分が見上げるこの綺麗な【月】が嫌いなのだ。




あいつ――“美濃輝喜”を思い出してしまうあの幻想的な【満月】が……。




「明日も寝坊かな……」




――――――――


―――――


―――




【“不知火日向”】

【“羽前凪”】

【“美濃輝喜”】

【“天野うずめ”】


そして……。

【玖河未=瑠奈=セイレン】



奇しくもこのとき空に浮かぶ【満月】を思い思いに見上げていた5人こそが明日から始まる3日間の新たな闘いの中心となる人物であった。



彼らは何を思い何のために闘うから今はまだ謎に包まれている……。


だけど時間は待ってくれない。彼らを新たな闘いへと誘うための序曲はすでに始まっていた。


今宵より3日間ここ桜時市で行われる“戦争”の序曲が……。








――そして夜が明ける。新たな闘いが今始まった。





           `


作「お久しぶりですみなさん!!!!作者の†HYUGA†です!!!!」


知「こんにちは〜ヒロインの姫ノ城知恵理でーす」


真「双子陰陽師の片割れの羽前真備だ!!」


作「てなわけで今日はこの3人で後書きを続けていきたいと思いま〜す!!」


知&真『わ―――いっ!!!!』


作「さてではさっそく始めていきたいと思います」


知「はいはいは〜い♪作者さん。質問してもいいですか?」


作「OK♪じゃあ質問どうぞ知恵理!!」


知「うん。じゃあね〜どうして今回のタイトルは【月の道標】なの?」


作「お答えしましょう。今回は【月】をテーマにしているのと少し失礼ながらステレオポニーの曲からとらせて頂きました」


真「【ツキアカリのミチシルベ】か?」


作「まぁそうなりますね。ちなみになぜ【月】なのか……それは皆さんも気付いてるかもしれませんが【あの人】と関係があります」


知&真『あの人?』


作「……ですがそれはまた後日ということで次回予告行きたいと思いまーす!!


1人の親友を失ってから半月がたった。


悲しみに暮れる親友と幼なじみに日向は唇を噛み締める。


だがそんな日向達の前に1人の少年が現れる。


果たして彼の目的とは?正体とは何なのか?


次回【ABILITY零】」



日「問題nothingだぜ!!」


真「ところで今回は日向の博識なところがあったよな……?」


知「うん。私なんてあんなの覚えてもいなかったよー」


作「ちなみに【電子辞書】使って調べました〜」


知&真『まさかのカミングアウト!?』



次回に続く!!

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