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第90話 新たなる任務

『自ら飲まねば、どんな酒も美味くは無い』

―政治思想家マキャベツ―




旅の宿にて、あたし達は巡礼者の人に話しかけられたんだわさ。

メメシアが変な回答をして、手紙を受け取ったんだわさ。

多分、前にもあった、秘密の手紙のやり取りなんだわさ。


宿の部屋にて、メメシアは手紙を読んだのよ。

そして、みんなを集めて、話し始めたんだわさ。


「これは、勇者として、重大な任務です。ウォーム市にて行われる帝国議会の警備を頼まれました。わたくし達は、帝国議会が無事に閉幕するまで、ウォーム市で、皇帝と諸侯の安全を守る事となります」


みんな、ざわついたんだわさ・・・

まあ、合計4人だけど。


「それは、あたし達だけが警備するわけじゃないはずよねぇ?他に、諸侯の引き連れた騎士や兵士もいるだろうし、あたし達は誰かの指揮下に入る感じなのかねぇ~?」


「はい。ファールツ宮中伯のご令嬢、ケーフィルヒルト様が指揮を執る、勇者連隊の一員として、帝国議会が開催される薔薇園宮廷の警備をします」


「勇者連隊?なんだ、そりゃ?」


「ここには勇者連隊の詳細は記載されていませんが、どうやら各地で活動する勇者達を集めたものと思われます」


「正直、どうだ?前に同じように活動している勇者に会った時は、散々だったからな。期待できる連中かどうかも怪しいぜ」


プロテイウスはあまりいい顔じゃないんだわさ。


「帝国議会の警護なんていう大きな任務、きっと、何か選別して選んでいるとは思うんだけど・・・実際に見て見ないとわからないよね」


「ハレル、心配になる気持ちもわかるけど、あたし達の活動がちゃんと認められたって証拠でもあると思うし、皇帝のお目にかかれるいい機会だと思うんだわさ」


それに、皇帝はイケメンって聞いた事があるんだわさ。

あごがしゅっとしてて、イケメンアゴだってねぇ~。

気になるじゃな~い・・・


「ちなみに、もう一つ、重要な事が書かれています」


「ほいほい、それはなんだわさ?」


「・・・宗教改革者であるルザーが帝国議会に喚問されます。なお、彼も警護対象に入るとの事です」


「改革者のルザーって、あの例の95の論題の?」


「はい・・・教会世界を揺るがす中心人物を守らねばならないと言う事です」


なんと・・・そいつはやべぇんだわさ・・・


「でも、ルザーを狙うとしたら、それは教会側の人間って事になるんじゃねえか?」


っと、思ったことをちゅうちょ無く言ってのけるプロテイウス・・・


「それは出来ません。それを行えば、彼を支持する諸侯の反乱が起こるでしょう。それに、諸侯だけではありません。多くの下級騎士や農民も反乱を起こしかねません。それは避けるべき事であります。しかし、教会の意志に反して、行動に移す人がいるかもしれません」


「わかった。俺達勇者とその仲間達が警備に入る事で、そういった連中の抑止にもなるっつーことだろ?ただ、問題は魔王側だぜ。これまで戦って来た魔王側の連中は、正直統制が取れているようには思えなかったんだぜ。下っ端連中が何をやらかすか、見当がつかねえだろうな」


「でも、ボク達が平和の為に活動できるなら、それは勇者としてやるべき事だとおもうんだけど・・・」


ハレルは心配そうにメメシアを見たんだわさ。


「この警備で重要になる事は、魔王軍に対しては敵とする事は当然として、政治的にはどちらにもつかず、対立する双方を守らなければならない事だよ・・・もし、メメシアが宗教的に、思想的に無理だと思うなら、この警備はやめるべきだと思う」


ハレルが珍しく、リーダーらしい事を言ったんだわさ。


「ハレル。わたくしは大丈夫です。改革派は、異端者ですが、話し合って、それを続けて解決するべき問題だと信じています。政治的思想から、彼等を弾圧するという極論で推し進める事では無いと思います」


しかし、考えずとも厄介な事なんだわさ・・・

あたし達が守るべき人達が、あたし達が魔王勢力と戦う中、背後で争い始めそうな勢いなんだわさ・・・



☆☆



あたし達はウォーム市に向かう支度をして、その夜は寝る事にしたんだわさ。

まあ、あたしは毎度の如く、夜に宿を抜け出して、居酒屋を探したのだわさ。


この街には小さな居酒屋が1件あって、席は屋外の席、中庭みたいな所に布の屋根を張った素朴な造りなんだわさ。

あたしはそこに入って、すると、店主と思われるおっさんがあたしを見て、眉間にしわをよせたんだわさ・・・


「あんた、飲みに来たのか?」


飲みに来る以外に何しに来ると言うのだわさ・・・


「そうなんだわさ」


「空いてる席に座りな」


そう言われて、あたしゃ端っこの席に座ったんだわさ。


「酒は白ビールか、白ワインか、コルンだ」


「じゃあ、白ビールで」


おっさんは軽く舌打ちして、去ったんだわさ・・・

感じ悪いんだわさ・・・


他の席の客も、何故かあたしをじっと見てるんだわさ・・・

それまで会話していたと言うのに、あたしが来て、その会話が止まったのよ・・・

何この店、常連以外が来ると感じ悪い店なのかねぇ~・・・

排他的居酒屋なのかねぇ~・・・


おっさんがタル型のジョッキを黙ってあたしの前にドカッと置いたんだわさ・・・


「んっ!」


っと、おっさんは手を出すのよ・・・

金を出せって意味なんだろうねぇ・・・

あたしゃ仕方が無く、小銀貨を渡したんだわさ・・・

去り際に舌打ちするし、感じ悪いの極みなんだわさ・・・


あたしゃ仕方が無く、ビールに口を付けたんだけど・・・

殆ど泡なんだわさ・・・

多分、半分は泡だと思うんだわさ・・・


「ねえ・・あれ・・・じゃない?」


「ぎゃははっ!・・あれ・・・・だよな・・・ほんと・・・」


「まじで・・・・あれ・・・・だよな・・・・ぎゃははっ!」


他の客はあたしの事をちらちら見ながら、ひそひそと話す割に、下品な笑い声だけは大きく、まるで聞かせるようにするのよ・・・

なんか、あたしはとても悲しい気持ちになって、泡多めとは言え、せっかくのビールの味さえわからなかったんだわさ・・・


あたしはふと、こんな人達も守る為に戦っているんだな~って思って、すると、自分がやってる事がなんか虚しく思えてきちゃって、ビールは残して店を出たんだわさ。

宿に戻って、布団にくるまって、ちょっと泣いちゃったのよ・・・


「マジョリン。大丈夫ですか?」


メメシアの声に、あたしは布団から顔を出したのよ。


「何か、悪い夢でも見ましたか?」


っと、心配そうなメメシアが、あたしの横に座って、話しかけてくれたんだわさ。

あたしゃまるで、寝つきの悪い子供みたいなんだわさ・・・


「心配してくれてありがとうなんだわさ・・・でも、大丈夫なんだわさ・・・」


メメシアはあたしの手を握ってくれたのよ・・・


「・・・ねえ、メメシア。あたし達は・・・全ての人を守る為に戦うのかねぇ?守りたい人だけ守るんじゃダメなのかねぇ?」


「全ての人を守れる訳ではありません。守るべき人を守る、それに対して守りたいと思う気持ちは、それこそ神の意志、導きがあるのです。守りたいと思えない人達がいたとして、それを守りたくないと感じるのもまた、神の導きなのでしょう」


聖職者らしい返答だったけど、なんか少し気分が楽になった気がしたんだわさ・・・


「変な質問に答えてくれてありがとう・・・おかげで何かすっきりしたんだわさ」


「それはよかったです。おやすみなさいマジョリン」


あたしは、案外ちょっとした事で、結構めそめそしちゃう弱さがあった事を自覚したんだわさ。

きっと、魔王を相手に戦う者として、守りたくないと思える人達がいるなんて、よくない考えだと思うけど、それを否定しなかったメメシアは、優しい人なんだと思うんだわさ・・・

ただ、禁酒主義はいただけないけどねぇ・・・




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