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初恋の人をNTRされた僕はマッチングアプリで出会ったグラマーなのっぺらぼうとつきあうことになりました。  作者: 白鷺雨月


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第三十五話 秘中の秘策

 「ペルソナ・プリンセスナイト」の第一話の締め切りは十一月末日である。第一話のページ数は三十でネームは竹河不由美の協力もあり、出来上がっている。そしてすでに最初の数ページは出来上がっている。このままいけばスケジュールは厳しいまでも何とか乗り切れるだろう。

 僕は例により麻里子さんの私生活を全力でサポートする。

 しかし、ここで麻里子さんがとんでもないことを言い出した。

「冬のコミックカーニバルにも新刊を出そうと思っているの」

 僕は我が耳をうたがった。

 連載漫画の第一話の原稿を仕上げないといけないのにさらにコミックカーニバルに新刊を出すなんて。それは完全にオーバーワークだ。

「冬のコミックカーニバルは既刊じゃだめなのかな」

 仕事と同人活動なら仕事を優先すべきだと僕は思う。それに麻里子さんはデビューしたての新人だ。これからキャリアを積んでいかないといけないのにここで落とすわけにはいかない。


 麻里子さんは首と完熟メロンおっぱいを左右に振る。おっぱいと首って連動しているんだと変なところで感心してしまう。

「江戸むらさきの活動は今年で終わりなんです。有終の美を飾りたいんです。それに夢食みジャックの薄い本を希望している人がいっぱいいるんです」

 麻里子さんは僕にスマートフォンの画面を見せる。さらに麻里子さんはタップして画面をスライドさせる。何枚ものファンアートが流れていく。

 夢食みジャックはアートシティ誌面での人気投票ではそこそこだったけどネットでの反応は素晴らしく良い。ジャックの妖しくも美しいその造形とセクシーでグラマーな容姿が一部の好事家マニアにうけているようなのだ。

 ちなみに断トツ一位は近藤明美さんの「お鍋の中のちいさな世界」だ。作中の料理の描写は秀逸でこの月のアートシティの売り上げに大きく貢献した。


「ファンの方々がジャックの薄い本が欲しいっていうんですよ。そこで私、夢食みジャックと弟子っていう一枚絵を描いたんです。そしたら軽くバズったんですよね」

 今度は麻里子さんは僕に液晶タブレットを見せる。そこには大きく胸元を開けた黒いドレスを着たジャックと眼鏡の少年が抱き合う姿が映しだされていた。

 これはショタ心をくすぐられる良いイラストだ。

 麻里子さんはショタをテーマにジャックの薄い本を描きたいといった。

 そして僕に抱きつき、その豊満なおっぱいをこすりつけてくる。

 麻里子さん、ずるいよ。これをされたら僕は何もことわれない。

 これは秘中の秘策を使わないといけないか。


 ということで十一月中旬の土曜日、僕は久しぶりに寝屋川の実家に帰った。それに際して奈良のお土産をいくつか買い込んだ。わらび餅に柿の葉寿司、それにそうめんだ。それと昼時なので唐揚げ弁当を二つ買ってきた。 

 僕の実家は十坪の小さな一軒家だ。そこに現在は妹と母の二人で住んでいる。狭いが二人なら十分だ。

 玄関を開けるとよれよれのジャージを着た女性が僕を出迎えた。

 そのジャージは時川高校ときかわこうこうの指定ジャージだ。高校のジャージをきているが彼女は女子高生ではない。僕の一つ下の妹の敦子あつこだ。

 敦子は毛量の多い黒髪を首の後ろで無造作にまとめていた。

 黒ぶち眼鏡の奥の眠たそうな瞳で僕をみている。

「ただいま、はいお土産」

 僕は敦子にお土産を手渡す。

「これはこれはおい。ご丁寧にどうもでござる」

 そう、僕の妹の敦子は癖が強いのだ。キャラ作りかなにかは知らないが、おかしな話かたをする。

「お昼まだだろう。お弁当買ってきたから一緒に食べよう」

「いいでござるよ。へへっお兄い、助かるぜ。徹夜でゲームして何も食べてなかったでござるよ」

 よく見ると敦子の目の下にくまができている。


 僕たちはキッチンに行き、お昼を食べることにした。かつて知ったるキッチンで僕はお茶を二人分いれる。マグカップにいれたお茶をテーブルに置くとすでに敦子は両手をわせて、いただきますと言っていた。

「唐揚げ、うまい。こいつは染みるな。ひっひっひっ」

 二十代前半の若い女子の奇妙な笑いを僕はスルーする。

「お兄い、彼女とはどうでやんすか?」

 敦子は白飯をかきこみながら、僕に訊く。

「うん、うまくいっているよ。それで敦子に相談なんだけど」

 僕も唐揚げを頬ばる。うん、スパイスがきいていて美味しい。今度、麻里子さんにもたべさせてあげよう。

「そいつはよござんすな」

 敦子は薄い笑みを浮かべる。

「敦子ってイラストやってたよな」

 僕の妹の敦子は絵を描いている現役の芸大生だ。敦子の描く絵は男性同士が愛し合うという非常にお耽美なものだ。そう敦子は腐女子だ。

 僕の部屋はすでに敦子のコレクションで肌色に染め上げられている。

 まあ、それはいい。僕はこの家を出て久しい。もうここは僕の居場所ではないということだ。僕の居場所は麻里子さんの隣だ。それで十分だ。

「まあね。最近は追放者の反撃の二次創作を描いているでござるよ。浩一×サスケが良きでござるな」

 追放者の反撃って異世界ものの追放ざまあでBL要素はなかったはずだ。いや、火のないところに煙を出すのが彼女らだ。

「サスケ×浩一じゃなくてか」

 僕は敦子をからかってみる。前は解釈違いで切れれられた。

「ふふふっお兄いよ。私も寛大になったでござるよ。解釈違いもそれはそれで楽しめるような器になったでござる」

 ほうっ敦子の器は大きいな。

 さて本題にはいろう。

 僕は麻里子さんの現状を説明した。

「まさかお兄いの彼女があの夢食みジャックの作者様だったとは。よござんすよ、よござんすよ。お兄いのピンチとあらば微力ながらお手伝いさせていただきますよ」

 敦子は快諾してくれた。

 敦子も恋泉耶雲のメンバーになったのであった。

 

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