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時の秒針  作者: †HYUGA†
第一章;時の番人編
13/76

第12話 羽前家の秘密

真備と凪の家の秘密とは?



真備side



「魂狩…」




最初にその映像。その言葉を聞いたとき、俺は聞いたことがない単語だ。そう思った。


だが刹那が持つあの羽衣を見たとき、俺は"あれ"はヤバいものだと本能で感じ取っていた。たぶん俺の体に流れる羽前の血がそうさせたのだろう。


いままでだってこんなことがあった。でもここまで羽前の血が騒ぐことはなかったような気がする。


悦んでるのか?そう思えるほど騒ぐ血。まるで全身の血が沸騰したみたいに体が熱くなる…こんな感覚。初めてだぜ――




「…あれは。そうか今日だったのね」




そのとき姉貴が何か納得したみたいにそう頷く。その声に俺はチラリと姉貴のほうを覗きみる。




「……」




無言で刹那を見る姉貴。だがその目にはなにかしらの恐怖があることを俺は見逃さなかった。




「…姉貴」


「…真備。最初に忠告しとくは。最近あたしが見てた夢の支配者は――あの武器。魂狩よ」




姉貴の呟き。それは俺にとってみれば驚きに値する衝撃だった。


なぜなら【夢】その単語が出てきた時点で俺はただごとじゃないと悟ったからだ。




「…マジが。だけどあれはいったい何なんだ姉貴?」


「分からないわ。ただ言えるとしたら…あれは危険なものだということね。あんただって騒いでるんでしょ?羽前の血が」


「…あぁ」




淡々と必要なことだけをつげあうように行われる俺達の言葉のやりとりに刹那は反応しない。


たが、そのときこれまで黙っていた刹那の口元がわずかに動く。風一つなく静寂に包まれた森のなかその声は俺達の耳にも確かに届いてきた。




「魂狩…俺の魂…」




どこか虚ろにそう言う刹那。だがそれからすぐに前にいる俺達を見据えると語り出すのだった。




「ターゲット1"羽前真備"。ターゲット2"羽前凪"確認。これより戦闘を開始する」




その言葉を発すると同時だった。一瞬にして刹那は俺達の視界から消える。




――ダ―――ンッ!!!!!!




「ぐはっ!!」


「…っ!?真備!?」




一瞬。俺は何が起こったのか分からなかった。感じるのは腹に感じる激痛…。


姉貴のボディブローとはまた違う。姉貴のボディブローは何だかんだ言いつつも後々ダメージにならないように手加減はしてある。だがこの一撃は違った。


この一撃は俺への気遣いなんてない。完全に俺へダメージを与えるために放たれた一撃だった。




「ぐぅ…何なんだ…」




状況を素早く判断した俺は目の前にある顔を見る。




「………」




悲しげな…。だけどもどこか楽しげな顔をした刹那の顔がそこにはあった。


そう…刹那は戦闘訓練を受けた俺と姉貴が反応できないほどのスピードで俺の腹に膝蹴りを繰り出したのだ。



――でも…俺達を見くびらないでほしいぜ。




――ガシッ…!!




「姉貴!!」


「分かってる!!任せなさい真備!!」




俺の腹に刺さる刹那の脚。俺はそれを離さないようにガッシリと掴む。


そしてそれと同時に姉貴は刹那に拳を繰り出す。強くもなく弱くもない、日向達と出会う前は毎日のように――そして今は土日だけやる戦闘訓練により手に入れたその適度な一撃を――




「…ちっ!!」




対して刹那は俺の肩に手を置きそのまま俺の頭に頭突きを繰り出す。




――ガツンッ!!




鈍い音がこだますると俺は刹那の膝を離してしまう。いってー…なんだこいつ…無茶苦茶石頭じゃねーか。




――スカッ!!




当たり前だが俺の拘束から逃げ出した刹那は姉貴の拳をかわす。だがその方法に俺は驚きで目を見開いた。


まず膝蹴りしたとき俺の肩に置いた手。それをつかってそのまま俺の肩に逆立ちをする。そしてその勢いでそのまま反対側に降り立つ。


そんな奇想天外な攻撃をされたらさすがの姉貴の拳も勢よく空を切るに決まっている。


その運動能力――いや。刹那のその戦闘センスに俺達は驚きを隠せなかった…。




「…舞え。雪化粧」


「…なっ!?」




だがそこから俺はさらに困惑する。それはいつの間にか俺の脇の下を通って肩に巻き付いていた羽衣のせいだ。


いったいいつやったんだ…?そんな疑問が頭に過ぎり繰り返される。


だが今の彼女――刹那にそんなこと関係ない。刹那は俺に考える暇すら与えることなくその羽衣を――一気に引っ張った。




――シュルシュル…!!ザシュッ!!




「ぐっ…!!」




激しい痛みが俺の右肩にかかる。これはもう羽衣という布の痛みなんかではない。


【雪化粧】という武器が生み出した刺すような…斬りつけるような…そんな痛みだった。




――プシャアァアア!!!!




「ぐあぁあああああ!!!!」


「真備!!!!」




一刻の時を置いて俺の肩から大量の血潮が噴き出す。ちくしょー!!ちょういてーじゃねーかよ!!


制服を突き破って肩口の傷から噴き出す血…。こいつは本当にシャレになんねぇ…!!




「…鮮血の赤い薔薇。なるほどこれが羽前の血か」


「ぐぅうううう…!!!!」




綺麗すぎるその声。俺は大量の血が溢れてくる肩口を抑えつけゆっくりと振り返った。




「…ぴちゃぁ…くちゃ…ちゅぱぁ…ちゅぱぁ…くちゃ…」




な…何なんだこの映像。


振り返った俺はまずそう思った。そして全身が固まってしまっていた。


なぜなら…俺が振り返ると白い着物が真っ赤に染まるほど血を浴びた刹那が――指について俺の血をペロペロと舐めてたからだ。おいしそうに。




「ん…ちゅぱぁ…はぁ…まさかこんなに美味しいなんて思いもしなかった…」




指についてた血を全部舐め終わった刹那はそう言って、なんとも官能的な表情をする。


幸せそうにとろけきった顔。そんな顔にも飛沫を浴びたかのように俺の血がところどころに付いていた。だが俺はそれすらも彼女を幸せそうにする要因に思えてくるのであった。




「あの子…何者?」


「ぐぅうう…いっつ…分からねぇ…だけど姉貴…あいつは異常だ…」




痛みに耐え俺は着ていた学ランを脱ぎ捨てると肩口の傷を庇うように立ち上がる。基本的に羽前の血の力でケガの治りが早い俺達。すでに肩口から血はそこまで流れなくなっていた。




「…真備。大丈夫なの?」


「あぁ。俺のことはいい。羽前の血の力でもう血は止まってる。それに俺は頑丈だからこれくらいなんともないさ」




嘘だった。本当はものすっごく痛いし頭もボーっとしてきている。だけど姉貴のあんな悲しげな顔を見たらそう言わざるを得なかった。


やせ我慢のせいか額から玉のような汗が湧き出てくる。それに目がかすむせいかすぐそこにいる刹那の姿すらかすんで見える。


このままだったら俺はあと何分も立ってることは不可能だろう。だけどもしそうなったら…姉貴だけであいつと対峙しなければいけなくなる。それだけは避けたかった。


だから俺は決心する。今まで使わなかった力を使う決心を――




「姉貴…」


「何?」




なるべく平常心を保ちつつ俺は姉貴の名前を呼ぶ。


これは…俺にとって賭けだった。姉貴を――ナギねぇを救うために俺は…隠してきた力を使う。




「【羽前家】の力を使う」




俺の一言に姉貴は完全に固まった。だが俺はそれを気にする暇すらない。


自分でも冷静じゃないことは分かっていた。でもだからこそ俺は姉貴が何か言い出す前に呪文が書かれた紙を取り出す。頭が冷静じゃないと認識しているうちに――




「おい!!刹那!!」




煌々とした表情の刹那が俺の言葉にこちらを向く。俺の持つ紙。それを見た刹那はどこか不思議そうな純粋無垢な瞳で俺を見てくる。


さっきまでとは違い子供っぽいその顔に俺は思わずたじろいでしまう。たがすぐにその思いを振り切る。




「本気で行く」




真剣な目つきで俺は刹那を見つめると本来利き手のはずのだらんと下がった右手の代わりに左手に持った紙を構える。


羽前家の力。今ここで人前にさらすことをお許しください!!親父!!お袋!!






「【羽前流式紙術】」




その名前は――





「―――【壊虫】―――」

―――"かいちゅう"―――








そのかけ声と共に俺は手に持った紙を勢いよく刹那に向かって投げつける。


すると俺の手から放たれた紙はみるみるうちにその姿を変えていった。


まるで刃物のように鋭くとがり、だけど虫のように複雑な体のつくりをしている。そんな姿へと――




「ひっ!!虫っ!?」




刹那はそれを確認するやいなや必死の形相で羽衣――雪化粧で俺の繰り出した式紙【壊虫】を切り裂いた。




――ザシュッ!!!!




気持ちのいい切り音に俺の繰り出した懐虫は真っ2つになり紙に戻る。俺の攻撃ではダメージを与えられなかったみたいだ。




「な…何?今の変な形の虫。気持ち悪…」





でもどうやら精神的攻撃にはなったようである。


普通の人間なら壊虫を破壊するなんてまず不可能なのに…。やっぱりこいつはヤバいかもな…。




――ガ―――ンッ!!!!!!




「いてえぇえええっ!!」




そのとき俺の頭にさっき肩に受けたとき並みの痛みが訪れた。だが刹那は俺の壊虫を見たさっきから俺の目の前で悶えている。基本的にこんな時間ここを人が通るはずがない。ということは――


俺は恐る恐る後ろを振り返る。どこか鬼気迫るその気迫を感じてしまったのだ。こんな威圧を出せるやつは奴しかいない。後ろを振り返った先そこには――




「ま〜き〜び〜!!!!」




鬼の形相と化した我が愛しの姉上がおられました。


――お姉さま。あなた様の御頭の上に見えていらっしゃるその角は俺の幻想でありますよね?


俺の願いは儚く消え去るのであった――




「あんた…ばっかじゃないのおぉおおおお!?」




耳をつんざく姉貴の声に思わずたじろぐ。そんなに強く言うなよ。




「式紙使って…もし他の人に見られたらどうするつもりだったのよ!?」




あぁー耳が痛い…。これでも俺なりに考えているんだからな…。




「…いいわ真備。お父様に言いつけるわ」




あぁ…もうはいはい。もう静かになるんだったら何でも構いませんよ。姉貴だってそんなの本位じゃないだろうし――――――――ん?


姉貴。今なんて言った…?


お父様に言いつける?

お父様に言いつける?

お父様に言いつける?

お父様に言いつける?

お父様に言いつける?

お父様に言いつける?

お父様に言いつける?

お父様に言いつける?

お父様に言いつける?

お父様に言いつける?


頭にループするその言葉。俺はやっとその意味を悟った。




「……え゛?マジ?」


「…マジよ」




――親父に言いつけるのかあぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?



それはマズい!!かなりマズい!!何としてもそれだけは回避しなければ…!!




「や…やめてくれ姉貴。そ…そんなことしたら俺の飯が野菜スティックだけになっちまうぅううう!!」




俺は必死になって悲願する。あれだけは。あの地獄だけはもう見たくない!?


だが姉貴は聞く耳を持たなかった。ずっとそっぽを向いまま我関ぜずといった感じでツーンとしている。あぁもう!!なんで姉貴はツンデレなんだよ!?


今日ほど姉貴のツンデレを恨んだことはない。



――くっそー俺の飯…。覚えてやがれよクソ姉貴。いつかひざまづかせてやる!!



俺は密かに心の中でそう意気込む。姉貴のあれは最早病気みたいなもんだからな…。


幼稚園あたりまでは「まーくん大好き!!」なんて言ってたのに。なんでいきなり…そうか。俺が背を抜いたあたりか!!なんだあのやろう!!結局八つ当たりじゃねーか!?


ちっくっしょー!!だから姉貴なんて…!!姉貴なんて…!!姉貴なんて――




「………」




あれ?姉貴なんて大嫌いになってもおかしくないはずなのに…なんで?なんで俺は姉貴を嫌いになれない。


姉貴は意地っ張りで…すぐ殴るし…体小さい癖に威張り散らかすし…ガキ大将みたいに我が侭で自分を世界の中心みたいに思ってる…なのに――




「…逃げろ姉貴。ここは俺が何とかする。だから逃げてくれ…姉貴」




なのに――姉貴を必死に守ろうとする俺がいる。俺は…姉貴が――ナギねぇが大切な存在なんだ。


結局。簡単な話なわけだ。俺は分かってるんだ。いくら横暴でも…いくら暴力的でも…ナギねぇは――




「…っ!?ふざけたこと言わないで!!あたしがあんただけ残していくとでも思ってんの!?バカ真備!!」



「ナギねぇ…」


「あんたを…あんたを置いてくなんてあたしには出来ない。あんたを置いて逃げるらいなら…あたしは家の掟なんてどうでもいいんだから…」




ナギねぇは――誰よりも俺のことを心配してくれて。誰よりも俺のことを大切にしてくれる――




「だから…もうそんなこと言わないでよ…バカ真備。あんたはあたしの…あたしの…片割れなんだから…」


「ナギねぇ…」




最高の姉(相棒)なのだから。


そんなナギねぇを助けられるんなら飯抜きでも…俺は一向に構わない。



「…あぁ。分かった姉貴。俺は絶対に裏切らない。俺の片割れであるナギねぇを…絶対にな」


「…バカ。そんなの当たり前じゃない。双子なんだから」




そう言うと俺は――俺達は再び紙を取り出すのだった。



俺達は…生まれたときから半分の存在。2人で1人の双子なんだから――










「さぁ…平安時代から代々続く【陰陽師】羽前家の力。しっかり見せてあげましょ!!バカ真備!!」


「おう!!ヘマすんじゃねーぞナギねぇ!!俺達は…最高の双子陰陽師なんだからな!!」





           `



日「…ヤンデレが出て来たな」


輝「あはは♪ヤンデレがでてきたね〜♪」


知「ふぇ?ヒナ君。コウ君。ヤンデレってなーに?」


輝「あはは♪そういえばチエリンはそういうことに疎そうですもんね〜♪」


日「…自分で言うのもあれだけど。知恵理はほぼ毎日俺の家の家事全般やってるからそういうの見るくらいなら料理番組とか見てるもんな」


知「ひょ?ヒナ君のことを思って頑張って料理の勉強してるのそんなに悪いことなの?私。これでも頑張ってるんだよ♪ヒナ君がずっとずっとす〜〜っと私のことだけを見てくれるようにね♪」


日&輝『『………』』


輝「…ヒナタン。俺はちょっと言ちゃいことがあるんだけど…いい?」


日「みなまで言うな輝喜。分かってる。言いたいことはよく分かってる…でも知恵理のあれは決してヤンデレなんかじゃない。あれは知恵理の地の性格だ」


輝「そんなこと分かってるよヒナタン♪俺が今一番言いたいのはね…」


作「リア充死ねだ!!!!コンチクショー!!!!」


日&知&輝『『うわぁああ!?』』


知「さ…作者さん!!居たんですか!?」


輝「あははは〜♪ここ最近は次回予告しか出て来なかったからてっきり影になっちゃったかと思ってましたよ〜♪」


作「ふざけんな!!誰の小説だと思ってやがるんだ!?」


日&知&輝『『俺(私)達』』


作「そうだよ!!そうですよ!!あんたらが主役の小説ですよこんにゃろ!!じゃあ次回予告!!


双子として生まれたときから――生まれる前から一緒にいた2人。


そんな2人は特殊な人間だった。人を守ることを家訓にする2人の家。


今。お互いを守るために2人の陰陽師がその力を開花させる


次回【双子陰陽師】」


日「問題nothingだぜ!!」


刹那(以下"刹")「やっほー!!俺。登場だぜ!?」


日&輝『『あ。ヤンデレ娘』』


刹「は?俺がヤンデレ?笑わせんなよな〜2人とも。俺はただ血が好きなだけで別にヤンデレじゃないぜ?」


日&輝『『へ?そうなの?』』


刹「そもそも俺は誰にデレればいいんだよ?相手いないぜ?」


日&輝『『確かに…』』



次回に続く!!

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