第14話 風神と雷神
はあ〜・・・そろそろ感想がほしいです・・・
真備と凪の魂狩が登場!
レリエルside
「レリエル…てめー!!なにしやがる…!?」
刹那が俺に抗議の声をあげる。だけど俺はその罵声を冷静に対処しました。
「刹那…あれほど私情に走るなと言いましたよね?あなたのやるべきことを忘れないでください」
俺はゆっくりと落ち着かせるように刹那に語りかけます。
ですが俺の言葉に刹那はギロリと俺を睨みつけ、さらに反論してきました。
「ふん!!私情に走るなだって?そう言ってるけど一番私情に走ってるのはお前だろ!!レリエル!?」
その言葉は少し聞き捨てなりませんでした。
「…刹那。それはいったいどういう意味ですか?」
少しイライラとしながら俺は刹那の次の言葉を待ちます。
ですがやはり刹那の口から出てきた言葉は俺の何かに触れるものでした。心の底――魂の何かに触れるような何かに…。
「はぁ?そんなのも分からないのか?潜入した瞬間にこいつらと仲良くなっちまって…お前はあいつらを騙して――」
――パチンッ!!ザンッ!!
刹那が言葉を最後まで言い終わる前。俺は刹那の頬ギリギリのところを恍閃弓の光の矢でかすらせました。黙らせるためです。
なぜなら刹那の言葉は今の俺には一番の禁句でしたから…。
「…っ!?」
刹那の頬から日向と同じ様に「ツゥー…」血が流れ落ちていきます。
「勘違いするしないでください刹那。俺は…俺はこれまでも…そしてこれからもずっと…1人です」
自分でも分かるくらいに冷たい声。俺はこのとき頭に血が昇ってしまっていました。ですがこれが本来の俺。本来の姿。
“10歳以前の記憶を持たない”俺はずっと1人で生きてきました。だから俺は永遠に孤独であり続ける。そう決めたのです。
あのとき…あの時間…あの瞬間…俺の人生はスタートしたのですから…。
「…レリエル」
刹那は少し悲しげな顔を浮かべながら俺の今の名前を呼びました。
ですが次の瞬間。刹那はいつも通りのどこか鋭い笑みを浮かべます。
まったく…本当に表情豊かですね…刹那は…。
「…そういえばレリエル。何でお前ここにいるんだ?お前は天使の担当だろ?」
「決まってます。もう終わったからです」
まぁちょっと死にかけましたんですけどね…。
「で?暇つぶしにこっちに来たってわけか?」
「えぇ…そうなりますね。ですから俺は何もしません。当初の通り1人で事に当たってください」
「ちぇ。分かったよ。にしてもねぇ…そう。そっか…そうなのか…」
どこか釈然としないという表情が見え隠れする刹那だったが、興味なさそうに真備と凪のほうを向きました。
どうやら冷静な判断力は戻ったみたいですね…。本当に…刹那はすぐにキレるからいけません…。
でもそんなその場の感情に流されやすく子供っぽいところ。俺は案外好きですよ?刹那。
「ん…ちゅぱぁ…はぁ…やっぱスナック菓子もいいけどぉ…んぁ…ちゅぱぁ…苦くてドロドロしたこっちの方が好きぃ…」
――ですがこればっかりは止めていただきたいですね。いつまでたっても慣れません…。
「はいはい。刹那。指についた血を舐めない。行儀悪いですよ?」
凪side
あたしの前には真っ黒な装束の男――レリエルという男と水色の白人系の少女【刹那】がしゃべっている。
だけど2人の会話からあの男と刹那が仲間だということが分かった。
「真備。まだ死んでないでしょうね?」
2人が会話に夢中になっている間にあたしは真備を呼びかける。ピンチは救われたが状況は最悪だ。
刹那だけでも苦労してるというのにもう1人増えたのだ。これを最悪と言わずに何という。だからあたしは真備と新たな作戦を立てなければならない。
「………」
ところが真備は反応しなかった。今、真備はあたしを庇うように立っている。レリエルという人物と刹那の方を向いてるためその表情はうかがえない。
ただ無言なのかそれとも気を失ってるのか――まさか本当に死んでないわよね…。
「真備?」
不思議に思ったあたしは横から真備の顔を見る。だけどあたしの予想はすべて外れていたのだった。
「………」
真備は気を失ってなんかいなかった。だけどまるで何か驚愕的なものを見たかのように目を見開いてる。いったいどうしたの…??
「…真備?」
「ん…あれ?どうかしたか姉貴?」
三度目の呼びかけ。ここで真備はやっと反応する。でもやっぱりどこか心ここにあらずといった表情をしている。
本当に…どうしちゃったのかしら…?
「わりー…どうやら思ってた以上に肩の傷で流した血の量が多すぎたみたいだ…頭がボーっとしてた…」
苦虫を噛みしめるような表情の真備。その顔だけを見たらそれもあながち嘘ではないようだ。
実際足元がふらついてる。いくら陰陽師の血である羽前の血で傷の治りが早いとはいえあれだけ血を流したんだ…無理もないわ。
それにあたしだって同じことが言える。さっきの刹那の一撃であたしも同じ様にところをザックリと斬られたわ…正直痛みで気を失いそうよ…。
これが真備が味わってた痛みなのね…。あいつよくこんな傷で闘い続けてられたわね…。でも――
「…そう。気をつけなさい真備。状況はさっきより悪化してるんだから」
「あぁ…分かってるぜ姉貴。俺達が最悪な状況にいるくらい俺にだって分かる」
――でも。今はそれどころじゃない。あたし達はもう…逃げられない。
「まずはそっちの男…助かった礼を言う」
「…気にしないでください。俺はこいつの暴走を止めただけですから。あなた方が死ななくて本当によかったです」
唐突な真備の言葉。そう言うとレリエルは刹那の頭をわしゃっとかきなでる。
「やめろよレリエル…」
恥ずかしそうにする刹那。その姿を見ながらあたしは少しだけ頭をひねった。あれ?真備の今の言葉…何か違和感が…。
そんな疑問があたしの頭を駆け巡るがすぐに振り払う。さっきも言ったが今はそんなときではない。あたしはすぐに身構えた。
「そうか…じゃあ…俺はお前らに問う…お前らの目的はなんだ?」
真備の質問。それは肩の痛みであまりしゃべりたくないあたしの疑問を含んだ問いだった。
真剣な眼差しの真備。だけど刹那とレリエルは真備のその瞳を流すのだった。
「刹那…俺は手助けしませんよ?」
あたしと真備の質問を一切無視したレリエルはその無機質な声で刹那に話しかける。
刹那もそれを聞き流しながらゆっくりと…ゆっくりと…雪化粧が刺さった木に近づいていった。
そしてあたしの一番望まなかったことが起こったのだ。
――シュルリ――!!
「っ!?…羽前流式紙術!!守式【虚空】!!」
――ガアァアアアアン!!!!
あたしはとっさに真備の前に出ると虚空を発動させて刹那の攻撃を防いだ。
結界を腕で支えなければいけないため、虚空は結構、腕に力を入れる必要がある。肩の傷にものすごい痛みが走った。
「わかってるよレリエル。この2人は必ず俺が目覚めさせる…だからそこで黙って見てろ…」
そして刹那の綺麗なソプラノ声があたしの耳にこだまする。
それほどまでに近いところにいる刹那はさっきまでの怒りの感情はない。だが別の感情を感じる。
レリエル。あの人物が集まったことにより刹那は――焦り始めていた。
「姉貴!!」
――ブンッ!!
あたしが刹那の動きを封じると同時に、反射的に真備が刹那に拳を繰り出した。だけど刹那は…その拳を難なく避ける。
まるで煙のように一瞬にして消えたかと思ったら…刹那は蜘蛛のように地面に張り付いていたのだ。
「…っ!?」
突如として消えた刹那に真備は目を見開く。だがあたしも真備も真に驚くのはまだ早かった。
刹那のその身体能力をなめきっていたのだ。
――シュタンッ!!!!
「…え?」
驚愕に歪む真備の顔がさらに驚愕の色を現す。だって…地面に張り付いていた刹那がまた一瞬にして消えたからだ。
でも今回は目が慣れたのか刹那が何をしたのかはっきりとではないがあたしにも見えていた。だけど…信じることはできなかった。
――ガアァアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!!!
「がはっ!?」
刹那は体全部が地面についているような状態から…腕の力だけを使って上に飛び上がったのだ。
でもそれだけじゃない。刹那は飛び上がり、拳を外してバランスを崩した真備にかかと落としを繰り出したのだ。もうこれは…人間業じゃない…。
そして刹那はさらに追い討ちをかけた。
――フォン!!ガンッ!!
「ぐっ!!」
かかと落としを繰り出した刹那。そしてすぐに体を入れ替え真備に回し蹴りを繰り出す…空中にいたまま。もう何でもありだ。
――シュタンッ…
あんなアクロバティックな動きをしたのにも関わらず刹那は何事もなかったかのように綺麗に地面に降り立つ。その動きすべてに何らかの芸術性すら感じた。
もうこれは人間の動きじゃない…。だけど敢えてあたしは言おうと思う。
刹那の身体能力…そして格闘センスは…異常だ。
「ち…ちくしょぉ…」
だけどそんな怒濤の攻撃にも関わらず真備がふらふらとしながらもまだ立ち上がる。
あたしは…もう見てられない。そんな衝動に何度も駆けられた。本当は立ってることも辛いはずなのに…。真備は歯を食いしばって…立ち上がる。その姿にあたしはもうちょっとで耐えられなくなりそうだった。
――こんな…こんな…なんであたしたちがこんな目にあってんのよ…?
その疑問が頭を何度もよぎる。あたしはもう立つこともままならなかった。
「…まだか…」
刹那が何かを呟いたような気がする。
だけどあたしの頭の中はただどうしたらこの状況を抜け出せるか――それしか考えてなかった。
でもだめ…どうにも頭がうまく回らない。
「刹那どうした?まだ俺は立ってるぞ」
やせ我慢なのは誰の目にも明らかな真備の言葉。あたしにはその声がレリエルの機械を使ったかすれ声みたいにかすれて聞こえた。
気のせいか…目まで霞んできたきがする…。だけどあたしは自身の肩を見た瞬間にすべてが納得してしまう。ザックリと斬れたその傷を見た瞬間に――
――そっか……あたし…血を…流しすぎたの…ね…。
あたしはもうどう考えても戦闘できる体ではなかった。
目が霞み体の力が抜け立ち上がることもできない…。
真備が――あたしの大事な馬鹿弟がまだ戦ってるというのに…。あたしはもう…ダメだった…。
――ドクンッ!!
だけどそのとき…あたしの心臓が大きく脈打つ。
――ドクンッ!!
体の底から何か熱く締め付けるものがこみ上げてくる…。【魂】とでも言うのだろうか?そんな深いところから…何かが。
――ドクンッ!!
それは頭の中に直接入り込んできてあたしの頭をグチャグチャにする。
――ドクンッ!!
熱い…熱い…熱い…。熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い
――ドクンッ!!ドクンッ!!ドクンッ!!ドクンッ!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!ドク!!
鼓動が速くなる。速く速く速く…。そしてあたしは…高鳴る【魂】を前にすべてを失ってしまった…。
「う…う…うあぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
――どうでもよかった。どうでもよくなった。
理性すら失ってしまいそうなあたしは最後に心の中でそう唱える。たぶんもう少しであたしは…すべて飲み込まれてしまう。
熱くこみ上げてくるものを吹き荒れる【風】とすると…あたしの理性はさしずめ、その風に巻き上げられる落ち葉といったところか。
皮肉なものだ…あたしの理性は落ち葉なんてすぐに崩れるほど脆いもの。そして…その落ち葉を巻き上げる【風】。それが――
「発動…【風神】!!」
それが…あたしが理性を失わないうちに頭に浮かんだ最後の言葉だったのだから――
真備side
俺は唐突に呟かれた姉貴のその言葉に耳を疑う。
だが次の瞬間。俺は目を瞑ってしまう。なぜなら姉貴が【風神】と唱えたとき俺は立っていられないほどの突風が巻き起こったからだ。
――ビュオォオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!
突風は俺や刹那の動きを完全に止めさせてしまう。森の木々すべてがざわめくほどの風に動くことができなかった。
だがそれは一瞬だった。俺達を止めた風はすぐにやみ、俺は再び目を開ける。そしてそこにあったのは俺の予想を遥かに越えるものだった。
「………」
そこには何やら鉄の棒を持った姉貴――ナギねぇがいた。だけど明らかに様子が変だった。
何か鉄の棒を持ってることもそうだが、問題はあの目。ナギねぇの特有のあの鋭い目は顕在だ。でもその瞳に――色はなかった。
「な…ナギねぇ…?」
俺は思わずナギねぇの名前を呼ぶ。だけどナギねぇは何の反応もしない。
すぐ目の前にいるはずなのにそのときのナギねぇを俺はどこか遠くの存在のように感じていた…。
――シャキンッ!!!!!!!!
そして俺の言葉を無視したナギねぇは手に持った鉄の棒らしきそれを開く。そのとき俺はナギねぇが持っていたその鉄の棒の正体をやっと知る。
ナギねぇの手を軸にして開かれた何枚もの鉄の羽根。その鉄の羽根の中心には蓮の花が描かれている。
【風神】まさしくその言葉が似合うその武器の正体。それは――
「“鉄扇”の魂狩【風神】…」
“鉄扇”それを持つナギねぇの雰囲気はさっきまでの刹那の雰囲気に似ている気がする。いや…それ以上だ。
ガタガタと震える肩を抑えなければいけないほど、俺は姉貴のかもし出すその雰囲気に完全に怯えてしまっていた。
「やっとか…」
刹那の呟きは今の俺にはどうでもよかった。
ただ姉貴を――ナギねえを見つめることしか俺にはできなかったのだ。
そしてそのときだった。
――ブンッ!!!!!!
ナギねえが一瞬で刹那に迫り鉄扇――風神を閉じた状態でその体に叩きつけた。
「っ!?やばっ!!」
――キィ――ンッ!!!!!
ナギねぇの突然の攻撃に刹那は慌てた様子で雪化粧を構える。辺りに金属と金属が当たったような音がこだまする。
見えなかった。俺の目では今の攻撃を見ることができなかった。ナギねぇの動きがあまりに速すぎて…。それこそ【風】と言えるほどに――
「くそっ!!」
ナギねぇが攻撃したときに舞い上がった砂埃の中。その刹那の言葉だけが俺の確認できた情報だった。
ナギねぇがいったいどうなったのかは分からない。だけど夜の真っ暗な森。砂埃で完全に見えない空間にその音だけが響き渡る。
――キンッ!!キンッ!!キンッ!!キンッ!!キンッ!!
辺りに響く金属音。その音だけがナギねぇのことを知る唯一の手掛かりだった。
そしてだんだんと砂埃が晴れていく。思えばこれ自体もナギねぇの目くらましのための作戦だったのだろう。そこに現れる映像…俺はその映像から目が離せなかった。
『『………』』
――ギリギリッ…!!
無言で睨み合うナギねぇと刹那。彼女達の手にはそれぞれ鉄扇と羽衣が握られている。
閉じた鉄扇――風神を刹那に押し付けるナギねぇ。その鉄扇を力一杯広げた羽衣――雪化粧で押しとどめる刹那。緊迫した空間がそこにはあった。
――ガアァアアアアン!!!!
「がはっ…!!」
だがその空間は長くは続かなかった。おそらく刹那が一瞬、雪化粧に入れていた力を緩めてしまったのだろう。そしてその隙をナギねえが見逃すはずがなかった。
その一瞬の油断の間に刹那の腹にナギねぇの蹴りが入っていた。
――シャキンッ!!
いくら刹那が身体能力が異常に高いとはいえ、ナギねぇの蹴りをまともにくらってフラつかない方がおかしい。
フラつく刹那。ナギねぇはそんな刹那を前にしてひどく鋭く尖った音ともに風神を開くと一気に刹那に詰め寄った…!!
――ザシュッ!!
「…ぐっ!?」
――気持ちがいいくらいの音。そして巻き散るのは刹那の血潮…。服の上から腹を切り裂いたナギねぇの攻撃は浅かったとはいえ、確かに刹那へとダメージを与えた。
「………」
そして刹那の腹を切り裂いたナギねえはいたって冷静だった。
いや…無感情だった。
下手をすれば致命傷になりかねないところを攻撃したにも関わらずナギねぇの瞳には相変わらず色がなく、顔に表情もない。
まるで機械操作のように与えられた仕事をこなすその姿は――人形のようだった。
「うぅ…いてぇ…」
刹那がお腹を押さえながらうずくまっている。
見たところでは刹那は風神で斬られる直前に後ろに跳んでいたからそんなに深くは斬られていないはずだ。だが確かにあれは痛いだろうな…。
「ナギねぇ…」
刹那から顔をナギねぇに移し俺はナギねぇを呼ぶ。だけどやっぱり反応はない。俺はこの状況においていかれたかのように思えた。
「真備。少しよろしいですか…?」
そのとき突然後ろから声がかかってくる。無機質な機械の声…だけど俺にとってその声は――
「レリエル…だったか?俺に何のようだ?」
俺の後ろ。1メートルくらいのところにいつの間にかその男。レリエルが立っていた。
気配すらなかった。だけど驚きはしない。今の問題は別にあるからだ。
「…真備。今、あなたは瀬戸際に立っています」
――それはいったいどういう意味だ?
「意味が分からないという顔ですね?ですがあなたが目覚めないと…凪は止まらなくなります…」
目覚める?止まらなくなる?どういうことだ…?
「あなたには…都合のいいものが流れている。人を守りたい。そう思ったときに覚醒する血が…」
「…【羽前の血】」
――ドクンッ!!
その刹那。俺の心臓がこれまで経験したことがないほど大きく脈打つ。
なんだ…なんだ今の?手の先が、足のつま先が、、頭の中が、体全部が、心の奥底が…たった1回の心臓の鼓動に…俺のすべてが震えた。
――ドクンッ!!
「がっ…!!がはっ!?」
再び俺の中を何かが走り去る。目の前に赤い何かが映る。紛れもない…血だった。俺は吐血したのだ。
痛いなんてものじゃない。まるで体全部に鋭くとがった何かが刺さったような…そんな感覚だった。
――ドクンッ!!
「すみません真備…俺は日向や知恵理だけでなく…あなたや凪をも苦しめてしまいました…本当にすみませんでした…」
「ぐっ…!!がっ…!!」
霞む。目の前が真っ赤に霞む。俺は心臓の鼓動のたびに打ち振る得る体を持ち上げ、そいつに手を伸ばす。
真っ赤…真っ赤…。とにかく真っ赤な世界だ。今の俺の目に映る色は赤以外にはない。
俺のスクリーンは真っ赤な血の色に染まりあがってしまっていた。
――ドク―――ンッ!!
そして俺の意識は【稲妻】に撃たれたように一気に崩壊するのだった――
「うがぁああああああああああああああああ!!!!!!」
――ピシャアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!
レリエルside
――ピシャアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!
真備が吠えると同時、激しい轟音と共に俺の前が激しい光に包まれました。どうやら真備も発動させたみたいです…。
刹那が痛みで一時的に動けない今、刹那…そして凪を助けるために真備の中の危機感を増幅させて目覚めさせたのです。
ですがここで予想外のことが起きました。俺も刹那も…そして水城ですら予想できなかった事態が――
「―――“協調”―――」
――“チューニング”――
真備の魂狩は発動直後の能力の解放以降も…電気を放出し続けていました。それが意味することそれは…。
「初発動で魂と身体(能力)の“協調”をさせた…」
“協調”これを完全に使いこなすためにはそれなりの期間を有します。俺も…“協調”ができるようになるまでかなりの時間を有しましたし、一生これができない能力者もいます。
ですが…初発動でこれを使いこなす人間を俺は初めて見ました。真備の魂狩の周りにまとう電気はその証です。
俺はこのとき直感しました。真備はこれまで俺が見てきた能力者の中でも数少ない…強い魂を持つ人間だと。
――バァアアアアン!!!!!!
拳と拳を打ちつける音が響き渡る。そしてその音と共に真備の周りにあった電気は全て飛び散りました。
光の中心だった場所にいる真備の体の前で合わされた両拳に弾かれたかのように――
「……………」
そこにいたのは凪と同じように顔に表情の「ひょ」の字もなく、瞳に色がまったくない…真備。
そんな真備はゆっくりと体の前で合わせていた拳を解き放ち、ファインティングポーズを取ります。
俺はそのときやっと真備の拳を包む銀色と黒色のものに気がつきました。
真備の拳を隠すかのように包み込まれたそれ。一見すると手袋にも見えるそれでしたが、よく見てみると指の関節や手首周りは硬い金属で覆われていました。
そして極めつけは手の甲のそれ。銀色の金属であしらわれたその綺麗な“蓮”の花はとても美しかった。
そんな真備の武器。真備の魂。それは――
「…鳴り響け!!“グローブ”の魂狩【雷神】!!!!」
今宵。この森に2人の神を操る双子によって“嵐”が巻き起こされる。
真備の魂は怒涛のごとく鳴り響き、すべてを破壊する稲妻のグローブ【雷神】
凪の魂は大地を吹き荒れ、空を流れる旋風を巻き起こす疾風の鉄扇【風神】
双子ならではの名前。双子ならではの武器。双子ならではの魂…。
そして2人の魂は絡み合い、せめぎ合い、嵐となりてまだ見ない世界へと飛び立つのだった――
`
真「姉貴!!今回は俺達の魂狩の登場だったな!!」
凪「そうね。あたしは鉄扇。あんたはグローブ。なかなかカッコイイじゃない!!」
真「だな!!俺達が魂狩を発動させたことでこれからどうなってくかすごく楽しみだぜ!!」
凪「まぁ今は最悪の状況なんだけどね。本編のあたし達は暴走しちゃってるし、刹那も怪我しちゃったからレリエルに頑張ってもらわないとね♪」
レ「…なんですか凪。結局、他人任せじゃないですか?そんなことしても親御さんは喜びませんよ?」
凪「あんたは立てこもり犯を説得する刑事か!?」
真「それ以前にお前いきなり出てきたな!?おい!?」
レ「気にしないでください。俺としてはこの物語の謎な人要員ですから、これぐらいの技術持ってて当然です」
真「自分で言うなよ…自分で。でも確かにな。フードで顔隠して、機械で声変えて、本当にお前誰なんだよ?」
レ「ふふふ。それは秘密です。某アニメの巨乳未来人風に言うと禁則事項です♪」
凪「…ごめん。あたしにはあんたのキャラはわからないわ」
作「はいはい。話が変わってるから一度話を戻したいと思います。おほん。今回は凪と真備。2人の魂狩が初登場した話でした」
レ「そうですね。これで主要メンバーの大半が魂狩を発動させたことになりますね…ところで気になっていたんですけど…」
作「あぁ。どうしたんだ?」
レ「はい。じゃあ…真備と凪。2人の魂狩には花が描いてありましたよね?確か花の種類は――」
真&凪『『“蓮”』』
真「こいつは俺達から説明させてくれ」
凪「あたし達の武器だし。あたし達の家に関係することだから」
真「そもそも俺達の家って陰陽師だろ?実は俺達の家は日本ではかなり有名な家柄なんだ」
凪「で。ここで水戸黄門を思い出してほしいわ。特に最後のあのシーン」
真「“この門どころが目に入らぬか!!”てところだな」
凪「そう…角さんが出すあれ…あれには家紋が書かれてるでしょ?三つ葉が書いてあるやつ。あれと同じよ」
真「つまり水戸黄門が出す家紋が三つ葉だというのと同じようにうちにも家紋があるんだ。それが――」
真&凪『『“蓮”の花ってわけだ(よ)』』
作「じゃあ尺がないから次回予告――
暴走する真備と凪。お互いに姉弟だということも忘れた2人は…。
次回【疾風迅雷の闘い】」
日「問題nothingだぜ!!」
作「まじで尺がないからじゃあね〜!!」
真&凪&レ『『サヨナラ〜』』
次回に続く!!