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時の秒針  作者: †HYUGA†
第一章;時の番人編
22/76

第21話 雨と炎と雷と

すみません遅れました!


レリエルside



「はぁ…。水城。あなたはいったい何がしたいのですか…??」




俺は水城の無茶苦茶に思わずため息をもらしてしまいます。あんな言い方をすれば2人だって怒るはずですのに…。


なぜ水城はあんな言い方をしたのでしょうか?俺は目の前で起こっている映像を見ながら、その疑問について、吟味しました。




「くらえぇえええええええええええええええ!!!!!!」




――バチバチッ…!!ブンッ…!!




雄叫びをあげながら雷を帯びた拳を真備が振るいます。ですが、大振りのその一撃が水城に当たるはずがありませんでした。




「……拳の振りが大きい」



水城の顔すれすれを通りぬける拳。水城の無表情ですが、涼しげな顔を見る限り、余裕すら感じられます。


やはり…回避能力が高い水城には、そうそう当たりませんか…。




「…っ!?なめるなぁあああああああああああ!!!!!!」




ですが、真備の力も侮れません。常人なら体勢を崩すあの大振りから、真備は呼吸を入れることなく水城に拳を放ちます。


すぐ目の前から放たれる真備の拳。こちらも普通ならば、冷静な頭を保つことも難しい状況。ですが、水城は慌てることなく、ゆっくりと右手をかかげました。




「……【水堅・天象】」




――ガアァアアアアアアアアアアアアアンッ…!!




水城がかざした右手から現れた水の塊を前に、真備の拳は簡単に塞がれてしまいました。


高い攻撃力を持つ真備の拳も水の水圧を前に威力を殺されてしまったようです。やはり、水城の強さはいつ見ても鳥肌がたってしまいます…。



――これは…真備には不利な闘いですね…。




「問題nothing!!真備!!そのまま押さえ込め!!」


「おうっ!!任せとけ!!」




ただし、日向がいなければの話ですけどね――




「くらえぇえええええええええええええ!!!!!!」




真備の攻撃を防いだことで、水城の動きを制限することに成功しました。そこに、炎をまとった紅翼――日本刀を振りかぶった日向が水城を切りにかかります。


だけど水城も油断はしていません。水城はすぐさま、右手で真備を押さえたまま左手に持つ村鮫で紅翼を受け止めました。




――キィイイイインッ…!!




日向の紅翼と水城の村鮫の刃がぶつかりあう音が屋上全体に児玉し、空気の波状を描いて俺達の耳へと流れてきます。


刃と刃――魂と魂がぶつかりあう音。それはまるで、鈴の音のようなとてもとても…清らかで、綺麗な音でした…。






日向side



「ぐあっ…!!」




紅翼を振りかざし、時雨水城と刃と刃を交わらせる俺。だが、やはり体格の違いからか俺の攻撃はいとも簡単に押し返されてしまう。


それに、右手から出される水と左手に持つ村鮫――その2つのコンビネーションはかなりの完成度を誇っている。


やはりまだ魂狩の扱いに慣れていない俺達とは、修練の差が違いすぎる。俺達は着々と、しかも確実に追いつめられていった。




「はぁ…はぁ…はぁ…真備。あの水なんとか破れないのか?」


「はぁ…はぁ…はぁ…む…無茶言うな。あの水に俺の拳はまったく歯が立たねーんだ。無理に決まってんだろ…?」




重度なる攻撃を重ね、息を切らす俺達とは裏腹に時雨水城には一切疲れた様子がない。ただ、無表情な瞳で俺達を見るのみだった。




「……どうしたお前ら。もう終わりか?」




挑発するような時雨水城の声。だが、それでも俺達は体を動かすことができなかった。



――やっても無駄だと分かっていたからだ。




「ちくしょー…やっぱ、対策を変えないと勝てないのか…??」


「真備、違う…。その考えは間違ってる。あいつには対策を変えても無駄。勝てる確率はほぼ皆無なんだからな…あいつはレリエルや刹那とは違う」




――そう…時雨水城はレリエルや刹那とは違う。



あいつは、レリエルと刹那。2人みたいに手を抜くことはない。完全に本気だ。


俺達は、無表情な時雨水城の瞳の先にある何かに押しつぶされてしまいそうだった。あの瞳の先に、何があるのか…それを考えるだけでも、恐怖で体が凍ってしまいそうになる。でも…でも――




「でも…やるしかないんだよな…日向?」


「あぁ。問題nothing。俺に依存はない…!!いくぞ!!真備!!」




そして、俺達は再び時雨水城に刀と拳を向け、気合いを入れ直し、時雨水城に突っ込んだ。




「うおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!炎よ纏え!!!!」




――ボオォオオオオオオオオオオオオオッ…!!!!




俺の叫びと共に紅翼の刃に炎がまとう。俺は絶対に諦めない。時雨水城。あいつを止めるためなら、俺はこの炎に焼かれるまで闘ってやる…!!




「はあぁあああああ…!!」


「……そうこなくてはな、やりがいがない」




対して時雨水城は、初めて大鎌(デスサイズ)――村鮫を両手で構える。


だけど、俺はひるまない。刀を握りしめ、俺は時雨水城までの道を駆け抜けた。




「……雨よ降り注げ」




――ザアァアアアアアアアアアアアアアアッ…!!!!




その刹那、時雨水城の呟きとともに大量の雨が降り注ぎ、村鮫の大きく婉曲を描いた刃に水が灯る。


透明な水が纏った刃が太陽に反射し、キラキラと光って雨後のような寂しげな美しさのように花開く。




「真備!!やつに攻撃させる隙を与えるな!!」


「おう!!分かってる!!」




だけど俺と真備は、今にも攻撃をしてきそうな、時雨水城に攻撃させる暇を与えなかった。


走りながら叫んだ俺の声に真備が応える。雷神を――グローブを付けた右腕を振りかぶり、時雨水城に一気に間合いを詰めよる。




「うおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」




今までに見たことないほどの怒りを覚えた拳で真備は水城に殴りかかる。


鬼気迫るその表情には、真備の怒り全てが込められているような気がした。


対して水城はその動きを呼んでいたのか、真備の拳を避けようと身構える。


だけどそれが水城にとっての過ちだった。ここで俺達はジョーカー(切り札)を出したのである。




「……なかなかやるな」




真備の攻撃を避けようと、体を動かそうとしたその瞬間、時雨水城が無表情のままそう呟く。


その言葉を聞く限りでは、どうやら驚いてくれているようだ。だけどそれも当然だろう。なぜなら――




――ヒラ…ヒラ…




時雨水城のすぐ目の前まで迫っていた真備が【紙】になったからである。




「掛かった!!真備!!」


「おうよ!!散々待たされたんだ!!派手なパーティーを始めるぜ!!」




その刹那、時雨水城の後ろ――完全なる死角となるフェンスから真備が飛び上がる。


そして、それと同時に俺も時雨水城に急速的な加速で一気に迫った。もともと脚の速さは仲間内でダントツに速い俺は、真備と同時に時雨水城に襲いかかるためにギリギリ攻撃が届く範囲でとどまっていた。


そしてそれが水城にとってみれば油断となったはず――そう思った。だけど――




「……【水堅・天象】」




時雨水城は、あの防御技の名を呼ぶ。


だが、このとき愚かだった俺達はその言葉の意味も考えずに時雨水城に突っ込んでいってしまう。そして突然現れた渦巻いた水に弾かれるのだった。




――ガシャアァアアアンッ!!ガシャアァアアアンッ!!




「ぐはっ…!!」


「な…に…っ!?」




時雨水城の今までとは違う【水堅・天象】に対処しきれなかった俺達はそれぞれ別々の場所に飛ばされてしまった。




「くそ…!!何だ??何が起こったんだ…!?」


「ヒナ君!!ヒナ君!!」


「ヒナタン!!大丈夫ですかっ!?」




知恵理と輝喜。それに凪がいる屋上の入り口近くに飛ばされた俺に、知恵理と輝喜が駆け寄る。




「つぅーいってー…。あぁ問題nothing。大丈夫だ」




俺は駆け寄る2人を安心させるように片手を上げながら、上半身を起こした。俺が飛ばされた方を見れば、未だによく分からない現象が起こっている。


あれはいったい何なんだ?




「日向。あんた、死んでないでしょうね??」


「いてて…せめてもう少し優しい言葉が欲しかったよ…」




そのとき、知恵理達から少し遅れて凪がゆっくりと歩み寄ってくる。その表情は知恵理や輝喜とは違い俺の心配はしているようだが表情は硬い。


どうやら凪もあの現象について不思議に思っている。いや、時雨水城に対して敵意を露わにしているようだ。


凪のその表情に俺も知恵理も輝喜も、時雨水城の居る方を見据える。するとやはりそこには水があるのみ。そう――そこには、水城を囲むように水が渦巻いていた。




「…あんた、あれどう思う?」


「…さぁな。見た感じじゃ竜巻みたいだけど、あれ、どう見ても水だよな?」




凪の言葉に応えながら、俺は心配そうな顔の知恵理の手を借りながら、痛む体に鞭を打ち立ち上がる。唇から落ちる血を拭い、俺は刀を持つ手に力を入れた。




「まるで水のバリアー…水でできた要塞ね…」


「いえ。正確には渦のバリアーです」




凪の呟きに応えるようなその声に、俺達は思わず後ろを振り返る。そこには黒いフードで顔を覆ったそいつ――レリエルがいた。




「渦のバリアー?」




俺の繰り返しただけの言葉にしっかりと頷くレリエル。そして、レリエルは未だに時雨水城の周りで渦巻いている水に目を移すと説明を続けた。




「渦潮って知ってます…よね?あれと同じ割合です。周りの物を巻き込んで中心に持って行って…破壊する。つまり相手の攻撃を吸収して村鮫で造った渦の中心に持って行き相手の技を相殺する。これが本来の【水堅・天象】…村鮫で行う防御技【渦潮・天象うずしお・てんしょう】です」




【渦潮・天象】。その技の名前を聞いて、俺は唇をかみしめた。なるほどな…。だから俺と真備の攻撃が当たることはなかったんだな…。相手の力量を量らずに突っ込んだ俺達の落ちだな…。


俺はもう一度唇を噛み締め、時雨水城のいる場所へと視線を移す。


だがそのとき、時雨水城の周りで渦巻いていた大量の水が、前触れなく一気に切り裂かれた。




――スパアァアアアアアアアアアアアアアン…!!!!




「……お前らもやってくれる」




切り裂かれた水が屋上のアスファルトに散らばり、そこからあの男――時雨水城が無表情の顔そのままで姿を現す。


傷一つ見当たらないその姿に、俺とは反対側のフェンスへと飛ばされた真備が悔しそうに唇を噛み締めるのが見える。だが、それは俺とて同じだった。




「……なるほど【空蝉(うつせみ)】か」




悔しさで唇を噛み締める俺と真備の耳に、時雨水城の音程のない声が届く。そして、時雨水城は近くに落ちていた真備だったその紙を拾うのだった。



羽前流式紙術【空蝉】



真備が使う【攻撃式式紙】でも、凪が使う【防御式式紙】でもない、真備も凪も使える【特別式式紙】である式紙。


その実態は自分そっくりに化けさせた式紙を遠距離から操る技。


その紙が感じる五感をそのまま術者に感じさせたり術者の戦闘能力をコピーして軽い戦闘をも行えるため偵察にも使われる実用性が広い式紙でもある。




「……だがいつの間に…そうか最初からか」




時雨水城の言葉に俺達はさらに強く唇を噛む。なぜなら時雨水城は俺達の作戦を完全に読み取ったからだ。


そう、時雨水城の言うとおり最初にいた真備は空蝉が作り出した幻影…。


そして術者本人である真備は一階下の資料室に待機させていたのだ。




「ヒナ君…血が…」


「…問題nothing。このくらいどうってことない」




心配そうな知恵理な声を制して、俺は知恵理に指摘された唇を噛み締めすぎて、流れた血を拭う。


だが、状況は最悪だった。凪は今でこそ普通に俺達と接しているが、時雨水城を前にしてたときは見てはいられなかった。全身を震わせ、立つこともできなかったからだ。つまり凪は闘えない。


そして、俺達の切り札だった式紙は時雨水城に見破られた。あれは本当に最終手段だったのに…。俺達は時雨水城を前に破れたのだ。つまり――




「打つ手なし…ってことかよ…」




俺の呟きは予想外に響いたらしく、周りにいた知恵理、凪、輝喜、レリエルはもちろん、時雨水城は無表情で俺を見て、反対側のフェンスにいた真備すら、俺を睨むような眼で見てくる。


四方八方から集まる瞳を前に、俺は制服のベルトに差した紅翼の鞘を抜いた。




「日向…!!!!」


「……利口だな、不知火日向。……まさか鞘を抜く意味。分からないわけではあるまい?」




叫ぶ真備。そして、冷静に俺の行動の意味を推測する時雨水城。それを前にしても俺は時雨水城から、知恵理達を守るように仁王立ちする。


確かに鞘を抜くということ――武器を捨てるということが、闘いを諦めるということは分かってる。


どうやら真備は俺の言葉、それに時雨水城の言葉に俺が諦めたと思ったみたいだけど…俺はこんなことで諦めると思ってるのか?


俺は心の中でそう呟くと、鋭い眼差しで時雨水城を睨みつけた。真実を告げるために――




「…何、勘違いしてやがんだよ…お前ら?」




俺の一言で周りの空気が一変した。




「なぁ時雨水城?俺達をなめんのはかまわねーよ?事実、俺も真備も凪も…3人掛かりで、お前1人に勝てないしな…。でも…これだけは覚えとけ…!!」




そして俺は、日本刀を鞘へとおさめて天高く掲げる。この意味が分かるのは俺達だけ、この意味を知ってるのは俺達だけ、なぜならこの意味を作ったのは…俺達だからだ。




「…っ!!日向!!」


「真備!!!!さっさと立ち上がれノロマ!!!!お前の根性はそんなもんかよ!?」


「へへ…んなわけねーだろ!?」




俺の行動に、真備は笑顔すら漏らしながら立ち上がる。それを見た俺は、再び鞘から刀を抜いて、鞘を投げ捨てた。




――カラン…カラン…




ふらつく体。頭には血が上り、冷静な判断力なんてとっくの昔に忘れてしまっている。


だけど俺達は体に残る最後の力を振り絞り、時雨水城を睨みつける。これだけは…これだけは…絶対に譲れない…!!




「ダチを…仲間を…親友を…」


「バカにするやつを…俺達は絶対に許さない…!!」


『『だからお前は俺達が必ず…』』




そして、俺は日本刀を真備はグローブを付けた右手の人差し指で時雨水城を指差す。


誰よりもダチであり、仲間であり、親友であり、真備にとってみれば大事な姉でもあるあいつ…。


――【羽前凪】の為に…。




『『“断罪”する!!!!』』




その言葉は俺達が俺達を鼓舞するために、昔取り決めた言葉。元は遊びで作った取り決めだ。だけど今となってはそんなこと関係ない。


“断罪”という言葉は凪のための言葉。今、この状況でこれは…俺達の思いを込めた言葉となった。




「……おもしろい。ならばその思い、俺の方から断ち切らせてもらう」




俺達の言葉、俺達の目に、時雨水城は淡々とそう応えて、水が帯びたままの村鮫を振りかぶる。


だけど俺達はもう止まらない。止められない。俺達は、時雨水城へと駆け出した。




「……力の差を知れ」


「まさか…水城!!!!」




駆け出す俺達、大鎌を振りかぶる時雨水城。そんな俺達の間に、レリエルの声が儚く鳴り響くのだった。


だけど、時雨水城のことしか目に入ってなかった俺達に、その言葉が届くことはなかった――





「……【水刃・天象】」


―――“すいじん”―――




次の瞬間、俺達はレリエルの言葉を聞かなかったことを後悔することになる。


振り下ろされた村鮫の刃。そこから放たれた水の斬撃によって――




「…っ!?ぐあぁああああああああああああああああああああああ!!!!!!」




――ズガアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ…!!!!!!




今まで聞いたことがないほどの、凄まじい音が俺の耳に木霊する。


だが、その音と一緒に聞こえてきた叫び声。それはあまりに聞き覚えがありすぎる声だった。つい数秒前まで…聞いてた…声だった。




「ま…ま…マキビイィイイイイイイイイイ!!!!!!」




あまりの出来事に、俺は完全に脚を止めてしまう。いや、止めるしかなかった。俺の目に飛び込んできたその映像を見てしまったがために…。


叫ぶ俺の目線の先にはフェンスがある。ただし、ただのフェンスじゃない。飛ばされた真備によって破壊されたフェンスが――


屋上がアスファルトだったがためか、砂埃などたつわけがなく真備の悲惨な姿はすぐに俺達の目に飛び込んできた。左肩から右腹にかけてめり込んだ攻撃の跡が痛々しく残ったその姿が――



一瞬だった。本当に…一瞬だった…。




「マキ君!!!!」


「マキビン!!!!」




呆然としてしまう俺に、知恵理と輝喜の叫びが届く。だが、今の俺にはあいつらみたいに叫ぶ力は残ってない。俺は、ただ呆然と真備の姿を見るしかなかった。




「ま…きび。まきび。まきび。真備。真備。真備真備真備真備真備真備真備真備。いやぁあああマキビイィイイイイイイイ!!!!」




追い討ちをかけるように凪の叫びが木霊してくる。あの2人はお互いに片割れというほど仲がいい姉弟。この状況に発狂してしまうのは無理がなかった。




「ミズキイィイイイイイイイイイイイイイイ!!!!」




そんな中レリエルだけが水城の名前を呼ぶ。いや、叫ぶ。


普段の優しい口調ではない。俺とはじめて会ったときのふざけた口調でもない。あれは…怒りを孕んだ声だ。




「……なんだレリエル?」


「なんだじゃありません!!どういうつもりですか!!」




レリエルの無機質な声が叫びとなって、屋上の隅まで響き渡る。


だが、時雨水城はそんなレリエルの声を軽くあしらうと、レリエルを見ることなく真備を――フェンスを見ながら呟くのだった。




「……計画に支障はない」


「そういう問題ではありません!!あなたは真備を殺す気ですか!?あんな一撃…真備が死んだら計画どころではないでしょう!!」




時雨水城の呟きに反論の言葉を並べるレリエル。だが、時雨水城は慌てることなく言葉を繋いだ。




「……ならば、死んでいなければ問題あるまい。現に手加減はした。奴はまだ生きている」


「…っ!!ですが…!!ですが…!!」


「……それにレリエル。お前も昨夜こいつらに何をしたか…。まさか忘れたわけではないだろう?」


「ぐっ…!!」




時雨水城の言葉にレリエルの口が詰まる。たぶんフードの下では、レリエルは時雨水城を睨みつけているだろう。


だけどそれだけ。レリエルが時雨水城に口を出すことはそれ以上なかった。その理由は誰よりも俺が解ってる。あんなこと言われたら誰だって何も言えない。誰だって昨日のことを言われたら、何も言えなくなるに決まってるだろ――




「…時雨水城。お前、サイテーだ」


「……不知火日向。今のお前が何を言っても負け犬の遠吠えにしか聞こえない」




そして時雨水城は、崩れることのない無表情な顔で俺へと向き直る。その声に俺は恐怖心を抱く。だけどそれ以上に俺は怒りを感じずにはいられなかった。


真備を凪をを傷つけ、今また輝喜をも傷つけようとしている目の前の敵に。でも…今の俺にはもう刀を握れる力はなかった。


無力な俺には――みんなを守るための力がなかった。力がほしい。そう思ったそのときだった。




「…よく頑張ったな“日向”。後は任せろ」




俺の口が再び勝手に話し出したのだった。






           `


日「…俺は病気なのか?勝手に喋りだしたりするなんて…。夢遊病か?」


真「どした日向?ついに知恵理に愛想つかされたか??」


輝「あははは♪マキビン♪それだったらヒナタンは今頃、樹海の木にぶら下がってますよ♪」


凪「もしくは日本海溝の底に沈んでるわね。それにどの道、知恵理に愛想つかされたら日向は餓死するに決まってんじゃない。家事一切できないんだから」


真「それもそうだな!!あっはっはー!!さぁご一緒に!!」


真&凪&輝『『あっはっはー!!あっはっはー!!』』


日「お前らには悩んでる友達の話を聞こうという選択肢はないのか!?」


真&凪&輝『『だって友達じゃないもん』』


日「…!?そ、そんな…」


知「ヒナ君…」


日「ち、知恵理。お前は俺のこと心配してくれるよな??な??俺とお前は友達だよな…??」


知「ヒナ君…カルシウム足りてる??毎朝出してる牛乳、ちゃんと飲んでるの??もう…いい加減に牛乳嫌い治さないと、めっだよ??そ・れ・に♪私とヒナ君は友達じゃないでしょ♪」


日「え゛…えぇ…うっ…うっ…お前らなんて…大っ嫌いいだあぁああああああああああああ!!!!!!」


知「あ!!ヒナくーん!!!!!!」


真「…友達じゃなくて親友…だって言いたかったんだけどな…」


輝「ヒナタン。盛大に勘違いしちゃってたね〜」


凪「ふん!!別にあたしは日向のこと親友だなんて思ってないんだからね!!」


真&輝『『ツンデレ乙』』


作「はい。じゃあ次回予告行きたいと思いまーす。次回の時の秒針は――


彼と彼女はずっと一緒だった。同じ孤児院で育ち、同じ家に住むようになり、同じ親友に恵まれる。


そんな2人の関係とは…??


次回【君と私との関係】」


日「うぅ…問題…nothing…だぜ…」


凪「そう言えば知恵理。あんたは日向との関係。何て言うつもりだったの??」


知「え??えっと…う〜んっとね…ん〜と…」


作「おっと、そこから先は、次回のネタバレになるからストップな」


知「は〜い」


真&凪&輝『『…すごく気になる』』


日「ひっく…ひっく…どうせ…どうせ俺なんて…」


真「…問題nothingを言うために帰ってこなきゃいけないなんて…」


輝「なんていうか…本気で可愛そうだね…」



次回に続く!!

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