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初恋の人をNTRされた僕はマッチングアプリで出会ったグラマーなのっぺらぼうとつきあうことになりました。  作者: 白鷺雨月


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第四十一話 結婚式前夜

 ※麻里子視点


 私の名前は野平麻里子。明日には水樹麻里子になるわ。そう私は大好きな水樹夏彦君と結婚するの。

 彼と知り合ったのはマッチングアプリ「天使の導き」に登録したから。AIのおすすめにあらわれたのが彼だったのよね。

 マッチングアプリなんてやるつもりはなかったけど親友で幼なじみの猫ちゃんこと猫矢夢乃に進められて始めたのよね。今では猫ちゃんには感謝しても感謝しきれないわね。だって猫ちゃんに進められなかったたら、私は夢である漫画家にはなれなかったでしょうから。

 

 私は顔喪失症という世にも奇妙な病気におかされていた。文字通り顔が無くなる病気なの。

 それはあるトラウマに起因すると精神科医で担当になった佐渡綾乃先生が言っていたわ。

 この病気のせいで私は人前にでられなくなり、ずっと寂しい生活を送っていた。猫ちゃんや江戸沢先輩がときどき相手をしてくれるけど、言いようのない寂しさを感じていた。


 私が顔喪失症を発症したのは高校生のとき。

 その時に受けたひどいイジメが原因だということはわかっている。原因はわかっていても解決方法はこの当時の私にはわからなかった。あまりにも症例が少ないので佐渡綾乃先生も手さぐりな状態であった。


 高校三年生の春ごろに私はとある男の子から告白を受けた。

 その人はバスケットボール部のキャプテンでいわゆる体育会系の男の子だった。

 周りにいるのも同じようなタイプの男女でスクールカーストのトップと言えば分かりやすいかな。

 対して私は美術部の陰キャオタクだったの。

 漫画家志望で当時は絵にしか興味がなかったのよね。

 亜麻色の髪とこの人よりもかなり大きな胸のせいで派手に見られがちだけど、私は人見知りのオタク。

 これらはイギリス人の祖母からの遺伝なのよね。

 母親のマリアンは当たり前だけどその血はもっと濃い。マリリン・モンローみたいだと夏彦君が言っていたわ。

 この巨乳も祖母とお母さんのマリアン譲りのものなの。

 中学のときにはGカップになり、高校三年生のときにはJカップになっていたわ。

 胸が大きすぎて制服のサイズが合わなくなっているのが悩みだったわ。どうしても太って見えるのよね。


 そんな私が突然、陽キャのスクールカーストトップの男子から告白された。

 でもその彼はどこか偉そうで私には魅力的には見えなかったわね。

 挙げ句「付き合ってやるからオタクなんて辞めろよ」と言われた。

 アニメやゲーム、漫画が好きなことはすでに私にとって体の一部だった。オタクであることと私というものはすでに切っても切り離せないものだった。だから私は彼の申し出を断った。


 それから数日後、私の目の前に二人の女子があらわれた。

 一人はずっとあのバスケットボール部のキャプテンが好きだった女の子でもう一人はその友人であった。

「あんたが✕✕君を寝取ったていう野平ね。✕✕君はこの子がずっと好きだったのよ。それをあんたがそのホルスタインみたいな胸で惑わしたのね」

 ✕✕君の名前は今でも思い出せない。

 この女の子たちも同じように名前は思い出せない。

 彼女らの言い分はその女の子がずっと思いを抱いていた相手を私がこの体を使って寝取ったというのだ。もう理由の分からない理論と理屈だ。

 それから私はクラスの女子全員からいじめを受けた。白豚だの出目金、ホルスタイン女といった悪口は良い方で私が体を知らないおじさんに売っているという噂も広められた。

 教科書や鞄を隠されたり、階段から押されたこともあるし、トイレに入ると上から盗撮されたりもした。特に顔に対する誹謗中傷が激しく私は名前で呼はれることはなくなった。

 ビッチな出目金、胸を使って男に媚びているホルスタイン、金髪豚女などなど。

 

 学校に行くのが辛くなった私は不登校になった。

 顔を見られたくないと心の底から思った。

 ある日、私の顔を見てお母さんが悲鳴をあげだ。

 私自身はわからなかったがどうやらクレヨンで塗りつぶしたかのように見えたらしい。

 それは母親だけでなく、父親も猫ちゃんや江戸沢先輩も同様であった。

 病院に行くと精神科医の佐渡綾乃先生に顔喪失症という世界でも数例の奇病であると診断された。

 こんな顔ではまともに学校生活など送れない。まあ、すでに送れなくはなっていたけど。

 

 私は高校を中退した。

 

 江戸沢先輩の計らいでイラストの仕事を回してもらったり彼女のアシスタントをしたりして、どうにか生活をした。両親にこの顔をみられたくない私は祖母が残した奈良の家に引っ越した。

 そうして私は誰にも顔をみられない暮らしを数年続けた。このまま一生こんな限られた人とだけ接する生活を送るのだろうかうと思っていた。

 それはとてつもなく寂しいことだった。

 私だって女の子だから、気の合う、話が合う彼氏が欲しかった。でもこんな気味の悪い女なんて誰も好きになんてならないだろう。

 猫ちゃんがそんなことはないとマッチングアプリに無理やり登録した。

 そして水樹夏彦君と知り合った。


 初めて会った日のことは忘れない。

 初めて会ったのにそれが嘘みたいに私たちの話は盛り上がった。彼はけっして私の好きなことを否定したりしない。こんな顔が分からない気味の悪い女の話を最後まで聞いてくれた。こんなに楽しい日は久しぶりだったわ。

 帰りに私は正直に病気のことをうちあけた。水樹君とはもう会えないかも知れないが、嘘をついたままでいたくなかったの。

 

 もう会えないと思うと悲しかったけどその楽しい思い出だけで十分だった。

 それだけでこの先暮らしていけると思ったわ。

 でも背を向ける私の手を掴み、彼は抱きしめてくれた。温かい手だった。

 水樹君は私にまた会いたいと言ってくれた。

 それから彼はずっと私のことを支えてくれた。

 漫画家を目指し、それになれたのは水樹君のおかげ。私一人じゃあ絶対に無理だったわ。

 彼は顔の見えない私のすべてを受け入れてくれる。彼といると心の底から落ち着くことができた。

 やがて顔喪失症はだんだんと和らぎ、もうほとんどでなくなっていった。

 すべて彼のおかげだ。

 そして私はそんな大好きな水樹君の赤ちゃんを身籠ることができた。


 明日はその水樹君とついに結婚する。

 結婚式前夜、お腹の大きくなりつつある私を水樹君は抱きしめてくれた。彼の肌は温かい。ずっとこうしていてほしい。

「麻里子ちゃん、今日もかわいいね」

 水樹君は毎日、私を抱きしめてそう言ってくれる。

 私と出会ってくれてありがとう。

 大好きよ、水樹君。

 


 

 

 

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