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初恋の人をNTRされた僕はマッチングアプリで出会ったグラマーなのっぺらぼうとつきあうことになりました。  作者: 白鷺雨月


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第二十話 夢への道

 アートシティは先月三月に第一号が発刊されたばかりの漫画雑誌だ。ジャンルとしては青年誌で大人向けの漫画が多い印象だ。

「あっこれ僕ももってる」

 カクテルを飲み終えた阿良又が漫画雑誌を見る。

 

「発刊記念でアートシティ漫画賞というのが開催されるのよ。この雑誌、野平さんにの作風にあっていると思うのよね」

 江戸沢麻美香先生がペラペラとページをめくる。

「たしかに麻里子姉のキャラってエッチだから大人向けだよね。エロ漫画家でもやっていけると思うわ」

 丸い顎に手のひらを当て、猫矢さんは言う。

 彼女の分析通り、麻里子さんの描く女性キャラクターは作者と同じぐらいにエロい。

 エロ漫画家としても十分やっていけると思う。

 

「締め切りが六月三十日か……」

 麻里子さんが募集要項を見る。

 第一回アートシティ漫画家大賞の締め切りは六月三十日だ。ページ数は五十ページ以下で審査員にはプロ漫画家三人と編集長がつとめるという。

 求む!!次世代の大人のエンターテインメントというのが謳い文句だ。

 締め切りまであと三ヶ月もない。

 それまでに入賞できるようなクオリティの漫画を描かないといけない。

 麻里子さんは頭の中で日にちを計算しているようだ。


「入賞したら麻里子姉もプロの漫画家か。今のうちにサインもらっとこうかな」

 ぱくぱくと猫矢さんは串カツを食べる。

 僕もウインナーのカツを食べる。ソースがフルーティでサクサク衣がうまい。噛むとウインナーから肉汁があふれだす。

 揚げ物って油の後始末がたいへんだから、家ではあんまりやらないんだよね。


「挑戦してみなよ。僕も応援するよ」

 僕は麻里子さんの背中に触れる。ブラジャーのホックに手が当たる。ちなみに麻里子さんのブラジャーのサイズはJカップだ。このブラジャーを手洗いするのは僕がもっとも好きな家事の一つだ。


「そうね、やってみるわ」

 ぐっと拳を麻里子さんは握りしめる。

「私も応援するわ。ふふふっライバルを作り出してしまったかも知れませんね」

 どこか江戸沢麻美香先生は嬉しそうだ。


「すごいな、夢があるのってうらやましいですよ」

 阿良又はシーザーサラダを取り分ける。たぶんこの中で一番女子力がたかいのは阿良又だ。

 僕は阿良又に取り分けてもらったサラダをバリバリと食べる。

 串カツを食べたあとのサラダは口がさっぱりしてうまい。


「なら私と一緒に目指そうよ」

 ちらりと猫矢さんは隣の阿良又の端正な顔を見る。しかし美男美女のカップルだな。

「私もね、夏のコミカにサークル参加するのよね」

 猫顔の猫矢さんは僕たちにスマートフォンの画面を見せる。そこには仮面の幻想のキャラクターである天宮りりぃのコスプレをした猫矢さんがうつっている。

 ふりふりの魔法少女の衣装がよく似合う。

 なんと猫矢さんはコスプレイヤーだったのだ。

「私たちもコミカにサークル参加するんだ」

 猫矢さんはスマートフォンの画面をスライドさせていく。

 メタルギアード・レクイエムのイオのコスプレもしていた。セーラー服バージョンとはマニアックだ。

「私、キャラクターになりきるのが大好きなんだよね。できたらこれを仕事にしたい」

 猫矢夢乃さんにも立派な夢があるようだ。

 好きなもので生活するのは憧れる。それがいばらの道だと分かっていてもだ。

 どうせ一回しかない人生だ。好きなことにチャレンジしたいよね。

 僕にはそこまでの熱い思いをこめるほどの夢はない。だから大好きな麻里子さんの夢を手伝いたい。それも立派な夢だと思う。


「夏のコミカでコスプレの写真集ロムと私服の写真集ロムを配布する予定なんだ」

 現在、阿良又はその編集で忙しいらしい。

 そう言えば阿良又は趣味でカメラをやっていたな。

 カメラマンとコスプレイヤーのカップルだなんて、ある種の理想じゃないか。聞けば阿良又は洋裁も始めたということだ。

 なんだ、阿良又も夢があるんじゃないか。


「そうそう私ね、大阪朝バズに出ることがきまったんだよね。水曜日の大阪朝メシのコーナーに出るんだよ。見てみてね」

 二杯目のカルアミルクを呑んだあと、猫矢さんはうとうとしだした。阿良又の肩に頭を乗せて、スースーと寝息を吐く。


「あら寝ちゃったたのね」

 江戸沢麻美香先生はお母さんのように温かい眼差しで猫矢さんを見ている。

 お母さん属性か、これはそそられるな。 

 僕は基本的にはお姉さん属性だけどお姉さん物の同人誌は何冊か持っている。

 男子の理想はエッチができるお母さんだという説もある。この手のジャンルは好物だ。

 今度麻里子さんにお母さんプレイを頼んでみようかな。

 おっと妄想に思考を取られすぎたようだ。


「猫娘病ですね」

 麻里子さんのお酒は三杯目だ。 

 顔色はまったく変わらない。僕と違い麻里子さんはアルコールに強い。

 ワイン一本ぐらいは平気に開ける。

 今、麻里子さんが美味そうに飲んでいるのはドイツビールであった。

「猫娘病?」

 僕は麻里子さんの言葉をオウム返しする。


「猫ちゃんは長時間睡眠障害っていう病気なんだ。だいたい一日に十時間は寝てしまう睡眠障害なんだ。これでも良くなったほうでちょっとまえまでは十二時間は眠っていたんだよな」

 猫矢さんの髪を阿良又は優しく撫でる。

 一日の半分以上を眠ってしまうという睡眠障害だと阿良又は説明した。

 過去に何らかのトラウマがあり、現実逃避の手段として眠ってしまうということだ。

 特に若い女性がかかりやすいようで、通称猫娘病と呼ばれるということだ。

 それだけ長時間ねむるので、日常生活に支障をきたすことが多いらしい。

 そんな彼女を阿良又は支えている。

 なんだか僕と似たような立場だな。

 やはり阿良又は親友だということか。

 これからも色々と彼に相談していこう。


 この後、僕たちはオオサカ・グロウの串カツコースを食べつくし、会話に花を咲かせた。

 江戸沢麻美香先生のプロならではの話はここでしか聞けない話でたいへん参考になった。麻里子さんを支えるにあたり、活かせる話ばかりだった。

 へべれけに酔った麻里子さんを僕の自宅に連れかれるのは骨がおれたのはいい思い出になった。

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