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時の秒針  作者: †HYUGA†
第一章;時の番人編
24/76

第23話 桜時クリニック

なんだかんだで過去最長・・・



日向side


桜時学園で俺が目覚めてから早くも半日。知恵理のことが気になり授業には出れなかったが学校も終わった夕方。俺達は桜時市にある病院【桜時クリニック】にいた。


理由は簡単だ。あんなこと(屋上のこと)があったのに無傷なわけなく…。


俺は全身擦り傷と切り傷だらけ、真備にいたってはギリギリの所を雷神で受け止めたとはいえ肩から腹にかけて大きなあざが残っていた。


というわけでここの病院にいる知り合いの先生に診て貰うためである。




――バリバリバリッ…!!!!




「痛ってえぇええええええええええええええ!!!!!!」


「ちょっと真備!!あんたも男なら少しは我慢しなさい!!」




真備の体に大量の湿布を張り付けている凪。


――でもただ湿布をはるだけでは真備も痛がらないのに。




「ねぇナギリン…なんでガムテープでマキビンの体をぐるぐる巻きにしてるの?」


「決まってんでしょ!!今からあたし達は激しい運動をしないといけないの!!だから動いてもとれないように固定してるのよ!!」


「痛い痛い!!!!そんな気遣いは無用だから!!だから…俺を開放しろおぉおおおおおおおおおおおお!!!!」




――というわけで、凪の手によって明らかに間違った治療法を受けている真備。その姿に、俺達は黙って目を背けるしかなかった。




――真備(マキビン)哀れな奴…。





俺と輝喜の心の声がシンクロしたことは確実だった――




――バリバリバリッ…!!!!




「ぎゃあぁあああああああああぁあああああああ!!??」




聞き慣れた真備の断末魔を横耳に、俺と輝喜はお茶をすするのだった。





――――――――


―――――


―――






「よし!!終わり!!」




あれから数分。真備の全身をガムテープで固定した凪は最後に真備の体をパチンと叩く。だが、真備が反応することはなかった。そんな様子に俺はため息を吐き出し、少しだけドアの方に目を向け、誰もいないことを確認すると皆に聞こえるように呟いた。




「…先生は?」




俺の真面目な声に凪と輝喜の顔が引き締まり、辺りの気配をうかがう。真備も気配をうかがうことはないが、ぐったりした状態から立ち上がり、ベッドへと腰を下ろす。


それから少しすると2人は俺に顔を向け、頷くのだった。




「…じゃあ話を進めるぞ」




凪と輝喜はドアの近くで人が来ないか見張りながら、怪我人の真備はベッドに座りなりながら、俺の話に耳を貸す。


その表情は真剣そのもの。俺はそんなこいつらの表情を見ながら、話を進めた。




「まず、洋館ってのは真備と凪の家とは反対側の森にあるあれ…だよな?」


「えぇ。あたし達もなるべく近付かないようにしてる。あそこはそれほどまでに薄気味悪い所よ…あたし達が生まれたころにはもうあったから、築何年になるかしら…??」


「姉貴。今する話じゃない。自重しろ」


「…うん。そうだったわね」




真備が凪を叱る。これはこれで珍しい光景だが、俺達は気にすることなく話を進める。


ちなみに俺と知恵理と輝喜はこの町に引っ越してきている。だから、最初からこの町に住んでいたのは真備と凪の双子だけなのだ。


皆の呼吸が深くなる中、今度は真備が口を開ける。




「レリエルは【4人】って言ったそうだな。ということは俺と姉貴と日向…あと1人は?」


「馬鹿弟。あんたって本当のバカだわ。この状況であと1人って言ったら決まってんでしょ…。少しはそのない頭を働かせなさい、馬鹿真備」




真剣な顔をしてても真備は真備。それを思い知らされた一言だった。


呆れを隠さずに頭を抱える俺と凪。そして俺と凪は真備にはっきりと分かるようにドアのほうを向く。そこには――




「ふぅ…僕ですよね?」




そこには――すでに分かっていたのか、どこか諦めたかのようにため息を吐く輝喜がいた。


その姿に俺はどこか清々しさを感じる。すべてを受け入れる覚悟のその姿に。




「輝喜…お前――」


「行きますよ、僕は」




真備の驚きの声を遮る小さく――だけど、しっかりとした輝喜の決意表明。


俺と凪はその姿に何かとてつもなく強いものを感じる。心から強い。そう思える強いものを…。だが、そんな輝喜の決意に納得してないやつがいた。




「ばっ…バカかお前!!!!」




輝喜の決意表明に真備はベッドから勢いよく立ち上がり、怒鳴りつける。


その形相はまるで鬼のように鋭く尖ってるようだった。でも俺達には分かる。


真備は俺達の中で最も友情を大事にするやつだ。だからこそ真備は輝喜のことが――




「ふざけんな!!お前にそんな危ないことさせられるか!!俺は反対だ!!」




――心配で仕方ないのだ。



だけど俺はそんな漫画の主人公のように熱く、誰よりも友情を大切にする真備を嫌いにはなれない。


こいつは確かに馬鹿で方向音痴で馬鹿で機械音痴で馬鹿で不器用な男で馬鹿で何でも突っ込んでいく猪突猛進で馬鹿で――馬鹿で――馬鹿だけど――。










【友達】としては最高なんだよ。



そしてそんな真備が分かっているのは俺だけじゃない。長年親友をやってる俺や誰よりも真備を理解して、大切にしてる双子の姉の凪。それに――




「…マキビン」


「な…なんだよ…」




もちろん輝喜もだ。


輝喜は少し驚愕に顔を歪める真備に真剣な面もちで話しかける。




「僕は絶対行きますよ。マキビン達が一体なにに巻き込まれているかはわからない。でも僕は君達について行くから。絶対に」




鋭く。強い意思が込められた輝喜のその目に真備は後ずさりしてしまう。それは真備の鋼鉄の意思にもひびをいれるほどの凄まじい威力を持っていた。


真備は…重要なことを忘れていた。こいつは誰よりも強い。体じゃなく心が強いってことを――




『『………』』




無言になる2人。それはあたかも、ビリビリと火花を散らすような状態に見えないこともない。


だが2人の様子をよくよく見てみれば分かる。輝喜の方が真備をかなり押しているということが…。おそらくこのままいけばきりがないだろう。だからここは俺が助け船を出すことにした。




「真備。お前の負けは最初から決まってたんだよ」




俺の言葉に真備は何かがはじけたように俺のほうを向いてくる。


こちらを向いた真備はかなり間抜けな顔だ。そんな真備に俺は慰めるように語りかけた。




「真備。分かってんだろ?こいつの心の強さは筋金いりだぜ。まさかこいつの意志をぶっつぶす気はないだろ?」




慰めると言いつつも、半分脅迫に近いことを俺は真備にぶつける。すると真備は一瞬その表情を硬直させるも、徐々に綻びを出し始める。




「どうだ真備?」




そして、俺の駄目押しの言葉に真備は完全にうなだれてしまった。こうなることは分かってた。真備が輝喜に負けることは、俺も凪も…それに真備自身も分かっていた。


でも、そんな真備の気持ちも俺達は…痛いほどわかっていた。あいつの気持ちは痛いほどに――




「ちっ。わぁったよ…」




場が悪そうに顔を逸らす真備。その顔に俺は話を進めるために、唇を開いた。




「OK。問題noth「そのかわり」…ん?」




だが、そのとき俺の言葉を遮り、俯いていた真備がその大きな瞳で輝喜のほうに顔を向ける。


そして、真備の口から放たれた言葉は真備らしいの一言につきる言葉だった。




「俺は絶対お前のこと守るからな!!」


『『………』』




突然の言葉に俺達は言葉を失ってしまった。


だけど、真備の言葉は確かに俺達の心の奥深くに突き刺さり、暗雲を晴天に染め上げる。俺達も真備の言葉に同感だった。


俺は――いや俺達は緩みきった頬を隠すことができない。その真っ直ぐすぎる真備の実直な言葉に、俺達は口元を緩ませ、自然と言葉がでるのだった。




「問題nothing。そうだな真備。俺達は絶対に守りきってみせる。輝喜も…知恵理も…な」


「まぁ馬鹿弟にしてはいいこと言ったわね。赤点ギリギリだけど…まぁ合格点かしらね」


「ふふふ…お願いしますよマキビン。俺は俺で頑張るから必要ないと思うけ〜ど〜ね♪」


「おぉ!!また大きく出たな輝喜!!ならお前がいれば時雨水城なんて楽勝だな!!頼んだぜ!!輝喜!!」


「あははは♪任せといてマキビン♪時雨水城なんて3秒でけーおーしてあげるから♪」


『『あははははは!!!!』』




それぞれがそう言って俺達は全員で笑いあう。その笑顔の中、俺は決意を強く固めるのだった。



――知恵理。俺はお前を絶対助け出すからな…。






知恵理side



「待ってるからねヒナ君」




真っ暗な部屋の中。私は、なぜかは知らないけどそう口に出していた。ちなみに私は今1人じゃありません。私のすぐ横。そこには――




「どうしたんだ知恵理?」


「え?あぁ…んーなんでもないよ、セッちゃん」




隣でお菓子を食べているセッちゃん。私は独り言をセッちゃんに聞かれたと思って顔を真っ赤にして手をブンブンと振りました。


ちなみにセッちゃんというのは刹那ちゃんのこと。捕まってから少ししてから来てくれて話し相手になってるうちにそう呼ぶようになったんです。


やっぱりレリエルさんといい、セッちゃんといい、いい人はどこにもいるみたい。




「そうか…あ。ほらお菓子まだあるからどんどんたべろよ!!」


「うん!!ありがとう」




このとき私は、危機感が無い私自身に呆れて苦笑いしてしまいました。


だけど、それもセッちゃんのおかげ。本当にありがたかった。




「――それにしても大変だったな〜知恵理。あの無表情男が迷惑かけて…本当にごめん!!」




さっきから10回目くらいになる謝罪の言葉に、私は溜め息を吐き出してしまいました。本当に気にしなくてもいいのに…。




「うんうん。気にしないでセッちゃん…。私は大丈夫だから…ね?」


「うゆ…」




セッちゃんが安心できるように、私はセッちゃんの髪を撫で撫でしてあげる。撫でられたときに見せるその嬉しげな顔が癖になっちゃいそう。


私はヒナ君にこうしてもらうのが大好き。だから、セッちゃんにもしてあげてるの。ヒナ君も私を撫で撫でしてるときはこんな気持ちなのかな?




「…うにゅ///」




可愛い声で鳴くセッちゃん。まるで小動物みたいなその姿に私はキュンとしちゃいました。


私がセッちゃんの髪を撫で撫でしながら、セッちゃんの笑顔を楽しんでたそのとき、不意に部屋の入り口のドアが開きました。




――ガチャッ…




「2人とも。ご飯をお持ちしましたよ」




その無機質な、だけど優しげな口調の声が私達がいる部屋に響きます。相変わらず顔はフードで隠されているから見えませんが、その顔は微笑んでるように思えました。




「あ。レリエルさん♪」


「(ビクッ!!)よ…ようレリエル。ありがとな」




セッちゃんは、レリエルさんが入ってきた瞬間に私の腕から抜け出しちゃいます。ちょっぴり残念。


セッちゃんは、顔を赤くして恥ずかしそうにしてます。でも、そんな中レリエルさんはセッちゃんの耳元に唇を寄せると――。




「ふふふ。気持ちよかったですか、セッちゃん?」


「ば…馬鹿!?」




レリエルさんがそっと呟いた言葉に、セッちゃんは、さらに顔を赤くしてしまいました。レリエルさんたら何言ったのかな?




「ふふふ。レリエルさんあまりセッちゃんをからかわないでくださいよ」


「…馬鹿にしすぎだ。レリエル」




あははは…セッちゃん。拗ねちゃった。でも…拗ねたセッちゃんも可愛い♪


私はこのとき、あんな妹が欲しかったなぁって、思っちゃいました。お兄ちゃんなら居たんだけどね…。


そして、私はセッちゃんをからかうレリエルさんに目線を移しました。




「なんかご機嫌ですねレリエルさん」


「ふふふ。そうですか?」




レリエルさんはそう言ったけど、その様子は明らかでした。顔は見えませんがレリエルさんは恥ずかしそうに頬を掻きます。案外バレバレですよ?




「レリエルさん。何かあったんですか?」




するとレリエルさんは少し照れ気味に首を横に振りました。




「う〜ん。あったと言ったらありましたけど、なかったと言ったら何もありませんでしたね…俺の方には…ですけどね…」


「…??…レリエルさん??」




――あれ?レリエルさん…どうしたのかな?


最初は楽しそうなに話していたのに、途中からは哀愁を感じるような話し方をするようになるレリエルさん。


その様子に、あたしはレリエルさんの頬へと手を寄せていきました…。




「…っ!?…いえ。何でもありません。今のはお気になさらないでください」




だけど、私がレリエルさんの頬へと触れる前に、レリエルさんはどこか慌てた様子で食事が乗せられたお盆を地面へと置きました。


私は突然の出来事に、思わずピクリと肩を震わせます。でも、私から少し離れるとレリエルさんはまた穏やかな声で私に語りかけました。




「知恵理。ご飯はしっかり食べないといけませんよ?きっと今夜は食べないと保ちませんから…」


「…レリエルさん。はい。分かりました」


「ふふ。素直な子は大好きですよ…知恵理」




そう言ってポンポンと2回私の頭を優しく叩いて口元で微笑みました。


私はその笑みをなぜだか分からないけど見たことある気がしました。なぜだか分からないけど――




「ほら刹那も。食べておかないと後で働けないませんよ?」


「うぅ…わかったよぉ…」




拗ねたままだけど、レリエルさんの言うことをしっかり聞くセッちゃん。そんな2人の様子に、私は2人の強い絆を感じました。私達にも負けない――いや、もしかしたら私達以上の強い絆を。


だけど、私が2人のそんな姿を微笑ましく見ていたそのときでした。




「……レリエル、入り立つぞ」


「水城?」




無表情な顔を崩すことのないその人。私を連れ去った張本人である時雨水城さんが部屋に入ってきました。




「…どうかしたか水城。オレ達に用…ってわけじゃなさそうだけど…」


「……刹那。なぜ貴様はここにいる。俺がこの女の監視を言いつけたのはレリエル1人のはずだが」


「…っ!!はっ!!知るかよそんなこと!!オレがどこに居ようがオレの勝手だろ!?」


「……ふん。まぁいい。精々、客人やレリエルに迷惑をかけないようにしろ」


「ちっ。お前に言われなくても、そんなことわかってるよ。話が済んだならとっとと消えな。無表情男」




その人。時雨水城さんの登場にさっきまで和やかだった場の空気が一変しました。水城さんに悪態をつくセッちゃんの表情には明らかな怒りの表情があり、レリエルさんも表情を固まらしてしまいます。


その異常な空気に、私はただただ事の次第を見ることしかできませんでした。




「…刹那。落ち着いてください。水城が知恵理を連れ去ってきていきり立つ気持ちは分かりますが、ここは押さえてください」


「…だけどレリエル。この男はオレ達に何の相談もなしに強引に作戦を進めやがったんだぞ?お前は腹が立たねーのかよ。こいつに」


「えぇ。えぇ、そうです。俺だって水城のやったことに怒りを感じてないわけではありません。ですが…ですが、ここは耐えてください刹那。俺のため、あなたのため、そして何より【彼ら】のために…」




レリエルさんはセッちゃんの両肩に手をおいて必死にそう悲願しました。


薄暗い部屋の中。私の位置からもしっかりと見ることのできるレリエルさんの口元。それは確かに固く結ばれていました。まるで、自分自身を縛るかのように、固く。




「…ごめんレリエル」




それから数秒もたたないうちにセッちゃんの口から漏れた言葉は、きっとレリエルさんが一番待ち望んでいた言葉でした。




「…いいえ。俺の方こそありがとうございます。こんな俺の言葉を聞いてくれて」




レリエルさんの結ばれていた唇が解放され、綻びへと変わりました。そして、セッちゃんの肩から手を放すと水城さんへと向き直りました。


変わることのない無表情な顔でレリエルさんを迎える水城さん。その姿に私はすごい威圧感を感じます。ところが慣れているのかレリエルさんは、そんな水城さんの態度に臆することなく口を開きました。




「さて、刹那とは話が付きました。それで水城。俺達に何のご用ですか?」


「……あぁ、ちょうどいい。用があるのは刹那でも、そこの女でもない。お前だったからな」


「珍しいですね。水城の方から俺の所に来るなんて…。どのようなご用件なのですか?」


「……この部屋でしか果たせない用件だ」




――カツカツカツカツ…




警戒するレリエルさんに、水城さんはゆっくりと近づいていきます。その様子を私達は見ていることしかできませんでした。


そして、レリエルさんの目の前で立ち止まる水城さんは、そのままレリエルさんの耳元に口を寄せて静かに呟きました。


私にもよく聞こえるように、しっかりと――




「……遊びはここまでだレリエル。貴様の任務はこの場をもって終わりとする。……今、楽にしてやるからな…」


「え…?ぐあっ!?」




――バンッ…!!!!




「…っ!?水城っ!!!!」




突然の事態に、私の近くで傍観者となっていたセッちゃんの声が響きわたります。対して私はあまりの事態に声を出すこともできませんでした。


なぜなら、水城さんが突然レリエルさんを乱暴に転けさせたからです。


でも…ただ、転けさせたわけではありませんでした。


突然のことに慌てるレリエルさん。だけど次の瞬間。水城さんは、レリエルさんの闇を隠すフードを脱がせ、レリエルさんの顔をさらけ出させました。




「水城…!?お前!!自分が何をやってるのか分かってんのか!?」


「……無論だ。何のためにこの部屋に来たと思っている。何のためにこの女がいるこの部屋に来たと思っている。全てはこのときのためだ…」


「…っ!?みいぃいいずうぅううきいぃいい!!!!」




怒りに燃えるセッちゃんの叫び声。だけど、今の私にはそれすら遠い世界のように感じました。


なぜなら水城さんがさらしたレリエルさんの顔。私はその顔に見覚えがあったからです――




「な…な…何を…」




水城さんの突然の行動に私以上に、レリエルさん――いえ【彼】は驚きを隠せていませんでした。昨日、今日と会った【彼】の顔が驚愕で歪む。私は【彼】のそんな表情を始めて見ました。


有り得ないものを見たかのような瞳で、水城さんを見る【彼】。私は、そんな【彼】に話しかけることができませんでした。私は、【彼】を受け入れることができなかったのです。




「み…水城?」


「……お前に任務を言い渡す。これから来る客人の相手、しっかり頼んだぞ」


「…っ!?そんな!?」


「……命令だ。お前はただ俺の言うことに従っていればいい。頼んだぞ」




――カツカツカツカツ…




反論がありげな【彼】に水城さんは、それだけ言い捨てると、部屋から出て行きます。


だけど、水城さんの言うこと、それは今の【彼】には酷意外の何でもありませんでした。


でも、今の私はただ無力な1人の少女。私に出来ることは何もありません。私はこの光景をただ指をくわえて眺めることしかできませんでした…。







日向side



「…さて。みんな!!準備は終わったわよね!?」




街の病院である桜時クリニック前。夕焼けが辺りを赤く照らす中、凪の元気いっぱいの声に俺達はしっかりと頷いた。




「問題ないぜ!!姉貴」


「俺も問題なしっす♪」


「俺も問題nothingだ」




確かな意志表示を3人で示す俺達。準備万端。これから時の番人の総本山に乗り込もうとした。そのときだった。




「Hey!!ミナサン!!」




聞き覚えのあるハイテンションで片言の日本語に俺達は再び、今出てきたばかりの病院の方を振り返る。


白く清潔感が溢れる建物の自動ドア。そこには俺達がお世話になった先生であり、この病院の唯一の医者である医院長先生であり、俺達の友達。そして、俺にとっては恩人でもある金髪のその人がいた。




「“ゲイル”先生?」




俺の少し間抜けな言葉にゲイル先生はニッコリと微笑んだ。


金髪の髪をした二十代半ばくらいの男性。聞けば南北アメリカ大陸にかけて栄える世界最大の国家【ギオン帝国】の人だそうだ。




「コレヲモッテイッタホウガイイデスヨ」




――先生の手には包帯と湿布。あとマキ○ンなどなどが入った救急箱。


ちなみにマキ○ンってのは真備のことじゃなくて消毒液のほうだからな。




「え…でも…」


「キットツカウコトニナリマース」




このとき俺達は1つの過ちを犯していることに気付いていなかった。


なぜゲイル先生が治療道具一式を渡してくれたのか?なぜゲイル先生は俺たちの行動を先読みしたのか?


だけど俺達はゲイル先生の言葉の意味も考えずにそれらの治療道具を受け取るのだった。




「あ…ありがとうございます。ゲイル先生」


「イエイエ」




先生はもう一度細く微笑んでくる。


俺達はそんな優しい笑顔のゲイル先生にありがたく礼を述べると頭を下げてその場を立ち去ったのだった。




――――――――


―――――


―――





「………」




――pipipipi…




夕焼けに伸びる日向たちの影を見えなくなるまで眺めたゲイルは少ししてから携帯電話を取り出していずこかに電話をかける。


そのかけた先は…。




「――ア。ワタシデス。ミズキ(水城)」




沈黙なる男。時雨水城だった。




「エエ。ヨニントモ、イマ“ビョウイン”ヲデマシタ。…ハイ、ワカリマシタ」



――pi…♪




ほんの少し。僅か10秒ほどの会話を終えたゲイルは日向達が立ち去った先を静かに眺めるのだった。




「(日本語訳)――日向。あなたは強くなりましたか?私との約束は守れていますか?――あの人に少しでも近付けましたか?――私がそれをたしかめます。私【ゲイル・ハルトマン】がね…」




時の番人の男性幹部である彼【ゲイル・ハルトマン】


だが彼の日向達を見る瞳はこの3年間変わることのない優しさを秘めている。








今この瞬間も――










今、日向の壮絶なる“記憶(時)”が再び動き出そうとしていた…。





           `


凪「ちわー!!今日はあたしが今回出てきた単語について説明するわ!!あんた達!!刮目せよ!!」


知「はい!!分かりました先生!!」


真「うっす!!わかったぜあねK…!!いってえぇえええ!!」


凪「はいそこ!!あたしのことは先生。もしくは神様と呼びなさい!!OK!?」


真「いてて…うっす!!了解したのであります!!神様!!」


知「え!?マキ君そっちの呼び方のほうを選ぶの!?」


凪「よし!!あんたにしては100点満点よ真備!!この調子で次の問題もOK??」


真「オーケー!!!!」


知「う〜ん…本編は赤点ギリギリだったのに、今の回答は100点なんだ…」


真「気にしちゃだめだ知恵理。そこを気にしたら姉貴の発言の七割はツッコミどころで溢れてるからな…」


知「ツンデレさんも大変なんだね…」


凪「はいそこ!!お喋りは禁物よ!!次に授業に関係ない話したら凪払うからね!?」


知&真『『は〜い』』


凪「それじゃ授業を始めるわ。今回の議題はこれよ!!今から黒板に書くからしっかりメモりなさい!!今日の授業はこれでおわりだからね!!」


知「わぉ!!すっごくシンプルな授業だね!!」


真「というより授業として成り立ってなくない!?」


凪「そんなこと気にしない気にしない。べ、別にあんたなんかに気にされるようなことないんだからね!!」


真「ここでまさかのツンデレ!?」


凪「説明へ☆あでゅー♪」


真「無視すんな!!このロリ萌やろおぉおおおおおおおお!!!!」




ギオン帝国について


正式名称は【進歩したアメリカ大帝国(The Gigantic Onward American Kingdom)】


GiganticのGiの部分とOnwardのOnの部分をとってギオン帝国としている。


領地は南北アメリカ大陸でおよそ世界の5分の1の領地を誇り、もちろん世界で最も多い領民を持つ。そのため【世界最強国家】の異名を持つ。ちなみに帝国なため、王政である。


4年前の戦争では、日本と対立していた。




作「はい。自分の考えたオリジナル国家の説明を終えたところで次回予告行きます。次回の時の秒針は――


夜。戦闘準備を完了させて日向達は時の番人の総本山につく。緊迫した空気の中、突然、刹那の声が聞こえてくる。


その口から語られたのは…??


次回【プタハの局長】」


日「問題nothingだぜ!!」


凪「はい。本日の授業はここまで。起立。気をつけ。礼」


知&真『『ありがとうございました』』



次回に続く!!

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