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時の秒針  作者: †HYUGA†
第一章;時の番人編
23/76

第22話 君と私との関係

日向の正体とは?


知恵理side



「まったく……派手にやってくれたな」




ヒナ君がさっきから話し出した言葉は今までのヒナ君とはまったく違う口調だった。


まるで誰かに乗っ取られかような――そんな感じでした。




「……お前は誰だ?」




そんな中で相変わらず無表情な水城さんは少しだけ強めな感じでヒナ君に話しかける。


でもそんな口調の水城さんにもヒナ君は慌てることはありませんでした。




「……なんだ水城。分からないのか俺のこと?」




そう答えながらこっちのほうを向いてくるヒナ君。でもその様子はやっぱりおかしい。


ヒナ君が私達を見る目には何かに怯えるような虚ろな目をしてたから。


私はあんな目のヒナ君を見たくなかった。




「俺は不知火日向だよ。間違いなく」




でもヒナ君の口調だけは冷静そのものでした。


いつも私がピンチの時に助けてにきてくれるときのヒナ君の口調。


まさにそれでした。




「だけど今の俺はそれだけじゃない……」




私が思考のジレンマに囚われているとヒナ君はさらに言葉を続けました。


陽光がサンサンと降り注ぐ中私はヒナ君のその姿を改めて認識します。その意味深な言葉によって……。




「……俺は【紅翼の天使】魂狩"紅翼"の使い手にしてチエの守護者だ」




その言葉は私の中にある世界を動かす新しい鍵でした。


そう。私の知らない私の中の"時"を動かすためのゼンマイであり時の秒針を動かす原動力だったのです。




『『………!!!!』』




ヒナ君のその言葉を聞いた瞬間私達はレリエルさんと水城さんが動揺するのを確かに感じました。


水城さんは表情こそ崩しませんが少し顔が強張りレリエルさんは少し後ずさりします。――ヒナ君の言葉の意味は一体?




「……日向なのか?」


「さっきからそう言ってんだろ水城」




水城さんは動揺をうまく隠しながら言葉をだします。


だけどヒナ君はさもめんどくさそうに答え返しました。でも水城さんは次にとんでもないことを言ったのです。




「……言葉が悪かったな。俺が言いたいのはお前が本当に――


時の番人(クロノス)の元No.3の能力者【紅翼の天使】と呼ばれた昔の不知火日向


――かと聞いている」




その言葉を聞いた瞬間。私やナギちゃん。コウ君に驚愕の色が出ました。


だけどそれ以上にヒナ君の目はこれでもかというくらいに見開いてました。


そしてヒナ君の口が言った次の言葉でヒナ君はとどめを刺されたのです……。




「あぁそうだ。確かに俺は時の番人に所属していた不知火日向だ。時の番人No.4【雨の死神】時雨水城」




認めてしまったのです。他ならぬ【ヒナ君】が……。


そしてヒナ君はついに立つこともできなくなり崩れ落ちてしまいました。


虚ろな目をしたヒナ君。私は我慢出来なくなった。




「ヒナ君!!!!!」




私は叫びに似たその声と一緒にレリエルさんやコウ君の制止を振り切ってヒナ君のもとに走り出した。




『『……』』




ヒナ君と水城さんがそんな私を虚ろな目と無表情な目で見つめます。


でも。私は自らの衝動のままに動いていました。




――ガバッ……!!




そして私は虚ろな目をしたヒナ君を私自身の胸の中へと抱き締めました。


それが私にできる唯一のことだと信じて。ヒナ君は一瞬なにが起こったのかわからなかったみたいだったけど私に抱きしめられているとわかると安心して目を閉じていった。


私とヒナ君の間に言葉なんていらない。お互いの存在を示しあう。それだけでいいのです。




「綺麗になったね。チエ」




そのときヒナ君の口が動いた。でもいつもの知恵理という呼び方ではありませんでした。


私をそう呼ぶのは3人だけ。いえ。3人だけだったと言ったほうがいいかもしれない。




――1人はいつの間にか呼ばなくなったヒナ君。


――1人はいなくなったもう1人の幼馴染。


――そしてもう1人は私の死んでしまった兄。




だけどその口調がヒナ君の呼び方だとわかった。

それがうれしくて私はより強くヒナ君を抱きしめました。




「……ヒナ君。あなたは本当に私の知っているヒナ君なの??」




私は【ヒナ君】に話しかける。


そして【ヒナ君】は体はヒナ君のままだけど言葉だけは【ヒナ君】となり私の質問に答えてくれた。




「チエ。俺は確かにお前の幼馴染の日向だよ。でも俺は4年前……つまりここにいる日向とは別の記憶――だけど本当の記憶を持った9歳の不知火日向なんだ」




その言葉は普通の人には信じられない言葉だったと思う。


その証拠に【ヒナ君】の言葉に私が抱きしめているヒナ君の目が再び見開いた。


そんなヒナ君に私はゆっくりと背中をさすってあげます。言葉なんかよりずっと思いを伝えやすいから――


だけど――私は他ならぬヒナ君のそして【ヒナ君】の言葉だったから信じられたのもまた真実。私にはヒナ君の言葉が絶対なんです。


つまり私達の間に言葉はいらないかもしれないけれども私は結局ヒナ君の言うことならなんでも聞いちゃうということ。


それが私とヒナ君の関係。私はヒナ君に絶対的信頼を置く代わりに傷ついたヒナ君を無言で抱きしめる。


そんな家族のようなはたまた兄弟。あるいは恋人のような関係。いえ。もしかしたらそれ以上のような深いところで繋がった関係。


これが私の世界。そしてヒナ君の世界。私達には家族も兄弟も恋人も含んだようなこんな関係がちょうどいいんです。




「……桜舞い咲き。陽光は天を照らし出し。空は永遠に続いていく」


「……え??」




唐突に呟かれたその言葉に私は思わず顔を上げる。


すると目の前のヒナ君もその言葉を聞いたからか私と顔を合わせゆっくりと抱きしめ返してくれました。



――問題nothing。俺はもう大丈夫だから。いつもありがとな知恵理。



【ヒナ君】じゃなくてヒナ君のその瞳と笑顔は私にそう無言で語りかけてきます。


"心配いらない"ヒナ君の口からその言葉を聞くことはありません。


だってヒナ君も私との関係が分かってるから――


私がヒナ君を心配しないなんて無理。だからヒナ君も私を無言で抱きしめてくれるのだ。それが私達の関係だから――




「……ヒナ君。それはどういうことなの??」




私は喋れないヒナ君の代わりに【ヒナ君】にその言葉で尋ねました。


するとヒナ君は私の言葉に戸惑うことなく表情に出せばきっと満面の笑みを浮かべている。そんな口調で私の問いに応えた。




「ヒントかな。俺自身……それにチエ。お前の中にもある記憶という【時】を引き出すための……」


「【時】??それって一体どういうこと……??」


「それはまだ教えられない。だけど【時】が――お前がその力に目覚めるときは近い。でも安心しろ。そのときはきっと紅翼の天使――"俺"が守ってくれるからさ……」


「……うん。私はヒナ君を信じてる。だからこれからも私と一緒にいてね」


「もちろん【問題ない】分かってるってチエ……それじゃあそろそろあそこにいる無表情男と話させてくれないか??ちょっとここからは――」




私は【ヒナ君】の言葉に軽く頷くとヒナ君から腕を離す。そのときのヒナ君の顔は忘れられない。


あの凛とした真剣な【ヒナ君】の顔は――




「violenceな話だからさ」





日向side



「また体貸してくれないか?」




――なんで?


知恵理から解放された俺に俺の口はそう告げる。


俺は普通に心の中で聞き返してしまった。




「ん〜……まあ、勝手に乗っ取ることはできるんだけどれは俺がいやだからな。あと理由は水城と真正面から話がしたいからかな……大丈夫。話が終わったらすぐに返すから。」




――でも。もともとお前の体なんだろ?だったら勝手に……。




「ふざけるなよ。確かに俺の体だがこれはお前の体でもある。だから許可は絶対求める。わかったか?」




――あぁ…分かった。




「よし。じゃあどうなんだ貸すか?貸さないか?」




――うん。問題nothing。どうぞお好きなようにお使いください。




「さすが俺話わかるじゃん。……そうだ。最後にこれだけ言っておく。今回すぐに体借りなかったのはお前に俺の正体を教えるためだ。次目覚めるとき俺はいない。だから絶対に忘れるなよ俺の正体」




――わかった。




「じゃあ遠慮なく拝借させてもらうぜ……」




そうして俺の視界はブラックアウトした――






水城side



「よう水城。この姿で会うのは初めてかな??」




再び目を開けたときの日向の目は紅かった。


こんな目をした日向を見るのは久しぶりだ。




「さて水城。積もる話もあると思うけどまずは俺の質問に答えてもらおうか」




懐かしさと共に湧き上がるこの感情はやつの目の鋭さが増したと同時に消え失せた。あの目をした日向の相手をするのは危険すぎる。


俺は黙って頷いて「是」だと答えた。




「…1つ目。お前は【空蝉】を知っている?」


「……昔見たことがあったからだ」




間違ってはいない。ただ核心の所は答えてないだけであるが……。


俺は確かに【空蝉】を見たことがある。いや。寧ろ空蝉を始めとする羽前流式紙術は全部"使った"があると言った方が正しいかな。




「2つ目。俺の居場所をどうやって探した??俺は確かに"お前の記憶"も書き換えたはずだけど??」


「……しらみ潰しに探っただけだ」




そう。確かに俺もお前との記憶が書き換えられていた。だからこそ俺はそろこそ血眼になって必死に探したんだ。


あの頃――それにあの戦争を知っている俺の認める"仲間"であるお前を含めた全員があの戦争から数ヶ月以内に3人とも俺の目の前から忽然とその姿を消したからな――


"響理=音弥=オペリア"も。"雲雀春姫(ひばりはるひ)"も――


そしてお前【紅翼の天使】こと戦場にて最も美しく舞った"不知火日向"もな――




「最後だ。だけど実際にはここからが本題と言っていいがな……水城。お前の目的はなんだ??」


「……ご想像に。と言いたい所だが……お前は気づいてるんだろ?」


「まぁな。目的なんて端っから1つしかないしな」




そう言うと日向は肩をすくめてみせた。




「……昔から変わらないなお前は」




俺の言葉に日向は俺を見つめやがて口元を歪ませて言った。




「お前は変わってしまったな……」




まったくだな。


言葉にはできなかったが俺は納得できた。


日向はやはり昔から変わらない。




「さて。俺の出番はここまでだな……。おっと忘れる所だった。俺は今後あまり出てこないようにするから。日向に【あれ】を教えておくぞ」




その言葉が意味するものは大きかった。俺達のこれからの闘いを左右させるほどに――




「……待て日向。あれとはもしかして」


「あぁだいたいお前の想像通りだぜ水城。俺が教えることなんて決まってんだろ」




そして日向は俺のほうを向き軽く微笑んだ。




「【一式】から【四式】までの……奥義をだよ」




日向は最後にそう言うと知恵理に支えられながら倒れ込んだのだった。






日向side



――…な…。ひ…た。




どこかで聞いたことあるような優しくも気品があり勇ましくもある。そんな心地いい声が俺の耳に突き刺さってきた。


だけど辺りは真っ暗闇。ふと俺はそのときやっと自分の目蓋が閉じられていることに気がつく。


瞳が重い。開けるのすら戸惑ってしまうほど俺の瞳は堅く閉じられている。


だが次の瞬間。俺の瞳に何か温かい液体が落ちてくる。それは堅く閉ざされた俺の瞳をこじ開けるくらいの力を持った優しい液体。


悲しみと喜びに暮れる凪の涙の粒だった。




「日向!!!!」


「!!……凪。それに輝喜お前らだったのか」




重たい目蓋を開けた先。そこに待っていたのはどこか暗い表情をした輝喜。それに瞳にさっき俺に降り注いだ優しい涙をめいいっぱいに溜め込んだ凪の2人に覗き込まれている映像であった。


仰向けで寝ている状態で空が見えるということはどうやらここはまださっきと同じ屋上のようだ。


心配そうに覗き込む2人。俺はそんな2人に軽く微笑むと痛みと疲労に軋む体に鞭打って上半身を起こし上げる。




「いてて……」


「日向。大丈夫??」




凪が俺の体を支えてくれたので俺はやっと周りの様子を見ることができた。


まず真備がいた場所。そこには凹んだフェンスがあるだけで肝心の真備の姿はどこにも見あたらなかった。


水城がいた場所は何もなかったかのように綺麗にもぬけの殻。もしかしたらそこにいたことさえ俺の妄想ではなかったのと思うくらいに何も存在していなかった。


そして凪と輝喜。それにレリエルのいた屋上の入口には包帯を巻いた真備の姿が見える。包帯を巻き意識を失っているのか横たわったその姿は安らかそうに見える。どうやら一命はとりとめたようだ。


これで俺は一通り辺りを見渡したことになる。全体的に開けた屋上では俺がいるこの場所から死角になるところはない。


だけど一通り周りを見渡したが俺は違和感を覚えずにはいられなかった。何かが足りないと――



――あれ。何か俺は大切なことを忘れているような気がする……。



俺がそんな疑問を思ったとき不意に真備がいたフェンスとは反対のフェンスから声が聞こえた。


無機質な機械で変えられたその声。それはこの1日の間で俺の耳に焼き付いた優しい口調の声である。


だが彼のその優しい口調自体は今までみたことないくらいに苦しそうなものであった。




「すみません日向」




その声に反応した俺は急いで振り返る。そこには漆黒のフードで表情を隠し感情を見せない男。


夜の天使の名前を持つ光の能力者"レリエル"がいた。




「レリエル??そんなに苦しそうな口調でどうしたんだ??」




俺の言葉にレリエルは拳を固く握りしめる。


まるで自らに課した戒めのように彼は唇を噛みしめたまま放ったかのような苦しげな言葉を放つのだった。




「日向。知恵理は水城が連れ去りました。町外れの洋館。それが俺達の本拠地です。知恵理を連れ戻したかったらそこまで【4人】できてください」




俺は最初何を言われたのかわからなかった。凪と輝喜のほうを見る。


だけど2人共顔を伏せたままだった。でもその表情はレリエルの口調以上に苦しそうにみえる。


悲しそうに――唇を噛みしめている。そこまで来て俺は違和感の正体に気がついた。


どうして今まで気がつかなかったかと俺自身をレリエル同様に戒めるほどに大きな違和感に――



――俺の最も大切な者。知恵理がいなかったのだ。




「レリエル。これは一体」


「すまない日向……」




レリエルは俺の言葉も聞かずにフェンスから飛び降りていく。


その背中に俺はがんじがらめに巻きついた戒めの黒い鎖をみた気がする。


苦しみを強要するかのような黒い鎖を――




――これが時の番人との全面対決の始まりとなった。



           `


日「おい真備。お前知恵理が攫われたってのにいつまで寝てやがんだ!!いい加減に起きやがれ!!おらあ゛ぁ!!」


真「くぺっ!?」


輝「あははは♪マキビ〜ン。首が在らぬ方向を向いてるよ〜。だいじょぶですか〜?」


凪「…気持ち悪い」


真「あんた俺の姉ですよね!?」


日「…自分でやっといてあれだけどちょっとやりすぎたか??これは…なぁ」


輝「う…うん。俺、180°首が回ったまましゃべる人、初めて見たよ…」


凪「…気持ち悪い」


真「あんたら散々だな!?」


作「なんか訳が分からない展開ですけど次回予告行きたいと思います。次回の時の秒針は――


そこは日向達のたまり場所。喧嘩をしたときは手厚く治療してくれる優しい町医者が経営する病院。その場所は…。


次回【桜時クリニック】」


日「問題nothingだぜ!!」


日「知恵理。待ってろ。必ず助け出してやるからな…。それまで問題nothingに無事でいてくれよ…」


真「あのヤロー…次会ったときには覚えとけよ!!知恵理を助け出すついでにぶん殴っってやる!!!!!!」


凪「時雨水城…。知恵理に手を出したら許さないんだからね!!」


輝「…みんな。張り切ってるとこ悪いと思うんだけど…。次回はまだ助けに行かないからね??」


日&真&凪『『…マジで??』』



次回に続く!!

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