第2話 中国人の転校生
日向side
――ガヤガヤ……
朝のホームルーム直前のこの時間。各教室から聞こえてくる様々な声が耳に入ってくる。
だが俺と知恵理にはそんなことどうでもよかった。
――タッタッタッタッ…!!
「後少し!!」
知恵理の手を引いた俺こと不知火日向は今教室の目の前まで来ている。
だがしかし問題は始業まであと一分もないのだ。
知恵理の体力にあわせつつも全力でざわつく教室を繋ぐ廊下を駆け抜ける。そして一昨日の始業式から通い詰めている3年の教室を見据えた。
「うおりゃ〜〜!!」
――ガラッ……!!!!
雄叫びをあげながら教室に入ったからか教室の視線が痛いが気にしない。いや。気にする暇すらないくらい俺達は朝の運動に疲れ切っていた。
――まぁ。家から学園まで全力疾走してきたら当たり前なのだがな…。
『『はあ…はあ…はあ…』』
教室に俺と知恵理の荒い息づかいが広がるとさっきまでの刺すような視線はいつの間にか消えていた。
寧ろこんなの日常茶飯事と言わんばかりに教室にいる人間は普通に昨日のドラマやら学校の可愛い女の子の話などで談笑を再開している。
ある意味この教室――もといこの学園ではこれが普通なのだ。
「たっく。今朝はなんでまたこんなことになってんだよこのバカップルは……」
「愚問ねバカ弟。そんなことも分からないの??どうせ日向が寝坊したからに決まってんじゃない」
「あははは♪ナギリン。僕としてはチエリンが朝からやっちゃったに一票したいかな〜♪」
そんな空気の中でその空気に逆らうように俺達に近づいてくる3人の男女。
「ははは!!日向。朝からきつそうだな」
「大丈夫??知恵理??……ちょっと日向!!もう少し知恵理の事を考えなさいよ!!」
「まあまあ落ち着いてナギリン。ヒナタンだって必死だったんだから」
三者三様の返しで返してくる彼らは俺と知恵理の親友に当たるバカとロリと眼帯だ。
「はぁ…はぁ……おはよう。真備。凪。輝喜」
「はぁ…はぁー……おはよう♪ナギちゃん♪マキ君♪コウ君♪」
俺は凪の発言に少しむっとしながら知恵理は満面の笑顔で挨拶する。
だが確かに今回のことには俺にも非はあるが元はと言えば――1人で起きることができない俺が悪いですね。すみません。
俺はそう思うと凪の言うとおりだと表情にこそ出さないが心の中で苦笑いしてしまう。
だがそんな俺の葛藤を知らない目の前の3人は俺と知恵理の挨拶にそれぞれ笑顔で返してくるのだった。
「おう!!日向も知恵理も2人ともおはよう!!」
「おはよう知恵理。あとついでにおはよう日向」
「くすくす♪はい。ヒナタンもチエリンもおはようございます」
さてではここでさっきから出てきている俺と知恵理の親友達について紹介しよう。
ちなみにバカとロリと眼帯は冗談ではなく事実だからそこは気にしないで進めていきたいと思う。
まず1番最初に話しているのは――
【羽前真備】
おおざっぱで大胆な性格の持ち主でとても友達思いな奴だ。だがさっきから言ってる通り頭がすこぶる悪いのがたまに傷である。
茶髪の短めな髪にガッチリと引き締まった体。スポーツマンを思わせる爽やかさがあるイケメン(イメキャラはとある魔術の上条当麻)である。
さて2番目に話しているのは真備の双子の姉――
【羽前凪】
真備と同じ茶髪のセミロングの美少女(イメキャラはとある魔術の御坂美琴)。ちなみにツンデレだ。
さらに上げるとしたらその体格。身長149㎝しかないそのロリな体系は彼女の唯一にして絶対の弱点である。
そして最後に話しかけているのは――
【美濃輝喜】
凪や真備とはちがい中学からの付き合いだが俺達にとっては大切な親友だ。
俺と同じ黒髪に黒瞳(イメキャラは11eyesの皐月駆)だが彼の1番の特徴は右目にかかった眼帯だ。だけど輝喜は悲観したことはない。寧ろ彼は――
「ほらヒナタンもチエリンも急いで!!早く席に着かないと梅ちゃんが来ちゃうよ!!」
上記のセリフの通りなぜか異常に高いテンションと俺達に妙なあだなをつけたがる性格の持ち主だ。
だが俺は輝喜のそんな性格がとても気に入っていたりする。
「はいはい。わかってるよ輝喜」
まあこれが俺の親友達だ。クラスにもそれなりに仲がいいやつはいるが親友と呼べるのは知恵理を含めたこの4人だけだ。
たぶんこの関係は生涯変わらないものだと俺は思っている。
「あ。そうだ日向!!ビッグニュースだぜ!!」
俺が席につくと前の席の真備がいつになくハイテンションで話しかけてきた。
ちなみに後ろの席には輝喜がいる。つまり真備→俺→輝喜の順に一列に並んでいることになっている。
「ん?何がビッグニュースなんだ?」
俺は心底不思議そうに首を傾げると今度は常時ハイテンションな輝喜が話に入ってきた。
「ふふふ♪そういえばヒナタンはまだ知らないんだったよね〜♪」
「だからなにをだよ?」
話がさっぱり掴めない俺。とりあえず話の根本的な部分を教えてほしい。
バカな真備ならともかく輝喜はたぶんワザとこうしてるんだと思う。なんせこいつは1番敵に回したくない男だからな。
「はぁ〜……お前ら。まずは話の大まかな流れ3000字で簡潔に言いやがれ」
「いや!!まず3000字は簡潔じゃねーよ!!」
真備がそんなことをいっているが軽くスルーすることにした。
これは俺達の中では暗黙の了解みたいなものだから誰も気にはしない。
「……で。輝喜なにがいいたいんだ??」
「……おい日向。てめー無視すんじゃねー」
「う〜ん…3000字までってことは別に3文字でもかまいませんよね♪」
「おい!!輝喜まで無視すんじゃねーよ!!つか3文字って逆に無理じゃね!?」
「お前なら問題nothing!!俺は信じてる!!!!」
「おい…なんでそこで俺の肩に手をおく!?絶対におかしいだr…ぐはっ!?」
そこまで言って真備は俺の前から消え失せた。
なぜなら「ドゲシ!!」という常人には耳慣れない音。だが俺達には耳慣れた音が響き渡ったからである。
「うるさいわよ馬鹿弟!!!!騒ぐんなら時と場合を考えなさい!!!!」
それは約教室の反対側にいる凪によって投げられた理科の教科書。
凪の手から放たれた弾丸とも言えるその一撃は見事に真備の頭を捉え床と口付けさせたのだった。
「……いや。これ最早殺人兵器の領域だろ」
「はははは♪死なないでね…マ〜キ〜ビン☆」
そんな悲劇(喜劇??)的な情景に俺と輝喜はそう言いながら胸の前で十字をきるのだった。
キリスト教じゃないけど。
「な…なに……すんだ…よ……あね…き……」
「ふん!!別にあんたがうるさかったからじゃないんだからね!!」
「く…くたば……りやがれ…ロリ萌やろー…」
「――どうやらさらなるお仕置きが必要みたいね」
反対側にいるのに凪の稟とした声はしっかり聞こえてくる。
そんな可愛らしい天使のような声に俺と輝喜――いや。天然記念物な知恵理を除いたクラス全員が同じことを思っていた。
あれは――地獄から出てきた鬼の声だ……と。
「ひゃふぇひぃ。ふぁんへんひぃへふへ(姉貴。勘弁してくれ)」
そんな地獄のお迎えを前にしたからか真備の顔にも焦りだす。だが最初の一撃で出た鼻血のせいでうまく呂律がまわっていない。
でもそんなことは凪にとってみれば問題nothing!!まったく関係ないのだった。
「言い訳していいわけ!?」
さすが双子。呂律回ってないのに通じたよ。おまけに数学と国語の教科書を取り出すサービス付き。
俺はあれほどまでにいらないサービスみたことない。
――やっべ…下手すりゃ俺も危険かも……。
俺はそんなことを思いながらふと凪の後ろの席の知恵理を見てみる。
――あ〜だめだありゃ。知恵理のやつ後ろの女子に髪型変えられて遊ばれてる。
まぁ知恵理の髪は確かに銀髪でサラサラだから触りり心地いいけど――空気読もうよ後ろの女子。
ちなみに今の知恵理の髪型は三つ編みだ。うんなんか銀髪の三つ編みってフルタルパニックを思い出すな。
俺は知恵理の新たな一面にうんうんと頷きながら早足でその場を退避していった。
もちろん最初の一撃で動けず床にはいつくばったままの芋虫の真似をした真備を無視して。
さっき言ったがこれが俺達の常識なのさ。
「さあ…観念しなさい!!」
しかもあんな鬼の顔したロリ体系のお前の姉貴に勝てるわけねーだろ。
だからすまん真備。俺と輝喜は席から避難させてもらう。
――そんな悲しい顔するなよ真備。爪垢はあとで拾ってやるから……。
「骨すら残んないのかよ!?……って姉貴。ま……待て。話し合いはいつの時代も必要なわけでして……や…やめて…そこだけは!!??………ギャ―――ッ!!!!」
真備の断末魔は俺には一切聞こえなかった――ことにしよう。
???side
ここは桜時市郊外の洋館。
所謂暗く不気味な森の中にあり密室殺人なんかがおきそうなそんな雰囲気のある洋館である。
そんな洋館の廊下を歩く黒の長髪の男が1人いた。
――コツコツコツ……
男の足音が暗い廊下に響き渡る。そしてその足音が止まった先には長髪の男は1つの大きな扉の前に立ち。
――……キ――――ッ!!!!
そして自らの長髪を1回靡かせるとその大きな扉に手を着け押し開くのだった。
建て付けがわるいのか扉を開ける音はとても不気味だ。ここから先には恐ろしい何かがありそうな雰囲気。
だがしかし男が扉を開けてから最初に飛び込んできたのはそんな恐ろしいものとは無縁そうな可憐な1人の少女であった。
「……ん。やっと帰ってきたのか水城」
「……まあな」
男を迎えたのは水色の長い髪を持つ明らかに欧米の血が入っていると思われる美少女。
だがその容姿とは裏腹に少女はたった1人その部屋にいたからか少女の周りには大量のお菓子の袋が散らばり少女の可憐な雰囲気をぶち壊しにしていた。
男はそんな彼女の姿に深いため息をつくのだった。
「……刹那あれほどここに私物を持ち込むなと言っただろう」
「え〜いいじゃん!!だって"この時代"のお菓子って美味しいんだもん!!」
少女――"刹那"の周りにはまだまだ開封前の多種多様なお菓子の山。最早その量は1人の少女が食べるには明らかに食べすぎのように思えた。
しかし男――水城はそんなお菓子の山より刹那の子供っぽい性格に頭を抱えてしまう。
紛いなりにも彼女のことを気にする彼にとってそれはこれまでずっと思ってきた疑問であった。
「パリパリ…それより……パリパリ…水城…パリパリ…天使の方は…パリパリ…どうだった?」
「……まずお前はその手に持った袋を置け」
おそらく先程開けたばかりであろうスナック菓子の袋を抱えながら問いかけてきた刹那に水城はたまらずそう指示する。
すると刹那はさすがに悪いと思ったのかはたまた水城の強い叱咤にビックリしたのか大人しく手に持ったその袋を手放す。
それを見て水城はやっと話を進めていくのだった。
「……"奴"を見た感想だが最初は見事に民間人になっていたと思って失望しそうになった……だが"奴"はいまだに戦いをわすれてない。【紅翼の天使】の名前は伊達じゃないということだ」
「……つまり天使の力は4年たった今でもヤバいってことか」
さっきまでお菓子を取られたからか機嫌が悪かった刹那の顔に少しだけ興味を持ったの薄く笑みが浮かぶ。
そんな刹那に今度は水城が別に行われている計画について尋ねた。
「……刹那。例の計画はすすんでいるか?」
「ん??あ〜あいつはうまく学校に潜入しているよ」
「……そうか。さすがはコードネームとはいえ夜の天使の名前を持ってるだけはあるな……」
男――水城は最後に「……まぁ。あいつなら当然か」と付け加え再び黒い長髪を靡かせる。
だがそれでも整った水城の顔の表情が崩れることはなかった――。
日向side
「転校生?」
「うん。大正解♪」
すっとんきょんな俺の言葉に輝喜は肯定の意味を込めニコニコと笑みを浮かべながら頷く。
「うぅ…。すみませんもう二度としません。もう三度としません……」
ついで言うと横で意味不明なことをほざきながらうなされているバカはいつもながら無視だ。だってそれが俺達の常識なんだからな。
てか「もう三度もしません」って一体全体どういう意味だよ……。
俺は凪の攻撃で屍と化した真備を横から眺めつつ輝喜の説明に再び耳を傾ける。
「でも本当に3文字で説明するなんてな……」
「ふふふ♪それが僕のクォリティーです♪」
何が嬉しいのかとびっきりの笑顔を浮かべる輝喜に俺は苦笑いしてしまう。
ちなみに今は普段ならホームルームが行われているはずなのだが我らが担任こと"梅ちゃん"が来ないから話をしていられる。
さらに付け加えると今の知恵理の髪型はツインテールだ。うん。小悪魔な知恵理も似合うな。
「で…朝からこんなににぎやかなのか」
俺はこっちに満面の笑みを見せるツインテールな知恵理に軽く手を振りながら辺りの様子を察する。
よくよく耳をすましてみれば男か女かとか。カッコいいか可愛いか。などといった様々な憶測がたっている。でもそれも仕方がないことだ。
だがしかし――
「……ちょっと騒ぎが大きすぎぎじゃないか??」
「う〜ん。確かにヒナタンの言うとおりだね」
そうなのだ。いくら転校生が珍しいとはいえ教室の中はちょっとにぎやかすぎるのだ。
ここは桜時市東日本の首都【帝都】と西日本の首都【古都】の次に大きい街。その唯一の学校であるこの学校への転校生はそんなに珍しくはない。
実際昨年も転校生は俺達の学年だけでも10人は来ていたはずだ。
だがここまで騒がれることはそうそうなかったはず――でもこの騒ぎにはちゃんとした理由があった。
「でもねヒナタン♪この騒ぎも仕方ないと僕は思うんだ♪だって――」
「だって…??」
そのとき俺は尋常ならぬ寒気を感じる。だけど一瞬だったため輝喜には気付かれることはなかった。
だが俺はこの寒気の正体を知っている。なぜならこの寒気は昔どこかで感じたことあるような――そんな悪寒であったからだ。
まるで俺のことを敵視しているような明らかな殺気を感じ。そんな恐怖感がある悪寒であった。
「――転校生が外国人なんだって噂なんだよ」
「あぁ……なるほどな」
幸にも輝喜の表情を詠むからには問題ないみたいだ。俺は少し片言になりがちな言葉でそう応えがら安心の息を吐き出した。
だがこのとき俺は気付いてなかった。
倒れた真備の体が僅かに動いたことにも知恵理の髪弄りに混じった凪の表情が微妙に強ばったことにも輝喜の机の下の拳が常に震えていたということにも――
「あぁ納得だな。そんな理由だったら俺も断然興味がわいてきたな」
「あははは♪実は僕も気になったりしてるんだ〜♪」
憶測が憶測を呼ぶ教室。俺も輝喜もその空気に簡単に飲み込まれていった。
さっきの悪寒に頭を悩ませながら――
――ガララ……!!
「はい。席つけ〜」
そのときナイスタイミングで1人の男が入てくる。
ボサボサにした黒い髪の毛にヨレヨレでしわだらけのスーツ。そして何よりあの怠慢そうな顔は完全に整った顔を潰していた。その姿は間違いなく俺達の担任である梅ちゃんである。
このタイミング。ある意味どんぴしゃだった。
あぁそういえば梅ちゃんの説明してなかったな。
梅ちゃんの本名は――
【松竹梅太郎】
――さっきから言ってる通り俺達の担任だ。あんななりでもフレンドリーな性格が相成って人気のある先生(イメキャラはBLACK-CATのジェノス=ハザード)である。
実は3年間ずっと俺達の担任だったから俺達は敬意をもって【梅ちゃん】と呼んでいるのだ。
そして梅ちゃんと一緒に入ってきた見た目日本人の少年――長い黒髪を後ろで束ねた感じのイケメン(イメキャラはBLACK-CATのリン=シャオリー)だった。
「初めまして中国からきました【李・悶】よろしくお願いします」
これが運命は変えられないという俺に対する最終勧告であった――
`
作「こんにちは作者です。今回は【桜時学園】についての説明をしていきたいと思います」
日「俺達が通ってる学園の話だな」
作「まずは桜時市の話から【桜時市】は今作品において東日本の首都【帝都】西日本の首都【古都】の次、日本で三番目に大きい町です。場所は名古屋あたりにあると思ってください」
日「ちなみに帝都と古都は東京と京都のことだからな」
作「そして、その街に唯一ある学園。それがこの桜時学園です。小等部から高等部まであり、街に住む子供全てが通うかなりのマンモス校です」
日「未だに知らない場所とかあるからな〜真備なんか俺達が一緒じゃないと未だに迷うしな〜」
作「まぁぶっちゃけるとどうでもいい情報ですけどね。じゃあ次回予告。
街へと来た日向達一向。だがそこに待ち受けていたのは転校生だった。
だがそんなとき事件が起こる。果たして日向達はこれをどう解決するのか?
次回【街での事件】」
日「問題nothingだぜ!!」
日「ところでほかの奴らは来ないのか?今回の話で主要人物はほぼ出てきたのに…」
作「確かにそろそろ2人じゃ厳しくなってきたな。じゃあ次回はほかの奴にでてもらうか」
次回に続く!!