悪友の意地
春乃が晴に明らかにドキドキしている。
それを見て、兄・春人は確信した。
「……これは、守らねば」
七海「春人くん、お兄ちゃん顔になってる……」
春人「妹を狙う輩は全員排除する」
七海「過保護!!」
そんな中。
一人だけ危険な方向に反応した男がいた。
亮(エロい友人)が、ニヤァ……と笑う。
「へぇ〜……春乃ちゃん、今恋してる感じか……
それは……つまりだな……」
春人「亮。
“つまりだな”の続きを言った瞬間ぶっ飛ばす。」
亮「いやいやいや、俺は純粋に応援を……」
春人「なら、その目つきをやめろ変態」
亮「ごめん……」
しかし亮の“乱入フラグ”は、この瞬間に立った。
昼休み。
春乃は珍しく、お弁当を持って学校の中庭に来ていた。
そこには晴。
「ここ座っていい?」
「べ、別にいいけど……」
春乃はどぎまぎしながら隣に座る。
晴は柔らかく笑う。
「春乃さんって、
ツンツンしてるけど、意外と優しいよね」
「や、優しくない!!」
「嘘。昨日、猫助けてたじゃん」
「な、なんで見て……!?」
晴は春乃の弁当を見つける。
「それかわいい。自分で作ったの?」
「ち、違う! お兄の残り物!!」
(本当は自分で作ったけど絶対言えない!!)
晴は微笑む。
「春乃さんって、意外と家庭的なんだ」
「ち、違うって言ってるでしょ!!」
頬を赤くする春乃。
嬉しそうに笑う晴。
——その時。
ガサガサガサガサッ!!
草むらから飛び出してきた影。
「おっす二人とも〜♡」
亮だった。
春乃「ぎゃーーーーーー!!!!
なんで出てくるのよ変態!!!」
晴「……え、誰?」
春乃「あんたのこと知らなくていい!!」
亮は晴の肩に腕を回す。
「きみ、春乃ちゃん狙ってるんだろ?
なら俺が色々教えてやるよ」
春乃「やめろ!!!!!」
晴は困った顔で笑う。
「あ、あはは……あの、僕はまだ“狙ってる”とかじゃ……」
亮「いや目が完全に“好きな男子の目”してたぞ」
晴「!?」
春乃「言うなぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
春乃が蹴りを炸裂させ、亮は草むらに消えた。
その日の放課後。
罰ゲーム同好会にて。
レイは連絡網のように話す。
「春乃ちゃん、晴くんと昼にいちゃいちゃしてたらしいね」
春乃「だ、誰から聞いたのよ!!」
亮「俺が実況した」
春乃「絶対許さないから!!」
春人「亮。妹の情報を横流しした罪で懲役100年」
亮「人権ーーーー!!」
七海は微笑んで言う。
「でも、春乃ちゃんが誰かと話して、笑ってるとこ……ちょっと嬉しいかも」
春乃の頬が赤くなる。
「……笑ってないし。
あいつが勝手に変なこと言ってくるだけで……」
レイはニヤニヤしながら結論を述べる。
「では今日の研究テーマ:
——“妹の恋に親友が乱入した時の混沌度”」
春乃「研究するな!!」
レイが指名したのは亮。
「亮、君が春乃ちゃんに恋愛アドバイスをしてみて」
春乃「なんでよ!? 絶対嫌!!!」
亮はにやりと笑う。
「春乃ちゃん。
男ってのはな……押されるより、引かれた瞬間に追うんだよ」
春乃「いきなり何の話よ」
「例えば、
“もう知らない! あんたなんて勝手にすれば!?”
って言って離れかけた時、男は追っかけたくなる」
春乃「……あっ、なんか分かる……!」
春人「分かるな!! 危険だな!!」
亮はニヤッと続ける。
「でもね春乃ちゃん。
本当に惚れてる男は……距離が離れた瞬間、
“逃さないように”静かに近づくんだ」
春乃「……!」
晴の顔がよぎる。
亮は真面目な声で言う。
「春乃ちゃん。
お前を本気で見てくれる男のこと、怖がんな。
ちゃんと……見てやれよ」
部室が静かになる。
晴が、そっと口を開く。
「……僕は、
春乃さんが他の人と話してるの見ると、
ちょっとだけ……胸が痛くなるよ」
春乃は真っ赤になって俯く。
亮「お。こいつ、本気だわ」
春人「亮、お前今日ちょっとだけいい奴だな」
亮「だろ? ……ところで七海ちゃんの胸——」
春人「調子乗ったな(殴)」
亮「ごめん!!!!」
帰り道。
春乃と晴が歩いていた。
春乃はもじもじしながら言う。
「……あのさ」
「うん?」
「昼……ありがと。
あんたと話すの、別に嫌じゃないし」
晴は優しく笑う。
「僕もだよ。春乃さんと話すの、好き」
「す、好きって言うな!!!!!」
「じゃあ……
“もっと話したい”でいい?」
「……っ。
……別に……いい……けど……」
晴は照れて、頭を掻いた。
「嬉しいな」
春乃は胸が跳ねるのを抑えられなかった。
後日、レイが研究のまとめを発表する。
研究結果:
『変態親友が乱入すると恋愛は加速し、兄は過保護化する』
春人「間違いない」
春乃「兄は黙れ」
亮「俺、有能じゃね?」
春乃「調子乗るな」
晴「……亮くんのおかげで春乃さんと話せたよ。ありがとう」
亮「お。
……お前ら、幸せになれよ」
春乃「……え?」
晴「?」
春人「亮、急にいい奴になるな!? 怖いんだけど!?」
亮「俺だって空気読む時くらいあるわ!!」
こうして。
妹の恋は、乱入により大きく前進した。
でも、まだまだ騒がしい青春は続いていく。




