第86話 危険なおもてなし
『今日も働いて飲む。明日も働いて飲む。素晴らしい』
―砲台マキシム剛力―
あたし達は方伯の邸宅で泊る事になったのだわさ。
夜も更けて、メメシアはうなされながら寝ているし、プロテイウスはいびきをあげて寝ているのだわさ・・・
ハレルが珍しく寝付けないでいるのよさ。
「マジョリン。なんか、午前中に聞いた話が妙に気になって、寝れないんだよ・・・」
「勇者なりにこの国の未来を案じているのねぇ~」
それに比べて、うなされながらでも寝れるメメシアは逞しいのだわさ・・・
まあ、プロテイウスはあんまり深く考えて無さそうだけどねぇ~・・・
「ちょいと外の空気でも吸いに行くかい?」
っと、あたしはハレルを連れて部屋を出たのだわさ。
すると、屋敷の使用人に出くわしたのよ。
「勇者様と魔法使い様、主人が広間でドラゴン城伯の御子息様達とお酒を嗜んでおります。よろしければご一緒にいかがでしょうか?」
あたしは使用人に案内され、広間に向かったのだわさ。
そこでは各々椅子に腰かけたフィーリプ殿下とオトゥールくん、レギンくん、マカフシくんが何か話して盛り上がっていたのだわさ。
「お、魔女さんとハレルじゃん!こっち来なよ!女子がいないと華が無くて退屈してたんだぜ」
「よくいうよ。女子がいないと気軽に下ネタで盛り上がれるって言ってた癖に」
「ああん?オトゥール、それは言わねえのが暗黙の了解ってやつだぜ?」
あたしとハレルはこんな感じに賑やかな広間に招かれ、あたしはこじゃれたソファーに座らされたのだわさ。
「せっかくですので、魔女さんはオレがおもてなし致しましょう」
っと、オトゥールくんはあたしの隣に座るのだわさ。
「魔女さん。お飲み物は何がいかがでしょうか?」
まあ、イケメンに近くでこんな感じに親切にされるとねぇ~・・・
にやけるんだわさ~!
「じゃあ、何がおすすめかねぇ~?」
すると、フィーリプ殿下もあたしの隣に座ったのだわさ。
あたしゃイケメンに挟まれたのだわさ!
「今夜は汝が姫じゃ。楽しくもてなしてやろう。このフランコノファードでは人気のシードルがある。いかがかのう?まさに、禁断の果実の味じゃ」
わあお、禁断の果実の味・・・
これは堕落待ったなしだわさ!
でも、楽園は追放されたくないのだわさ!
「堕ちる時は共に堕ちようぞ」
「ひゃーーー!シードル飲むー!!」
「はい、魔女さん卓、シードル入りましたー!」
っと、レギンくんが掛け声を出すのよ。
するとマカフシくんがグラスとボトルを持ってきて、目の前で注いでくれたのだわさ。
「今夜はマジョリンの心の火薬庫に火、つけちゃおうかな~?」
あらやだ~!
マカフシくんって、よくよく見ればなかなか面がいいじゃない~い!
トケツスタンイケメンだわさ!!
やっだ~!あたしの心の城壁に大砲ぶち込まないで欲しいのよさ~!
っと、まあ、シードルを1口・・・
「おや、もっと甘いかと思ったけど、甘さ控えめでさっぱりしてて、程よい酸味で、ビール好きが好める味なのだわさ」
すると、レギンくんがあたしの背後に立って、そんで耳元で・・・
「シードルの甘さがわからなくなるくらい、オレ達が甘い夢、見せてやんよ」
は・・・はぁ~~!?
何言ってるのコイツーーー!?
そんな、甘い夢なんて!!
見させて頂こうじゃないかねぇ~!!
「魔女さん。もっと刺激が強いの、お求めでは?」
そいつは困ったのよさ!
「し、刺激が強いって・・・いったいなんだわさ・・・ごくりっ」
それは、お酒だったのだわさ!
「これはシードルを蒸留したお酒、リンゴのブラントワインといった所じゃ。フランコノファードは隣国の酒も入手しやすい地域でのう。隣国の言葉では、オー・ド・ヴィー・ド・シードルと言い、『リンゴの命の水』という意味であるぞ」
「それは素敵!是非飲んでみたいのだわさ!!・・・でも、まだシードルがあるのよねぇ~」
「魔女さんのいいとこ見てみた~い!飲~んで飲んで飲んで!飲~んで飲んで飲んで!飲んで~!」
っと、飲むようにコールされるのだわさ。
あたしゃくいっとシードルを飲み干したのだわさ!
「強いのくだちぃ!」
「はい、オー・ド・ヴィー・ド・シードル入りましたー!!」
イエーイ!
「マジョリン、これは危険だよ。火が付いたらもう、止められないよ」
っと、マカフシくんがリンゴのブラントワインを注いでくれたのだわさ!
もう、あたしは包囲されてるのだわさ!
まあ、せっかくなので、リンゴのブラントワインとやらを1口・・・
「これは、ほのかな甘みと香りが広がるのだわさ!強い酒なのに、飲んだ感じは柔らかくて飲みやすいのよ!これはいいお酒なんだわさ!」
「へぇ・・・魔女さんって、うれしいとこんな表情をするんだ」
「ほぇ!?あ、あたし、変な顔してたかねぇ?」
「いい表情だよ。肖像画にして飾っておきたいとさえ思える程にね」
あたしの肖像画、手に酒持ってる事になるよー!
っと、ハレルが置いてけぼりになってるのよさ・・・
っていうか、ドン引きしちゃってるかねぇ・・・
「ま、マジョリン・・・」
ハレルはなんか、縮こまってるのだわさ・・・
「おいおいハレル。恥ずかしがってねえで、もっと魔女さんわっしょいして遊ぼうぜ~」
「レギンくん、そんな事、わかりやすく言ってるとモテないのよさ~」
「モテなくて結構だぜ。愛されるなんかよりも、愛したいんだぜ。ガチで」
ほえぇぇーーー!
あたしを照れさせてどうするのよさ!
ど、ど、どうするのよさ!!!!
「マジョリン!」
すると、ハレルも立ち上がったのよさ。
「ぼ、ぼ、ボクと・・・」
「・・・?」
「・・・ボクと一晩、寝ないで遊ばない?」
ハレル、それは色々アウトー!
そのたどたどしさが、かえって良い!
破片が胸に突き刺さったのだわさ!
痛みがあるからこそ、輝くものがあるって感じなんだわさ!
「ようこそここへ!アソボのよさ!パラダイスなのだわさ!」
ハレルもこの謎の集いに参加してくれたのだわさ!
「せっかくだから、ハレル、何かもう一言欲しいのよさ~」
っと、あたしはいじってみちゃったのだわさ!
きゃー、罪な女だわさ!
免罪符買わなきゃだわさ!
「えっと・・・ずっと・・・一緒に・・・いよう・・・」
なんともたどたどしハレル!
顔を赤くして、でも、どうやら周りのみんなに負けたくない気持ちがあるみたいで、頑張ってるのがわかるのよねぇ~!
「うんうん、一緒にいようねぇ~。でも、あたしの方がずっと年上だから無理しなくていいのだわさ~」
そうよねぇ~・・・
こんな悪ふざけして盛り上がってるけど、ずっとこんな感じじゃいられないのよねぇ~・・・
魔法が溶ける時は来るのよねぇ~・・・
「無理じゃないよ。いつになっても・・・いや、いくつになっても、ボクはマジョリンを守り続ける!」
愛ウォナビーユア太陽光!!
オーイエス!メイクミーハッピー!!
あたしゃ、王と王子に囲まれて、幸せな一夜を過ごしたのだわさ!
だわさ!!




