妹と悪友
「本日の議題! “全力でバレたら死ぬほど恥ずかしい秘密を暴露する罰ゲーム”の新案を考えよう!」
部長・七海は今日も元気に宣言し、部室はざわつく。
だが、今日は以前と違う。
俺――**春人**は、七海と付き合い始めてから初めての部活動だった。
「七海、もうちょいマイルドな罰ゲームをだな……」
「え? なんで? 恋人になっても容赦しないよ?」
「やっぱりか……」
七海は相変わらず天真爛漫で、無邪気で、俺の心臓に悪い。
そんな空気に、扉が勢いよく開いて割り込んできた。
「――兄貴! その“罰ゲーム同好会”とかいう腐った組織、本当に入るのやめたら?」
ドスの効いた声が響く。
春人の妹、春乃・高校一年。
見事なツンデレ。
可愛いのに、とにかく“兄にだけ刺々しい”。
「なんでお前がここに来るんだよ」
「べ、別に兄貴に会いたかったとかじゃないし!?
ただ、噂で聞いたの! 女の子とイチャイチャしてるって!」
七海をチラッと見て、口を尖らせてそっぽ向く。
「なーんだ、妹ちゃん。嫉妬?」
部室の別の席で笑いながら茶化すのは――
亮:
春人の親友。
下ネタとエロネタを命より愛する変人。
“最低だけど憎めない”の代表みたいなやつ。
「てか春人、彼女できたんだ? へぇ〜……いつから身体のほうは仲良く――」
「黙れ亮。殺すぞ」
七海が笑顔でカッターを取り出し、亮が「ごめんなさいぃぃ!」と土下座する。
相変わらずのカオスな同好会だ。
放課後。罰ゲーム同好会の会議がはじまる。
「じゃあ今回は、“カップル成立記念罰ゲーム”をやりましょう!」
「なんで記念で罰ゲームなんだよ!」
俺の叫びは華麗に無視され、
七海がホワイトボードに大きく書いた。
【カップルが他の異性を十秒見つめたらどうなるか検証】
「ちょっと待てええええ!!」
俺の悲鳴に、七海はにっこり。
「春人、ほら。前回と同じ“十秒見つめる”やつ。
今度は、他の子でやろ?」
“他の子”って言いながら、さりげなく春乃のほうを見る七海。
「えっ……に、兄貴と目合わせるとか死んでも嫌!」
「うん。嫌がってるのにやらせるのは趣味悪いよね〜。
じゃあ、亮くん!」
「えっ俺!? いや七海ちゃん、それは春人くんの心が死ぬ!」
「お前は見つめる側じゃなくて見つめられる側だからな」
亮は青ざめる。
しかし七海はにっこり。
「春人、嫉妬するかなって思って♡」
その微笑みに心臓が止まる。
……こいつ、絶対楽しんでる。
「春人、始めていいよ〜」
亮は妙に色っぽいポーズをとり、
「春人……俺、実はずっと……」
「そのネタやめろ!!」
心を無にして亮を見る。
十秒、地獄だった。
終わった瞬間、七海が俺の腕をつかむ。
「ねえ春人。見てる間、すっごい嫌そうな顔してたね」
「当たり前だろ!!」
「ふふ……でも嬉しい」
七海は耳まで赤い。
――この子、本気で嫉妬してるのか?
そんな空気を、ドアの外で聞いていた春乃がぶった切る。
「な……なに二人だけで甘ったるい空気出してんのよ!!
兄貴なんかに嫉妬する価値ないっての! わ、私は別に心配なんかしてないし!」
顔真っ赤で突っ込んでくる。
七海はふんわり笑って春乃の頭を撫でる。
「春乃ちゃん、お兄ちゃん大事なんだね」
「なっ……違うって言ってるでしょ!!」
だが――
その目は泣きそうに揺れていた。
春乃は、兄である俺が誰かに取られるのが寂しいだけなんだ。
ツンデレのくせに、家では俺にだけ甘えてくることを俺は知っている。
妹の本音と、恋人の決意**
活動が終わり、帰り道。
春乃が袖をつかんで止めた。
「……兄貴。
その……七海さんのこと、ほんとに好きなの?」
「……ああ。
誰よりも」
春乃は唇を噛んで、俯きながら言った。
「……そっか。
……なら、がんばってよ」
そして、超小声で。
「……兄貴の幸せ、応援しなくもない……けど……
だ、誰よりも先に兄貴を困らせるのは私だからっ!」
ツンデレ全開で走り去っていく。
そんな春乃を見送りながら、七海が隣に立つ。
「春人、私ね。
妹ちゃんと仲良くなりたいな。
だって――」
夕陽のなか、七海はまっすぐ俺を見る。
「あなたが大切にしてる人は、私も大切にしたいから」
その言葉で、
胸がぎゅっと締めつけられた。
七海は続ける。
「ねえ春人。
これからもっと、いろんな罰ゲームしよう。
楽しいことも、恥ずかしいことも、苦しいことも――
ぜんぶ一緒に笑い合えるように」
その笑顔は、罰ゲーム同好会で出会ったどんな罰ゲームよりも破壊力があった。
そして、俺たちの“長い物語”が本格的に動き出した。




