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初恋の人をNTRされた僕はマッチングアプリで出会ったグラマーなのっぺらぼうとつきあうことになりました。  作者: 白鷺雨月


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第六話 気が合いますね

 ほどなくしてあの上品そうな老婦人がメロンクリームソーダとカフェオレを持ってきた。

「はい、どうぞ」 

 とそれぞれのメニューを目の前に置く。

 喫茶すみれはこの老婦人花子さんと夫の太郎さんとで切り盛りしているらしい。ネットの情報だけどね。喫茶マニアの間では太郎と花子の店なんて呼ばれたりしているらしい。

 カフェオレを一口すするとミルクの甘さとほんのりとコーヒーの苦味が口に広がる。絶妙なバランスだ。

 普段ソフトドリンクはコーラばかりの僕だけどこのカフェオレは正直に美味しいと思った。


 野平のひら麻里子まりこさんはスプーンでメロンクリームソーダのアイスをすくう。

 これは素顔を拝めるチャンスかと思ったが、器用にマスクを少し上げてその隙間にアイスが乗ったスプーンを口に入れる。

「うーん、冬に食べるアイスはたまりませんね」

 その声音は実に美味しそうだ。

 確かに野平さんの言う通り、暖かい部屋で食べる冬のアイスは最高だ。

 それにしても野平さんの素顔が気になるな。

 声の雰囲気からかなり可愛い顔を想像してしまう。


「水樹さんはアニメがお好きだとプロフィールに書いていましたけど、この冬のアニメは何を見ていますか?」

 メロンクリームソーダにささったストローを器用にマスクの隙間にいれ、野平さんはソーダを一口飲んだ。それにしてもかたくなに素顔を見せないな。

 でもそれを抜きにしても魅力的なものがある。

 それは僕の目の前に鎮座まします、ご神体ともいうべき立派なおっぱいだ。立派なオッパイって韻をふんでいるな。

 熟れたメロンサイズのおっぱいがテーブルに乗っている。これは噂に聞く乳休めと呼ばれるものか。

 おっと野平さんの美巨乳に我を失いかけた。


「そうですね、デジタルクロニクルの二期とバーチャル・ダークネスですかね」

 僕は答えた。

 もっと一般的な作品を答えたほうが良かったかな。

 野平さんもアニメが好きだとメッセージにあったけどそのオタク度合いは未知数だ。あまりにマニアックな答えでドン引きされないだろうか。

 答えてしまったあとなので文字通り後の祭りだけど。


「えっ水樹さんもデジクロ勢なんですか。ち、ちなみに推しは誰ですか?」

 何かのスイッチが入ったのか、野平さんは早口になった。

 これは、あれだろうか。オタクが好きなことを語るときに早口になるという例の症状のことだろうか。

 

 デジタルクロニクルはフルダイブRPGが実用化された近未来が舞台のアニメだ。そのゲーム世界で魅力的なキャラクターが活躍するアニメだ。ソシャゲ原作だけど珍しくヒットしたアニメであった。

 僕の推しは兎耳族のアリアだ。あの巨乳とぷりんとしたお尻が魅力的なんだよな。しかもこのアニメやたらと女子キャラが乳揺れを起こすんだよね。


「ああっ確かにうさ耳メイドのマリアちゃん可愛いですよね。私はですね、仮面の姫騎士リリアですね」

 仮面の姫騎士リリアとはデジタルクロニクルで一、二位を争うエッチなキャラクターだ。リリアは顔をフルフェイスの兜で隠しているのだけど体はビキニアーマーを装備しているんだよね。もちろんリリアもとんでもない巨乳でアニメ内でもばんばん乳揺れをしている。

 顔かくして乳隠さずなんてファンから言われているキャラクターだ。

 リリアのことが好きだと聞いた僕の脳内は勝手にビキニアーマーに兜を装着した野平さんを想像してしまった。

 僕の脳内では野平さんは激しく乳揺れして、バスタードソードでゴブリンらを葬っていた。

 今日の僕の脳はいつも以上にエロ方面に暴走しがちだな。たぶん、目の前にたわわな実りがあるからだと思う。


「野平さんのおすすめのアニメってありますか?」

 今度は僕からも質問してみた。

 ごくりとカフェオレを一口飲む。けっこう喉が渇いていたようでカフェオレが染み渡る。ついでにお冷も一口飲んだ。


「うーんそうですね」

 野平さんはその巨乳の下で腕組みをして考える。やはりおっぱいが大きいと腕にのせることができるのか。

「夢の小道ってご存知ですか?」

 恐る恐るという雰囲気で野平さんは言った。じゅるっとマスクの下のストローかたソーダを飲む。

 たしかバス事故のあった少年少女たちが夢の世界に迷いこむっていう話だったよな。主人公の桜井由愛さくらいゆめだけが死んでいたってラストだったよな。

 夢の小道のラストは衝撃的でうつアニメなんて言われてるけど、泣ける展開だったよな。


「知ってますよ。あのラスト賛否両論ありましたよね。僕はあれはあれで良かったと思いますよ」

 どんなにラストが気にいらなくてもそれを決めることができるのは物語の創作者だけだ。

「ですよね。由愛の最後のセリフ、あれは泣けましたよね。バイバイってたったそれだけだけどそこに由愛の感情がすべてのっかっていて本当に素晴らしかったですわ」

 野平さんはまた早口でまくしたてる。

 やっぱりこの人は正真正銘のオタクだ。

 この早口を聞きながら、僕は確信した。


 僕たちはこの後、二時間ほどアニメや漫画、ゲームについて語り合った。こんなにも好きなことについて語りあったのは阿良又以外いなかった。もちろん女子では初めてだ。会話をしている間に野平さんの素顔が分からないことなんてそれほど気にならなくなっていた。

 喫茶すみれの壁掛け時計が午後四時をさしたころ、野平さんはもうこんな時間ですわねと言った。

 野平さんの可愛い声を聞いて本当だと思った。

 約二時間があっという間であった。


「今日は本当にありがとうございました。本当に楽しかったです。それに来たかったすみれにもこれたしね。こんなに楽しかったのは久しぶりです。私たちってもしかして気が合うのかもしれませんね」

 どうやら野平さんは閉めに入ろうとしていた。

 だよね、さすがに喫茶店で二時間はもうそろそろ出ないと行けないよな。


 僕たちは会計を済ませて、喫茶すみれを後にした。


新しく連載始めました。ブックマーク、いいね、高評価よろしくお願いします。一言でも感想いただけると励みになります。

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