第10話 SOUL&BODY
説明ですね〜♪
日向side
「…まずは日向。魂狩の仕舞い方はわかりますか?」
近くに腰を落ち着かせるとさっそくレリエルは話を進めていく。
その言葉に俺は思わず苦笑いを浮かべ、レリエルへと無言の助けを求めた。
「…どうやら、その顔はわからないみたいですね」
「ははは…すまん。レリエル。魂狩の仕舞い方を教えてくれないか?」
「…はぁー…まったく仕方がありませんね…来い。"恍閃弓"」
俺の顔にあきれ半分、諦め半分のような様子のレリエルはそう言うと再び恍穿弓を取り出した。
「日向。ついでだからまずは魂狩の説明をしますね」
そして俺と知恵理はレリエルの話を聞き入る。
「…まず、これは俺達の生命の源…まぁ言ってしまえば【魂】ですね」
「魂?」
レリエルの言葉に首を傾げる知恵理が聞き返す。確かに唐突に言われたら信じられない話かもしれない。
だが俺にはレリエルの話を信じられる要素があった。それはあのときの頭痛だ。たぶんあれは恍閃弓を見た俺の魂が反応したものなんだと思う。
だからあのとき【魂】という言葉が浮かんだのだと俺は考えていた。
「えぇ。こいつは俺達の命とも言ってもいいですね…だから俺が死ぬと当然恍穿弓も消える…つまり命とほぼ表裏一体のものなのですね」
「ほぼ?」
俺はレリエルの言った言葉の中から気になったその言葉を聞き返す。
「逆はありなんですよ。魂狩を壊されても死にはしません。ですけれども魂狩を壊すことができるのも魂狩だけ…だから魂狩(魂)を狩る者【魂狩】と言うんです」
そう言うとレリエルは再び恍穿弓を消す。
「魂狩はこうして、心で念じると消すことができ…心で念じると呼び出せます」
そして三度恍穿弓を出した。一瞬にしてパッパッと消えたり現れたりするその情景に俺は納得する。だがここでふとある疑問が俺の中で生まれた。
「…ちょっと待て。でもお前は最初に出したときも、さっきも呼ぶみたいに声に出してなかったか?」
「ん〜あれはなんとなくなんですよね…というより大抵はそうしますね。理由は知りませんけど」
「あ…そう…」
あまりに拍子抜けな言葉に俺は何ともいえない表情になった。
――俺もそうしたほうがいいのかな?
「続けますよ?俺はさっき魂狩は魂だと説明しましたね?」
「ん…あぁ」
俺はレリエルの言葉にこっち側に引き戻され知恵理は無言でコクリと頷く。
「…ですが魂狩は誰にもあるものではないんですよ」
「…は?」
レリエルの言葉に俺はそんなスットンキョンな声を出してしまった。だけどそれも仕方のないことだ。
レリエルの言葉。それはつまり誰にも魂狩――魂がある訳じゃないということだと思った…。だが俺の表情を見たレリエルはヤレヤレという具合に言葉を繋げた。
「…日向。何か勘違いしてるようですけど…誰にだって魂はあります。俺や日向はもちろん、知恵理にだってしっかりありますから…」
まるで心を読んだかのような的確なレリエルのツッコミに俺は動揺してしまった。
――…はははは…そりゃそうだよな…。レリエルの話を聞く限りそうじゃないと生きてないもんな。
俺は少しだけ反省をするのだった。
「…まぁいいですけど。続けますよ?俺が言いたいのは"魂"を"魂狩"に出来る人がいないって意味です」
「…どういうことですか?」
知恵理が目をパチクリと瞬きさせながらそう問いかけると、レリエルは立ち上がりゆっくり俺達に見えるように右手をかざした。
「実際に見たほうが早いですね…ふっ!!」
まれで力を込めるようにそう言うとレリエルは見て分かるほどに右手を力ませる。その行為に少し疑問を抱くも俺達の疑問はすぐに解決された。
「…わぉ。ヒナ君、すっごく綺麗だね♪」
「そうだな…」
レリエルの手の先。そこにはプカプカと浮かぶ明るくて、光り輝く光の玉ができていた。
「…レリエル。それはなんなんだ?」
「…これは【能力】俺達はそう呼んでいます」
レリエルは冷静にそう言うと手の中にあった光の玉をゆっくりと握りつぶす。
――パリンッ!!!!
そんなガラスを割ったような音と共に光の玉は崩れさり、辺りには再び夜の暗さが戻ってきた。レリエルの話は続く。
「…日向。これが魂を魂狩にするために必要な条件です。魂を魂狩に変換させる為には【身体】に【能力】が宿ってないといけないんですよ」
「【身体】に【能力】それは魂狩とは別物なのか?」
「えぇ。そもそも身体に能力を持つのはごく限られた人間だけなんです。これを俺達は【能力者】と呼んでいます」
「【能力者】…?」
そこまで言うとレリエルは今度は俺達の後ろを指差す。そしてそのレリエルの指につられるように俺達も後ろを振り返った。
するとそこには何かに焼かれたような酷く焦げ付いた後がかなりの広範囲で広がっているのが見える。あれは確かさっき俺が暴れた後だったような――
「あれは何?」
「…知恵理。あれがおそらく日向の【能力】ですよ」
レリエルから知恵理へと向けたその言葉に俺は納得する。確かに俺は紅翼で炎を飛ばしたり灯したりしていた。
たぶん俺の【能力】は――
「おそらく…【炎】といったところですかね。日向の能力は」
俺の能力は―【炎】―。
状況を見てこれは間違いないみたいだ。だから炎を灯したり飛ばしたりできたわけだな…。
俺がそう納得しているとレリエルは言葉を繋げた。
「…世界には様々な力があります。【炎】【水】【風】【光】【闇】これら全てが能力者1人1人の力となっています。ですが【魂狩】はそれよりもさらに希少な存在。先天的な能力者が世界のごく僅かだとしたら、魂狩を使える能力者はその中のまたごく僅か…そういうことです」
「…なるほど。だいぶ話が繋がってきた」
つまり【能力者】はレリエルがさっきやったみたいに【能力】を体から出すことができる。
だけど【能力者】の中のさらに希少な魂を変換させて【魂狩】を使える人間は魂狩から【能力】を放てる。だがこれができる能力者はごく僅かだけ。
こういうことか。
「能力は世界でたった1つ。魂狩も同じです。その人が死なない限り同じ能力も魂狩も現れません。つまり、その人の持つ能力も魂狩もその人だけのものということです」
「…ということは俺は世界でただ1人の【炎】の能力者で【日本刀】の形状をした魂狩の使い手ということだな」
「そうなりますね」
レリエルはそこまで言うと、今度は近くの桜並木の枝へと向かって跳んでいった。高さはだいたい3メートルくらいか?そんな"あたりまえ"の高さの枝に跳んでどうしたんだ?
「…そしてこれが能力者に備わるもう1つの利点です。日向、分かりますか?」
――…え?なにがだ?
俺は桜の木に跳び移ったレリエルに疑問を抱く。なぜなら俺達にとってそれは"当たり前"だったからだ。
俺達全員。運動音痴の知恵理以外は4人ともそれくらい簡単なのだ。
「はぁ…あなた達は分かってないようですね…」
心底不思議そうな顔をする俺と知恵理。お互いに顔を合わせて首を傾げる俺達にレリエルは深くため息をついて呆れたようにそう言う。
そしてすぐにレリエルは隣の桜の木へと飛び移った。
「いいですか2人とも?こんなこと――」
さらに次の木に――
「普通の人間には絶対に――」
さらに次の木に――
「出来ません――」
そして最後にまるで体操の選手のように綺麗な形で飛び降りた。
――シュタッ!!!!
着地するとき少しだけひねりを加えたレリエル。そんなレリエルの言葉に俺達はさらに頭に?を浮かべた。
「能力者のもう一つの利点、それは…驚異的と言えるほどの【身体能力】です」
「驚異的…?レリエル。何バカなこと言ってんだよ?そんなこと俺達簡単にできるぞ?」
「…それはあなた達4人を基準にして見てるからですよ。凪も真備も輝喜も、そして日向。あなたも普通の人から見ればかなり異常なんです」
「異常…?」
レリエルの口から出た言葉に俺は近くの木を思いっきり殴りつけた。
――ガ――ンッ!!!!!!
俺の本気の拳にその木の幹には皮がはがれて見事に俺の拳の後がつく。
俺だからこれくらいで済んだもの。俺より拳の喧嘩が強く、さらに力が有り余るほどに強い真備が殴ったら、下手すりゃ小さな木1本なら軽々と倒れてしまうかもしれないんだぞ?
これは異常なのか?俺は頭の中でその言葉がループしていった。
「…異常なんですよ日向。いくら誤魔化してもあなた方は異常なんです。それを今ここでわかってください」
「…っ!?」
レリエルのどこか叱りつけるようなその言葉に俺は言葉を失ってしまう。
だが、ここまで来ると俺もさすがに自覚が出てきてしまっていた。確かに俺は異常なのかもしれないという自覚が――
「…どうやら自覚したみたいですね日向」
「…っ!!あぁ。確かにな。どうやら俺は異常みたいだったみたいだな」
「そうです。あなた方は異常なんです。そして…俺も異常なんです…」
そう言うとレリエルは再び桜の木に飛び移る。
さっきの言葉。俺はどこか哀愁漂うその言葉が気になった。だけどどうしてかは分からないがレリエルはそのことについて応えてくれないような気がした。
ただの俺の感だが、レリエルには触れてほしくないこと。そんな気がしたのだった。
「さて。俺が教えられることはここまでです…」
そう言うとレリエルはバサッとその体に纏った黒い装束を翻す。
その動作に俺はとっさに声を張り上げて引き留めようと声を出そうとするも、その前にレリエルを引き止める声が響きわたった。
「待って!!!!」
張り上げられたその声――知恵理の声にレリエルは振り返る。
知恵理の方はそんなレリエルを恋人が立ち去るときの表情みたいな切なげな表情で見つめていた。
そして、知恵理はその潤んだ唇をゆっくりと震わせていくのだった。
「…また、会える?」
知恵理の言葉。それはふつうに考えたらかなり難しいことのように思えた。
だがレリエルはいっとき考え込む仕草を見せるも、すぐに「ふふっ」と笑みを浮かべ言葉を出していった。
「えぇ。きっとまた会えますよ。必ず…」
どこか優しいレリエルのその言葉。それを聞いた俺はレリエルが振り返る前に急いで言葉をかけていた。
「…俺もお前に1つ。いや2つ聞きたいことがある」
「…何ですか日向?」
レリエルは知恵理のときと同じように優しい声で俺の声に応える。
その声はやはり変声器を使ってるせいかどこかかすれかすれで聞き取りにくい。だがその声にはどこか安心感を与えてくれる。そんな温かさがあった。
だから俺もその声に応えるように穏やかに口を動かしていった。
「…今更だが。レリエル、お前はどこで俺達のことを知ったんだ?俺と知恵理の名前だけじゃない。凪や真備、輝喜の名前も知ってるみたいだったけど?」
レリエルはため息をつくと。顔のパーツで唯一見える唇を横に広げ、苦笑いをしたみたいに答えてくれた。
「まったく本当に今更ですね日向。…でも、そうですね。本当はあまり俺の口から言いたくないのですが…俺はずっとあなた達を見てきました。ここに来る前からずっと…」
「…そうか。お前は俺達が知らなかっただけでずっと俺達の近くにいたんだな」
「…もう1つは何です?」
急かすようなレリエルの言葉。そしてそれに応えるように俺はいままでの中で一番の謎を聞いた。
そう。今日1日の中で一番の謎で一番気になっていたその事を――
「…レリエル。お前はいったい誰なんだ?」
俺の言葉に知恵理が凍りついたように俺をみてくる。どうやら知恵理はまさか俺がこの事を聞くとは思ってもなかったみたいだ。
そしてそれに対してレリエルも押し黙る。そう思った。だがレリエルの反応は俺の期待を見事に裏切ってくれるのだった――
「…誰って"俺"ですよ?」
その言葉に俺と知恵理は唖然としてしまう。だけどそんなことを気にすることなくレリエルは再び立ち去ろうと俺達に背を向けた。
――だが、そのときレリエルは俺達に背を向けたまま忠告のように語りだした。
「…これは俺の独り言なのですが。双子の所にも1人能力者が行っています。彼女は俺と違って喧嘩っ早いですから急いで向かった方がいいかもしれませんね…」
レリエルのその言葉に俺達はまたもや戦慄した。
――双子。双子ってまさか…!!
「真備と凪!!」
「ナギちゃんとマキ君!!」
俺と知恵理は顔を見合わせて同時にそう叫んだ。俺達の知り合いに双子なんてあいつらしかいない。
そのことをもう少し詳しく知ろうと俺は再びレリエルのほう向く。だが――
「…レリエル」
さっきまでレリエルが立っていた桜の枝。そこには月明かりに舞い散る桜の花びらしかなかった…。
`
日「説明重視の話だったな」
知「うん♪そうだねヒナ君♪でも私にはちょっと難しかったな…」
作「まぁその辺はしかたありませんよ。実は俺も書いてるうちに何がなんだか分からなくなった部分がありましたしね♪」
日「いや!!それはダメだろ!?」
知「そういえば。最後にナギちゃんとマキ君が出て来たよね〜?」
日「知恵理。せめて話の脈略はちゃんとしてくれ…」
作「えぇ。実は次回は日向と知恵理からはいったん離れて、真備と凪の話になっていきます」
日「…なんか俺空気ジャネ?」
作「はい。日向が空気になって「やっぱり俺空気なのかよ!?」しまう前に次回予告行きたいと思います。
月明かりが照らし出す夜。抱き合う双子の前に謎の少女が現れる。
彼女の出現に凪と真備は困惑し、彼女の纏う羽衣に2人は見とれてしまう。
次回【美しき雪化粧】」
日「問題nothingだぜ!!」
凪「次回は久しぶりにあたしたちの出番てわけね!!」
真「おう!!日向と知恵理には悪いが次回からはいったん空気になってもらうからな!!ハッハッハッハッ!!」
日&凪『『調子に乗るなぁあああああああ!!!!』』
真「ひでぶっ!!!???」
輝「あれ〜?本当に俺にも出番くるのかな〜?」
知「あはははは…」
次回に続く!!