第30話 日輪流炎術
日向の新しい力が今解き放たれる・・・
VSゲイル編決着!!
問題nothingだぜ!!
日向side
「あ〜もう!!お前ら俺を置いて勝手に話を進めるな!!俺はぜんぜん問題nothingじゃねーんだよ!!いい加減説明しろ!!あ゛ぁ!!」
輝喜の謎の行動後。おそらくこれからの出来事の渦の中心にいるというのに、まったく話がつかめないこの状況に俺の頭はついにオーバーヒート!!
爆発しそうなほど混乱していた。いくら、炎の能力者だからといっても頭の中まで炎への耐性があるわけではない。
そして結果として、頭の中が完全にパンクさせてしまった俺はあまりに理不尽なこの現状にキレてしまったのだった。
「ま…待って日向。いい?お、落ち着きなさい…。まずは話をするから…」
「ソ、ソウデスヒナタオチツキマショウ…ネ?」
「そ、そうだぜ日向!!落ち着け!!冷静になれ!!ちなみに俺も今の状況よく分かってないから!!」
「いや!?お前は分かってなくちゃダメだろ!?」
真備のあまりのバカさ加減に思わずツッコミを入れる俺。ちなみに真備。俺は情報不足で分かってないが、お前は理解不足だろうが…一緒にするな!?
ていうか、凪もゲイルもなんでそんなに必死になって俺をなだめるんだよ!?てめーらは今、敵同士じゃなかったのかよ!?
俺は最早ムチャクチャなこの状況に為すすべは何もなかった…。こうして、俺のささやかな反逆は幕を閉じるのだった。
「…分かった。問題nothing。誰でもいいから状況を分かるように説明してくれ」
俺がしぶしぶといった感じで妥協し、納得すると4人(ちなみにモニターで知恵理も見てるから正確には5人)はあからさまに肩を撫で下ろすのであった…。
俺は猛獣かあぁあああああああああああああああ!?
「で!?なんで輝喜が走ってきたんだ?」
俺はいまだに怒りをおさめきれてないから怒りたっぷりの口調で問いかける。
すると、この問いに応えたのは凪だった。凪は自分自身の前、そこにある3本の執刀――さっき輝喜が投げたそれを指差す。
俺がその指に理解を示し輝喜のほうを向くと、輝喜も分かっていたのか俺に向かって手を振っていた。
「ヒナタ〜ン!!それをちゃんと見てね〜〜!!」
「見てるよ輝喜。それで?なんで輝喜が執刀を持ってんだ?ゲイル先生が投げたやつ…ではなさそうだけど…」
俺の疑問符に今度は後ろの真備が叫んだ。
「へへっ!!日向!!そいつはな、こっちに2本。あっちに2本。地面に刺さってた執刀なんだぜ。で、いまここにあんのが、こっちの2本とあっちの2本のうちの1本ってわけだ!!」
「どうでもいいけど、何もわかってないお前が威張って言うことではないな」
思わず口にでたが、ここは敢えてスルーさせてもらおう。それよりも、問題は執刀が刺さってたということである。
凪たちの側は最初にゲイル先生が執刀を投げたからまだ分かる。だけど、問題は奥に続く扉の方の執刀だ。これは…いったい?
俺が考えを巡らせていると今度は、凪が応える。
「日向。あんたのことだからなんで執刀が刺さってるんだ?とか考えてるんでしょ?」
「…まぁな。説明してもらってもいいか?」
「う〜ん…まぁ、あたしが説明するのもいいんだけど、はっきり言ってあたしのはただの憶測なのよね…。だから、それは――」
そして、凪は輝喜に向けていた指を今度は輝喜とは違う方向の俺の後ろの方へと向ける。
そこには、おそらくこの中でも誰よりもこの状況のことを分かっている人物――
「――ゲイル先生に話してもらったほうがいいんじゃないかしら?」
俺が今度はゲイルのほうを向くと、ゲイルはやれやれ、もしくは降参だといった表情で説明を始めるのであった。
「(日本語訳)…私の執刀の特性【治癒結界】確かにこれはとてもwonderfulかつConvinence(便利)な特性で〜す。でも…こんな便利なものにはそれなりの発動の条件があるので〜す…」
「発動…条件?」
呟いた俺にゲイルはこくりと頷いた。
「(日本語訳)私の執刀の特性である治癒結界。これの発動条件。それは――」
その刹那、ゲイルは右手を顔の前まであげ、手のひらを開く。そのそれぞれの指の間には――4本の執刀が挟まれているのであった…。
「(日本語訳)発動条件。それは――【四方取り】で〜す」
そう言うとゲイル先生は輝喜とは逆方向の後ろを指差す。
そこにはおそらく輝喜が回収し忘れた最後の1本の執刀が刺さっていた。そして、それを見た瞬間。俺の頭の中ですべてが繋がった。
そう…だったのか…と。
「(日本語訳)日向。あそこは私の結界の一番端だと思ってくださ〜い。輝喜が回収した3本もそれぞれが、結界の端のうちの3カ所あったやつで〜す」
やっぱり…そうだった。このとき、俺はもう1つの疑問の答えについても確信を得た。
それは…いつ、治癒結界が発動したかということについて。ゲイルの話が正しければ…おそらく発動したのは――
「(日本語訳)つまり、私の結界は地面に刺した4本の執刀を端にして形成されているということなんで〜す。で、最初に日向、あなたに攻撃したときに投げた執刀…あれが地面に刺さったときに結界は発動したので〜す」
そこまで一息で話したが、理解は出来た。
ようするににあの4本の執刀で【治癒結界】は形成されているということか…と。ふと、そのとき、さらなる疑問が俺の頭に浮かんだ。
「…でもゲイル。それだと1本でも執刀が抜かれただけでも、結界は崩れるんじゃないのか?輝喜はすでに3本も抜いてるのに…なんでこの結界は崩れないんだ?」
俺が口にした疑問に、ゲイルはヒューと口笛を吹くと、嬉しげな表情を浮かべるのであった。
「(日本語訳)excellent.さすが日向。すばらしい着目点で〜す。確かに、この結界は、4本の執刀を軸にして造られて〜す。ですが、一度結界が形成されると結界は安定するので、そう簡単には崩れないので〜す。ただし――」
そこでゲイル先生は一度言葉を切ったが深く一回深呼吸をして最後の言葉を言い放った。
「…4本の執刀がすべて外れると結界は崩れま〜す!!」
その言葉に、俺ははっとした。現在の状況は、輝喜が頑張って執刀を三本外したという状況。
つまり、この結界を維持しているのは、あのゲイルが指差す方向にあの一本だけということだ。と、いうことは…あれさえ、あれさえ抜けば――
「…吹け【風神】」
「…鳴り響け【雷神】」
凪、真備が戦闘可能になる。そういうことだ。それはつまり…俺たちの勝利だということだ!!
結界の外。そこでは、凪と真備の声と同時に強風が吹き。落雷が落ちている。2人も…戦闘準備は万全な様子であった。
「…ヤレヤレ。キガハヤイデスネ。ソトノフタリハ」
「…あいにくあいつらは厳しい家で育てられてますからね…遅刻は御法度なんだよゲイル。それはあんたもよく知ってるだろ?」
「…ソウデシタネ」
――シャキンッ…!!
そして、俺たちもそれぞれ刃を構える。お互い、このとき表情には笑みすら浮かんでいるのであった。
「…そういえばゲイル。1つ疑問なんだが、そんなに情報をベラベラしゃべってよかったのか?」
俺は、構えた紅翼の刃をおろすことなく、ゲイルにそう問いかける。
だが、ゲイルは落ち着いた雰囲気でその答えを返すのだった。
「…ドッチミチ、ナギニハバレテタミタイデスカラネ。イマサラカクシテモ、ムダダトイウコトデ〜ス」
そんなゲイルの瞳は俺の後ろから聞こえてくる声援の方へと向けられていた。
「いっけえぇえええ日向!!最後の1本は任せたわよ!!」
「日向!!俺はお前を信じるからな!!絶対に…知恵理を助けようぜ!!!!」
「…あぁ。問題nothing」
完全に声援によりかき消された俺の声。だけど…言えただけで、俺には十分だった。
言えただけで…俺の気持ちは熱く…熱く…高揚していくのであった。そして――
「ヒナタン!!俺の努力…無駄にしないでよ〜!!全部…託したから…ヒナタン!!」
そして――執刀が刺さったことで、怪我した両脚を押さえながら、必死に言葉を叫ぶ輝喜。
…ありがとう輝喜。本当に…本当にありがとうな輝喜。一緒に戦ってくれて。おかげで――
「問題nothing!!ぜんぶ纏めて俺が片を付ける!!」
――シャキンッ!!ボオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!
おかげで――俺はまだまだ闘える!!
再び刃に灯る紅蓮の炎。それは、俺とみんなの思いがこもった炎。そして、絶対に知恵理を救い出すという、そんな願いがこめられた炎であった。
「… I see.ヨクワカリマシタ。ソコマデイウノナラバ、ワタシモゼンリョクデムカイウチマショウ!!」
「上等だゲイル!!だったらこっちも――全力であなたを倒します!!知恵理を…守るために!!!!」
「…!!… All right.アナタハヤットワタシノコトバノイミガ、ワカッタヨウデスネ。ヒナタ」
そのとき、ゲイルの顔が少し優しくなったように感じた。だけど、俺にはもう…彼の言葉は届いていなかった。
なぜなら…この闘いを終わらせるためにな!!
「問題nothingだぜ!!」
ゲイルside
「問題nothingだぜ!!」
「…ッ!?」
…再び目を開けたときの日向を見た私は呆然としてしまいました。
それは、目が紅いとかの物理的なものではありませ〜ん。私が驚いたこと。それは、彼から漂う雰囲気、それに驚かされたので〜す。
日向が出すその雰囲気。それがあまりに【あの子】に似ていたことに――
「…“姫ノ城…空”」
一言。その雰囲気を一言で表せばまさにそういうことでした。
今の彼の雰囲気はまさしくあの子【姫ノ城空】にそっくりだったので〜す…。
「ヤハリ、アノ“クチグセ”ノセイデスカネ…」
「ふっ」と鼻で笑いながら私は日向達には聞こえないようにそう呟く。それと共に、あのときの記憶がよみがえりま〜す…。
あの日、日向に戦う理由を教えた3年前のあの日の記憶が――
日向と久しぶりに会って、“日向の口から”初めてその言葉を聞いたあの日の記憶が――
ゲイルside(3年前)
「ぐす…ぐす…」
涙でグチャグチャな日向の顔。ですが、その顔は決してひどいものではありませんでした。やはり、あなたは優しい人ですね――日向。
私は目の前で涙を流し続ける日向を見ながらそう思っていた。
でも、それと同時に私は日向の奇行に驚かされてもいました。まさか…まさか、彼の口からあんな言葉がでるなんて思いもよりませんでした。
――これが、1年前まで戦場を駆けていた【紅翼の天使】とは…ですね。
戦場で躊躇なく敵を斬り倒していた少年が、今では喧嘩1つまともにできなくなっていたので〜す。私には【嬉しい】誤算でした。
だけれども――
――この子を再び戦場に送らないといけなくなるのですね…私達は。
それは決められた未来。だけど、私には我慢出来なませんでした。たとえ…。たとえ――
――たとえ…【あなた自身】の願いでも…。
「ぐす…先生…?」
おっと…どうやら日向が泣き止んだみたいですね…。一回り小さな彼の体からは私を見上げるほかありませ〜ん…。
相変わらず整った顔立ちの彼の私を見上げた表情。その素顔の前には涙すら美しく見えま〜す…。
日向…あなたの涙を見るのなんて…本当にいつぶりになるのでしょう…。でも、このとき私は不謹慎ながら、私の前で弱さを見せてくれた日向にうれしく思っていました。
「ハイ。ドウカシマシタカ?」
「もう…大丈夫です。すみません。みっともないとこ見せてしまいました」
「…イエイエ。キニシナイデクダサ〜イ。ソレヨリ、ナヤミハカイケツシマシタカ?」
「はい。本当にありがとうございました…ゲイル先生」
そう言った日向の表情に、涙はもうありませんでした。私は、彼の心の強さを…改めて知ったので〜す。
「先生にそう言ってもらえたので喧嘩する理由を見つけました。だから――」
だけど、私は次の言葉を聞いた瞬間。ただただ…呆然としてしまうことになりま〜す…。
まさか…まさか【空の口癖】だった言葉が日向の口から出てくるとは、滴の一滴も思ってもいなかったので〜す。
そして、このとき私は確信したので〜す。彼の心の中に今でもあり続ける大きな存在を――
「だから――問題nothingですよ!!先生!!」
ゲイルside(3年後)
「…ヒナタ。ワタシハゼッタイニ、アナタヲワタシノウシロヘイカセマセン!!ゼンリョクデソシシマ〜ス!!」
ただならぬ雰囲気を出す日向に、私は今までにないほどの緊張感を持たせて身構えま〜す。
しかし、日向はこちらに斬りかかってくる気配はありませんでした。それが尚、日向の行動の不気味さを引き立てていました。
日向。いったい、あなたはどういうつもりなのですか…?
そんな疑問が頭をよぎりま〜す。でも、私は知ることになりま〜す。彼は――日向は【紅翼の天使】だということを――
「…ゲイル。最初にいっておく。俺はあなたの後ろにいくつもりはサラサラねーってことをな」
『『…え(What)!?』』
その瞬間、私を含めたこの場にいる日向を除いた4人が声が重なりました。
本当に…あなたは何のつもりなのですか…?
「…ヒナタ。アナタハ、チエリヲタスケルノヲ、アキラメルノデスカ?」
「いや、助けますよ…俺は。【ゲイル先生】が教えてくれたことはきちんと最後まで守ります。それに――」
そう言う日向は、またしてもただならぬ雰囲気を出していました。
その姿に、私はまさしく圧倒的な存在感。それを感じま〜す…。
それに、もしかしたら私はこのときすでに分かっていたのかもしれませ〜ん。私の迎える未来が…敗北であるということを――
「それに――俺には、新しい力がありますから…」
そう言いながら、紅翼を振り上げる日向の顔には、不適な笑みが浮かんでいました…。日向は…何をする気でしょう…?
背中に悪漢が走る感覚が止まりませ〜ん…。何か嫌な予感が、滞りなく私に襲いかかってきま〜す…。
ですが、もう――すべてが手遅れでした。私は熾してしまったので〜す。日向の中にある燃えたぎる――
【日輪の炎】を――
「【日輪流炎術・一式】」
「飛炎】!!!!」
日向side
燃えたぎる。日本刀の刃だけじゃない。俺の中にある全てが熱く…!!熱く…!!燃えたぎっていく。
これが、俺が手に入れた新しい力、その名は――
【日輪流炎術】
あのとき――屋上で気を失ったとき【過去の俺】が俺へと託した炎が、今、開火する。
あふれ出る力。沸いてくる心。燃え出す魂。それらすべてが俺を勝利へと導く道標のように明かりを灯した…。
「【日輪流炎術・一式】」
これがかつて【紅翼の天使】と呼ばれた俺が使っていた技…。その名は――
「【飛炎】!!!!」
――ボオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!
俺が叫んだその刹那、日本刀の刃にまとう炎が巨大な火の弾にへと変化する。このとき、俺の魂の炎の燃え上がりは最高潮へと達した!!
さぁ…いよいよだぜ紅翼。おまえの力。俺に見せてくれ!!
その瞬間。俺は一気に炎の弾が纏った日本刀の刃を振り下ろした!!
――ボオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!
ゲイル。これが【炎弾】の日輪流炎術【一式・飛炎】だ!!
「シ、シマッタ!?」
俺の刃から放たれた炎の弾丸。その炎を前に、ゲイルは必死に炎弾を追おうとする…が、すでに手遅れであった…。
それじゃあ…ゲイル先生――
「…チェックメイトです」
――ドカアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!!!!!
問題nothing。これで、すべてが終わりました――
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作「それでは今回は前回の心理テストの続きをやりたいと思います!!果たしてみんなの本当の顔とは?それではlet's go!!」
〜本当の顔〜
日向→クールでシニカルな一匹狼
知恵理→心を許した人にしか甘えない甘えん坊
真備→大きく広い心で皆を温める存在
凪→針を立てて相手を拒絶する孤独な存在
輝喜→隠れた所で活躍する策略家
刹那→可愛く繊細でお転婆な少女
知「…ヒナ君?」
日「…ごめんな知恵理。やっぱ俺って心のどこかで1人で生きてるって思ってたんだな?」
知「うんうん。ヒナ君は1人じゃないよ」
知恵理はギュッと日向を抱きしめる。
日「ありがと…知恵理」
知「それに――」
日「それに?」
知「あ!!うんうん!!何でもないよ!?」
日「??」
知(それに…私が甘えられるのはヒナ君だけなんだから…ね)
真「おぉ。やっちゃってるよあいつら…」
凪「…」
真「…なぁ姉貴?」
凪「な、何よ?」
真「…俺は姉貴の針を抜けるように頑張るからな」
凪「…馬鹿」
凪(あんたはあんたが考えている以上にみんなの支えになってんのよ…)
刹「俺ってお転婆?」
輝「さあ、どうでしょうねニヤニヤ」
刹「…お前は策略家なのか?」
輝「いえいえ、違いますよニヤニヤ」
刹「とりあえずその完璧な造り笑顔止めろよ!?」
輝「ニヤニヤ」
刹「…わざとか?」
輝「ニヤニヤ」
刹「わざとなのか?」
輝「ニヤニヤ」
刹「う…う…うぎゃあぁああああ!!」
輝喜にハイキックを繰り出す刹那!!だが、しかし――
刹「なっ!?」
輝「クスクス。やっぱりお転婆だね〜」
刹「う゛」
輝「それに〜」
刹「?」
輝「すごくかわいい」
刹「なあぁっ!?///」
輝「( ̄ー ̄)ニヤリ」
作「さて、では次回予告。次回の時の秒針は――
永く…辛い闘いが終わり、日向たちはゲイルと対面する。そのゲイルの口から語られたのは予想外の言葉だった…
次回【兄貴"姫ノ城空"】」
日「問題nothingだぜ!!」
注意・今回の心理テストは作者が勝ってに作ったご都合主義のものです。
学校でやっても恥かくだけなので注意してください。
輝「そうだったんですか?」
作「そうだったんです!!」
次回に続く!!