第1章 “時の番人編” エピローグ【光との別れ】
親友との別れが日向達を悲しみへと誘う。
彼らに待ち受ける未来とはいったい……?
エピローグ【別れ】
では本編へどうぞ……。
`
――――“親友”――――
慣れしたしんだ友達という意味を持つこの言葉……。
だが実際にこんな友達を持っている人はなかなかいないものである。
しかし彼ら――日向達5人には“親友”と呼び合える友達がお互いに4人もいる。
それは今も―これまでも―これからも―変わることのない関係だと誰も疑いはしなかった。
今のこの関係をいつまでも続けられると誰もが信じ続けていた。
――ただ1人。関係を創った眼帯の少年以外は……。
創られた関係でも良かった。
創られた関係でも楽しかった。
創られた関係でも――幸せだった。
記憶を持たない眼帯の彼にはそんな関係でも幸せで幸せで幸せで……何よりも温もりを持った場所だったのだ……。
だが彼はそんな関係を決別しなければいけない。
本当は彼もいつまででも彼らと一緒に笑いあいたい。
例え偽りの関係であっても彼はこの関係をいつまでも続けていたかった。
しかし騙し続けていたという【罪悪感】はそんな大切な気持ちをも打ち消してしまう。
だから彼は……。
`
「みなさんお別れです……。大好きでしたよ……」
“親友達”の前から消えていくのであった……。
―第1章“エピローグ”―
―――【“別れ”】―――
`
日向side
「みんな……」
俺達の言葉を聞いたチエは涙ぐみながらそう呟く。
だけどその顔は輝きを放つ優しい笑顔。日常よりもほんの少しだけ綺麗な笑顔がそこにあった。
そんなチエの笑顔を守っていきたいと俺達は改めて感じたのだった。
「……」
そしてそんなチエの笑顔と俺達を見ながらただ寂しげな表情を浮かべている人物が1人……。
俺達の親友――輝喜だ。
輝喜は俺達とは数メートル離れた場所でまるで空気のようにその場に馴染んでいる。
その姿に俺はすでに何かを感づいていた。
手を伸ばしても届かないような暗闇の世界に輝喜が堕ちていくような――そんな闇を感じた。
――その刹那。
バラバラバラバラ――!!!!
突如として機械的な耳をつんざくような音と激しい旋風が俺達の間を駆け抜けた。
「な、なんだ!!??」
「きゃ――っ!!!!」
真備の驚きの声。チエの叫び声が耳に届く。
そんな中俺は脚を踏ん張りながら吹き飛ばされないようにチエの腕をしっかり掴んだ。
「くっ!!一体何が……!?」
大分状況に慣れた俺がそう言いながら前を向く。
だがそこにはさっきまでの光景はなかった。
しかしそこには俺達の知っている人物が片手を挙げながら優しく微笑みかけていたのである。
俺は突風に靡くその人の金色の髪の毛がとても綺麗に感じていた……。
「Hey!!サッキブリデスネミナサン!!」
聞こえてきたのは片言で陽気な日本語。
それは俺達にとってはとても安心感を持てるものだった。
「ゲイル先生!!??」
「THAT RIGHT!!ソノトオリデス“マキビ”!!」
真備がいきなり目の前に現れた人物――ゲイル先生の名前を呼ぶとゲイル先生はそれに応えてさらなる笑顔を見せる。
そしてそのとき俺達はやっと気がついた。
ゲイル先生の後ろにある文明が作り上げた“空飛ぶ”鉄の塊を……。
「ヘリコプター……」
誰が呟いたのかはヘリの放つ轟音によりよく分からない。
だけど俺がいるこの位置からはゲイル先生の蒼い瞳。水城の乱れる長髪。刹那の少し切なげな表情。輝喜の闇に似た眼帯。
そして――ヘリコプターのボディに刻まれた時計の針でできた十字架とコックピットに乗る“デモナン=カイハーツ=キルデ”通称【デモン】の姿までしっかり見ることができた。
「なんでヘリなんか……」
「バカね。そんなの決まってるでしょ……」
未だに状況をうまくのみこめていない真備が独り言のように呟く。
だが真備よりも大分頭が落ち着いている凪によって真備の独り言は遮断された。
バラバラバラバラ――!!!!
朝焼けとヘリコプターを背景に水城を筆頭とするデモン以外の4人がまるで映画の1シーンのようにこちらを見ている。
今回の闘いでお互いに傷ついた。
だがそれとは別に俺達と彼ら【時の番人】はまた別の繋がりを持っている。
特に目の前にいる“恩人”と顔を伏せている“親友”は俺の――いや俺達の人生に新たな色を付け加えてくれた大切な人。
だけどさっきの真備の言葉を遮るように言った凪の言葉通り俺達は気付いていた。
1日中闘いにくれ徹夜明けの濛々とした頭でもそれくらいは気付いていた。
彼ら"時の番人"との……。
`
――"別れの時は近い"――
ということを……。
「……日向」
「なんだ水城?」
水城は俺達に背中を見せるように後ろを向く。
そして問いかけるように語り始めた。
「……貴様は俺の命令を守れるのか?」
――それは誰に問いかけたのか?
いや。おそらく俺に対して言ったのには間違いはないと思う。
だけど俺にはその言葉は俺だけに問いかけたものではない気がした。
そして俺から見た後ろを向いた水城が見つめていたのは“朝焼け”と“空”だった……。
「そんなの決まってんだろ。……問題nothingだ」
だから俺は口に馴染んだそのセリフを言うのに少しだけ戸惑う。
でもそんなこと関係なく水城は俺の解答に満足したようにふっと鼻で1回笑うとそのままヘリに乗り込んでいった。
「あ…あのっ…真備///」
次にゲイル先生の金色の髪の毛とはまた違う水色の綺麗な長髪が靡く。
「どうかしたか刹那?」
顔を真っ赤にした刹那は真備から2メートルくらい離れた場所から真備に呼びかける。
対して真備はそんな刹那の様子を若干不思議そうにしながらも普通に返答した。
「いや……あの……なんていうか……///」
「なんだよ。はっきり言えよ?」
手と手を後ろで組んでちょっともじもじとする刹那。
その姿はまさしく可愛らしい1人の女の子だった。
「……もしかして」
「セッちゃんそうなんだ♪」
何かに感づいた感じで凪が呟きチエは本当に嬉しそうに目を輝かせる。
そんな2人と目の前の刹那の姿を見て俺は首を傾げるのだった。
――女の子ってよくわからないな……。
俺の女の子に対する疑問は尽きることはなかった。
そして刹那は真備と顔を合わせることなくもじもじ喋り出す。
「お、俺は……体を動かすのは得意だけど……唇をふふふ震わせるのは苦手分野なんだ……///」
「……それで?」
2人の目と目が合うことはない。
真備が合わせようとしても刹那は目を自分から反らしている。
「そ、それで…つまり……俺は口下手なんだ。だ、だけどこれだけは……言わせてくれ……///」
「?」
つまり詰まりで話す刹那に不思議そうに首をひねる真備。
だが刹那の少し違う雰囲気にのまれて真備は黙って頷いた。
それを見た刹那は大きく深呼吸をする。なぜかしら頬の赤みが増しているように感じた。
刹那はもじもじするのを止めるとその場に直立する。
だけどそれでも真備の顔は見れずそのまま顔を合わせることなく呟くように言った。
「その……ありがとな」
「へ?」
聞こえなかったのか。はたまた本気で分からなかったのか真備はそんなすっとんきょんな声を出した。
だが刹那は聞こえなかった方に受け取ったのか今度は顔全部を真っ赤にして真備の顔を直視し叫ぶように言い放った。
「助けてくれてありがとって言ったんだよ!!!!!!!!」
「うっ!?」
突然の刹那の叫び声に真備は驚いてのけぞる。
そして言い放った刹那の方はといえば……。
「じゃっ…じゃあそういうことだからな!!」
やけくそのように真備にそう言うと逃げるようにヘリへと乗り込んで行った。
1人また1人とヘリの中へと姿を消していく中俺達の瞳はある一点へと注がれる。
時間がすぎ大分朝焼けも高くなったからか背景をそれにしている彼の顔は上手く見れなくなっていた。
だけど俺達にははっきりと見える。
いや見えなくても分かるのだ。
長年“親友”をやってきた俺達には……。
「輝喜……」
「はい。なんですか?」
声を低めて俺は彼の名前を呼ぶ。
すると彼は日常では見せてくれなかった素の彼の丁寧な口調で応えた。
「コウ君……」
俺のすぐ隣から切なげな涙ぐんだ声が俺の耳に届く。
それは水城に見せた凜としたカッコイい彼女とはまた違う儚げで壊れそうな少女の声だった。
「知恵理……」
今度は前のほうから切なげな声が聞こえてくる。
それはチエとは違う勝手に俺達のもとから離れていくという罪悪感からきたものだと思われる輝喜の声。
そんな中俺は我慢しきれずに輝喜に問いかけた。
「……輝喜。俺達と一緒に来ないか?」
それは輝喜への誘惑の一言。そして俺達の願望の一言だった。
俺の問いかけに輝喜は表情こそ見えないが動揺したように感じた。
「そうよ輝喜。あたし達は何も気にしてないから」
「お前は俺達の親友。俺達と一緒にいるのは当たり前だろ」
さらに俺の言葉に便乗するように凪と真備が輝喜に追加攻撃を与える。
俺の目には輝喜の動揺が増したように見えた。
そして……。
「コウ君。あの楽しかった場所に帰ろ。ね?」
俺の隣からチエの最高の笑顔と一緒に何か力強い言葉がかけられる。
普通ならばここまで言われれば堕ちてしまうだろう。
それは輝喜も例外ではないらしく輝喜の出す雰囲気は動揺の色一色のみ。
俺達はその雰囲気に少しだけ安心しきっていた。
だけど……。
「……俺はもうあなた方と一緒にはいられません」
輝喜の口から出てきたのははっきりとした拒絶の言葉だった。
「え?コウ……君?」
チエの信じられないという驚きの声がヘリの轟音の中こだまする。
だがチエの心情は俺達全員の心情でもあった。
「……な、なに言ってんだよ……輝喜?」
苦笑いの表情がひしゃげてしまっている真備。
だが輝喜はそんなチエや真備や俺達を無視するとヘリに向かって歩き出した。
「ま…待てよ輝喜!!!!」
「行かせないわよ!!!!」
それを見た俺はチエが握りしめる袖を少しだけ無理やりはがし凪は唇を噛み締めて輝喜の方へと駆け出す。
俺達は輝喜のその頬に一発いれないと気が済まなかった。
シュッ!!!シュッ!!!
だが俺達の願いは叶うことはなかった。
空気を引き裂いて何かが飛んでくる音。
それと同時に俺達は何か目に見えない何かに閉じこめられる。
俺はこの何か――いやこの“結界”を身を持って知っていた。
そしてこれを作り出した人物のことも……。
「ゲイル先生……!!」
「何すんのよゲイル先生!!」
俺達はゲイル先生の放ったメスの魂狩“執刀”が造り出して【治癒結界】に閉じ込められたのだ。
「……イッテクダサイ」
「……すみません。ありがとうございますゲイル先生」
ゲイル先生は苦虫を噛むような表情でそう言い輝喜は後ろを向いて表情は掴めないが苦しそうな声でそれに返していた。
そして輝喜はついにヘリに歩き出す。
「ふざけんな輝喜!!!!」
「あんた…許さないわよ!!」
「コウ君…どうして……」
真備が怒りで叫び凪が目を腫らしながら言い放ちチエが涙を流しながら呟く。
治癒結界から出れないそんな俺達に輝喜はヘリに乗り込む前に振り返った。
「凪…真備…知恵理…日向」
1人1人俺達の名前を呼ぶ輝喜……。
そんな輝喜の表情はヘリの日陰により朝焼けで見えなかったが今はしっかりと見えていた。
「みなさんお別れです……。大好きでしたよ……」
そう言った輝喜は切なげな笑顔で涙を流していた。
そしてそんな輝喜がそのままヘリに乗り込むと彼と水城と刹那を乗せたヘリは天高くへと飛翔していった……。
「“問題exist”だ。このバカやろーが……」
歯をかみしめながら俺はその場へと崩れ落ちる。
そして頬を何か温かいものが流れ落ちるのを感じるのだった……。
悶side
「はい。すみません今回は捕らえることができませんでした……」
ユニオンクルーズの本部へと連絡する俺は少し小高い丘の頂上から朝焼けを眺めている。
腕には鉄でできた義手の魂狩“地獄の門”そしてそんな俺の頭上を一機のヘリが通り過ぎていった。
「……今“時の番人”の生存を確認しました」
ヘリが通りすぎる瞬間こちらを睨みつける黒の長髪の男を見た気もするがおそらく気のせいだろう。
そう思いながら俺はふっと鼻で笑う。
そして俺に新たな指示が下った。
「【Ⅴ(クィンティ)】をこちらにですか……」
その指示は俺達ユニオンクルーズそれに日向達には大きな意味を持つ。
そして――時の番人にも同等のことが言えた。
「【Ⅳ(クァトロ)】了解しました……」
少しだけあくまで少しだけ俺はため息を吐くと手に持った携帯の電源を切る。
そして上がったばかりの朝焼けを眺めながら俺は少し楽な格好になりその場に腰を下ろした。
「まさかこんなに早いとはな……」
一言呟き俺は目を閉じる。
「2人目の“チルドレン”投入だな……」
目を閉じることで朝焼けの光を遮断し闇へと自らを誘うと俺は呟く。
そんな俺の左手にはキラキラと輝く“戦闘義手”肩まであるその機械の下には……。
【Ⅳ】の刺青が刻まれていた。
第1章【時の番人編】完
`
作「いよいよ第1章が終わったな……」
凪「ちなみにこの物語はまだまだ続くんだからね!!」
作「な…凪!?」
真「あぁ。次の展開がいったいどうなるのか楽しみだな!!!!」
作「ま…真備!?」
輝「これからも俺の出番ありますんで」
作「こ…輝喜!?」
知「私達はこれからも頑張っていきます!!!!」
作「ち…知恵理!?」
日「てなわけでまずは次の第2章予告編を読んでくれ!!!!」
作「ひ…日向!?……そうかお前らやってくれるんだな!!!!」
全員『あぁ(はい)!!!』
作「そうか……じゃあ次の章も頑張るか!!!!」
全員『任せろ(てください)』
作「よっしゃー!!じゃあ頑張っていくか!!
じゃあ次回予告っていうか次章予告!!!!
謎の言葉を残す悶に悲しみにくれる日向達!!
そんな日向達の前に新たなる敵が現れる!!
果たして彼らの正体とは……?
次章【異端者編】」
日「問題nothingだぜ!!」
作「じゃあこれからも……」
日「時の秒針……」
凪「異端者編を……」
真「よろしく……」
輝「お願いします!!」
知「待ってまーす♪」
次回に続く!!!!