第37話 光芒の包囲網
最近、更新が遅くなってしまっているのでここで深く謝罪いたします。
まことに、申し訳ありませんでした<(_ _)>
ちなみに今回から書き方も少し変えたのでよろしくお願いします。
レリエルside
「【風声鶴唳】…ですか」
気を失った刹那を優しく抱き留める凪。その彼女の姿を見つめながら、俺は先ほどの凪のやったことについて考えました。
風神の特性【風声鶴唳】
まず、最初に述べるべきことは彼女の持つ特性の特殊性について考えました。その理由は以下の2つ。
1つ目は、凪が初発動から1日で魂狩の特性と協調を使いこなせたと、いうことです。
本来、魂狩は長い年月をかけて地道に精進させていくもの…。
実際に、水城や刹那は昔から能力値を高めていって、やっと現在の戦闘を可能にしていると聞きました。
それほどまでに能力を昇華させるということは大変なことなのです。
そして、2つ目。
それは凪が【幻術師】だったことです。
基本的に能力者は俺達みたいに、相手に直接ダメージを与える【戦士】と呼ばれる人間が大半を占めます。
ですが、まれに相手の精神攻撃を得意とする者達が生まれてくることもあります。それが【幻術師】です。
【幻術師】は【戦士】に比べると極端に数が減ります。
ですが、逆を言えば【幻術師】に対抗できる手段も極端に少ない。それは当然の理と言えましょう。
そして、その数少ない対抗手段のうち最も手っ取り早く、最も確実な手段。それは――
【幻術師】に対抗できるのは【幻術師】
このセオリーがあります。
つまり、能力者を求める人々にとって【幻術師】は最も欲するもの。
【戦士】に対する対抗手段として。そして、敵の側の【幻術師】に対する対抗手段として――
…今後、凪は狙われるかもしれませんね。
ですが、今はそれ以上に驚きと興味の対象が俺の目の前にいました。
それは――
「…真備。少しお尋ねしたいのですが…先ほどのあなたの動き、あれはいったい何なのですか?」
「は?さっきの動きって、なんのことだ?」
やはり、気付いてなかったみたいですね…。
「先ほど、あなたが壁を砕いたときの動きですよ」
「あのとき…?俺、何かしたのか?」
「…ホントに気付いてなかったのですね。あなたはあのとき、人間を遥かに凌ぐスピードで駆け出したのですよ?」
「…俺、人間なんですけど」
「あなたと言う人は…そんなこと知ってます」
まったく、頭の回転は悪くはないんですけどね…。
俺は人知れず、顔を隠すフードの下で小さくため息をつきました。彼を、どのようにして納得させるのかを考えながら――
「先ほどのあなたの動き。あれを言葉で例えるのならまさしく【電光石火】…とても素晴らしい動きでした」
「【電光石火】?」
「詳しく言っても分からないでしょうから、簡潔に説明します。ようはすっごく速いという意味ですよ」
本当に短縮しすぎた説明ですね。
自分で言っておいて苦笑いをしてしまいました。
「…あれが、あなたの雷神の特性の力なのでしょうか?。だとしたら、あなたには一番似つかわしくない能力ですね」
「…どーゆー意味だ?」
「…失礼。語弊がありました。正確には、あなたに似つかわしくないではなく、俺を敵にしているこの状況に似つかわしくない、ということです」
「へ…?」
俺の言葉に首を傾げる真備。その姿に、俺はくすりと笑みをこぼし、ゆっくりと弓を構えました。
「だって――」
真備へと狙いを定めて。
…俺は、この瞬間に覚悟を決めました。
全身に流れてくる緊張、背中に感じる様々な視線、目の前にいる【真備(敵)】からくる、覇気――
全てが俺を闘いへと誘います。
だから、俺は目の前にいる【真備(敵)】に――目の前にいる【真備(友)】に――
「射手座の矢は決して外れないのですから」
鏃を向けました。
――パチンッ!!ザンッ!!
刹那、指から激しいの光が溢れ出す。
その光は、見た目はとても美しいもの。芸術的とも呼べる光の矢。
ですが、俺にはその光がどうしても、汚れた色を放っているようにしか見えませんでした。
少なくとも、栄光などは絶対にありません。
なぜなら、この光は俺がこれまで築いてきた栄光すべてを打ち砕く。
そのための、光であるがゆえに――
真備side
「射手座の矢は決して外れないのですから」
呟きと共に、やつの弓から放たれる一筋の光。それが何なのかは言うまでもない。
…綺麗だ。
男の俺をここまで綺麗に感じさせる一筋の光。見惚れるほどに綺麗な一本の矢だった。
「っ!?くそ…!!」
だが、見惚れてるわけにはいかない。あの矢の危険性。それは、実際に攻撃を受けた俺自身が一番分かっていた。
やつが放つ光の矢はまさしく光速のよう。
俺は迫り来る矢を身を反らして避ける。だが、やつはこれで許してくれる男ではなかった。
「…神聖の槍」
――パチンッ!!ザンッ!!
「な!?ちくしょー!!」
さらに、襲い来るやつの大技。やってくれんじゃねーかよ!!
俺はとっさにファイティングポーズをとる。
だが、やつの腕から放たれ、こっちに飛んでくる光の矢が――もはや、数えることすらできねぇ。
あの攻撃を避けきることは、ほぼ不可能だった。
「くっそぉっ…!!!!」
「一瞬の油断が命取りだということですよ、真備」
飛んでくる無数の矢。その先にはっきりと見えたフードの下のレリエルの顔はうっすらと笑みを浮かべているようにも見える。
ちくしょう!!!
何なんだよ!!その顔は!?
まるで俺をあざ笑うようなその顔…。
久々に気にいらねぇ顔見せてくれんじゃねぇかよ!!
「さて、抜けられますか?」
「…なめんじゃねーよレリエル。こんなもん、姉貴の八つ当たりに比べればかわいいもんだっつーの」
「やれやれ、比べられる対象が彼女なら、確かに何も言えませんね…強がりはいけませんよ?」
「ほざくな!!!!」
自分にできる精一杯の強がり。そして俺は、即座に矢を見定める。
やつの矢が一番少ない場所――そこは。
「ここだあぁああああああああああああああ!!!!!!」
俺は駆け出す。避けることなんて初めから考えちゃいない。ただ、俺はやつに向かって駆け出した。
「はあぁああああああああああああああああ!!!!!!」
ただ駆け抜ける。それしか俺は考えていなかった。
右足に矢が刺さる。だがそんなことは関係ない。左肩に矢が刺さる。だがそんなことは関係ない。
頭のすぐ横を矢が掠める。だが――そんなことは関係ない…!!
俺は迫り来る無数の矢の中を全力で駆け抜けた。
矢の嵐を通り過ぎた。だが、忘れちゃいけない。
あいつの【栄光】を――
「まだだ真備!!!!」
部屋の上の方から日向の声が響いてくる。大丈夫、わかってるさ。
「心配すんな日向!!ちゃんと分かってる!!」
そう、まだ奴の矢が死んでないことぐらい言われなくても分かってる!!
俺は掴み取った持つ光の矢を投げ捨て。
一気に振り返った。
「っ!? マジ…かよ…!!」
「真備。俺はこれまで、何度も言ったはずですよ?射手座の矢は――」
そして俺は、目の前の光景に…絶望した。
「決して、外れないと」
射手座の矢は決して外れない。その言葉の意味を、ここにきて俺はようやく理解した。
俺は侮っていたのだ。やつの戦闘能力を。
「ははは…これは、また…どうしてこうなった…」
「…簡単です。俺はあなたをそこに誘導したのですよ。無数の矢の中にわざと穴を作ってね。
ですから、鏡に矢が反射したとき、あなたがいるその場所に矢が掃射されるよう細工しました。
これこそ栄光。これこそ【栄光】
これであなたは袋のネズミです」
長々しい説明だが、俺自身言われなくても状況は把握していた。
なぜなら、俺の目の前に広がっている光景がすべて…それを全て物語っていたからだ。
目の前に広がる壮大な光景。それに、俺は思わず唾を飲む。
そこには、無数の鏡に写し出された自分の姿があったからである。
…俺は、鏡に囲まれていたのだ。
`
「敢えてもう一度だけ言います。射手座の矢は決して外れません。決して…ね」
――パチンッ!!
指を鳴らす、その音と共に、俺の姿を写し出している無数の鏡から同時に、光の矢が飛び出してくる。
それを見た俺は、自嘲気味に笑みをこぼした。
あぁ…こいつは、もうダメだなぁ…と。
「真備。黙ってて…申し訳ありませんでした」
最後に聞こえたレリエルのその言葉。それに、俺はさっきとは別の笑みを浮かべた。
なに今更、謝ってやがんだよ。そんなの、俺の知ったこっちゃねーよ。
てめーが本当に謝るべき相手は俺じゃねー。それは、お前が一番分かってるだろ?お前が本当に謝るべき相手は――
「そいつは、知恵理に言え」
「…神聖の鏡」
俺の言葉にやつは応えなかった。だけど、あいつはきっと分かってるはずだ。
今はそれより…この状況を何とかしないとな。つっても…打つ手なしだけどな。
俺は再び自嘲気味に苦笑いを浮かべる。だが、そのときだった――
「こらー!!馬鹿弟!!」
耳にこだましてきたのは、毎日毎日四六時中一緒にいて、一番聞き慣れた声。姉貴の声だ。
でも、俺は迫り来る矢への恐怖で答えることは出来なかった…。
だがそのとき、俺は薄く口元を歪ませた。
笑ったのだ。なぜ、この状況で笑うことができたのか?
俺には自分自身のことながらさっぱり理解できなかった…。
…いや、俺には理解しなくていいことだった。もしかしたら、姉貴の次の言葉を内心で分かっていたからかもしれない。
他ならぬ、産まれたときから一心同体だった【ナギねぇ】のその言葉を聞きたかったからなのだろう。
…だから、俺はその言葉を理解するために頭で考えることを止めた。俺には必要なかったから――
「死になさい」
その瞬間。俺の中でなにかが壊れた。
`
作「はい。じゃあ今日のあとがきはは久々にこの企画で行きましょう!!
第回【時に至る経緯】
司会は俺、作者がお送りしまーす。そして、今回のゲストはこの2人!!」
真「うっし!!羽前真備だ!!」
凪「羽前凪よ。よろしく」
作「はい。では、今回はこの2人の話をしていきたいと思いまーす」
凪「んじゃ、まずはあたし達のキャラ設定についてね。と、言っても…」
真「俺も姉貴もいつか話した記憶があるんだよな〜」
作「まぁ、そうですね。ちなみに2人のキャラ設定は、それぞれ――」
凪「あたしは、知恵理のボツキャラであるツンデレ幼なじみから」
真「俺は確か…【誰よりもカッコ悪く、誰よりもカッコいい】をコンセプトにしたキャラだったっけ?」
作「そうですね。でも、それ以前に考えてたこともあるんですよ?」
凪「なに?それ?」
真「あれじゃね?姉貴のロリたいけ…ブホワッ!?」
凪「も(・)ち(・)ろ(・)ん(・)こいつのバカさ加減についてよね?」
作「うわっ…なんか知らないけど、無言の圧力が…まぁ、両方違うけどな」
真「俺殴られ損!?」
凪「ふん!!自業自得でしょ。で?考えてたことってなによ?」
作「はい。まず、俺は主人公とヒロインを考えました。そして次に考えたことが…仲間の設定です」
凪「あたしや真備や輝喜のこと?」
作「明確なことは、まだまだ考えてなかったんですが、とりあえず、日向と知恵理。その次に考えたのがあなた達、3人の設定でした。真備と凪は双子設定として。輝喜は…まだ、内緒です」
凪「ふ〜ん。つまり、あたし達は最初、双子キャラとして創り出されたというわけね」
作「そゆこと。じゃあ次回予告いきましょー。次回の時の秒針は――
迫り来る矢の恐怖。そのときの凪の言葉に壊れる真備。次の瞬間、目覚めた場所は意外な場所だった。
次回【Thunder Nerve】」
日「問題nothingだぜ!!」
作「さて、次は輝喜の話になります」
輝「俺の話、楽しみにしててね〜☆」
次回に続く!!