君と俺
「――では本日の議題。"一番バレたら恥ずかしい秘密を暴露する罰ゲーム”について!」
生徒会でも部活動でもない。
ここは、平和な学園にひっそり存在する謎の集団――罰ゲーム同好会。
部長の七海がホワイトボードに太字で書き込むと、部屋の隅で俺――春人は頭を抱えた。
「なあ七海。毎回思うけど、なんで罰ゲームを研究する同好会なんて作ったんだよ」
「だって、罰ゲームって人生の縮図じゃない? 人は追い込まれたときにこそ本音が出るの!」
「出さなくていいんだよ本音なんて!」
そんなやり取りを、七海はいつもの笑顔で受け流す。
彼女の笑顔は天真爛漫で、無邪気で――だからこそ、俺はいつも振り回される。
その日の罰ゲームはくじ引きで決まった。
よりによって、俺が引き当てた紙に書かれていたのは――
「本気で好きな人をごまかさず十秒間見つめる」
「いや恥ずかしすぎるだろこれ!?」
「だいじょうぶだよ春人。だって誰が好きかなんて私知らないし」
――いや、知ってるんだよ。
好きなのは、目の前のあんたなんだよ。
だが叫べるわけもなく、俺は覚悟を決めて七海の前に立った。
「…十秒数えるね。いくよ?
いーち……」
七海は悪戯っぽく笑いながらカウントをはじめた。
俺はただ、まっすぐに彼女の瞳を見る。
明るい茶色の瞳。
いつもみたいに笑っているのに、どこか不思議と真剣さも宿っていた。
「……じゅう!」
七海が最後の数字を告げると、俺の心臓はとっくにアウト寸前だった。
「……春人さ、なんでそんな顔で見てたの?」
「そ、それは……罰ゲームだろ」
七海はふっと笑う。
「うん。でもね、ああいう顔って…罰ゲームだけでできる顔じゃないと思うよ?」
ドキリと胸が跳ねた。
放課後。
部室に忘れ物を取りに戻った俺は、偶然七海が一人で座っているのを見つける。
窓から差し込む夕陽の中、七海はぽつりと言った。
「ねえ春人。さっきの、嬉しかったよ」
「あの目で見られるとね…“罰ゲームの理由”だけじゃ足りないって思っちゃった」
「七海…?」
七海はふわりと笑う。でも、いつもの軽い笑顔じゃない。
「春人のこと、前からちょっと気になってた。
今日みたいに、真剣に誰かを見つめられる人なんだって知って…もっと好きになった」
言葉が出ない。
心の奥にずっとしまっていた思いが、勝手に溢れ出す。
「……俺、七海が好きだよ。ずっと前から」
七海は目を丸くしたあと、少し涙を浮かべて笑った。
「じゃあ成立だね。
罰ゲーム同好会、初めての“ご褒美ゲーム”だよ」
後日、同好会メンバーにからかわれながらも、俺たちは恋人同士になった。
七海は時々、あの日の十秒を思い出しては言う。
「追い込まれたときに本音が出るって言ったでしょ?
でもね、本音ってほんとは追い込まれなくても言えるんだよ。
ただ、勇気が必要なだけ。」
それが、七海の残した名言であり、俺たちの恋の始まりだった。




