プロローグ 人生詰む前に女神に呼ばれた
古典的なろう小説のOPって書いたことないなーって思って書いてみました。
トラックにはねられて転生(転移)するパターンを自分が書いたらこうなりました。
良ければ読んでください。
そこは真っ白な空間だった.
深い霧に覆われて数メートル先すら何も見えない状況。
「ここは……?」
「ここは神界――あなたの存在していた世界とは別次元に存在する、世界と世界の狭間のような場所です」
不意に隣から声が上がった。
一瞬前までは何の気配もしなかったその場所には、明らかに何者かが存在する。
ゆっくりと声の主を確認した。
声の主は女だった。
それも見たこともないくらい美人な。
「だ、誰だあんた!?」
「私は女神※♥♪☔☆」
「え? なんだって? なんて言っているか聞き取れないんだが」
「※♥♪☔☆……申し訳ありません。どうやらあなたたち人間の脳では私の名前を正しく認識できないようです。なので女神とお呼びください」
「……? まあいいや。その女神様がなんでここに? 神界って言ったっけ? どうして俺がそんな場所に居るんだ?」
「その前に私の質問に答えてくれませんか?」
「は? まあいいけど……」
「ありがとうございます。では質問です。あなたはこの場で自分が誰であるかを名乗ることができますか?」
「当たり前だろ? 俺は――」
………………
…………
……
俺の名前は猫山幸一。
この春から私立星ヶ丘高校に通うことになった15歳の高校一年生だ。
中学の頃はいまいちぱっとしなかった俺だけど、頑張ってこの学校に入ったからには勉強に部活、オシャレに遊びと、存分に青春を謳歌してやるぜ。
そしてその過程でできれば人生初の彼女を……
さらにできれば人生初の彼女は幼なじみの……
(神様お願いします! どうか俺に、誰もが羨むような記憶に残る青春を! 彼女をーッ!)
普通なら5円のところを、奮発して500円ほど賽銭箱に入れて念入りにお願いする。
ここ、星ヶ丘神社は特に縁結びにご利益があると言われている。
通常の百倍の金額を入れたからきっと願いを叶えてくれるはずだ。
明日からの高校生活が楽しみだぜ。
「さーて、お参りもしたしそろそろ帰るか」
俺は踵を返して神社を後にした。
もちろん参道の端を歩くのを忘れない。
参道の中央は神様専用の道だからな。
願いを叶えてもらう側だし、礼儀を失するわけにはいかない。
「桜、キレイだなー。俺の青春も桜色になってくれるといいなー」
そんな事をつぶやきながら道を歩いていると元気な小学生の集団を発見。
俺もあんなころがあったっけ。
でも道端でボール遊びは止めろ。
車道にボールが飛び出たら危な――
「い!?」
俺は一瞬自分の目を疑った。
小学生がボールを取るために交差点に飛び出したのだ。
すでに信号は赤。
最悪なことに2tトラックが至近距離まで迫っている。
――プァァァァァァァァン!
「え!? わぁぁぁぁぁぁっ!?」
「チクショウ! 間に合え!」
トラックのクラクションが鳴る中、俺は小学生を助けるべく車道に飛び出した。
……
…………
………………
「自分が何者であるか思い出しましたか?」
「ああ、俺の名前は日野大和。プロのドライバーを目指していたが夢破れた、しがないトラック運転手だ」
「結構――神界が見せる偽の記憶に惑わされず、正しく自分自身を認識しましたね。ここを訪れた人間で間違うことなく自分が誰であるか名乗れる者はそう多くありません」
女神と名乗った女はそう言うと手を光らせ、運転席横のナビに手を伸ばした。
ナビゲート画面を軽く触った後、大和の胸に手を当てた。
何とも言えない不思議なものが流れ込んで来たような感じがした大和。
「い、いきなり何を!?」
「あなたがたにスキルを与えました。あなたがたはこれから地球とは異なる世界で英雄として生きていかなければなりません。そのために必要な力を与えました」
「英雄? 何を言ってるんだ?」
「おや? わかりませんか? あなたの国では私たちの行うこの行為をエンタメとして扱っているため、幅広い層に認知されていると思ったのですが」
「いや、そりゃ認知はしてるさ。この状況、古典ネット小説の鉄板冒頭シーンだもんな。だけどな、いざリアルに自分に降りかかってみたら、こちらの都合を無視して何言ってんだこいつってなるだろうが」
自分はもう20歳――社会で働いているいい大人だ。
異世界だの英雄だの、そんな非現実的なことに憧れる年齢はとうの昔に過ぎている。
異世界?
英雄?
勝手をぬかすな。
こっちは天涯孤独の身なのだ。
日々の暮らしを送るために頑張って仕事をしなければいけない身なのだ。
こんなところに自身を呼び出したくらいだから神様なのは本当なのだろうが、こっちの都合も考えず好き勝手なことを言わないで欲しい。
「女神様よ、あんたに都合があるように俺にも都合があるんだ。日々の食い扶持を稼ぐために、勝手に仕事をほっぽり出すわけにはいかないんだよ。悪いが今すぐ俺を帰してくれ。勇者だの英雄だのが欲しければ他を当たってくれよ」
「そうですか……残念ですがそう言うのならば仕方ありません。あなたを元の世界のあの瞬間あの場所に戻します」
「おう、そうしてくれ……………………あ、やっぱりちょっと待って?」
「?」
「あんた今、あの瞬間のあの場所に戻しますって言ったよな?」
「はい、言いましたが?」
「そうした場合俺どうなるの?」
「前途ある高校生をトラックではねて死亡させ罪を背負います。そうなった場合、責任を取らされ会社はクビ。過失致死とはいえ人を轢き殺してしまった人間に真っ当な仕事が与えられることはありません」
「詰みじゃねーか!」
「はい、人生詰みです。元の世界に戻した場合、ここでの出来事は忘れます。残りの人生何十年もの間、罪の意識に苦しみ抜いてください」
「何だよそれ……選択肢とか初めからねーじゃんよ! もぉぉぉぉっ!」
「その通りです。『人生の選択肢がない』――そんな者が呼ばれるのです。神の力で最後の選択を与えるために。で、どうしますか? 戻りますか?」
「戻れるわけねーだろ……いいよ、選択肢がそれしかないなら英雄にでもなってやらあ」
「結構。では、新たな世界へ送らせていただきます」
女神はそう言うと全身を眩く光り輝かせた。
太陽のような光が助手席から生まれ、大和が乗っているトラックを覆い尽くす。
「さようなら大和――あなたがたのご活躍を見守っています」
「あ、おい!? あんた俺にスキルをくれたって言ったよな? いったいどんな――」
「すぐにわかります。では、頑張ってください」
こんな感じに主人公は神様にスキルをもらって転移しました。
使った設定はこの前ゲームをやってて思いつきプロットを組んだものを使っているためいつでも長編連載に変形可能です。
時間ができたら長編にするかも。