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第93話 神聖帝国勇者連隊

『金を失うは小さく、酒を失うは大きい』

―首相ウィンドウズ・テャーテル―




各地より、優秀な勇者を集めて軍団を作るなんて試みは、どうやら十字軍以降、まともに行われた事はなかったらしいのよさ。

聖地奪還の際に多くの勇者を犠牲にしたみたいだし、その後も続くカイ教徒との戦いで、十字軍に参加した勇者はほとんどがいなくなってしまったと言うのが語り継がれる話しなんだわさ。


あたし達は薔薇の園の都、ウォーム市に到着したのだわさ。


街は強固な城壁で囲まれていて、門をくぐるのも、衛兵から検問を行われたのよ。

あたし達は勇者連隊参加依頼の手紙を見せ、門をくぐれたのだわさ。

その手紙の署名者の屋敷へ向かうように言われ、あたし達は警備兵に案内されて向かったんだわさ。

豪華な宮廷に入って、大広間で手紙の送り主を待ったのよ。

しばらくして、奥の扉から、衛兵に囲まれた高貴な女性がやって来たのだわさ。


「勇者ハレルとその仲間達よ。よく来てくださいました。わたくしはケーフィルヒルト・フォン・ファールツ・ツー・ルーンシュタインと申しますわ!」


これが噂のファールツ宮中伯のご令嬢、ケーフィルヒルト様・・・

めちゃくそ美人なんだわさ!


「勇者ハレルよ。その活躍に期待しています。そして、活躍して下さいましたあかつきには、特別な褒美を捧げましょう」


「特別な褒美?なんなのだわさ?」


「薔薇の花輪とわたくしのキスですわ!!」


痴女かよ!?


「痴女かよ!?」


「マジョリン。心の声が漏れてますよ」


「だって、言い訳つけていい男とかショタとかにチューしたいだけってのが駄々洩れなんだわさ!」


「そんな、そんなこと~」


っと、言いながら顔を赤らめるケーフィルヒルト・・・


「そんなことあるみたいだわさ!」


「そんなこといいな・・・ヤれたらいいな・・・」


「やっぱり痴女だわさ!」


「マジョリン。高貴なお方に、そんな事言ってはいけません」


「メメシアにはこのお嬢様の醜態が見えないのかねぇ~・・・」


すると、脇にいた高貴な男性がケーフィルヒルトを押して、引っ込ませて、前に出たのよ。


「失礼いたした。己はケーフィルヒルト様に仕える騎士であり、勇者の血筋の者である。名はシグルフリード・フォン・ニーデルラントと申す。勇者連隊のまとめ役を承っている。以後、お見知り置きを」


あら、結構品のいいイケメンなんだわさ!


「まだ、呼び寄せました勇者達は全員集まっていませんが、シュヴァイツァーラントから2人の勇者が早くも到着しまして、ハインリヒ・フォン・ヴィンケルリートとデイトリーが来ている」


「しかし、皮肉なものだぜ。シュヴァイツァーラントの連中が先に集まっているなんてな」


っと、プロテイウスは愚痴をこぼしたんだわさ。


「貴殿はシュヴァイツァーラントに何か因縁でも?」


「根には持たぬが、シュヴァイツァーラントの傭兵とは何度かやりあった事がある。ただ、昔の話だ」


「ならば、彼等の強さがわかるはずです。金を払っているとは言え、味方である以上、揉め事は起こさぬように頼みましたよ」


ケーフィルヒルトはぬるっとシグルフリードの脇から顔を出して、あたし達をじっと見たのだわさ。


「これより勇者連隊の宿舎にご案内しますわ!この使いの者が!」


使いの者が来て、そんであたし達を宮廷からちょっち離れた宿舎に案内したんだわさ。

それは大きな建物だったんだわさ。

何部屋も部屋があって、多くの人が住む事が出来そうな建物の内の4部屋を与えられたんだわさ。

あたし達は4人、別々に部屋で寝泊まりする事になったのよ。

それから、使いの人に色々、話を聞いたんだわさ。


「他の勇者の皆様が集まり次第、会議を行う予定ですので、それまではくつろいでください」


っと、言い伝え、使いの者は去って行ってしまったのだわさ。


あたし達は街を散策する事にしたのだわさ。

警備任務だけあって、やはり、地理に詳しく無いとだめだと思ってねぇ~・・・

街はとんがり屋根の大きな建造物が多く、それらは帝国政府の建造物や教会の建造物なんだわさ。

道も入り組んだようになっていて、攻め入るなんて考えを無くさせるような工夫を感じるのよ。

城壁は・・・まあ、プロテイウスが言うには古い造りとの事なのよ。

大砲対策は考えられていないみたいなんだけど、まあ、この街を攻めるなんて考えをもつ勢力は魔王ぐらいなものだろうとの事なのよ。

そして、何よりも、街は活気があって、多くの人達が行き交っているし、店も様々な種類の店舗があって、お金さえあれば苦労はしないだろうって感じなんだわさ。


あたし達は夕食は街中で自由に行っても、会計は勇者連隊のツケにしていいとの事で日も暮れて来たもんで、適当に夕食をとったんだわさ。

ディッベハスって言う、ウサギ肉の漬物をオーブンで煮込んだ料理を食べたんだけど、とっても美味しかったのだわさ。


宿舎に戻って、また明日って言って各々の部屋に入って、まあ、ここからがあたしの本番なんだわさ。


薔薇の園の都では、どのようなお酒が飲めるのかねぇ~・・・

それに、ツケで飲めるなんて、素敵なんだわさ!

あたしゃ、先程、街を散策して見つけた良さげな酒場に向かったんだわさ。


意気揚々と店に入ると、店は結構繁盛していて、あたしゃ奥の席に案内されたんだわさ。

店員さんに、何を頼むかと聞かれ、おすすめは何かって聞いたのよ。

ここら辺は白ワインの名産地みたいで、白ワインが一番安くて美味しいとの事なのよ。

他に、輸入したビールもあるって事で、今日はなんかビールの気分だからビールを頼んだのだわさ。


「そういえば、面白い食材が入って、色々試しに料理しているんですが、いかがですか?」


「面白い食材?気になるんだわさ」


「新大陸から運ばれてきて、帝国の指導の元、試験的に栽培されている野菜なんですよ。わたしは凄くおすすめします」


「じゃあ、それを頼むんだわさ!」


新大陸からの野菜の料理・・・いったいなんだろうねぇ・・・

気になって、楽しみにで、わくわくが止まらないんだわさ!


「はい。ビールと、ベーコンとチーズを例の野菜を一緒にオーブンで焼いたものです」


っと、あたしの目の前に、例の野菜の料理が置かれたんだわさ。

それは、ほんの少し黄色っぽい、いびつな丸を輪切りにしたもので、焼けたチーズとベーコンと一緒に器に入っていて、とても美味しそうな臭いを漂わせているんだわさ。


「ちなみに、この野菜の名前って、なんだわさ?」


「これはカルトッフェルと呼んでますね。でも、南方のいわゆるトリュフとは全然違う食べ物ですよ」


あたしは恐る恐る、それを食べてみたんだわさ・・・


「・・・何故だろう。初めて食べたのに・・・あたしはこれを食べ続けて生きて来たような気がする程に身になじむんだわさ」


店員さんが言うには、これは、土の中のリンゴとも言われるようで、現地ではバタタとかいう野菜の系統とかなんとか。

日の沈まぬ帝国ではパタタと言い、西の島国ではポテトと言うとの事。

まあ、ポテトが一番、響きがかわいいんだわさ。

土の中で出来る野菜との事。


料理する前の食材を見せてくれたんだけど、石みたいなデコボコした変な見た目で、でも、石よりは硬くない感じ。

なんとも、変な野菜だと思ったんだわさ。


まあ、とにかくこのポテトとか言う野菜、ビールにすごくよく合うんだわさ!

すごくなじむ、なじむぞ!

あたしゃ、最高位にハイって気分になったんだわさ!


「この料理はビールが進むね!おかわりだわさ!」


ポテトとかいう野菜、これは間違いなく、今後、あたし達の食事に欠かせないものになるだろうねぇ!

むしろ、これがないと生きていけないって思えるかもしれないねぇ!

それだけあたしは、このポテトに感動したんだわさ!

新大陸、すげえんだわさ!


この店は、他にも新大陸の野菜とかを実験的に料理しているって事で、あたしゃしばらくここに通う事に決めたんだわさ!



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