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初恋の人をNTRされた僕はマッチングアプリで出会ったグラマーなのっぺらぼうとつきあうことになりました。  作者: 白鷺雨月


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第十三話 のっぺらぼうの素顔

 僕はいつの間にか眠ってしまったようだ。

 むせかえるような圧迫感を覚えて僕は目を覚ました。だけど覚醒しきれていない。なんだか頭がぼんやりする。

 得意じゃないお酒を飲んで、なおかつ炬燵で眠ったからだろう。体の節々が痛い。

 そうなんだよね。

 炬燵で寝るのは気持ちいいけど体にはよくないんだよな。

 しかしこの息苦しさの原因は何だろうか。

 何か大きな肉まんのようなもので口と鼻を圧迫している。

 身動きしようとするが、ぐいっと柔道の寝技をかけられたいるような感じで動けない。

 それになんだか柑橘系のいい匂いがする。

 頬に亜麻色の毛が数本かかっている。

 僕はどうにかして手を伸ばして、圧迫しているものの正体を探る。

 ふにふにむにむに。

 こ、これは極上の柔らかさだ。ぎゅっとよく詰まった肉が指をわずかにはじく。弾きはするがずぶずぶと指は沈む。

 たまらなく指が気持ちいい。

 この指と指の間に沈んでいく肉の感触は病みつきになる。


「うっあんっ♡♡」

 女子の可愛い声がする。

 その声の方を見ると垂れ目がちの大きな瞳と視線が合う。

 丸くて小さい鼻に大きめの厚い唇がセクシーだ。セクシーな唇の左下にほくろがある。

 これはエッチな唇だな。

 彼女は大きなアーモンド垂れ目で僕をじっと見ている。

 僕たちの視線があっている。


「もっ、もしかして私のこと見えてますか?」

 ああっこのアイドル声優並みの可愛らしい声は野平さんだ。

「う、うん」

 どうやは僕は野平さんに抱きしめられ、彼女の美巨乳に顔を押しつけられているようだ。

 なんて幸せな瞬間なんだ。


 いや、待てよ。

 僕は完全に目を覚ました。

 野平さんと目があっている。

 彼女の顔が見えている。

 野平さんって愛嬌のある幼い顔をしているんだな。高身長むちむち美巨乳に大きな瞳の童顔なんてまた属性が増えたではないか。


「野平さんって可愛らしい顔をしているんですね」

 昨夜の酔いがわずかに残っている僕は正直な感想を口にした。

 みるみる間に野平さんの顔が茹でダコみたいになっていく。


「そ、そんなことないです」

 ばっと立ち上がり、彼女は僕から離れる。

 僕の体には彼女の肌の温もりがまだ残っている。この温かさは癖になるな。ますます彼女を手放したくなくなってきた。


 僕から離れた瞬間、ざざざっとノイズのような音がして野平さんの顔がクレヨンで塗りつぶされる。

 くそっあんなに可愛らしい顔をしているのにまた見えなくなるなんて。

 どうして見えなくなるのか。

 見えるのには何か条件があるのか。


 僕は野平さんに抱きしめられて眠って、その後目を覚ましたら彼女の素顔を見ることができた。

 条件は抱きしめられることか?

 おっぱいを揉むことか?

 不可抗力とはいえおっぱいをもんだことに野平さんは怒っていないようだ。

 この二つの共通点は触れているということだ。

 僕は試しに野平さんの手を握ってみた。

 手を握るくらいは許されるだろう。

 ぎゅっと野平さんの右手を握る。

 そうするとどうだろうか。

 雨雲が晴れて太陽の光がさすように野平さんの顔からクレヨンのモザイクが消えたいく。

 またあの可愛らしい童顔を拝むことができた。


 いや、これは僥倖だな。

 野平さんの素顔ってこんなにも可愛らしいものだったのか。

 正直な感想として、むちむちエロボディをしている彼女の顔がどうだろうと良いと考えていた。このまま顔が分からなくてもつきあおうと思っていた。仮に言葉は悪いがへちゃっとした顔でも話が合うし、エッチな体をしているしで文句を言うつもりはない。

 それに僕だって人のことは言えないしね。さえない容貌の僕が人の容姿を美醜で判断するなんておこがましいにもほどがある。


「野平さんの顔、可愛い……」

 じっと見つめて僕は言う。

 こんなことを女性と目を合わせて言うなんて生まれて初めてだ。

 瑞樹には恥ずかしくてできなかった。ちゃんと思ったことは言っておけば良かっのかな。

 おっと、目の前にこれからもしかしたら彼女になるかも知れない女性がいるのに、元彼女のことを考えるなんて失礼極まりない。

 僕は脳内から瑞樹のことを追い出す。


「み、見えているんですか?」

 顔を赤くして、野平さんは僕の手に指を絡ませる。あれだ、恋人同士がよくやる手のつなぎ方だ。

 イラストレーターをしている野平さんの指にはペンだこがあって固い。だけど手のひらはじんわり温かくて気持ちいい。

 この指で僕の体のいろんなところを触ってほしい。


「見えていますよ。どうやら僕が触れているときだけ見えるようです」

 さっき離れたときにはまた見えなくなった。

 ということは僕が野平さんに触れているときに見えるようになると考えるのが自然だろう。

 もっと野平さんの可愛い童顔を見ていたいので、僕は強く彼女の手を握る。

 ぽろぽろと野平さんは大きな垂れ目から涙を流す。


「わ、私、水樹さんに出会えて良かったです。このまま誰にも顔を見られずに生きていくのかと思っていました。私なんか不細工なのに……」

 何を言っているんだ。野平さんの素顔はそこいらのアイドルなんかよりも可愛いのに。

「そんなことないよ。野平さんの顔ってとても可愛いですよ。僕は好きですよ」

 これはもしかしたら告白になってしまったかも知れないが、まあ良いや。少なくとも野平さんは不細工なんかじゃない。

 心の底からこの人に彼女になって欲しいと思うぐらいに可愛い。


 その日、野平さんの素顔を僕は知った。 

 野平さんがのっぺらぼうでなくなった記念すべき日になった。

 この日、野平さんの顔喪失症が好転したことを報告するために僕たちは彼女の主治医のもとを訪れることになった。

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