表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/10

妹と悪友

「本日の議題! “全力でバレたら死ぬほど恥ずかしい秘密を暴露する罰ゲーム”の新案を考えよう!」


部長・七海は今日も元気に宣言し、部室はざわつく。


だが、今日は以前と違う。

俺――**春人はると**は、七海と付き合い始めてから初めての部活動だった。


「七海、もうちょいマイルドな罰ゲームをだな……」


「え? なんで? 恋人になっても容赦しないよ?」


「やっぱりか……」


七海は相変わらず天真爛漫で、無邪気で、俺の心臓に悪い。


そんな空気に、扉が勢いよく開いて割り込んできた。


「――兄貴! その“罰ゲーム同好会”とかいう腐った組織、本当に入るのやめたら?」


ドスの効いた声が響く。


春人の妹、春乃はるの・高校一年。

見事なツンデレ。

可愛いのに、とにかく“兄にだけ刺々しい”。


「なんでお前がここに来るんだよ」


「べ、別に兄貴に会いたかったとかじゃないし!?

ただ、噂で聞いたの! 女の子とイチャイチャしてるって!」


七海をチラッと見て、口を尖らせてそっぽ向く。


「なーんだ、妹ちゃん。嫉妬?」


部室の別の席で笑いながら茶化すのは――


りょう

春人の親友。

下ネタとエロネタを命より愛する変人。

“最低だけど憎めない”の代表みたいなやつ。


「てか春人、彼女できたんだ? へぇ〜……いつから身体のほうは仲良く――」


「黙れ亮。殺すぞ」


七海が笑顔でカッターを取り出し、亮が「ごめんなさいぃぃ!」と土下座する。


相変わらずのカオスな同好会だ。


放課後。罰ゲーム同好会の会議がはじまる。


「じゃあ今回は、“カップル成立記念罰ゲーム”をやりましょう!」


「なんで記念で罰ゲームなんだよ!」


俺の叫びは華麗に無視され、

七海がホワイトボードに大きく書いた。


【カップルが他の異性を十秒見つめたらどうなるか検証】


「ちょっと待てええええ!!」


俺の悲鳴に、七海はにっこり。


「春人、ほら。前回と同じ“十秒見つめる”やつ。

今度は、他の子でやろ?」


“他の子”って言いながら、さりげなく春乃のほうを見る七海。


「えっ……に、兄貴と目合わせるとか死んでも嫌!」


「うん。嫌がってるのにやらせるのは趣味悪いよね〜。

じゃあ、亮くん!」


「えっ俺!? いや七海ちゃん、それは春人くんの心が死ぬ!」


「お前は見つめる側じゃなくて見つめられる側だからな」


亮は青ざめる。


しかし七海はにっこり。


「春人、嫉妬するかなって思って♡」


その微笑みに心臓が止まる。


……こいつ、絶対楽しんでる。


「春人、始めていいよ〜」


亮は妙に色っぽいポーズをとり、


「春人……俺、実はずっと……」


「そのネタやめろ!!」


心を無にして亮を見る。

十秒、地獄だった。


終わった瞬間、七海が俺の腕をつかむ。


「ねえ春人。見てる間、すっごい嫌そうな顔してたね」


「当たり前だろ!!」


「ふふ……でも嬉しい」


七海は耳まで赤い。


――この子、本気で嫉妬してるのか?


そんな空気を、ドアの外で聞いていた春乃がぶった切る。


「な……なに二人だけで甘ったるい空気出してんのよ!!

兄貴なんかに嫉妬する価値ないっての! わ、私は別に心配なんかしてないし!」


顔真っ赤で突っ込んでくる。


七海はふんわり笑って春乃の頭を撫でる。


「春乃ちゃん、お兄ちゃん大事なんだね」


「なっ……違うって言ってるでしょ!!」


だが――

その目は泣きそうに揺れていた。


春乃は、兄である俺が誰かに取られるのが寂しいだけなんだ。


ツンデレのくせに、家では俺にだけ甘えてくることを俺は知っている。


妹の本音と、恋人の決意**


活動が終わり、帰り道。


春乃が袖をつかんで止めた。


「……兄貴。

その……七海さんのこと、ほんとに好きなの?」


「……ああ。

誰よりも」


春乃は唇を噛んで、俯きながら言った。


「……そっか。

……なら、がんばってよ」


そして、超小声で。


「……兄貴の幸せ、応援しなくもない……けど……

だ、誰よりも先に兄貴を困らせるのは私だからっ!」


ツンデレ全開で走り去っていく。


そんな春乃を見送りながら、七海が隣に立つ。


「春人、私ね。

妹ちゃんと仲良くなりたいな。

だって――」


夕陽のなか、七海はまっすぐ俺を見る。


「あなたが大切にしてる人は、私も大切にしたいから」


その言葉で、

胸がぎゅっと締めつけられた。


七海は続ける。


「ねえ春人。

これからもっと、いろんな罰ゲームしよう。

楽しいことも、恥ずかしいことも、苦しいことも――

ぜんぶ一緒に笑い合えるように」


その笑顔は、罰ゲーム同好会で出会ったどんな罰ゲームよりも破壊力があった。


そして、俺たちの“長い物語”が本格的に動き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ