第四十一話 僕のお嫁さんは世界一可愛らしい
十一月十一日、早朝に僕たちは堺市役所に婚姻届を提出した。
これで晴れて僕たちは夫婦になったのだ。感動して泣いていると麻里子ちゃんがお腹が空いたので朝ごはん食べに行こうと言った。
こういう時、わりかし彼女はドライなんだよね。
コーヒーとトーストにゆで卵というモーニングセットを食べた。
ついに結婚したけどあんまり実感はないな。まあ生活はそれほど変わらないからね。
モーニングを食べたあと、僕たちは予約していたホテルに向かう。
結婚式はホテル水晶館を選んだ。なんたって老舗ホテルなんでサービズがいいんだよね。この日は平日でプランも安かったんだよね。
結婚式に参加するのはごく身近な人々だけで行うことにした。
僕たちの家族に阿良又と猫矢夢乃さん、江戸川麻美香先生にアシスタントの梅図少年、竹河不由美に佐渡綾乃先生、宮部志麻子先生だ。
結婚式はこの日の十一時に開かれる。十一月十一日の十一時だ。なんて覚えやすいんだ。
ホテルに併設されたチャペルの控室に僕は麻里子ちゃんの準備をまっていた。
麻里子ちゃんのお腹はけっこう目立つようになっている。巨乳の女性は母乳もいっぱいでるのだろうかとくだらない事を考えていたら、竹河不由美に声をかけられた。
「ほら社長、完熟メロンのメイクが終わったわよ」
竹河不由美は僕のことを早くも社長と呼んでいる。ちなみに彼女は副社長だ。
株式会社恋泉耶雲が始動するのは来年の四月からなんだけどね。僕のそのタイミングで今の会社を退職しようと考えている。
僕は椅子にすわる麻里子ちゃんのもとに歩みよる。
振り返る麻里子ちゃんを見て、僕はおおっと感嘆の声をあげる。
ウエディングドレスを着た麻里子ちゃんはお世辞抜きに絶世の可愛らしさであった。僕のお嫁さんはなんて可愛いのだろうか。こんなに可愛い人と結婚できる僕は幸せ者だ。
「麻里子ちゃん、世界一可愛いよ」
僕は正直な感想を麻里子ちゃんに告げた。
「うん、知っているわ」
うふふっと吐息交じりの微笑みを僕に見せる。
麻里子ちゃんの顔喪失症は完全に表にでなくなっていた。これも僕が毎日のように麻里子ちゃんに可愛いと言い続けたからだ。まあ、本当に可愛いと思ったからそう言い続けたのだけどね。
佐渡綾乃先生がいうにはそれが顔喪失症の特効薬であるとのことであった。麻里子ちゃんは自分の顔に自信を取り戻したのだ。
「ほらあんたらいちゃつくのは後にして、式が始まるわよ」
竹河不由美にせかされた僕たちは控室を出た。
パイプオルガンによる結婚式の曲が僕たちを出迎える。
神父さんの前で待っていると麻里子さんのお父さんである里詩さんと腕をくんで彼女がバージンロードをユックリと歩いて来た。
「あなたは病める時も健やかなるときも妻麻里子を愛しますか?」
打ち合わせの時は流暢な日本語を話していた神父さんが、この時だけは片言で僕に問いかけた。ちょっと面白い。
僕は当然、はいと答える。
同じことを麻里子ちゃんにも神父さんは尋ねる。
「はい、もちろんです」
力強く答えてくれる麻里子ちゃんが頼もしく思える。
「それでは誓いのキスを……」
神父に促され、僕は麻里子ちゃんの顔に顔を近づける。まじかで見ると麻里子ちゃんはやっぱり可愛い。
「麻里子ちゃん、綺麗だよ」
僕は唇を近づける。
「うん、それも知ってるわ」
僕たちは唇を重ねてキスをした。
僕たちを見守っていた母親の涼子と妹の敦子が号泣しだした。それにつられるかのように麻里子ちゃんのお母さんであるマリアンさんが泣いている。
マリアンさんはマリリン・モンローにそっくりだ。麻里子ちゃんのお父さんである里詩さんがハンカチを渡していた。ご両親の後ろには宮部志麻子先生が座っていて、僕たちを見守ってくれていた。
「ブーケは私がもらいますよ」
真剣な顔で江戸川麻美香先生が拳を握りしめている。
「いえ、それは渡しませんよ」
なぜか隣にいる佐渡綾乃先生が眼鏡をくいっと指であげる。どうやらこの二人はいいつの間にか友人になっていたようだ。
よく婚活パーティに二人で参加しているようだ。いまだ成果はあがっていないものと思われる。
二人にはお世話になっているのでぜひ良い人がみつかるといいな。
「今度は僕たちの番だね」
阿良又が隣の猫矢夢乃さんにかたりかける。
「うん、そうだね」
顔を真っ赤にして猫矢夢乃さんは答えた。
二人の結婚式にはぜひ呼んでほしいものだ。僕が麻里子ちゃんみたいな可愛い人と結婚することができたのは彼らのおかげだからね。
「今度は僕たちの番だね」
梅図一樹少年が竹河不由美に語りかける。その少年の頭を竹河不由美はこつんと拳でたたく。
「生意気いってないの」
「だって不由美ちゃん、大学をでたら結婚してくれるっていったじゃない」
「違うでしょう。あんたが卒業するまで私のことを好きだったら付き合うのを考えるってこと」
「それじゃあやっぱり結婚してくれるんですね」
「どういうロジックでそうなるのよ」
竹河不由美は梅図一樹の頬をつねる。
「「いちゃつきやがって、明日死ね」」
江戸川麻美香先生と佐渡綾乃先生、両先生がそろってベーと舌をだしていた。チャペルでそれはやめておいたほうがいいよ。
案の定、宮部志麻子先生に叱られていた。いい大人がなにをやってるのだか。
僕たちは皆に祝福されて結婚した。
この日は忘れることはないだろう。だって大好きな麻里子ちゃんと本当の家族になれたのだから。
そうそう、ブーケトスは熾烈な争奪戦のあと敦子がその手にとった。
「お兄ぃ、ありがとう」
敦子は素直に喜んでくれた。僕も敦子かうけとってくれてうれしい。遠くで両先生方が鬼のような形相をしてるがここは無視しよう。かかわるとろくなことがない。
結婚式を終え、僕たちは全員そろってチャペルの前で記念写真を撮った。
「夏彦君、私たち幸せになりましょう」
幸せにしてくださいではなく、幸せになりましょうというのが麻里子ちゃんらしい。そうだ、幸せにはお互いの努力でなるものなのだ。どこかの誰かにしてもらうことではない。
「そうだね、麻里子ちゃん。幸せになろう」
僕と麻里子ちゃんは二度目の誓いのキスをした。
その瞬間、カメラマンさんはデジタルカメラのシャッターを押した。
完結
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