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時の秒針  作者: †HYUGA†
次章予告&番外編Ⅰ
54/76

番外第壱話【曙】


今回の番外編は次の章。つまり【異端者編】において重要なものがでてきます。



でも“前編”のこちらでは出てきません。



だけど過去中心のこの話では大量のキャラや設定が明かせるのでお楽しみください。



では本編へ( ^-^)_旦〜




`




―――(あけぼの)―――




意味は夜がほのぼのと明け始めること。


または夜明けの空が明るんできた時を現す言葉。




――今回は“時の秒針”の過去の話を少しだけ明かそうと思う。



本編より少し外れた話と思うかもしれない。


かと言って日向の壮絶な過去とはあまり関係ない話かもしれない。




――しかしこの話はまさしく時の秒針の“曙”と言ってもおかしくない話である。




時の秒針を語る上で通らなければいけない“道”


それを今回は特別に垣間見せましょう……。










舞台は――6年前の桜時市へ――





???side



チュンチュン



小鳥のさえずりが響き渡る朝。


その声を聞きながらとある少年が枕を抱きしめて布団にくるまりながら惰眠を貪っていた。




「(-_-)zzz」




手入れ要らずの綺麗な黒髪にまるで雪のような白い肌。




「(-_-)zzz」




少し小顔だが顔のパーツが綺麗に纏まった繊細な顔立ちに少し鋭い目。




「(-_-)zzz」




その姿はまさしくカッコイイを地でいくような美少年――その姿はまさしく神に愛されたと言っても過言ではない。



そう、彼こそこの番外編かつ数年後には“時の秒針”の主人公になる少年。




―――不知火日向である。




「(-_-)zzz」




だが、そんな完璧容姿の持ち主にも弱点がある。


それが朝。不知火日向が朝の早起きが苦手なのは数年前からまったく同じなのだ。




「(-_-)zzz」




さてはて、今もぐっすりとふかーいふかーい眠りについている日向。


しかし、そんな日向に近づく1つの影があった。



ギシ……ギシ……




「(-_-)zzz」




ちなみに上の音は近づく影の忍び足の音なので悪しからず。


変な想像をした人は―――ごめんね?




「(-_-)zzz」




――ていうかこの絵文字そろそろウザくなってきたでしょ?


でも再びごめんね――この絵文字どうやったかは知らないけど日向の口から発せられてるんだよ。


だけど安心してな?そろそろ寝坊助ヒナタンを“あの人”が起こしますから。




「(-_-)zzz」




ギシ……ギシ……



――この小説においての最重要人物の1人で日向の兄貴分。



ギシ……ギシ……バッ!!!



ドシーンッ!!!




「な、な、なんだ!?」




突如として布団を剥ぎ取られた日向はなす統べなく部屋の床に叩きつけられた。


そして驚きに満ち溢れた顔で辺りを見渡すと……。




「おい我が弟よ!!そんなゼ○ガメみたいな顔してないで目を覚ませ!!」




日向の兄貴分で知恵理の兄である【姫ノ城空】が壮大に手を広げて人をポケ○ン扱いしていた。


つか何で【ゼニ○メ】をチョイスしたんだよ。




「それは作者が水タイプを愛してるからだ!!」




――さいですか。



話は変わりますが普段日向は現在のように知恵理に起こされていますが……。


どうやら今回は空の嫌がらせで早めに起こされたようです。



ちなみに今日は、休!日!



これ以上に日向に対する嫌がらせはありませんね。






――さて、そんな話はさておき話を戻しましょう。




「ふざけんなよ兄貴!!!!」


「かははは!!そう怒こりなすんなって!!」




日向は休日昼飯が朝飯になるまで寝ている自分があまりに早く起こされたことに大爆発!!!


しかし、対して空はそれを見事に受け流していた。



世界広しと言えど日向をこう簡単にいなせるのは空だけである。



ん?凪?この時点ではまだ出会ってないぞ。


その話は次回の話になるからまだ教えないよ〜だ。




「……なぁ兄貴、さっきから何自分でナレーション入れてんだよ?」


「禁則事項です♪」


「……なんで俺この人慕ってるのかな?」




そう言いながら日向は額に手をおいて頭を抱えた。


ふっ、弟分よ精進しろよ。




ということで改めて自己紹介するぜ。


俺の名前は【姫ノ城空】現在の年齢は12歳、中学一年生だ。


で、知ってると思うけど現在は時の番人でチルドレン計画のNO.1【聖空の騎士】をやっている。



はっきり言ってこれ以上にないほどバカげた計画だけど――俺はこいつと知恵理を守るために強くならなくてはならない。



誰よりも――強く!!!!!!!




「で、兄貴。今朝はなんでこんなに早く俺を起こしにきたんだ?」


「おっ!!そうだそうだ」




未だに起こされたことを根に持っているのか日向が若干機嫌悪そうにそう尋ねてくる。


その声で俺は本来の目的を思い出すのだった。




「脱げ日向」


「…………………は?」




俺の一言に固まる日向。


ん?服着替えるんならまずは服を脱ぐのは一般常識だよな?




「あ、兄貴……お、俺はちょっと……そういうことは……」


「?」




なぜかしどろもどろになってそう言葉を放つ日向に俺は首を傾げる。


――こいつは何言ってんだ?




「あーもう!!いいから脱げよ!!」


「ひっ!!兄貴!!ちょっとマジで勘弁して!?」




あまりに行動が遅い日向に痺れを切らした俺は日向がいつも着ているパジャマ(知恵理のプレゼント)に手をかけるが日向は頑になってそれを拒んでくる。


この悪ガキ……いい加減にしろよ。




「いいから脱げ!!」


「止めてくれ兄貴!!誰にも言わないから!?」


「つべこべ言わずに脱げばいいんだよ!?」


「無理やりなんてダメだろ!?いやっ!!合法でもダメなんだけど!?」


「お前が何で合法なんて言葉を知っているかなんて聞かないからとりあえず脱げ!!」


「だから兄貴は俺に何をさせたいんだよ!?」


「んなもん(着替えて)外に行くためだろ」


「はっ!?真っ昼間から何させようとしてんだよ!?」


「いいから脱げ!!!」


「い〜や〜だ〜!!!」




トントン、ガチャッ




「ヒナ君起き……」



――ナイスタイミングというかバッドタイミングというか。


ちょうどそのとき日向の部屋のドア律儀にノックしてから1人の少女が部屋に入ってきた。



日向同様に天か神に愛されたとしか思えない容姿に銀色の長髪。


そう、我が妹にして今作品のヒロイン【姫ノ城知恵理】である。






さてここで問題です。


只今俺は日向のベッド絡み合いながら日向の服を脱がそうとしている。


日向が暴れ出したせいで只今2人とも頬をうっすら紅くさせて息づかいも荒れ荒れ。


さらにお互いの服をはだけさせ俺が今は日向を押し倒している状態。




これを我が麗しの妹君に見せたらどうなるか?



―――そう、答えは簡単。





「…………ぐすっ」




――泣きながら部屋を立ち去るのだ。



それも猛烈ダッシュで。




『ご、誤解だ〜!!!!!!』




そしてそれを追う俺と日向という図式が成り立つのであった。



この何気ない平凡(?)で平和すぎる朝。


この朝から始まる1日がこの物語の――曙――と言える1日の始まりだった。




世界すら巻き込むある少年の闘いの物語の……。




――――――――


――――――


――――


――




「あ〜チエ?機嫌直せよー?」


「そ、そうだぜ知恵理。日向なら問題nothingだから?」




あの後すぐに知恵理を追いかけた俺と日向は今不機嫌な知恵理の前で正座させられていた。


それは明らかにおかしい映像だった。


言うなればハムスターの威嚇にライオンが怖じ気づいたのと同じである。



食物連鎖無視ですね〜。




「あ、あの〜知恵理さん?」


「……なんでヒナ君なの?」




さらなる言い訳をしようとしたときいつもとは違う知恵理の凛とした声が響き渡ってきた。




「それはどういう意味で?」


「お兄ちゃんのことは別に何も言わないよ?男の子が好きでも私の大好きなお兄ちゃんだから……」


「って!!まだ誤解してんのかよ!?」


「あ…兄貴……俺もどちらかと言うと兄貴のことは大好きだけど……やっぱり俺は女の子の方が好きだから……その……やっぱり……」


「ブルータスお前もか!?」




ていうかこの2人何なんだ!?会話の内容明らかに小2のものじゃないだろ!?


最近の小学生はそんなにマセてやがんのか!?




「……で結局お前たちは何が言いたいんだ?」


『だから……ヒナ君(俺)は襲わないで(くれ)!!』


「襲うかーー!!!!!!」




ちなみにこれから2人の誤解を解くのにさらに小1時間使用してしまった……。






日向side



「兄貴?兄貴が同性愛者じゃないのは分かった」


「……その話まだひっぱるのかよ」




兄貴は未だに落ち込んでいるらしくそう言って地面に四つん這いになって落ち込んだ。


俺なんで本当にこの人を慕ってんのかな?




「なぁ、兄貴落ち込んでないでまずは俺の質問に答えてくれよ?」


「喜んで!!」




俺の言葉にJapanese土下座みたいな格好をしていた兄貴は一気に立ち直った。


立ち上がった瞬間全身からキラキラオーラを出して白い歯をキラリと輝かせながら……。



そんな兄貴の行動にはツッコミどころ満載だけど。




「………俺達はなんで街に来てるんだ?」




俺は敢えてスルーさせてもらうことにした。




「ん?そんなの決まってれじゃないか」


「……理由は?」




俺は少し呆れ顔になりながらキラキラした兄貴にそう問いかける。


そして兄貴はさも当然のようにニヤリとした顔になって答えたのだった。




「何となくだ」


「アホかこのクソ兄貴!!」




ドグシッ!!!!!



ふざけたことを言った兄貴に俺は思いっきりハイキックしたのだった。






皆さんお気づきでしょうが現在俺達は桜時市の繁華街いわゆる【街】と呼ばれる場所にいる。


チエに対する誤解が解けた俺達はそのまま兄貴に着替えさせられかっ攫われて現在にいたる。



でもって着てみたのはいいがその理由が……まぁ上記の通りだ。



ちなみに“お前小2のわりに大人びすぎだろ!?”という質問は却下する。


そんなもん“俺だから”としか答えられないからな。




「ヒナ君!!ヒナ君!!あそこの喫茶店のチーズケーキが美味しいって春姫お姉ちゃんが言ってたんだ♪」


「お!!それは俺も春姫から聞いたぞ。確かあそこのココアは絶品だって……行くか!!」




このころからド天然なチエのKY発言に乗っかる兄貴。


だが俺は全力でそれを阻止した。




「はいストップ!!2人共落ち着け!!」


「どうした日向?お前甘いもの大好きだろ?」


「そうだよヒナ君?この間のバレンタインデーも貰っこチョコ全力で食べてたよね?」




いや確かにこの間のバレンタインデーは酷かった。


家を出ると近所のお姉さんという名前のおばちゃんズに捕まって入れ食い状態(?)


学校に行ったらクラスの女の子からチョコレートの雨霰……。


そんで家に帰えったら帰ったで口の中甘々なのにチエにあ〜んでチョコを食べさせられるし。


そんでもって春姫姉ちゃんが段ボールでチョコ贈ってきたときはマジで死ぬかと思った。



――ん“春姫姉ちゃん”?



いけね!!そんな話してる場合じゃなかった!!


確かに俺は甘いもの大好きさ!!それは間違いない。



だけど問題は……。




「あそこはランジェリーショップだ!!」




あまりにバカバカしいかつ天然(1人はただの馬鹿)な2人に俺は無理やり行く手を阻んだ。


ていうか喫茶店とランジェリーショップを間違えるってどういうことだよ!?




《あらあら。ワタクシは何も知りませんわよ?》




一瞬にして頭の中に出てきた俺と兄貴のバイト先のお嬢様先輩(悪戯好き)



そうかあの人か!!!!



偶にふらっと遊びに来てはチエを連れ出して何をしてるのかと思ったら……あの人チエで遊んでやがったな!?


いや……むしろ俺で遊んでやがるのかあの人は!!



くそっ!!ただでさえ天然ホニャニャなチエだけでも俺の気苦労は絶えないのにあの妹あってあの兄ありって感じのただの馬鹿(シスコン)兄貴をも焚きつけやがって!!



あの人は俺を過労死させるつもりか!?




《まあまあ。日向もそんな年で過労死だなんて……》




頼む……誰か俺の頭の中に響いてくる謀略お嬢様の声を止めてくれ……。



「どうしたのヒナ君?顔色が悪いよ?」


「そうだぜ日向?いったいどうしたというんだ?」


「頼むからそっちの天然ボケ兄妹……口を開かないでくれ……」




俺の気持ちを察しない天然兄妹はただ悶えることしかできない俺に普通の言葉をかけてくるのだった。


俺はこれからもこいつらに振り回されるんだろうな……。









日向の考え……それは平和という何よりも幸せなことである。


だが日向はこのとき気付いていなかった。


数年後。その幸せが最悪の形で崩れさることを……。




だがそんなことを微塵も思っていなかった日向の1日はゆるり過ぎていくのだった……。






空side



「日向。俺ちょっとあそこにあるマッ○で昼飯買ってくるからここのベンチで待っててくれ」



街の探索をし始めて早数時間たったころ昼飯どきなので俺は知恵理を日向に任して○ックに昼飯を買いにいくことにした。


ちなみに誘拐の心配はしていない。なぜなら日向はそこいらの誘拐犯よりも遥かに強いからだ。




「兄貴……いくら俺でもチエを護りながら喧嘩で勝てるか分からねーぞ?」


「大丈夫だって。いざとなったら飛んで逃げればいいだろ【紅翼の天使】様?」


「……街中でその名前を出すなよ」




知恵理には聞こえないようにこそこそと話す俺達。


だけど本当に俺は日向のことを信頼している。


日向のやつは俺のことをシスコンと呼びやがるがそれは違う。



俺はシスコンでありブラコンなのだ。




「……いいか日向?俺はお前のことを信頼しかつ大好きだからお前に俺の大切な妹を託すんだ。お前が強いことは知っている。お前がやるときはやる奴であることも知っている。だから俺はお前だからこそ知恵理を頼めるんだ。お前も俺のことを信頼してくれ」




俺は俺より20センチ近く身長が低い日向の両肩に正面から両手を置いていつも以上に真剣な思いでそう伝える。


すると日向の方も俺の言葉を真剣に聞いてくれて何か決意したような顔になった。




「分かったよ兄貴……俺も兄貴の信頼を全力でこの身に受けるよ……」




自分の思いが詰まったその言葉を言い放った日向は最後に片目を瞑って右手の親指を立てる。




「問題nothingだろ?」




そして最後に日向の口から放たれたのは俺が普段から使っている口癖。


それを見た俺は嬉しく鼻で1回笑うと日向を習って片目を瞑り右手の親指を立てた。




「あぁ。問題nothingさ」




そして最後にお互い親指を立てた右手の拳と拳を合わせて笑みを浮かべる。




「むー2人だけズルいー!!知恵理もやるー!!」




……どうやら我らがお姫様の機嫌を損ねてしまったみたいだ。


知恵理の声に俺達が振り返るとそこには頬を風船のように膨らませた我らがお姫様がいた。


だがその姿は容姿的にも仕草的にもただただキュートでしかない。



さすがは我が銀髪の麗しい妹……末恐ろしいぜ。




「日向……どうやらあの人間核兵器には俺は力不足のようだ……」


「は?まさか兄貴俺を見捨てるのか!?」


「言ったはずだ。俺はお前を信頼していると」


「それちょっと違くね!?」


「問題nothingだ!!」




俺は最後にそう言うと全力疾走で駆け出した。




「ズリーぞー!!兄貴ー!!」


「あばよー!!とっつぁーん!!」




そう言いながら全力疾走を緩めることなく駆け続ける俺だが油断はできない。


なんせ日向の足の速さはバイト先でも群を抜いて速く素早しっこいからだ。




「兄貴!!覚えとけよ!!」




あらかた走った俺の耳にどうやら諦めたらしい日向の声が響く。


それを聞いた俺は走りながら首だけ後ろに向けた。




「ねーねーヒナ君!!さっきお兄ちゃんとやってた遊びはな〜に?」


「あれは遊びじゃなくて男同士の約束だ!!だから女のチエには出来ないんだよ!!」


「むー……じゃあ朝お兄ちゃんとやりかけてたあの遊びしよ♪」


「もっとダメだ!!!!」




そこには知恵理に抱きつかれて何とも羨ましい状態になっている日向がいた。


ていうかあの年でリア充って将来はどうなるんだ?


できれば女ったらしにならないことを祈るぜ。




《俺も兄貴の信頼を全力でこの身に受けるよ》




そのとき日向のさっきの言葉が頭に浮かんできて俺の頭に浮かんだ将来女ったらしになった日向の姿が打ち消される。


あの真っ直ぐで素直で純粋な日向からはどうしても将来そんなふうになるとは思えなくなったのだ。




「強く……真っ直ぐに育てよ……日向」




走りながら俺は俺が認めた最高の少年にそう語りかける。


それは俺の願いであり望みだった。




「あいつはどうしてるのかな?」




それと同時に俺の頭の中には俺が認めたもう1人の最高の少年の顔が思い浮かぶ。


孤児院にいたころに日向と知恵理の2人をいつも引っ張っていたアルピノで全身真っ白の少年。

俺を兄貴と慕ってくるたもう1人の少年の姿が……。




「【大和】お前は今幸せに過ごせているか?」




それも俺の願いであり望みだった。




――――――――


―――――


―――





「いらっしゃいませ」




マ○クに入った瞬間に俺はマック(あーもう面倒い)の店員さんにそう挨拶される。


ドラ○エ風に言うとモンスター《マックの店員》が現れたってところか。



だったらこっちには選択権が現れるってわけだな。




[こうげき(攻撃)]


[まほう(魔法)]


[へんとう(返答)]


[どうぐ(道具)]


[にげる(逃げる)]




うん……こんなとこかな。




とりあえずこの中から一番安全なのは[へんとう]だけど。それじゃああんまし面白くない。


俺は常にユニークを求める人間だからこれはだめだ。


というわけで[へんとう]は却下。




次に安全なのは[にげる]だな。


だけどこれを使用すると同時にこの店の俺に対する好感度は火星あたりまで吹っ飛ぶから却下。




てわけで残ったのは[こうげき][まほう][どうぐ]だけど……。


まず[まほう]は使えないから却下。


……魔法っぽいことならできるけどそれを使ったらこの店が潰れちまう。




そして[こうげき]も同じ理由で却下。


俺がこの人を攻撃しちまうとこの人の人生-THA END-な上俺は一生日向と知恵理に会えなくなっちまう。


そんなの俺が淋しすぎて死んじまうわ!!




――さて最後に残ったのは[どうぐ]だな。


ちなみに今俺が持っているのは[さいふ]only


つまり[さいふ]でできることそれは……。










そう【買い物】だ。



てなわけでさっそくレジに行ってハァンバァーガァーを買いにいかせていただこう。


ん?なんで買い物するだけでここまで長々と話を延ばしたがって?



そんなのノリに決まってんだろ!!



いつもは日向が俺にハイキックするけど今はその日向もいない!!


だから今この物語は俺の天下なんだ!!




「あんたさっきから邪魔なんだけど?」




突如として俺の真後ろからかかった可愛らしい声に俺の心は深く傷ついた。


だけどそんなことを知らない声の主はさらなる追撃を開始してきた。




「ちょっとあんた聞いてんの!?あたしは邪魔って言ってんのよ!!」


「そして俺は新たな境地に至りそうになった」




さてなぜ俺は声の主の言葉を無視してこんなことを言ったかって?


それは声の主を確かめるために振り返ったら幼稚園児くらいの茶髪ショートカットで知恵理並みに可愛い少女がいたからだ。



はっきり言ってロリに目覚めそうなくらいに激可愛いから新たな境地に至りそうになった。




「な、何見てんのよ……」




そしてこの目の前の少女はなんと言っても……。




「べ、別にあんたが全部悪いなんて言ってないのよ!!ただあたしの目の前にあんたがいたから……だからただちょっと横にずれてほしかっただけなのよ!!」


「ツンデレだな」




そうツンデレなのだ。


目の前の少女は世にも珍しい見た目幼女のツンデレなのだ。


これほど珍しい少女は今までいただろうか?



――答えは否!!!!



これほどまでの破壊力を持つ少女は俺の知る限り2人しかいない。


お嬢様キャラの雲雀春姫と天然妹キャラの知恵理の2人だ。


まさかあの2人並みの破壊力を持つ少女がこんなところにいたなんて……。


でもとりあえずこれだけは言っておこう。




「萌だな」


「そうだな」




そのとき俺の真横から俺の意見に同伴してくれる声が現れた。


現すとしたら大人の女性の声。高くなくすこしだけ低めの声といっていい。


俺はその声の主を確かめるために横を向いた。




「どうもこんにちは格好いい兄ちゃん」




するとそこには茶色の髪をスポーツガリにした見た目小学校4年ぐらいのがたいのいい少年がいた。


若干髪の色とかが目の前にいる幼女と似ている気もするな。




「あ!!真備!!あんたどこ行ってたのよ!?」


「はぁ!?迷子になってたのはそっちだろ!?」




突然目の前で喧嘩を始める見た目幼女の可愛らしい少女とがたいのいい格好いい少年。


やっぱり2人は知り合いみたいだ。


ていうかマックの入り口なんかで喧嘩すんなよ。


喧嘩を止めなくては!!



あまりにヤバい状況だったので俺はそう決意した。




「まあまあ落ち着けって。こんなところで喧嘩すんなよな?」


『よけいなお世話だ!!!!』




……俺は喧嘩を止めようとしただけなのに。



なんだこの扱いは!?




あまりの扱いのひどさにへこたれてしまいそうな俺……。


だが次に聞こえてきた言葉は俺の精神をこちら側に戻しただけでなくこの場にいる全てを驚愕におとしいれた。




「あ〜!!もう!!なんであんたは分からないのよこの……【馬鹿弟】!!!」


「んだと!?ナギねぇこそ少しは【姉】らしくしやがれってんだ!!」




その場が静まり返った気がした。



比喩でも例えでもなくまさしく静まり返ったというに相応しい。


俺も最初に挨拶してきて下さった店員さんもあんぐりと口を開けることしかできなかった。




「だいたいなんでこんなマックなんかにあんたいんのよ!?」


「え!?ここは図書館じゃなかったのか!?」




そんな空気の中でも未だにあーだこーだと言い争いを続ける2人……。


いや今の発言にも充分ツッコムところあったんだけどここは敢えてスルーの方向でいく。


てなわけで俺がこの場にいる皆さんの気持ちを代表して聞くことにする。


まさか本当に姉弟じゃないだろうし……大丈夫だよな?




「あのつかぬことお聞きしたいのですが……」


『何よ(だ)!?』




異口同音で返してくる2人に俺は口を開いた。




「あなた方のご関係は?」




俺がそう聞いた瞬間。2人は一瞬キョトンとした顔になったがすぐに少年の方はニヤニヤと少女の方はかなり綺麗な笑顔で迫ってきた。


そのただならぬ空気に俺はゴクリと唾をのみこんだ。




「あらら〜?それはもしかしてあたしの身長が平均より《か!!な!!り!!》小さいことを言ってるのかしら?」


「えっと……とりあえず質問を質問で返されたこととか《かなり》の部分が強調されすぎとかそもそも答えになってないとかいろいろ言いたいことがあるんですが……?」


「あははは☆別にあたしは気にしてないわよ?ただあんたが……あたしを怒らせたってだけよ!!!!」




次の瞬間。目の前にいた少女の姿が消える。


そして気付いたときには……。




「死に腐れ!!!!!!!!」




ドグシッ!!!!!!



――俺は可愛らしい幼女の空中回し蹴りを顔面にくらっていた。


その威力は能力者で驚異的身体能力を持つ日向のハイキック並みかそれ以上の威力。


残念ながら俺の意識があったのはここまでだった。






日向side



「ヒナ君!!こっちこっち」


「へいへい分かったからそんな慌てんなってチエ」




こんにちは皆さん不知火日向です。


兄貴がマックに俺達の昼飯を買いに行ってから数分たちましたが……。


ただいまチエに手を引かれながら街を走っています。



で、なんでこんなことになったかと言いますと……。




「ヒナ君♪さっき見たネコちゃん本当に可愛かったんだよ♪」


「そうなんだー(棒読み)」




まぁ……チエの言葉の通りチエが何か超可愛い猫を見つけたらしくそれを探しているってわけだ。


いったい俺は何をやってるんだろうな?


だいたい男の俺はそんな可愛いものなんて興味ないしそれにチエが猫が好きな理由がまた……。




《寝ているときのヒナ君てネコちゃんみたいだね?》




そう言われたのは桜時学園に入学したての去年4月。初めてチエが朝起こしにきてくれたときだった。


そんな感じでそれ以降チエは猫に対して異様なまでの執着をみせるようになったのだ。


だからこの状態は俺にとってかなり微妙な状態なのである。




「はぁー……」




それに付け加えて俺の悩みはもう1つあった。


それは後ろから感じる気配と不穏な動きをする1人の人物……。


初めてではない。むしろこれで何回目になるか分からないくらいだ。



なぜならまだほんの幼い少女とはいえチエはまるで天か神に愛されたとしか思えない容姿を持った美少女。


よからぬことを考える人は何人もいた。


だけどそのたびに俺もしくは兄貴がチエに気付かれないように処理してきたのだ。




「ヒナ君どうしたの?」


「あ!!あそこにネコちゃんがいる!!」


「え!!どこどこ!?」




だからこのことはチエに気付かれないように処理しなければいけないけど……。


チエのやつ俺の手を離そうとしないんだよ。




「すまんチエ。どうやら見間違いのようだ」


「えぇー」




んーどうしたもんか……。



そのとき運良く俺とチエの歩く先から1人の人物が歩いてきた。


俺のバイト先の先輩の1人だ。




「ラッキー」




俺はチエに聞こえないように小さくそう呟くと率先してチエの手を引いて彼に近付いていく。


そしてチエの手を引いて彼とすれ違う瞬間に……。




「問題exist(存在する)」




そう呟いたのだった。






???side



「はぁ…はぁ…あの子可愛いなぁ///」



あのくりくりとしたつぶらな瞳。


白百合のように真っ白に透き通るような肌。


サラサラとした可憐な銀色の髪の毛。


あんな可愛い子なかなかいないよな///



しかも周りにはまだ小学校低学年くらいのナヨナヨしたひ弱そうな男の子だけで保護者らしき大人はいない。


これは攫ってくれと言ってるようなものだろ。



いひひひっだったらお望み通り僕が攫ってあげるよ。


そして攫った上でいろいろな服に着替えさせて……グフフフッ///




「待っててね僕のお人形ちゃん///」




ウヒヒヒヒヒヒヒッ!!!!!!










ガンッ!!




「うっ!?」




突如として変態の首筋の頸動脈に後ろから手刀が打ち込まれる。




「……これは問題の域を越えているだろう」




そして呆れた声を出しながら1人の男が気絶した変態を真上から見下ろす。



男にしては長い黒髪に黒を主体とした服。


そして変態を見下ろす彼の顔――無表情なその顔は異常なほど特異だった。



漆黒の服と漆黒の髪を靡かせながら無表情で敵を斬り裂くその姿。


それに彼の能力を合わせて戦場の人々は恐怖と異見の念を持って彼をこう呼ぶ。





`







――【雨の死神】と……。








`








番外第弐話【暁】に続く。



`

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