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時の秒針  作者: †HYUGA†
次章予告&番外編Ⅰ
55/76

番外第弐話【暁】


すみません。今回は書き上げるのにだいぶ時間がかかってしまいました。


しかも最近は番外編の

【時の秒針 万葉集】

の方に時間をかけてしまいました<(_ _)>


あと1つだけこの話を読む上での注意を――。



本編中の【問題nothing】は日向のセリフではなく空のセリフなのでご注意ください。



では本編へ( ^-^)_旦〜




`


空side



「で!!あたしと真備は双子の姉弟で2人とも桜時学園の小等部2年!!分かったかしら!?」


「い、イエスマム」




俺は何故かは分からないが現在見た目幼女の少女に説教されている。


そして俺の横では彼女の双子の弟である見た目小学4年ぐらいの少年がこのシュールな光景に苦笑いしていた。


正直なんだこれは!?って状況だ。




「ふぅーお腹もすいたしこんなもんでいいかしらね」どうやらお説教は終わりみたいだ。


そのまま少女はハンバーガーの注文をしにカウンターに向かっていった。




「なぁ?」


「どうかしたっすか?」




少女にお許しを貰った俺は隣でずっと立ちすくんでいた少女の弟に話しかけた。




「お前いつもあんな攻撃受けたり説教されたりで肩身が狭いと感じたことはないか?」


「………」




俺がそう問いかけると少年は黙ってしまう。


だがその瞳は鋭く尖ったナイフのように俺を見る――いや寧ろ俺を睨んでいる。


だけど俺は言葉を続けた。




「俺にも妹と弟みたいな奴がいるんだけど……お前の姉ちゃんみたいなあそこまでバイオレンスじゃないぜ」


「………」




少年の拳を握る力が強くなっていく。


もうここまでくれば目の前の少年の感情を読み取ることは簡単だった。


会って数十分のこの姉弟だが俺はこの2人に尊敬心すら湧いてきていた。



そして遂に少年は限界突破に達する。




「ふざけんなよ……!!俺はお前の言っていることは全然分からねえがナギねぇのことを馬鹿にしてるのだけは分かる……!!だけど生憎と俺はお前の弟や妹よりナギねぇの方が何倍もいい兄弟だと思ってんだよ……!!口出しすんな……!!」




本当に……本当に俺はこの双子の姉弟を尊敬するよ。


その言葉を聞いた俺は暖かい笑みを浮かべるとくしゃっと少年の頭をかき撫でた。


その行動に少年は呆然としてすまうもすぐに照れくさそうな顔をして頬を赤く染めながら俺の手をはねのける。




「なななな何すんだよ!?」



慌てすぎて呂律が回ってない少年に俺は微笑ましささえ感じられた。




「お前いい奴だな」




そして自然とそんな言葉が俺の口から発せられていたのだった。




「なななな何言ってやがんだよ!?」


「ん?そうだな……俺はお前が好きだってことだ。もちろんお前の姉貴もな」




ニッコリと微笑みながら俺は少年に語りかける。


それは正真正銘の俺の本心だった。


俺はこの少年を気に入った――俺は真っ直ぐなこの少年のことを尊敬し日向と知恵理にもこんなふうに育ってもらいたいと思ったのだ。




「お前……俺のこと兄貴と呼ぶ気はないか?」




さらに饒舌になった俺は自然な流れでそう言う。


さらなる爆弾発言に少年は再び固まるもすぐに嬉しそうに鼻で笑って陽気な口調で口を開いた。




「残念だな兄ちゃん。俺の兄弟は今も昔もこれからもナギねぇ1人だけだぜ!!」




それは俺にとってはちょっぴり残念な返答で目の前の少年のまた新たな一面を見れたかなりうれしい返答だった。




「そうか本心から残念だよ……俺はお前のその真っ直ぐなところを気に入ったんだけどな……」


「俺はさっきまであんたのことだい嫌いだった。だけど……今のあんたの不思議なところは案外好きだぜ?」


「ありがとな。もしかしたらお前達姉弟と俺の妹と弟分は同学年だから学校で会うかもしれない。そのときは仲良くしてくれよ?」


「あぁ……さっきはあんなこと言って悪かったな」


「気にすんなって!!!」




俺のその言葉をきっかけに俺達はお互い笑いあう。


それは桜時市で日向達と笑いあったとき以外で初めてだったかもしれない……。




「それじゃあ元気に過ごせよ少年♪」




お互い笑いがおさまると俺は少年にそう笑いかけながら言う。


それに少年はしっかりと頷きながらニッシシと今日最高の笑顔をしてくれた。


そしてその笑顔を見ながら俺はその場を立ち去っていったのだった。




「あれ……もう帰えっちゃうんだ?」




マックを出ようと入り口に向かってる最中に手にハンバーガーが乗ったお盆を持つ少女と会った。


俺は彼女の小さな肩に手をおくと彼女にしか聞こえないようにそっと呟いた。




「お前は俺と同じでいい弟を持ってるな」




すると彼女も俺の言葉にニヤリと笑みを浮かべると当たり前のように俺の言葉に返答をするのだった。




「当たり前でしょ。自慢の弟なんだから馬鹿にしたらはっ倒してたわ」




――本当にこの双子に出会えて良かった。


その言葉が頭に浮かんできたのは必然なんだろうな。




「じゃあ元気でな」


「あんたもね」




そう言って俺は素晴らしい出会いをしたマックを立ち去るのだった……。






凪side



あたしはあのお兄さんに別れを告げた後すぐに真備のいるマックの奥へと進んだ。


するとそこにはどこか嬉しそうな表情を浮かべながら頬杖をついている真備が椅子に座っていた。


あたしはその表情を見て真備の笑顔を久し振りに見た気がした。




「あんたうれしそうな顔してるわね。何かあった?」




あたしがそう問いかけると真備は満面の笑みを浮かべながら右手でピースを作り嬉しそうに語り出した。




「おうナギねぇ!!実はさっきのカッコイい兄ちゃんが言ったんだけどさ!!あの兄ちゃんの妹と弟がなんと俺らと同い年らしいんだ!!だから兄ちゃんがもしかしたら友達になれるかもって言ってくれたんだよ!!」




その純粋無垢な笑顔であたしに報告する真備を見ていたらあたしも自然に笑顔になる。


本当に馬鹿みたいに明るい奴なんだから……。




「そうね……あのお兄さんの妹と弟ならあたし達にも気軽に接してくれそうね」


「だろ?あー早く会いたいなそいつらに!!」


「ふふふ。そうね」




あたしと真備はそう言いながらハンバーガーを手に取る。


だけどあたし達はその間学校での生活が頭の中に入り込んできた。




【陰陽師】という家系を気味悪がり忌み嫌ってあたし達に誰も近付いてこない孤独な学校生活を……。




あたし達は孤独。だけどあたし達だって友達が欲しい。


親友と呼びあえる友達を作って一緒に楽しい学園生活を謳歌したい。


されが今のあたし達の唯一にして絶対の望みだった。




「あ!!」


「ど、どうしたのよ真備?いきなり大声だして?」




突然大声で一言そう言った真備が椅子から立ち上がる。


いったいどうしたのよ!?


だけど真備の言葉はあたしにも衝動を与える衝撃の一言だった。




「あの兄ちゃんの名前聞くの忘れてた……」


「………………あっ!!」




そういえばそうだったと今更思い出したあたしだが時すでに遅し。


あのお兄さんはマックを出て何処へと消えてしまっていた……。




「手遅れか……」


「そうね……しかもお兄さんの名前が分からないと妹さんや弟さんの名前も分からないわ……」


「マジかよ……」




まさかの事態にあたしと真備は呆然としてしまう。


あたしともあろうものがとんだ失態だったわ。




「はぁー……どうやら友達ができるのはまだまだ先みたいね……」


「友達……」






どこか哀愁を漂わせながら呟く凪にさっきまでの笑顔がなくなって悲しそうな表情を浮かべる真備。


その瞳には普通の小2の子供にはない孤独があった。



だが皆さんもご存知の通りこの日より約1年後彼ら双子と日向&知恵理は出会い様々な葛藤の上で親友と呼び合う中になる。


しかしこれより空が亡くなるまでの2年間。空は彼ら双子に会うことは1度もなかった。


だけどその話はまた別の機会で話すとしよう。






「あっ!!」


「今度は何!?」




落ち込んでいた2人だったが再び真備が何かを思い出し立ち上がる。


だけど真備の口から出た言葉はまたしても間抜けな話だった。




「あの兄ちゃん……何も買わずに出て行かなかったか……?」


「………………あっ!?」




昔から変わらない羽前姉弟でした。






知恵理side



「そう落ち込むなってチエ。そろそろ兄貴も戻ってくると思うしな?」


「……ぐすっ」



こんにちは知恵理です。現在私は可愛かったらしい猫を見つけられなかったためヒナ君に慰められながら手を引かれてもといた場所に帰っている途中です。


ヒナ君の手はとても温かくて私の悲しい気持ちを癒やしてくれました。




「ヒナ君……」


「分かってるって。だから泣かないでくれよ。な?」




言葉を交わさずともヒナ君は私が言いたいことがわかるみたい。


やっぱりヒナ君はすごい。


私を優しく包み込むヒナ君の手から伝わる手の温もりもヒナ君の心の温もりも私を安心させてくれるんだから……。




「うーん。どっちかな?」




さらに少しヒナ君に手を引かれて歩いたとき。だいぶ涙と一緒に悲しい気持ちも薄れた私はヒナ君の声に立ち止まった。


どうやら道に迷ったみたい。



――うぅ〜……ごめんなさいヒナ君……。



私達がこうして道に迷ってしまっているのは完全に私のせいだ。


私がネコちゃんを追いかけなんてしなければな。


そう思うと私は少しシュンとした気持ちになって凹んでしまいました。




「……そんな落ち込むなってチエ」




落ち込んでしまった私にヒナ君は頭を撫でながらそう言ってくれる。


私はその暖かさに大きな安心感が生まれました。


髪を撫でられることってこんなに気持ち良かったんだと私はこのとき初めて思います。そしてそのときでした。




「よお!!お前らこんなとこにいたのかよ!!」


『……!!』




聞き覚えのあるその声に私とヒナ君は振り返る。


そこには私達の予想通りといえる人物にして私達のお兄ちゃん。



――姫ノ城空がいました。




「お兄ちゃん!!」


「まったく……お前らどこ行ってたんだよ」




ガバッ




お兄ちゃんは少し息を切らしながら私達のもとに駆け寄ってくると私とヒナ君を強く抱きしめる。


ヒナ君は少し戸惑ってるけど私はお兄ちゃんのその強くなく弱くもない抱きしめられ方に温かい温もりを感じました。




「あんまり心配かけさせんなよ……2人とも」


「……心配ないって兄貴。俺がついてたんだから」


「馬鹿だな日向。それでも心配するのが兄貴ってもんなんだよ」




ギュッ




ヒナ君の言葉にお兄ちゃんは少しだけ抱きしめる力を強くする。


街中に流れる人達の中。私達のそんな光景は異常だったかもしれません。


だけど私はこの時間が永遠に続けばいいと思いました。




――永遠に……。






空side



「兄貴……さすがに恥ずかしいからもう止めてくれ」




2人を抱きしめること数分そう言って日向が俺の抱き締める手を叩いてきた。


そんな日向の行動に俺はついついここが往来のど真ん中だということを忘れていたらしくこっぱずかしくなり慌てて腕を放した。




「はははは……わりーな2人とも」


「はぁー兄貴ともあろうものが何やってんだよ」




顔を少しだけ赤くした俺の言葉に日向はあきれながらもどこか満更じゃなさそうにそう応える。


だがそれに対して俺の妹である知恵理の方は少し残念そうな顔で俺の方を見つめていた。




「ん?どうかしたかチエ?」


「……あ。お兄ちゃん……うんうん何でもないよ」




いつもよりちょっと元気のない声に俺と日向は首を傾げる。


いつものチエなら日向と同じように顔を赤くして恥じらいながら俯いてしまうという何とも可愛らしい行動をすると思うんだが――。




「お…おいチエ?どうかしたのか?」


「もう……。大丈夫だってヒナ君。心配し過ぎだよ?私は……大丈夫。……大丈夫…だから……」



少しずつ……少しずつ掠れていくチエの弱々しい声に日向は言葉を失ってしまう。


そしてその時のチエの表情。その表情はなぜかは分からないが――。








――涙を流しながら切なげに笑っていた。




「何もないって……何もないならなんでそんなに泣くんだよ……」


「……ぐすっ」




日向がチエの背中をさすりながら優しく問いかけるがチエは涙を拭うだけで何も応えない。


そんなチエにだんだん日向も俺とチエを交互に見ておろおろし始める。


たぶん俺に助けを求めてると思うんだけど――。



――すまん日向。俺もどうしたら分からないんだ。



日向同様。俺もいつもとは違うチエの様子におろおろするしかなかった。


辺りに人が集まってくる。だが俺達はその場から動くことができない。


俺はこの場を切り抜けるために様々な考えを巡らせるも何も思い浮かばなかった。



だがそのとき――。







「はぁー……何やってんだよお前ら……」


「あらあら?何の大道芸かと思いましたらあなた方でしたか……納得です」




――俺達を助けてくれるありがたい救世主が現れたのだった。




「"音弥"!!"春姫"!!」




そこにいた2人――少し長めの茶髪に綺麗な瞳を持つ格好いい(少年陰陽師の六合を小さくした感じ)少年と長髪の黒髪をポニーテールにした可愛らしい(同じく少女陰陽師の風音を小さくした感じ)少女の名前を俺が呼ぶと2人は俺達にニッコリと笑顔を見せてくれた。




「どうしてお前らが?」


「……まぁ。なんていうか……あれだ。あの……いわゆる…えっと…その……」


「【デート】です」


「うぅー……///」




歯切れの悪い音弥にさらにニッコリと笑顔を深めながらトドメをさす春姫。


だが実はこの2人は日向とチエと同じく"幼なじみ"でそれに付け加えて"恋人"関係なのだ。




「ばっ…!!お前なぁーもうちょっとオブラートに包めよな!!」


「あらあら。わたくしは真実を告げただけですよ?」


「くっ…///でもな…///」


「……それともわたくしとデートだと知られるのが嫌だったのですか?」




涙目上目遣いで音弥を見上げる春姫。


その威力はまさしく核弾頭にも匹敵する。俺の知る限りチエと今日会った羽前の嬢ちゃん。そして彼女――"雲雀春姫"だけである。


そしてそんな核弾頭級の威力を持つ涙目上目遣いをまともにくらった音弥はというと――。




「……………」




あまりの出来事にフリーズしてしまっていた。




「あらあら♪」


「はぁー…あまり音弥を虐めんなよ春姫。音弥は俺の【親友】なんだから」


「ふふふ♪それ以前に音弥さんはわたくしの幼なじみで恋人なんですよ?」


「……【ドS】が」




ジト目で春姫を見つめながら俺は春姫の核心部分を突く。そしてそれに春姫は少し妖美な笑みを浮かべ音弥を見つめていた。



――こんな奴に好かれちまった音弥も大変だな。



だが音弥を見つめながら妖美な笑みを浮かべる春姫。俺は彼女の瞳の先にとても深い愛情を見た気がした。


頬を綻ばせながら2人を見ていると――。




「なぁーチエ。俺が何かしたんなら謝るからさ?どうしたのかを教えてくれないか?」


「ぐすっ…ぐすっ…何も……ないもん……」




あの2人の未来を見てる気がした。


少し違う気もするがな。




「…………」


「あらあら。どうしたものでしょう……あは♪」




さらに数秒後。春姫は音弥を見つめた後何かを思いついたのかうれしそうないたずらっ子のような表情を浮かべた。そして未だに固まってしまっている音弥へと近づいていくと――。




「いただきます♪」


「むぐっ!?」




――そのままの勢いで音弥の唇に口づけるのだった。




『『ン…レロ…チュ…クチュ…クチュ…チュパ…チュパ……レロ……』』




音弥と春姫の繋がった口から官能的な音が辺り一面に木霊していく。


ていうかおいおい。こいつらわかってないのか?今俺達がいるここって――。




『ヒュー♪』

『やるねー姉ちゃん』

『キャーキャーすっごぉい!!』

『……くそ!!リア充なんて!!リア充なんて!!』

『トイレはいったいどこなんだ!?』

『……(ブシャアアア)!!』




――街のど真ん中。一番人が多い所なんだけど……。



あと突っ込みどころ満点なお前ら!!まず三番目のやつ。リア充は仕方ない諦めるんだ!!俺の身近にもいるからその気持ちはよくわかる!!だがここは抑えてくれ!!頼む!!さて次に四番目のやつ。トイレで何をする気だ?あまりこの小説でそんな発言は自重してもらいたい!!こっちはシリアスを多めにしたいんだよ!?そして最後五番目のやつ。――と見せかけてその周りのやつら!!さっさと救急車呼べ!!そこに鼻血という名の出血多量で死にそうなやつがいるぞー!!!!????




『『チュ…レロ……チュパ……キュポン』』


「ぷはぁ…ご馳走さま♪」




そしてカオスと化したこの場を創りあげた2人組はお互いの唇を離すのだった。




「っ……///!?っ……///!?」


「あらあら♪」




唇が離れた瞬間音弥のほうは真っ赤に染まった顔がさらにリンゴのような綺麗な赤い色に染まりあがり春姫のほうはそれを見て再びいたずらっ子のような瞳で音弥を見つめていた。


思ったがお前ら本当に俺と同い年の中1かよ?


なんかいろいろと――特に春姫の方マセすぎじゃないか?


俺は12歳らしからぬ行動をとる2人に若干呆れながらそう思った。そしてそのときようやく音弥の自我が戻ってきたらしく口を開くのだった。




「ひ…"ヒメ"?何をやってるんだ……?」


「ふふふ♪キ・ス♪」


「ぐはっ///!?」




春姫の言葉に吐血する勢いで音弥は顔を真っ赤にさせながら崩落ちる。


ちなみに"ヒメ"ってのは音弥が春姫を呼ぶときの呼称である。春姫の姫からとったそうだ。




「な…何てことするんだ…大体ここを何処だと…!?」


「ん〜……街中?」


「よーし正解だヒメ。あとよく考えてみような?TPOという言葉を?」


「……音弥さん。どういうことですか?」


「……ん」




周りを見回しながらそこまで言うと音弥は顎である一点を指す。


そこにはいたのは。




『『うぅ〜………///』』




顔を真っ赤に染め上げた日向とチエのまだ少し実際はかなり大人になっていない2人だった。


その愛らしく可愛らしいまたウブで恥ずかしがる姿は思わず抱きしめたくなる程の破壊力をその身に宿していた。




「……空」


「……空さん」




と。そんな2人の姿に癒されていた俺に音弥と春姫の2人から声がかかる。


その声に気づいた俺は声の主がいる方向へと振り返る。だがそこにはさっきまでとは違う。少し真剣な顔をした音弥と春姫がいた。




「……え?」




そんな2人の急変ぶりに俺はポカンと呆然とした表情になってしまうも2人の表情はそれでも変わることはなかった。


そして2人はまだまだ顔が真っ赤な染まりあがっている音弥が日向の春姫がチエの手をそれぞれ握ると口を開く。


そこから出てきた言葉は俺の想像を上回る俺には思い付かない言葉だった。




「……まぁ。少し強引だったけどな」


「ふふふ♪どうです空さん。これで知恵理さんも元気がでたのではないでしょうか?」


「……っ!?」




日向とチエには聞こえないように俺にだけそう呟くと2人は再び笑顔を見せる。


その表情に俺はこの2人の凄さを改めて実感した。




「お前ら……。チエを元気づけるためにわざわざ街中でキスまでしてくれたのか……」


「……え///!?あーうん!!そうなんだよ!!ははは…ははははは……///」


「くすくす……」




――たぶん……。俺は2人を尊敬したと思う。




「うぅー///とにかく!!ヒメ!!知恵理ちゃんのこと頼んだよ///!?」


「ふふふ♪はいはいわかってましたよ♪」




顔を真っ赤にしながら音弥は日向の手を引き春姫にそう言って離れていく。


少しだけ可愛らしいその姿に俺は親友であるこの少年"響理=音弥=オペリア"について行くのだった。






知恵理side



「……ここまで来ればいいかしらね」


「お姉ちゃん?」




私はヒメお姉ちゃんと音弥お兄ちゃんの…あの……キキキ…キスシーンにヒナ君と一緒に頭が真っ白になっていたんだけど――。




「……ほぇ?ここどこ?」


「あらあら」




――気付いたら私は見たことない場所。


周りは住宅街だけど人の気配があまりない場所にいました。


突然のことに私は呆然とする私。


だけどヒメお姉ちゃんはそんな私の両肩に手を置くと目線をまだ小さい私の体に合わせるように屈み込んで私にニッコリと笑いかけました。


でもそんな笑みも一瞬のこと。




「知恵理さん」




笑顔はすぐにヒメお姉ちゃんは真面目な顔になり私の名前を呼びました。


その瞳はいつもとは違いお兄ちゃんやヒナ君が時々――最近は特によく――見る真剣なあの表情にそっくり。


私はその表情に体が固まってしまいそうでした。




「……1つ。お尋ねしてもよろしいですか?」




ヒメお姉ちゃんの声に私はただコクコクと首を縦に振る。


それを確認したらヒメお姉ちゃんは息を深く吐き出して「では…」と前置きを置くと――。




「知恵理さん。あなたは空さんや日向さんに不満を感じてる……そうではありませんか?」




――私の今の心情の核心を突いてきました。




「ふぇ!?な…なんでヒメお姉ちゃん?」


「あらあら♪やっぱりいつでも知恵理さんは可愛いですね♪――でも……質問に答えてもらってもよろしいですか?」




有無を言わせないという感じのヒメお姉ちゃんの言葉に私はたじたじになってしまう。


だから私はついに口を開いてしまいました。


ヒナ君とお兄ちゃん。2人に持つ思いを……。










「……ヒメお姉ちゃん」


「はい」


「ヒナ君とお兄ちゃん…私に隠れて何してるのか……知ってる?」




――それは“疑問”じゃなくて“確認”のための言葉でした。






日向side



「兄貴?音弥さん?」




気がついたら俺はなぜか音弥さんと手をつないだ状態で"街"の中心である噴水の前にいた。


そして目の前では俺の手を引く音弥さんと兄貴が真剣な表情で何かを聞いてる。


そんな2人に俺はそう声をかける。すると2人はこっちを振り返り俺の目線に合わせるように身を屈め俺と肩を組むようにして語りかけてきた。




「起きたか日向」


「よお日向。調子はもちろん問題nothingだろ?」


「……まぁ大丈夫かな。それより2人して何やってんだよ?」




俺の言葉に兄貴と音弥さんは一度顔を見合わせると何やら黒い物体を俺に見せてくる。


それはつい先日技術局の局長である“デモンさん”が俺達に見せてくれたものとまったく同じものだった。だが俺は兄貴と音弥さんが取り出したそれに顔ひきつらせてしまう。




「……兄貴。音弥さん。なんで【盗聴器】なんて代物を持ってるのかな?」


『『盗聴のため』』




さすがはお互いを親友と呼び合うだけに兄貴と音弥さんの2人は寸分狂わぬ形でそう言ってくる。


そんな2人に俺は頭を抱えれのだった。



――うん分かってる。そりゃ盗聴器なんだから盗聴するためにあることくらい分かってるさ。




「兄貴…音弥さん…盗聴は世間一般ではどういう行為か知ってるか?」


『『……さぁ?』』




再びシンクロした2人の言葉に俺は「はぁ…」と深い溜め息をついた。




「“……さぁ?”じゃねーよ2人とも!!いいか?盗聴はは・ん・ざ・いだ!?」




あまりの2人の非常識ぶりに俺は声を荒げてしまう。


だが2人――というか兄貴にはちょっと違うように解釈されてしまったようだ。




「……なぁ音弥。最近日向が俺にキツいこと言ってくるんだけど……これは所謂【反抗期】ってやつなのかな?」


「いや違うと思うぞ空。これは反抗期じゃない。そもそも時期も違うし……そうかあれだ!!【ツン期】だ!!」


「【ツン期】?聞いたことないな……音弥。それは問題nothingなのか?」


「あぁ問題nothingだ。いいか空?ツン期ってのは所謂【ツンデレ】のツンの部分だ」


「なんと!!あの最近噂のあれですか!?……ということはこの後は……」


「その通りだ空。この後は来るぜ……【デレ期】が」


「日向のデレ期か!?それは何とも………………………………………………………………………………………………………いい!!!!!!」


「だろ?だからそれまでの辛抱だ相棒!!!!」


「分かった相棒!!!!俺は日向のデレ期が来るまで待ち続けるぜ!!!!!!」


「おう頑張れよ!!!!!!」


「おう頑張るぜ!!!!!!」




――すみませんが先輩方。そろそろ突っ込ませてもらってもよろしいですか!?




「えぇい!!突っ込みどころが多すぎて何から言ったら分からないけどとりあえずこれだけは言わせてもらうぜ!!――ち・が・う!!!!」


『『えぇー!?』』


「驚き方がオーバーリアクションすぎだ!?つかいい加減に話を戻しやがれ!?」


『『……それもそうだ』』


「忘れるな!!!???」




2人のシンクロしたボケに俺はゼーハーと息を荒げながら怒涛の突っ込みを繰り出した。

そして本来の目的を思い出した2人はというと俺の言葉に目的を思い出したらしく真剣な表情に栄転する――そのときだった。


音弥さんの持つ盗聴器から普段から聞き覚えのある彼女の声が聞こえてきたのは。


俺はその声を聞いた瞬間内側に秘めた何かがいっきにはじきとんだ気がした。


彼女の声――チエの声を聞いた瞬間に――。





『……ヒメお姉ちゃん』


『はい』


『ヒナ君とお兄ちゃん…私に隠れて何してるのか……知ってる?』




俺は盗聴器から伝わってきたその声に口を閉ざしてしまう。だがそんな事は関係なしにチエと春姫姉ちゃんの会話は続いた。




『……あらあら。わたくしは何も知りませんわよ?』


『……ヒメお姉ちゃん。嘘ついてる』


『……っ!?』




その言葉はあまりにも唐突。だが春姫姉ちゃんや俺達が驚きで息を呑むには十分すぎる言葉だった。




『……あらあら。どうしてそんなことを言うのかしら知恵理さん?』


『……ヒメお姉ちゃん。私のこと天然な女の子って思ってるでしょ?』




――逆に聞く。それ以外の何者でもないだろ?


俺達の心が1つになった瞬間だった。




『ふふふ♪まぁそれで合ってるけどね♪』


『分かってましたの?』


『うん。だってヒナ君たら時々私のこと天然娘って呼ぶんだよ?いくら私でもそこまで言われたら自覚しちゃうよ……』



つまり自覚した原因は俺だということか。


うれしいのか悲しいのかなんだか複雑な気分だ。




『……でもね。つい最近。本当につい最近だけど私気がついたことがあるんだよヒメお姉ちゃん』


『……と言いますと?』




チエはそこまで言うと口を閉じてしまう。だけどそれも一瞬だけのこと。


チエはすぐに再び口を開き語り続けた。




『私ね“ヒナ君”のことにだけは敏感みたいなんだ』




その言葉は俺にも兄貴にも音弥さんにも意外すぎることだった。




『……え?それはいったいどういう……』


『例えばね。この間ヒナ君が落ち込んでたことがあったんだ』




春姫姉ちゃんの言葉を遮りチエは口を開く。だがその口調はとても饒舌でとても嬉しそうに俺は感じた。




『その原因をねヒナ君は誰にも言わなかったの。だけどあれは絶対女の子関係で何かあったんだよ』




その言葉に兄貴と音弥さんは俺の方に振り返ると確認のためかただじっと俺を見つめてくる。


そんな視線(死線?)に俺は耐えられず白状した。




「……バレンタインデーに学校でチエからチョコレートもらえなかったから落ち込んでたんだ」


『『……大当たり』』




俺の言葉に兄貴と音弥さんは苦笑いを浮かべる。ちなみにチョコレートは家に帰った後チエにあーんして食べさせてもらいました。




『……だから。私お兄ちゃんが隠し事しても分からないんだけどヒナ君が隠し事してると分かっちゃうんだよ……』




――その言葉は俺の中の何かを狂わせた気がした。



端から見ればいいことなのかもしれない。だけど俺にとってみればそれは死活問題だった。


チエは俺が隠し事してたら分かるって言った。それはもしかしたら【あの事】も俺が所属している【組織】の事もわかってしまうかもしれない。



俺はあそこには絶対チエを関わらせたくないのだ。




『……知恵理さん』


『ヒメお姉ちゃん。ヒナ君の秘密を教えてなんて言わないよ?どうせ教えてくれないと思うし……でもこれだけは教えてほしいの』


『……何ですか?』




チエの言葉に俺達はゴクリと喉を鳴らす。


次の言葉はいったい何なのか想像もつかなかった。




『『……』』




次の言葉を待つために俺達は口をチャックを閉ざしたように閉ざす。


数秒たって数分たって数時間たって――俺はこのチエの言葉を待つ僅かな時間がそれくらいに永く感じた。




『……ヒメお姉ちゃん』




そしてチエが再び口を開いたとき出てきた言葉は俺達の心を貫くのだった。


彼女の――チエの寂しげで優しい心を一言で表した言葉だったのだ。









『……ヒナ君とお兄ちゃん。無茶してませんか?』


『『……っ!?』』




チエのその問いかけは普段突然いなくなる俺達2人と一緒に過ごせない寂しい気持ちとそれに伴い俺達を心配する彼女の優しい気持ちが現れている。


そんなチエの問いかけに俺達は知らぬうちに――。




「はぁー……まぁあんなの聞いちまったら当然だな」


「うん。チエの言葉は俺達にはちょっと刺激が強すぎたよ……なぁ兄貴」


「あぁまったくだ。こいつは問題nothingとは言えないな……」




――瞳から大粒の涙を流していた。



だけど悲しさなんて一切感じない。俺達が感じるのはただただ心地いいだけの快楽だった。ある意味では不謹慎かもしれない。だけど俺達はチエが与えてくれたその快楽に溺れてしまいそうになる。


流れる涙はたぶんそんな熱い快楽を抑えるための保冷剤。俺は勝手にそう解釈していた――。




『あの2人なら心配いりませんよ知恵理さん。それは誰よりもあなたが一番よく分かっているはずです』




だから春姫姉ちゃんのその言葉が聞こえたときには俺と兄貴の目の前は涙で何も見えなかった。


噴き上がる快楽を抑えるための大量の涙によって。






空side



「……とまぁ。こんな感じだが2人はこれからどうするんだ?」




俺と日向がそれなりに涙を収めて落ち着いたとき。我が親友である音弥はそう切り出してくる。


だが確かにそれは的をえた言葉だった。




「……まぁな。いままでこんなことなかったしな」


「うん。兄貴の言うとおりこんなこと俺も兄貴も初めてだし……」




俺の言葉に同意するように日向はそう言うと頭をクシャクシャとかきむしる。


そしてそんな俺達の様子を溜め息混じりに眺めていた音弥は胸元から銀色の細長いものを取り出すと戸惑いなく口に加えた。




「……音弥さん?」




不思議そうにその様子を眺める日向。そんな日向の隣にいる音弥は俺達の視線を受けながら目を瞑ると。




「ではお聞きください…。


"永六輔"作詞

"いずみたく"作曲

[見上げてごらん夜の星を]


……It's showtime」




♪〜♪♪〜♪♪〜♪♪〜♪〜〜♪♪〜♪〜〜♪〜〜♪♪♪〜♪〜♪♪〜♪〜




かぷっと音弥が取り出した銀色の細長いもの――つまりハーモニカに唇を当てると辺り一面に美しいハーモニーが響き渡り始めた。


その音は彼の澄み渡る心を表したかのような清く美しくそしてたくましい音色。


旋律は俺達の心の汚れを洗い流すかのような浄化の力を持っている。そう思えてしまうほど音弥の奏でる曲は俺達を虜にした。




♪〜♪♪〜♪♪〜♪♪〜〜〜♪〜♪♪〜♪〜♪♪〜〜♪♪♪〜♪♪〜〜♪




気付けばまるで時が止まったかのように辺りは静まり返っている。


道行く人々は例外なく立ち止まり音色を耳が受け入れ心を浄化する。


これが【音の能力者】にして音楽のスペシャリストの力。俺達はそんな彼をこう呼んでいる――。





――【"破壊の旋律"】――





――と。それが彼。音弥のもつ最高の力なのだ。




♪〜〜♪♪〜♪♪♪♪〜〜♪♪♪〜〜〜♪♪♪♪〜〜♪♪〜♪〜……




「皆さんご静聴。ありがとうございました」



パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ




一礼してその場にいる人全員にそう言うと辺りからは溢れんばかりの拍手が鳴り響く。


それはまさしく大喝采の印であった。




「……空…日向」




大喝采の拍手に応えるようにもう一度礼をした音弥は真剣な面持ちで俺達の名前を呼ぶと旋律を奏でたハーモニカを胸元に収める。


拍手もまばらになり音弥の曲を聞き惚れていた人々もだんだんと姿を消していきいつのまにか最初と同じように音弥の側には俺と日向しかいなくなっていた。


そして辺りがいつもの平凡な世界へと変わったとき隣にいた日向がそっと口を開いた。




「音弥さん?どうしてこの曲を……?」



元来から音弥は言葉で言い表しにくいことは音楽を使って表すことが多くある。


それすなわち今回もおそらくそのパターンだということなのだ。


そしてその予想は見事に当たっていた。




「……これは俺が元気なかったときにヒメが歌ってくれた曲なんだ」




そう言った音弥の顔はとてもカッコ良く幸せそうに見えた。


だがアイドルにスカウトされるほどの容姿と歌唱力を持つ春姫に自分の為だけに歌ってもらったんなら仕方のないことだな。


でも。今の状況とこの歌は何の関係が――。




「……音弥さん。つまりどういうことですか?」


「お前も鈍いな〜日向!!」




俺が心の中で疑問に思ったことを口に出す前に日向が同じことを音弥に尋ねると音弥は豪快にそう言いながら日向の肩を叩いた。


それに日向は少し拗ねたように唇を尖らせながら音弥を見ているがさすがに痛くなったのか十発目くらいになるとその場から無理やり逃げ出していた。




「音弥さん。俺小学2年生ですよ?もう少し手加減考えてくださいよ……」


「ははは♪すまんすまん。それはそうと話の腰を折っちまったな……」




音弥は楽しそうに笑いながら日向の頭をクシャッと撫でながらそう言うと今度は視線を俺に向ける。


その視線は俺に応えを求めているようだがあいにく俺も分からなかった。


だからゆっくりと首を横に振ると音弥は「兄弟揃って鈍感だな……」と苦笑いしながら呟いた。




「まったく。これから先2人で何人の女の子を泣かすのかね〜……いいか?2人とも。俺が言いたいのはな――」






日向side



ガチャ!!




「ただいまんとひひ」


「おかえりリカルなのは」


「……なんでこの天然兄妹はこんなにもレベルが低いんだよ」




こんばんは日向です。えーまずは状況を確認したほうがいいかな?


冒頭のセリフだけじゃ兄貴とチエのバカ兄弟ぶりしか分からないだろうし……。


じゃあ少し回想させてもらいます。俺達――つまり俺。兄貴。音弥さんの3人はあの後少し用事が出来てしまったからチエを春姫姉ちゃんに任せてそのまま街に繰り出した。


だけど予想より永くかかっちまって遅くになってしまい音弥さんと春姫姉ちゃんと別れた後最終的には現在の時刻(夜の8時)になっちまったわけだ。


ちなみに冒頭のセリフは帰ってきた兄貴が玄関に入った一声目。チエが俺達を出迎えてくれた一声目。そしてそれに呆れた俺のボヤキになっている。




「もう……2人とも遅すぎだよ〜」


「いや〜悪い悪い。ちょっとばっかし用事があってな……」




昼間とは違い涙のあとがいっさい見えないチエはそう言いながら頬を膨らませた。


対して兄貴の方は頭をかきながら少し照れくさそうにそえ返す。


いつも通り。そういつも通りの和やかなその会話は俺の心を温かにさせる。


そんな空気の中俺はポケットに入った袋をギュッと握りしめた。




「……もう仕方ないな〜早くご飯にしよ♪」


「チエ!!」




――この時代から家の家事をやっていたチエ。


彼女の作る料理は絶品だが彼女の料理を食べるのはもう少し我慢しなけりゃいけない。


彼女の料理を食べる前にやることがあるんだ――。




「ひょ?」




突然呼ばれたからか少し変な声を出してしながら俺達の方に振り返るチエ。


そんな少し可愛らしいチエに俺は今できる最高の笑顔を浮かべがら――。




ガバッ!!




「ごめんなチエ」


「……え?」




――優しく抱きしめながらごめんと呟いた。


それに深い意味は込めない。チエへの謝罪の気持ちだけを込めて俺は彼女にそう告げるのだった。




「どうしたのヒナ君?」




チエは俺の様子が変なことに気がついたのか抱きしめる俺の背中を優しくさすってくれる。


チエの銀色のサラサラヘアーが首あたりにスルスルと触れてとても心地よかった。




「チエ……渡したいものがあるんだ」




自然とその言葉が出てくる。いつのまにか俺の目の前に移動していた兄貴と目が合い俺達は頷き合うとそっとチエを抱きしめる腕を解く。


背中からスルリスルリとチエの細い腕が抜けるのを感じると目の前にはいつも俺を見ていてくれる彼女の綺麗な顔があった。




「ヒナ君?今日は何だかいつもより優しいね?」


「そうか?まぁ……今の俺はいつもより優しさ六割増しだからな!!」


「……それってすごいの?」




俺とは違い普通の小学2年生と同じチエにはまだこの問題は早かったみたいだ。


だが難しそうな顔でうーんと頭を捻るそんな姿ですら愛おしい。


俺はまだまだガキだけどこれだけは確信していた。



――俺はチエのことが好きなんだということを。




「ぷっ!!はははは!!そんな難しく考えなくったっていいってチエ!!」


「む〜」


「ほら日向も渡したいものがあるんじゃなかったのか?」


「……そういえば」




兄貴の言葉に再び俺達は和やかなムードへと誘われた。


そしてその空気の中俺は少しだけ低いチエの髪の毛を撫でるとポケットから紙袋を取り出す。




「ヒナ君。それな〜に?」


「うーん。そうだな……強いていうなら……」




不思議そうな顔で小首を傾げるチエ。俺は彼女にニッコリと笑いかけると紙袋から知恵理と同じ名前の花がついたそれを取り出した。




「……“お前”かな」




ピンク色に輝く3枚の花びらがついたその髪留めを俺はチエのキラキラと輝く銀髪に授ける。


パチッと音をたてながらそれをつけたチエはまさしく“桜”と言ってもいいくらいに可愛かった。




「これは……」


「俺と兄貴の誓いだよ」




戸惑うチエに俺は間髪入れずにそう言うとチエは驚いたように顔を上げる。


そう。それは誓いの髪留めなのだ。彼女の髪にその髪留めが輝き続ける限り俺達が世界一綺麗な桜を守り続ける。


そしてその世界一綺麗な桜とずっと一緒に居続ける。それが俺の――俺達のたてた誓いなのだ。




「俺達が絶対に“桜”を散らせない澄み渡る“空”を汚させないしそこにサンサンと輝く“太陽”も遮らせないだからお前は心配しなくていいよ」


「……それは違うぞ日向」




そのとき俺の言葉を凛とした声が遮断した。


澄み渡る“空”のような綺麗で汚れのないその声に俺とチエは振り返る。


するとそこにはいつものおちゃらけた様子の兄貴とは違う。俺が慕い続ける最高の兄貴の姿があった。




「日向。心配する側に回ったことがないお前にはわからないかもしれないけど……心配しないなんて不可能なんだよ」




俺は衝撃を受けた。なぜなら俺の周りには心配する必要がいるやつなんていないからだ。


今日チエを助けてくれた水城にしかり。俺達を導いてくれた音弥さんや春姫姉ちゃんにしかり。それに兄貴こと姫ノ城空にしかり。


だから俺は誰も心配することなんてない。仲間を信じていままでやり過ごしてきたのだ。


俺は考えさせられた。兄貴の言葉に俺は今まで考えたことのなかった第三者の目線を考えさせられたのだ。そして――学んだのだった。


兄貴の言葉に――。




「だから……俺達を信じてくれ。俺達を信じたうえで心配してくれ……」




その言葉は俺の深くまで行き届いた。これこそが俺の学んだ三箇条の一つ。



ゲイル先生曰わく

"大切な人を守るために拳をふるえ"



それと同じ価値を持つ言葉がこのときの言葉だった。



姫ノ城空曰わく

"心配しないなんて不可能。信じたうえで心配しろ"



この2つの言葉が俺を大きく成長させたのだ。




「うん分かったお兄ちゃん。この髪留めを私がつけている限り私はお兄ちゃんを……ヒナ君を信じたうえで心配するからね」




最後にそう言ったチエの笑顔は今も根強く記憶に残っていた――。


兄貴の言葉も……音弥さんや春姫姉ちゃんのことも……桜の髪留めの誓いも全て忘れてしまった今も……。




――――――――


―――――


―――





「……ん…うぅん?」




あの事件から――輝喜が俺達の前から消えてから半月がたったこの日。俺は久しぶりに自分1人でベッドから起き上がった。


理由は分からない。だけどどこか清々しい朝に俺の頬は涙で濡れていた。


なんとなく俺は何か懐かしい夢を見たきがしたのだけは覚えている。だけど何の夢かは思い出せない。


そんな歯がゆい思いが俺を支配する中毎日の日課である彼女が俺の部屋に入ってきたのだった。




コンコン――ガチャ




「ヒナ君。朝だ……!?」




ドアの隙間から顔を覗かせたチエはベッドに起きた状態で座る俺を見て驚愕してるみたいだ。


だがそんなこと関係ない俺はチエにニッコリと笑いかけると唇を震わすのだった。




「おはよう……チエ」


「あ…うん……おはよう」




チエは少し驚きつつもそう返してくる。そんな様子に普段の朝の俺の不甲斐なさを改めて実感していた。




「……ほぇ?ヒナ君今日はどうしたの?体調悪いの?熱あるの?それとも……あれの日なの?」




ショートしていた思考回路が戻ったチエは朝俺が起きていることに対してそう聞いてくる。


さすがにそこまで言うのは酷くないかと思ったりあれの日は女の子にしかこないだろとか思いながら苦笑いをしてしまう中俺は窓の外を眺めて空を見上げる。


窓の外の"空"はどこまでも澄み渡り"太陽"はその中心でサンサンと光り輝き家の前の"桜"はだいぶ葉桜になったとはいえ未だにピンク色の花びらがちらついていた。


全てが揃っている窓の外の風景。それを見ながら俺はまるで独り言のようにそっと呟いた。




「……夢を見たんだ」


「夢?」




不思議そうに小首を傾げるチエ。その姿も夢の中で見た気がする。


成長して銀色の髪は一層雅やかに美しく輝き彼女の笑顔はいつになっても俺を魅力し続ける。



――だけど……。




「あ!!時間がないんだった!!ヒナ君。夢の話は通学途中で聞くから今は急いで準備して!!」


「……ん。分かった」


「急いでね!!」




タッタッタッタッタッ――




――遠ざかっていくチエの足音。俺はその足音を聞きながら彼女の姿を思い浮かべていた。



彼女の銀色の髪。確かに昔に比べて美しく雅やかになった。だけど1つだけ足りないものがある。


それは――。




「……あれをつける日はもうないのかな兄貴」




ずっと昔に俺と兄貴が贈った"桜の髪留め"もうそれはチエの髪にはない。


彼女があれをつける日。それはただ1日だけ。








――姫ノ城空の命日だけであった。








`





―――(あかつき)―――




意味はまだ夜が明けずにほのくらいころ。


または夜が明けようとするときのことを表す言葉。







――これは日向達の新たな戦いの幕開けとなる話。


だが戦いはまだ始まらない。なぜならこれはまさしく【暁】と呼べる話だからだ。


夜が明けようとするときと同じように――新たな戦いが今始まろうとしていた。






`


作「今回は新キャラと呼べるような呼べないようなお二人!!音弥と春姫に来てもらいました〜」


音「響理=音弥=オペリアだ。長いから音弥で頼む」


春「雲雀春姫と申します。春姫とお呼びください」


作「てなわけで今回はこの2人のキャラ設定を紹介したいと思いまーす!!」


音&春『イエーイ(です)!!』


作「では最初に簡単な春姫さんの方からいかせてもらいます。まず容姿についてですが本編の通り少年陰陽師の【風音】を思い浮かべてください」


春「あらあら♪わたくしはなかなかの美人なのですね〜」


作「はい。上記のセリフの通り一人称は"わたくし"で口癖は"あらあら♪"もしくは"ふふふ♪"それと性格は……」


春「いたずらっ子です☆」


作「……まぁ性質を言葉に表すなら


"いたずらっ子なお嬢様"


ですかね。あと音弥とは幼馴染の恋人同士。歌が得意だそうです。あと能力は……まだ明かせません」


春「ふふふ♪わたくしの能力は"第3章"のキーポイントなのですわ♪」


作「というわけですね〜じゃあ最後に何かあればお願いします!!」


春「ふふふ♪以後よろしくお願いいたしますわ♪」


作「はいありがとうございました。では引き続き音弥の設定にいかせてもらいまーす」


音「うぃーす」


作「ではまず最初に音弥のキャラ設定ですが……みなさんは音弥の設定を見て何か思いませんでしたか?」


音「ん?俺の設定だろ。幼馴染のアイドル顔負けの美少女が恋人で姫ノ城空の親友で……あ!?」


作「……気付きましたね。そう音弥のキャラ設定は主人公"不知火日向"に似せて作ってあります!!」


音「そうだったのか……」


作「えぇ。じゃあ次は容姿ですがこれは本編に出た通り少年陰陽師の六合を思い浮かべてください。口癖は"It's showtime"特技は音楽演奏で大半の楽器は弾けるそうです。ちなみに一番得意なのは?」


音「ヴァイオリンだ。ていうか俺の場合ヴァイオリンが得意じゃないといけないんだよ」


作「ふむふむ意味深発言ですね〜じゃあ最後に能力と何か一言お願いします」


音「おう。俺の能力は名前の通り"音"だ。内容は言えないがな。あとは俺の応援頼むぜ!!It's showtime!!」


作「はい。ありがとうございました。じゃあいよいよ【第2章"異端者編"】始動します!!次回もお楽しみに〜」


音&春『バイバーイ!!』



次回に続く!!

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